By.社 十夜
二年ぶりか、父さんから連絡があったのは。しかも葉書一枚、文面もあの時と同じ……
『シンジ、ネルフに来い』
この葉書で違うのは、僕宛ての住所だけだ。
でも、僕はあの時の僕じゃない。それに僕の歌を聴いてくれる人は、もういない。
もう、いないんだよ父さん。そう、綾波は一年前に死んだんだ。
僕が朝、登校する時にたまたま目に入った、一枚の葉書。
普段なら高校から帰ってから見るのに、チラッと見えた差出人に驚いた。
『碇 ゲンドウ』
一年前、同じように葉書を見た。そしてネルフに行ったんだ。
綾波 レイ(礼)、惣流 アスカ ラングレー。彼女達とバンド『EVA』を組まされて、歌っていた。
始めは嫌だったけど、綾波が僕を支えてくれた、一途な思いで。
だから僕は歌えたんだ。僕を愛してくれた、僕が愛した綾波の為に。
僕は一千万人のファンの声援よりも、綾波の笑顔が好きだった。ちょっと傲慢だったかもしれないな、あの頃は。
でも、今はもう綾波はいない。だから僕も歌えないし、歌わない。
僕は葉書を握り潰した後、学校へ足を走らせた。
キーンコーンカーンコーン。
今日の授業が終わった。今日の晩御飯は何にしよう、朝の葉書のせいでアスカの事を思い出したし、アスカの好きだったカレーにしよう。
惣流 アスカ ラングレー、アスカとはEVAで初めて会ったんだ。
気が強くて何でもできる天才少女だって、本人は言ってたな。
アスカは今でも女優として活躍している、押しも押されもしないトップスターだ。
ちゃんとご飯は食べてるかな? アスカは家事全般だけは苦手だったからな。
ブロロロロロロ。
校舎の外から聞いた事のある、排気音の音がする。そして急ブレーキ、タイヤの音。
窓から顔を出してみる。やっぱり。
「はーい、シンジ君。迎えにきたわよ」
ミサトさんだ、元 EVAのマネージャー。今は誰の面倒を見てるんだろう。
僕はそのまま家に帰ろうと、階段を降りる。校門ではミサトさんが待っていた。
「おっひさー、シンちゃん」
あいかわらずな人だ。僕は無視して家路につこうとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。あいさつもなしに」
「何の用ですか、ミサトさん。僕はもう歌わないんです、ほっといて下さい」
「……、変わったのね、シンジ君」
ミサトさんは表情が一変して堅く、真剣な顔付きになる。
「僕が変わっちゃいけないですか?」
「ううん、そんな事ないけど。昔と違ってガラスのような冷たさを感じるわ」
「そうですか。僕は変わってませんよ」
「ま、とりあえず乗った乗った」
さっきまで表情がまた変わって、ミサトさんは僕を強引に車に載せようとする。
「ちょ、ちょっと止めてくださいよミサトさん」
「……また逃げるの、お父さんから」
「逃げてませんよ。僕は僕の意志で、歌わないんです。父さんは関係ありませんよ」
「じゃ、とりあえずネルフに来なさい。そしてちゃんと碇社長に会って、断るのよ」
「……」
僕はミサトさんの車に乗っている。ミサトさんは僕の横で運転しながら、話しかけてくる。
「ねーシンジ君、EVAが解散してからどうしてたの?」
「別に、ただ普通に高校に通ってるだけですよ」
「へー、私はねアスカのマネージャーをしてるのよ、今」
「そうですか」
会話が途切れる、しばらくして信号待ちの為、車を停まる。
「二年前と同じね、今」
「え……」
僕が何か答えようとすると同時に、車が走り出す。
ネルフ、現在の芸能界で二大プロダクションの一つ。その社長 碇 ゲンドウが、僕の父さんだ。
コンコン。
「碇社長、碇 シンジを連れて来ました」
「入りたまえ」
ミサトさんの後から、社長室に入る。やけに広い部屋、そして大きい机の向こうに座るお父さん。全てが同じだ。
「葛城くんは下がりたまえ」
「はい」
ミサトさんは、僕を残して部屋からでる。今から僕の勝負だ。
「何の用? 父さん」
「おまえに見せたいものがある」
「僕はもう、歌わないよ」
「そんなものは関係ない」
「じゃ……」
何か失望感を感じた。父さんは僕の歌が必要じゃないの? 僕は心のどこかで、『父さんにとって、僕の歌は必要なもの』と自惚れてたのかもしれない。そう感じた。
「明日、ジオ・フロントにて新人の記者会見をする。見に来い」
「そんなの、関係ないよ」
「見てから言え」
「いったい何があるのさ」
「帰っていいぞ」
「ねえ、父さん」
「帰っていいぞ、と言うのが聞こえんのか」
僕はそのまま逃げ出す様に、社長室を出る。
そのまま外に出て、タクシーを拾う。
「お客さん、何処まで」
僕は声が出なった、周りも滲んできた。
制服のポケットから、学生証を出し運転手に差し出した。
「お客さん……、わかりましたよ」
車が走り出す。そして僕は気づいた、泣いている事に。
その夜、家に帰っても何も手につかなかった。アスカが好きだったカレーも作らず、そのまま眠れない夜を過ごした。
「よし」
力無く呟く。明日、父さんの言葉を確認しよう。
どうも、新しく引っ越してきた社 十夜(やしろ とうや)と言います。
えーと、この話はレイ×シンジです。残念でしたアスカ。
例え愛情の裏返しでも、一番好きなシンジをバカシンジ呼ばわりするのはねー、駄目だね。
それに、アスカだとシンジの天使の優しさに耐え切れないとも思うし、でも中盤にはアスカ×シンジの熱愛する話です。それはもー、激愛ぶりを発揮してもらいますので、期待してもいいですよ。
ま、結局は...だけどね。
どのみち、シンジの天使のような優しさは、レイかカヲルでないと受け止められない、というのが根本にあるからねー、アスカは他の話でシンジといちゃついて下さい。じゃ。
管理人(その他)のコメント
カヲル「いらっしゃい、社 十夜さん。この分譲住宅へようこそ。僕は待っていたよ」
アスカ「十夜・・・・なんてよむの、これ?」
カヲル「やれやれ、あいかわらずおつむの弱い・・・・」
アスカ「なんですって!!」
カヲル「とうや、とよむんだよ、これは。まあ君には読めないのも当然だろうけどね」
レイ 「・・・あなただって読めなかったくせに」
カヲル「な、何を言っているんだい、君は(あせあせ)」
レイ 「おくられてきたメールやファイルでそう読むって気づいたのは、最近でしょう?」
カヲル「ぎくぎくっ!!」
アスカ「なんだ、アタシを馬鹿にしているけど、結局アンタもいっしょなんじゃない」
レイ 「・・・・どんぐりの背比べ・・・・」
カヲル「・・・・ま、まあそれはともかく、このおはなし、どうやらレイとシンジの物語のようだね」
レイ 「・・・・(ぽっ)」
アスカ「な、な、なによその「ぽっ」ってのは!!」
カヲル「仕方がないじゃないか。十夜さんはどうやらレイな人のようなのだから」
アスカ「アスカにんはいないの、アスカにんは!!」
カヲル「おやおや、もう高嶋さんや高原さん、ぱかぽこさんなどいっぱいのアスカにんを知っていながら、まだたりないというのかね、きみは」
アスカ「極めたと思ったときが凋落の始まり、アタシはいつでも上を目指すのよ!」
カヲル「そして足元をすくわれる、と。この話の中でのアイドルなきみも、きをつけたほうがいいよ・・・て、勝負の結果はもう十夜さんが公言しているけどね」
アスカ「ぬあんですってええええ!!」
どかばきっ!!
アスカ「いったい何回なぐられれば気が済むのかしらね、こいつは」