その一撃に思いをこめて

邪神ハイドラ登場

 

 

FMから流れてくる、その古い歌を聞きながらレナはぼんやりと考え事をしていた。

考え事と言うよりは、ぼうっとしていたと言った方が良いだろうか。

「ヒーローか…。」

20世紀の古い映画のテーマ曲の歌を聞きながら、誰に言うとはなしに呟いた。

非番の日に自室でぼうっとしながら、この所感じはじめていた事に思いをめぐらしていった。

 

「ダイゴ、ホリイ両隊員は至急アメリカに飛んで。

そこで、発見された奇妙な物体とやらの調査に協力するように。」

イルマ隊長は、そう命令を伝えた。

「あのう、奇妙な物ってなんですか?。」

ダイゴが何気なく聞いた。

「判らないわ、とにかく言葉では説明できないと言う事らしいわ。」

「そないなもん、どこで見つかったんですか?。」

ホリイ隊員が好奇心を掻き立てられたのか聞く。

「プロヴィデンスの港らしいわ。」

「プロヴィデンスやて?。」

その言葉を聞き難しい顔をするホリイ。

「なんだ、ホリイ、なにか知っているのか?。」

副隊長のムナカタが、その様子をみて怪訝そうに聞く。

「いや、行ってみないと判りませんがもしそうならえらいことになります。」

「なんだよ、そのえらいことってのは?。」

シンジョウの問いにホリイは、

「お前の苦手なもんがでるかもしれんで。」

と、少々からかって言う。

「シンジョウさん、苦手なもんてなんですか?。」

判らずに聞いたダイゴに、シンジョウは慌てて答えた。

「いいんだよ、別に!。」

そう言うと、自分の席でデスクワーク(苦手な)を始めてしまった。

首をかしげながら出て行くダイゴと、にやけながら出て行くホリイ。

彼等はガッツウィング1号にのり、アメリカに向かって飛び立った。

 

 

その、奇妙に輝く結晶体を見つけた作業員たちはこのあたりに古くから言われている

言い伝え、というか噂を思い出して遠巻きに眺めていた。

調査に来たTPCアメリカの調査員が一夜にしていなくなったこと、そこにはなにか妙な

あとがついていたことから、20世紀初頭にここで起きた事件が再び口に上ることとあい

なっていた。

「早いところ、ガッツの連中にこれを引き取ってもらわんと工事が遅れる一方だよ。」

現場の責任者と思しき人物は、恨めし気にその様子をみている。

「信じているんですか?、あれが街でも噂になっているトラペゾヘドロンかもしれない

って、所詮噂じゃないですか。」

そういっているのは、現場監督である。

「だが、ここの人間にはそうはいかないよ、都合よくここのところ曇ってきてるしな。」

恨めし気に、空を仰ぎ見る。

そこには、日の光をうっすらとしか通さない灰色の雲が嘲笑うかのように広がっていた。

 

「なんですか?、そのトラペゾヘドロってのは?。」

ガッツウィング1号を操縦しながらダイゴは始めて聞く名前、だがどこかで聞いたような

気もする、その物体について聞いていた。

「トラペゾヘドロンや、へどろとちゃうで。

わしもようは知らんのだが、古い文献や噂なんかによればそれは邪神を蘇らす鍵やとも

異世界に通じる扉だとも言われておるんや。

実際に、それを手にした為に奇妙な死に方をした小説家だかなんだかもおったそうや。」

ホリイ自身そんなに詳しいわけではないが、この所の怪獣災害、超古代文明の謎の壊滅

などを考えて、もしかしたらその噂のトラペゾヘドロンが超古代文明の残した物かも

しれないと、考えていたのだった。

「あのう、もしかしてシンジョウさんの苦手な物ってまさか…。」

「そや、お化けや。」

 

「ぶわっくしょー。」

「汚いですよシンジョウさん。」

ヤズミが、唾を思いっきり吹きかけられて文句を言っていた。

「ゆるせヤズミ、もてる男はつらいんだ。」

「三回はけなされてるのよ。」

イルマ隊長が、しれっとした顔できついことを言っていた。

 

夕刻になってTPCから来たという回収班がそこに到着した。

「責任者の方は、どなたですか。」

そう、丁寧に聞く男性に作業員全員が安心していた。

「私だ、遅かったじゃないか!。」

責任者の男性は、そこで苛立ちを露にして前にすすみでた。

「こんなもの、はやくもっていってくれ!。」

「わかりました、入っていた容器はどこですか?。」

女性のスタッフが、あたりを見回しながら聞いた。

「それなら、ここに。」

そのケースを、女性スタッフに渡そうとしたとき彼方から空を切る音が近づいてきた。

「しまった!。」

その女性は、叫ぶと同時に容器を奪いさって走り出した。

「スティーブン!。」

相手の男の方に声をかけて車に乗り込んだ。

スティーブンと呼ばれた男もまた、その結晶体を手にすると動き出した車に飛び乗った。

走り去る車、なにが起ったのか理解できずに立ちすくむ作業員達。

「GUTSのホリイとダイゴです。」

「今、TPCの人間だっていうのが来てたが?。」

現場監督の男がそう言うのを聞き、首を傾げるダイゴ。

「ダイゴ!、追うぞ!!。」

ホリイはすぐにウィング1号に向かって走り出した。

「ホリイさん、心辺りがあるんですか?。」

「そんなんあるかいな!。」

二人がウィング1号にのり飛び立つ頃、問題の車はすでに行方をくらませていた。

 

「それで、逃げられちゃったの?。」

GUTS本部に戻りその報告をする二人にレナがあきれたように聞いた。

「そんなこと言ったって。」

ダイゴが、先細りに答えるがその先は続かない。

「まあ、いいわ。

こちらが着く前に取られてしまったのですからね。

二人とも、報告書を出しておいて。」

イルマ隊長は、そう二人に言って司令室から出ていった。

 

 

その2日後、結晶体を奪った二人は仲間とともに海の上にいた。

「スティーブン、結局違ったわね、これ。」

「そういうなよ、ケイト。」

スティーブンと呼ばれた男は、苦笑混じりに答える。

「だが、我々星の智慧派の末裔としては本物が必要なんだがね。」

「カート、星の智慧派の末裔だなんて言っても碌に教義もしらないのよ。」

「だけどね、人間を破滅から護るためにウルトラマンなんて者に頼るのもどうか、

と思うんだけどな。」

「それで、トラペゾヘドロンでどうにかしようなんてのもねぇ。」

そう言いながら、ケイトはその結晶体をもてあそんでいた。

その、自称星の智慧派の末裔数名を乗せたクルーザーは人目を避ける為に寂れた

港町の周辺に近づいていた。

「TPCの目を逃れる為に二日もかけてこんな辺ぴな所まできちまって。」

仲間の一人が情けない声でぶつぶつと文句を言っている。

「ここって、どの辺り?。」

「さあ、インスマウスの近くなんじゃないか?。」

海図を見ながら、大まかな事を答える。

「まさかさ、悪魔の暗礁とか言われてるとこじゃないよねぇ?。」

ケイトは、まだ結晶体をもてあそびながら話していた。

が、手元が狂ってその結晶体を落としてしまった。

その結晶体は、船の床を転がると海へと落ちて行った。

「あ。」

「いいよ、どうせ違ったんだから。」

ケイトの声で、状況をしったカートは捨て鉢な感じでケイトに言う。

「悪魔の暗礁じゃないが、その先のほうかな。

ここなら、地元の船も来やしないだろう。」

その様子をしらずに、船の操舵をしていた男が答える。

落ちた海を覗き込んでいたケイトの目に、なにか人外の者が蠢いている様子が

海の奥の方に朧げに見えていた。

 

 

GUTSに、その知らせが届いたのは結晶体が盗まれてからおよそ4日が経った

ころであった。

「隊長、結晶体を奪った連中が見つかったんですって?。」

シンジョウは、当事者であるホリイやダイゴよりも先に聞いていた。

「なんで、おまえが先に聞くねん。」

「ええ、でも状況が変なのよ。」

「見つかった時の状況に関するデータを今出します。」

ヤズミは、イルマの言葉が終わるとすぐにメインスクリーンに現場の報告データを

映しだした。

「沿岸警備隊が、漂流中のクルーザーを見つけたんですけど乗っていた人達は

1名を残して全員が死亡。」

「死亡?、原因はなんだ。」

ヤズミの報告にムナカタが続きを促す。

「はい、原因は何者かに脳を喰われたことです。」

「脳を?。」

「ええ、全員なにかの生物に襲われたのか頭部が噛み砕かれているようです。」

レナの驚きの一言に、ヤズミが頭部の状況の概要を教えた。

「なんで、一人だけ無事だったんですか?。」

ダイゴがイルマに聞いた。

「判らないわ、それを調べる為にもこちらに移送されるそうよ。」

「到着はいつですか?。」

「今日の夕方には、着くそうです。」

ムナカタの問いに、ヤズミが答えた。

 

一路、空路をTPC極東本部に向かって飛ぶ輸送機の後を追うかの様にその下の海面に

黒い影のような物がうつっていた。

それは、輸送機程の速度は出ていないが正確に飛行経路を追ってきていた。

途中で、漁船などがそれを目撃したがソナーには反応はでていなかった。

だが、漁船の網にはねばねばとしたものが付着しているかあるいは引き千切られているか

の、確実になにか存在した痕跡を残していた。

その報告は、当然TPCにも伝えられた。

近くのTPC支部から、調査のために飛んだ探査機はしかしその実体をつかむことも

できずに虚しく空を行き来していた。

 

夕方、TPC極東本部に到着した輸送機は患者であり、犯人でありまた被害者である人物

をおろした。

その人物は、メディカルセンターに運ばれるとさまざまな検査を受けた。

「名前はケイト・ヴォネガット。

アーカム大学を卒業後、しばらくは地元にいたみたいですね。

殺された人たちは、その時からの知り合いみたいですけど彼等は変なグループを

作っていたみたいです。」

「変なグループ?、なんだそりゃ。」

シンジョウが聞いた。

「なんでも『星の智慧派』とか名乗って行動していたみたいです。

本当に、そうだったかは不明でそうです。」

「星の智慧派…。」

「なんです、その星の智慧派って。」

「邪教と言われている一派だったのよ。

最も、表立って活動した痕跡も見当たらないと言うことで噂の範疇をでないわ。」

ダイゴは、イルマの説明で頷いていた。

「ですが、そうなるとなぜ彼女達が結晶体を奪ったのかが問題ですね。」

「いえ、リーダーそれはわかってます。

あいつらも、あれがトラペゾヘドロンやと思ったんですわ。」

ムナカタの言葉にホリイが答える。

「あいつらも?。」

「そや、あの現場の人たちもわしももしかしたらトラペゾヘドロンかもしれんと

思ったんや。」

「実際は違ったのね。」

「はい、隊長、これを見てください。」

ホリイは、キーボードを操作して、彼女が握り締めていた結晶体のデータを映し出した。

「もし、噂通りのトラペゾヘドロンやったら、黒に近い色の不規則な多面体やそうです。

けど、これはただの水晶でした。」

「つまり、偽物か。」

「たしかに偽物ですが、リーダー、これもまた呪術目的に創られた物です。」

「ホリイさん、なんでわかるんですか?。」

「ええか、ダイゴ。

ここや、ここみてみい。」

ホリイに言われて、ダイゴ以下他の隊員もホリイが指差す所を見た。

「なにも、ないじゃないか。」

ホリイの指差した、結晶体の底部。

だが、そこにはなにか傷らしきものが見えるだけで特にそれらしき物はない。

「この状態だとな、だがこうするとな。」

ホリイの操作で、次の画面がでた。

そこには、暗い部屋の中上からのライトによって映し出された紋様であった。

その結晶体の底部が光の反射によって、奇妙な紋様を作り出していたのだった。

「アンク、と言うのに似てるわね。」

イルマが感心したように言った。

「はい、それで呪術目的やないかと。」

「でも、何の為に?。」

ダイゴが、訳が分からない様子で聞いた。

 

レナとダイゴは、並んで歩いていた。

「ダイゴって、結構不勉強よね。」

「そんな事言ったって、21世紀に呪術だよ?。」

「普通は、考えないか。」

話しながら歩いていると、看護服を来たシンジョウ・マユミが首を傾げながら

あるいて来た。

「マユミちゃん、どうしたの?。」

不思議に思った、ダイゴが声をかけた。

「あ、ダイゴさん、レナさん。」

「なにか、あったの?。」

レナの更なる問いにマユミはカルテを見せながら説明した。

「今日来た患者さんなんでせけど、この脳波の所見てくださいよ。」

カルテを二人して覗き込むダイゴとレナ。

ぱっと見た所、別に変な所は内容に感じた。

「これの何処が変なの?。」

「ダイゴさん、レナさん、これ、この患者が起きて、話したりしてる時のなんです。」

そう言われて、もう一度よく見ると、その脳波のラインはまるで深い睡眠に落ちている

時のラインのようだった。

 

その夜、東京湾で奇妙な黒い影を目撃した人々が多数現われた。

だが、その黒い影はなにをするでもなく付近に現われては消えていた。

 

TPCメディカルセンターの廊下を見回っていた看護婦の一人は後ろから付けてくる

ような足音に振り返った。

だが、そのライトの光の中にはだれもいなかった。

気の所為かと思い、彼女は再び歩き出した。

その時目の前に現れた人影。

その人影は、彼女の首筋を強い力でつかむと自らへと手繰り寄せた。

ごりごりとゆう、骨の噛み砕かれる音と耐え難い激痛を最後に彼女の意識は消えて

行った。

 

その1時間後。

巡回から帰って来ない、その看護婦を心配して見に来たシンジョウ・マユミは血溜りの中

に倒れている頭部を噛み砕かれた彼女を発見して半狂乱で警務局へと通報してきた。

 

「隊長!、なにがあったんですか?。」

シンジョウは、メディカルセンターでの事件と聞き妹の身になにかあったのかと

息せき切って駆け込んできた。

「看護婦が一人、頭部を噛み砕かれて殺されたわ。」

イルマが言う。

「発見された船の時と同じですね。」

ダイゴは、その一致が妖しいと言うニュアンスでイルマに言う。

「ヤズミ隊員、ケイト・ヴォネガットの病室を映して。」

「はい。」

イルマに言われて、即座に病室を映すヤズミ。

通常、プライバシーの問題もあり映像での監視はしていない。

「彼女は、今現在眠っているようです。」

「ヤズミ、顔をズームしてくれ。」

気になることがあるのか、ムナカタはそう指示した。

ケイトの顔がアップになった。

「血が、着いている。」

ケイトの寝間着の襟の部分に、うっすらと血が見て取れた。

が、見ている間にも血はどんどん薄くなっていき、最後には見る影もなく消えてしまった。

「消えた?。」

レナのその声に、気づいたかのようにケイトは起き上がるとまるでこちらの事がわかって

いるかのように笑っていた。

「いくぞ!、ダイゴ。」

シンジョウは、ダイゴとともにメディカルセンターに向かって走りだしていった。

「リーダー、基地内に警戒警報。

警務局にも連絡して。」

「わかりました。」

 

基地内に警戒警報がなった時、シンジョウ・マユミは病室の巡回を殺害された看護婦に

変わって行っていた。

「なに?、犯人が見つかったの?。」

護衛のためについて来ている、警務局員に聞いてみるが連絡がうまく取れないようだった。

「あら、あなたこんな時間に歩いてたら危ないわよ。」

目の前に、現われたケイトを見てマユミは近づきながら話し掛けた。

 

湾内に現われた黒い影は、時を同じくして姿を完全にけした。

臨海部の都市の付近でその姿を見たのが最後であった。

 

マユミが、近づいて行くのに気づいて警務局員はあわててマユミの前に回った。

「下がってください、彼女が犯人です。」

マユミをせにして、彼は銃を構えてケイトの胸に狙いを定めた。

「彼女が、犯人?!。」

だが、その警務局員の返事を聞く事はなかった。

銃に撃たれたというのに、動ずることなくケイトは彼の頭を噛み砕いたのであった。

マユミが、声にならない叫びを上げ後ずさったときケイトは彼女の方に顔をむけた。

その目は、すでに人の目ではなかった。

忌まわしい光を放つその双眸はマユミを睨みつけると、彼女にむかって飛び掛かって

きた。

が、間一髪光弾がケイトを後ろに吹き飛ばした。

「こっちへ走ってこい!、マユミ!。」

シンジョウは、吹き飛んで倒れているケイトに向かってなおも銃を撃つ。

「お兄ちゃん!。」

「大丈夫か?、マユミ。」

聞くまでもないことだったが、つい口に出る。

「シンジョウさん、あれ!。」

ダイゴが、シンジョウを呼ぶ。

「どうしたダイゴ。」

見ると、衣服には焼けこげた後があるのに立ち上がったケイトは無傷のままであった。

「くそ!、なんだってんだいったい。」

毒づくシンジョウを尻目に、ケイトは外の方に向かって走りだした。

「まてっ!。」

ダイゴは、その後を追って走り出した。

ケイト、いやすでに異形のものへと型を徐々に変えて行く。

ダイゴも止める為に、銃を撃つ。

が、今度は当っても平気で走り去って行く。

「シンジョウさんのは効いたのに?。」

今、ダイゴが撃った弾は対怪獣用の強力なものである。

シンジョウが撃ったものはそうではなかった。

ダイゴは、カートリッジを追跡用のモンスターキャッチャーに変えて撃つ。

命中はしてるようだが、はたしてちゃんと体内に染み込んでくれたかははなはだ疑問の

残る所であった。

ケイトだった者は、テラスの所にくるとダイゴの方へくるりと振り返った。

「ハイドラ…!。」

ダイゴはその変形を終えた顔を見て、思わずその名を呟いていた。

ハイドラは、ニヤリと笑うとテラスから海へと飛び込んでいった。

「ダイゴ!。」

後ろから、レナの声を聞きびくっとして振り返る。

「ダイゴ、彼女は?。」

今の言葉を聞かれていなかったようなのでほっとするダイゴ。

「もう、彼女じゃないよ、今ここから飛び降りた。」

レナはそれを聞くと、テラスから下を覗き込んだ。

「え?、半魚人!?。」

そこには、数人のぬらぬら光る体をもった半魚人のような者に囲まれて泳ぎさる、まるで

奇形の龍のような怪物の姿があった。

 

モンスターキャッチャーは、結局ハイドラの体に付着することなくその場におちていた。

「モンスターキャッチャーが使えないとなると、探すのは一苦労やな。」

ホリイが処置無という風情で言う。

「だが、さがさなければ市民の犠牲が増える。」

「リーダー、とにかく警務局と協力して市街地、特に臨海部のパトロールを強化して。」

「了解。」

「だけど、なんでダイゴの弾は効かなかったんだ?。」

「さあ、シンジョウさんの撃った弾よりも強力なやつだったんですけど。」

「しけってたんちゃうか。」

「ガッツハイパーのカートリッジがしけるかよ!、お前の設計だろ!。」

「じゃ、しけるかも…。」

「あ、ダイゴ、ゆうたな?、ゆうたな?。」

「そうだよな、おまえが…」

(なんで、僕はあいつの名前が判ったんだ?。)

「…ゴ?、ダイゴ?、どうしたの?。」

急に、黙ったダイゴを見て訝しげに聞いて来るレナ。

その声で、我に帰るダイゴ。

「あ、いやなんでもないんだ。」

「そう…。」

 

臨海部で姿を消した黒い影を調査していて、ついに臨海部から外のエリアにまで範囲を広げた

巡視船がハイドラと、その下僕のもの達の一団を目撃したのはそれからおよそ30分後であった。

「とにかく、GUTSに連絡だ!。」

船長の指示でGUTSに連絡をとったのだが、その巡視船は直後にハイドラ達によって僅かな

時間で沈められてしまった。

 

GUTS本部では、その連絡と発見場所からハイドラとその一団の進路を割り出した。

「奴等は、メトロポリスの臨海部に向かっています。」

ヤズミは結果を報告した。

「臨海部?、じゃあ、あの黒い影が最後に目撃された場所。」

「そうです、しかも奴等の速度ではあと30分もしない内に臨海部に到着します。」

イルマはほんの少しの間考えると、ムナカタに指示をだした。

「リーダー、近くの警備隊に連絡して。

付近の住民の避難を急がせて、それと全員すぐに出動して。」

イルマの指示で即座にメンバーのフォーメーションを決めるムナカタ。

「ダイゴとレナはシャーロックで地上の警備、シンジョウはウィング1号で先行、ホリイは俺と

一緒にエクストラジェットで上空の監視。」

「了解。」

全員の返答を確認したイルマが

「GUTS出動。」

最後の指示(確認も兼ねているのだろう)を出した。

 

彼等が出動すると同時に、再び臨海部の海面に黒い影が現われた。

だが、今度は消えることなく動き回り、ハイドラ達の到着を待つかのように蠢いていた。

時折、陸地ぎりぎりまでに近づいて来ることがあったが特に何をするでもなくまた離れて

いった。

「早く、来ないか、GUTS。」

苛立たしげに呟く警備隊長。

そんな彼等を嘲笑うかのように目の前で、黒い影は自由に蠢きつづけていた。

 

「こちら、シンジョウ、現場上空に到着。」

シンジョウの乗るガッツウィング1号は現場に着くとホバリングを開始し、その黒い影の

監視態勢にはいった。

[シンジョウ、もし周囲に被害が出るようならすぐに攻撃してかまわん。]

通信機から、ムナカタの指示がでる。

件の怪物の一団がこの影と関係があるのなら、この影もまた人を襲う事になる。

そのことを危惧しての判断であった。

「了解。」

シンジョウは返答と同時に、武器のロックを全て解除した。

これでいつ陸地にあがって来ても、即座に攻撃できる。

「あと、数分だな。」

ハイドラ達がここに到着するまでの時間を考えると、地上へのダイゴ達の到着と

リーダー達のエクストラジェットの到着がもどかしかった。

 

臨海部に向かって進むシャーロックのなかで、先ほどから口を開かないダイゴに対して

レナは、不思議そうな顔をしながら話しかけた。

「ダイゴ、さっきから黙り込んでるけど、どうしたの?。」

ふと、顔を上げたダイゴは無理に微笑むと

「なんでもないんだ、レナ。

ただ、なんで僕の撃った弾が効かなかったのかな、ってさ。」

と、とってつけたように話す。

「うそ、ダイゴなにか隠してるでしょう。」

「そんなことないよ、第一なにを隠すって言うのさ。」

レナの目には明らかに小さな動揺が見て取れた。

「だって、ダイゴ、あの怪物の顔を見た時から少し変だよ。」

自分が怪物、ハイドラの名を知っていた事に関する考えにレナが薄々気づいている事に

ダイゴも気がついた。

だからといって、その事を話す訳にはいかなかった。

「ギジェラの時だって、そうだった、ダイゴ一人だけ正気を保っていたじゃない。

私…。」

レナがその先を言おうとした時、目の目に人影が飛び込んで来た。

「あぶなっ!。」

急停車するシャーロック。

目の前で倒れる人影。

「大丈夫、跳ねてはいないよ。」

自分も落ち着かせる意味を込めてダイゴはレナに声をかける。

「そうね、でも現場到着が遅れるわね。

ダイゴ、あたしが降りて行くからリーダー達に連絡しておいて。」

「わかった。」

さっきの話がうやむやになった事に安堵しつつ、ダイゴは現場到着が遅れる事の連絡を始めた。

「ダイゴより、リーダー。」

無線で話し掛けながら、ふと前方に目をやるとレナが助け起こしている人物を見て目をみはった。

[どうした、ダイゴ。]

ムナカタの返答にすぐに答えるダイゴ。

「リーダー、現場への到着が遅れます。

それと、ケイトを発見しました。」

[なんだと?!、どんな様子だ。]

「判りません、今レナ隊員が見に行ってます、僕もこれから行きます。」

しばしの沈黙のあと、ムナカタは

[状況がわかりしだい、すぐに連絡しろ。]

そう、一言言うと通信をおえた。

「レナ!。」

ダイゴが、シャーロックから降りて近づいていくとケイトは不意に立ち上がった。

「ダイゴ。」

レナがこちらを振り返った時ケイトの目が大きく見開かれた。

「助けて…。」

そう呟いたのを最後にその姿はハイドラのそれに変わっていった。

「レナ!、伏せろ!。」

だが、レナが伏せるよりも早くハイドラはレナに襲いかかった。

幸いヘルメットがある為にハイドラの牙も、レナの頭部を噛み砕く事はなかった。

だが、その牙はやすやすとヘルメットを砕いた。

間一髪のところでレナは、躱したがハイドラはさらに迫ってくる。

「ハイドラ!、動くな!。」

ダイゴは、レナを助ける為にハイドラに向かって銃の弾を全弾叩き込んだ。

「レナ!。」

ハイドラは今度はその弾丸の命中に吹き飛ばされて再び闇へと消え去っていった。

少しの間を置いて、なにかが飛び込む音が遠くから響いた。

 

ダイゴにハイドラが撃たれたと同時に、黒い影は陸地に向かって突進してきた。

「くそ!、させるかよ。」

シンジョウはウィング1号のレーザーを影に向かって撃つ。

だが、そんなものはまるで当っていないかのように進んでくる。

「くそうっ。」

上昇するウィング1号。

影は、それを追って飛び上がるがさすがにウィング1号の高度まではあがって来れなかった。

 

ダイゴとレナはシャーロックに乗り込むと急発進させた。

「ダイゴ、なんであの怪物の名前を知ってたの?。」

「い、今はそれどころじゃないよレナ。」

同時に通信が入った。

[急げ、影の方が暴れ出した。]

見ると、前方数Kmの所で戦闘と思しき光が見えている。

「話は終わってないわ、ダイゴ。

それに、なんでさっきはハイパーの弾丸が効いたの?。」

困り切った顔をするダイゴ。

「私、私ダイゴが…。」

だが、その時ぬらぬらとした体を持つ半魚人の一団がシャーロックめがけて襲ってきた。

「レナ、しっかり体を支えてて。」

思いっきりアクセルを踏むと、シャーロックにシールドを展開させて突っ込んでいった。

鈍い衝撃と、柔らかい物がはじける音が車内に響いた。

 

執拗に攻撃を繰り返す、ウィング1号とエクストラジェット。

だが、そんな攻撃を物ともせずに影は悠然と臨海部の建物を破壊していた。

レーザーもミサイルも、みなすり抜けるか効果がでないかのどちらかなのにその影は

いとも簡単に橋を砕き、建造物を叩きつぶしていた。

「なぜ、効かない?。」

ムナカタは、その様子を見ながら歯痒い思いを感じていた。

[リーダー。]

イルマからの通信。

「こちらムナカタ。」

苦虫をかみつぶした様な顔を見られない様にモニターに向かう。

[ケイト達が、何処で遭難したか判ったわ。]

「ですが、それがいまさら?。」

ムナカタはいまさら遭難場所が判ったからといってなにか在るとは思えなかった。

[ええ、ないかもしれないわ。

でも、答えを見つける一つにはなるかも知れないでしょ。

いい、彼女たちは、インスマウスの通称悪魔の暗礁の沖付近で遭難したらしいわ。]

その事を聞き、ホリイが顔を上げた。

「そこ、邪神崇拝の噂が絶えんとこやないですか!。」

[ええ、相手が邪神でも勝てるかしら?。]

「勝たなきゃならんでしょう。」

ムナカタは、それでも相手が邪神では無いことを祈った。

だが、この様子では邪神としか言いようがない。

既存の兵器では、歯が立ちそうにはなかった。

[そうね、頼むわリーダー。]

「了解。」

だが、打つ手はあるのだろうか。

「リーダー、そこにいる邪神はまだ小物のはずです。」

ホリイは、確信をもって言う。

「なんで判るんだ?。」

「その場所から出る奴は、伝説に言う邪神に使える小神やと聞いたことがありますさかい。」

「だが、小神でこのありさまだ、大元が出てきたらどうなる?。」

 

シャーロックは、臨海部に入る前に影と対峙することになった。

背部の砲をセットしたとき、目の前の海を泳ぐハイドラの姿を見た。

「あ!。」

シャーロックから飛び出すダイゴ。

ドアを閉めると粘液が手に付く。

「リーダー、ケイトが影に向かっています。

なんとか阻止してください。」

ダイゴは無線で叫ぶ。

 

シンジョウは、その通信を聞きウィング1号を転回させてケイトだったハイドラに狙いを定めた。

「止まれーっ!。」

レーザーを撃つが、やはりハイドラには効かなかった。

影とハイドラは接触するまでに近づいた。

 

レナは、影に向かって攻撃を開始した。

だが、一向に答えた様子はない。

レナはシャーロックを後退させながら撃ちつづけた。

 

ダイゴは銃でハイドラを撃つが、止まらない。

ついにハイドラは、影と接触した。

周囲が一瞬暗黒に包まれたかと思った直後、影はすでにハイドラとしての一形態を

とり終えていた。

その姿は、奇形の龍のようにもまた異形の深海魚のようにも見える姿をとった。

「うあっ!。」

その、人の心を凍てつかせるような咆哮に周囲に居た人々は耳を思わず覆った。

[全員攻撃続行。]

ムナカタの声が無線から聞こえる。

「了解。」

答えたダイゴの目の前に、打ち上げられたケイトと思しき姿が目に入った。

まだ、僅だが動いているようであった。

「ダイゴ!。」

レナがシャーロックを近づけてきた。

眼前の海からハイドラが陸上に上がろうとしている。

エクストラジェットと、ウィング1号が攻撃を繰り返しているが一向に堪えた様子は無い。

「レナ、あそこ多分ケイトだと思う、開放されたんだ。」

「わかった、行こう、ダイゴ乗って。」

ダイゴが、助手席に乗るとドアが閉まるのも待たずに急発進をした。

俯いて倒れ苦しんでいる様子のケイトの前でシャーロックを停めると二人は車外にでる。

「大丈夫か?。」

大丈夫なわけがないが、この言葉は人命救助の常套区になっている。

その言葉をダイゴがかけ、レナが助け起こす。

 

「リーダー、ウィング1号の武器じゃ、効果がありません。」

シンジョウは、レーザーもミサイルも効かないハイドラに対して無力感を感じながら

それでも攻撃の手をゆるめなかった。

[なんとか、ここから引き離すんだ。]

ムナカタの返答は、無理そのものといえた。

攻撃にたいして、相手は蚊にさされたほどにも感じてはいないようなのだから。

 

助け起こしてその顔を見た二人は言葉を失った。

その顔は、まるで数千年前のミイラの様に干からびていたのだった。

だが、それでも彼女は生きていた。

生きて、動いていたのだ。

レナの抱き起こした腕の中で、彼女は助けを求めてその手を伸ばしていた。

口が、なにかを言おうと動いた。

だが、その動きがあるたびに彼女の顔の皮膚、もはや皮膚と呼べないのだが、は次々と

ひび割れ、崩れ落ちていった。

レナはそれでも、優しく大地に横たえると自分の銃を抜いた。

ケイトの顔を狙い、そして引き金を引いた。

「レナ…。」

「大丈夫よ、ダイゴ、これしか出来ないもの、私たち。」

ケイトの遺体は、撃たれた直後に崩れそこのは僅かな灰しかのこっていなかった。

「こんなになってまで、何故いきてたの?。」

「奴等は、人の苦しみもむさぼり喰うんだ。」

ダイゴが、その目に怒りを湛えて答える。

 

ハイドラはその時に、臨海部のオフィス街についに上陸した。

普通の怪獣のように火を吐くでもなく、暴れるでもなくただ静かに歩き出す。

だが、その後ろではビルが、道が、そして人が音も無く崩れ、砕け、そして死んでいった。

 

ウィング1号もエクストラジェットも、前方に回り込みそれ以上の侵攻を食い止めるべく

攻撃を続けた。

だが、その巨大な姿になったハイドラにはそんなことはまるで関係なく進み続けた。

「くそ、このままじゃ市街地は全滅だ。」

エクストラジェットの中でムナカタは、悔しそうに呟いた。

[リーダー、アートデッセイの発進準備を整えているわ、あと1時間持ち応えられる?]

イルマの問い。

「難しいところです、それ以前にこちらがやられそうです。」

ムナカタの答えはそれでも、楽天的といえた。

[判ったわ、可能な限り早く出せるようにするわ。]

「わかりました、なんとか持ちこたえる様にします。」

「リーダー、持ちこたえられますかいな?。」

ホリイが、聞いた。

すでに、エクストラジェットも、ウィング1号も、武器は残り少ない。

「持ちこたえるんだ。」

そっけなく言うムナカタすら、持ちこたえられる自信はなかった。

ただ、ここで諦めるわけにはいかないだけであった。

 

エクストラジェット、ウィング1号に遅れること数分、二人の乗ったシャーロックは

ハイドラの前に回り込むことに成功した。

「これより、攻撃に参加します。」

オープンチャンネルで、このエリアにいる戦闘部隊全員に聞こえる様に通信を入れる。

[まちかねたぜ!、頼むぞ。]

シンジョウは、百人の味方を得た様に答える。

実際はそんな根拠はないが、それでも周囲の警備隊には気休め程度にはなるだろう。

「全然、効かないな。」

最大出力のビームにも何事もないかのように悠然と歩くハイドラにダイゴは感心した

様に、声を上げる。

「なに、感心してるのよ。」

続けざまに攻撃を加えながら、レナが不平そうに言う。

「別に感心してるわけじゃないよ。」

ダイゴは、砲の角度を修正しながら答える。

その目に、逃げ遅れたらしき警備員が倒れているのが飛び込んできた。

「レナ、あそこに倒れて居る人がいる。

助けてくるから、後は頼む。」

「あ、ちょっとダイゴ!。」

レナの言葉も効かないで、かけて行くダイゴ。

その、ダイゴの姿を見るハイドラ。

「笑った?。」

レナは、ハイドラが嘲るような笑いを浮かべたと感じた。

と、同時に黒い稲妻のようなものがダイゴと、倒れている警備員を襲った。

漆黒の霧のような物が、二人の周囲を包む。

だが、その中から輝きが一閃した。

輝きは、そのまま高く飛び上がるとハイドラを一撃すると正面の離れた所に立つ。

「ダイゴ。」

レナは、その瞬間を目にした。

漆黒の霧に包まれる瞬間、ダイゴは光になっていた。

 

「ティガ!。」

司令室で、イルマはその名を呼んだ。

だが、その姿に一縷の希望を託している自分に気が付いた。

だが、ティガは…。

 

銀色の光の巨人、ティガは手に包んだ警備員を安全と思われる所にそっとおろすと

ハイドラに、向かって走り出した。

『ターッ』

まるで、裂帛の気合のようなその声を聞き、ムナカタ、ホリイ、シンジョウは安堵の

声を思わずだしていた。

彼等の期待に答える様に、ティガの空中からの蹴りは一撃でハイドラを後方へと押しやる。

しかし、その後ろに立ったティガが尾をつかもうとしたとき、再び黒い稲妻をハイドラは

使った。

逆に、海に落とされるティガ。

ハイドラは、ティガの方に向きなおるとティガに向かって歩き出した。

ティガもまた、海から飛び上がるとハイドラに向かって駆けて行く。

 

「ヤズミ隊員、アートデッセイ発進可能になるまで後どれくらい?。」

イルマは、ヤズミにむかって自分の焦りを見せないように聞いた。

「あと、30分程です。」

「そう、わかったわ。」

アートデッセイでの援護は同急いでも間に合わない事は火を見るより明らかであった。

 

ゆっくりと歩いて行くハイドラ。

走りながら、体のストライプを赤、紫の2色から赤一色に変えるティガ。

スピードが落ちるが、パワーで押し切る事にしたらしい。

その紅いストライプのティガは、全力でハイドラにつかみかかる。

とそれを、バックドロップの要領で後ろに投げる。

投げ飛ばされたハイドラは、しかし空中で体勢を変えると足から海に着地した。

「なんてやつだ。」

ムナカタが感嘆の声をだす。

「あの巨体で猫のように身軽なやっちゃ。」

ホリイもまた驚きの声をあげた。

振り返った、ティガは自分の攻撃がまるで効果を上げていない事に驚愕を感じたような

短い声をだしていた。

だが、諦めることなく再びハイドラに向かって走り出す。

今度は両の拳に力を込めて連続して打ち込む。

火花のような、爆発のような輝きがその度にあがる。

「ようし!、そこだぁっ!。」

シンジョウは勝利を確信したかのように叫ぶ。

だが、ハイドラの全身が黒い電撃のような物に包まれるとティガはまたしても後方へと

吹き飛ばされて行く。

「そんな!。」

レナが、呟く。

ティガは立ち上がると、再度体のストライプを変えた。

紫一色のストライプ。

パワーではなく、スピードを用いる時のストライプである。

だが、そのスピードを生かした攻撃もまたハイドラには通用しなかった。

吹き飛ばされ、海に沈んだティガは元の赤と紫2色のストライプのボディに戻っていた。

だが、立ち上がったティガに始めてハイドラは襲いかかった。

その口を大きく開け、ティガの頭部に喰らいついた。

ハイドラは噛み付きながら、体重を架けてティガにのしかかる。

苦しそうな声を出すティガ、ついに片膝をつく。

「ティガ、負けないで。」

レナは、ティガに叫びかける。

だが、その声と同時にティガの胸のカラータイマーが紅い点滅を開始した。

「まずい、ティガを援護する。」

ムナカタは、動いてる間はしたくてもできなかった援護の指示をだした。

だが、やはり攻撃は全て効果を発揮しなかった。

ティガの頭にハイドラの牙が食い込む。

ついに、ティガの頭から輝くティガの血が迸りでた。

「ティガ!。」

レナの悲痛な声が響く。

ティガの名を叫んだレナだが、その目にはティガではなくダイゴの姿が見えていた。

ついに、ハイドラの口を抑えていたティガの両手から力が抜けはじめた。

それに比例して、さらにティガに食い込むハイドラの牙。

「ダイゴッ!。」

思わずレナはダイゴの名を呼んだ。

(ダイゴ、今助けるから!。)

レナは、シャーロックの砲を発射した。

ダイゴを助けるというただ一つの強い思いとともに。

轟音とともにハイドラの目が一つ飛び散る。

激痛を感じたのかハイドラは、苦しげな叫び声をあげて後頭去った。

ティガ=ダイゴは、だがそこに倒れ込んでしまった。

なんとか立ち上がろうとするティガ=ダイゴ。

ハイドラはその顔をレナの方に向けた。

忌々しげに残された目を細めて、唸り声を上げる。

直後レナの乗るシャーロックに、黒い雷撃が襲う。

咄嗟にシールドをはるが、だがそのシールドも打ち消されてしまう。

後退するレナ。

それを追う、ハイドラの黒い雷撃。

シャーロックはついにフロント部を消滅させられて停止した。

外に出るレナ、爆発するシャーロック。

ウィング1号とエクストラジェットの攻撃は未だほとんど効果を上げていない。

追いつめられたレナは、目を閉じた。

が、雷撃は襲ってこない。

目を開けるとそこにティガの巨大な背中が見えた。

まだ、頭部から光が流れているが徐々に収まっていっている。

この位置からでは、レナには見えないが傷もふさがりつつあるのだろう。

ティガはレナの無事を確認すると、立ち上がりハイドラにむかいあった。

胸のカラータイマーは、点滅の速度を上げている。

時間は残り少ない。

少し、ほんの一瞬のにらみ合いの後、ティガは腕をL字型に組んだ。

手から放たれた光線は、ハイドラの体になかなかと触れない。

ハイドラは、黒い雷撃をまたレナとティガに向かって放とうとした。

その瞬間、ティガの放つ光線は力を増した。

ハイドラは、光線に貫かれ断末摩の雄叫びを上げる。

だが、それが本当の断末摩の叫びなのかは当のティガですら判らないだろう。

弾けた黒い霧が拡散しどこかに消え去るように飛び散ると、ティガもまたその姿を

光の粒子に変えて、去っていった。

 

レナが振り返ると、その瓦礫のかげからダイゴが姿をあらわした。

が、彼もまた頭から血を流していた。

「レナ、大丈夫?。」

そう一言言うと、その場に倒れるダイゴ。

「ダイゴ!、私より自分の事…、ダイゴ?。」

倒れているダイゴを抱えるレナ。

「リーダー、ダイゴが!。」

 

 

 

シンジョウ・マユミは心配そうに部屋の前でまっていたレナをみると微笑んで

「大丈夫ですよ、怪我もそんなにひどくないですし。

一週間もすれば元どおり元気になります。」

と、教えた。

レナは、ほっとして微笑むと

「入っても大丈夫かしら?。」

と、マユミに聞いた。

「ええ、でもまだ眠ってますよ?。」

「そう、でも、いいの。」

そう言うと、レナはダイゴの眠っている病室へ入った。

夜があけて、朝日が窓から入ってくる。

「ダイゴ。」

呼びかけても、まだ麻酔が聞いて眠っているダイゴの反応はない。

少し、間をおいてからレナはまた話し掛けた。

「ダイゴ、私、ダイゴがティガだって、もう知っているよ。」

そう言って、窓に目を向ける。

朝日の中、雲一つない空がその日の快晴を教えている。

また、ダイゴに顔を向ける。

「もう、判ってるんだよ、ダイゴ。」

そう、言葉を紡ぐとレナは目の前のダイゴの顔がぼやけて見え始めていた。

 

 

 

END


SOU

「丸山さん、遅れまくりながら50万ヒットおめでとうございます。

記念になるかどうか判らないのですが、お納めください。

なんとか、間に合ったような気がするようなしないような。

それと、今のうちにあやまっとこう。

クトゥルーファンの皆様ごめんなさい、ハイドラはこんなんじゃないやい、という

意見もあるでしょうが、ティガで最終回にロイガーをもじった古代尖兵怪獣ゾイガー

とか、正真正銘邪神ガタノゾーアとかでてきてたので主人公が古代記憶をわずかに

思い出す原因の事件があればなー、なんて考えてハイドラを使うことにしました。

で、いろいろ変えてしまってます。

お叱りはメールで直接私目に。」

黒井ミサ

「エヴァじゃないわね。

ここで、これやっても判らないんじゃないの?。」

SOU

「そうですねー、あなたが出ても誰だか判らないでしょうしねー。

じゃ、簡単な説明をしましょう。

1. ダイゴ:主人公、ティガになる。

V6の長野博さんがやってまして、設定では童顔で人懐っこいタイプ、話の中で普段は

ぽやーっとした感じですが、いざって時には力を発揮するタイプ。

どちらかと言うとエリートではなく、ひょんなことからGUTSのメンバーになる。

手っ取り早くいえば、Kさんのそしてそれからのシンジ君が近いかなー。

2.レナ隊員:冷静で頭のきれる、天才パイロットだそうです。」

黒井ミサ

「エヴァだとアスカさん?。」

SOU

「結構違うような気もするのですが、まあいいや続けます。

ダイゴと違って訓練校を主席かなんかで卒業したのかな、たしか。

パイロットの腕を買われてGUTSに入隊、気が強いのだが結構一途なひと。

雰囲気てきには、少しぽーっとしたブレードのアキさんかなー。」

黒井ミサ

「それなら、わかりやすいかもね。」

「3.ムナカタリーダー、ホリイ、シンジョウはGUTSのメンバーで、副隊長を

リーダーっつとります、戦略家だそうですが、怪獣物なんでそのへんはあまり現実と

比べないように、ホリイは科学者さん、イデ隊員みたいなものですね、まるっこい体型と

顔に似合わず、結構かっこいい役回りがきます。

シンジョウ隊員はパイロットです、射撃の名手だそうですが、よく墜落します。

熱血なおにーさんですね。

4.イルマ・メグミ隊長、この人はなんか異星人とのコンタクトのプロだとか。

冷静沈着な、女性隊長でいやー一度は顎で使われてみたい。

酒に強いのですが、どんなに飲んでも乱れないというつわものであるそうな。

子持ちです。

5.ヤズミ隊員最年少隊員です、コンピューターの天才だそうですがよくわからん。

ジャニーズJrがやってまして、結構メインで話をもらっているんですね。

泣ける話がおおいですよ。」

黒井ミサ

「年の所為か涙もろくなったのね。」

SOU

「ちがいます、で武器なんぞの説明。

シャーロックは高速戦闘車両です、ベース車はカマロで後ろにでっけー大砲を搭載、

ガッツウィング1号は小型戦闘機、平べったいデザインです、エクストラジェットは

最終回見たかたには説明が簡単なんですけど、ウルトラホーク1号を角張らせた

デザインにして、赤く塗って、先端部分だけ分離させる。

で、アートデッセイは宇宙母艦ですな、大気圏内でも輸送機として活躍します。」

アスカ

「あとは、まあわからない所はないわね。

大体想像つくし。」

SOU

「では、丸山さん今後もがんばってくださいね。」

黒井ミサ

「ふっ。」





souさんへの感想はこちらへ


お姉さん「わーうるとらまんだーなつかしいなー」

管理人 「ちゃうちゃう、懐かしいのじゃなくて、今までやってたやつ!」

お姉さん「えー、じゃあすぺしうむ光線とか、あいすらっがーとか、そういうのはないんですかー?」

管理人 「お姉さん、ずいぶん偏った知識だね」

お姉さん「いえ、ウルトラ大百科とかそういうのを読んでいると」

管理人 「何で読んでるんだそんなん」

お姉さん「昔の話ですよほえ〜あ、キングハンマーなんかはでてこないんですか?」

管理人 「知ってる奴は少ないぞそんなの・・・汗」

お姉さん「そんなもんなんですか〜」

管理人 「とと、とりあえずsouさん、50万ヒット記念、ありがとうございます。

お姉さん「最近思うんですけど〜」

管理人 「ん?」

お姉さん「トラペゾヘドロンとか、なんでああ舌をかみそうな名前が多いんですかね〜」

管理人 「なんだ、そんなことか。理由は簡単なことだよ」

お姉さん「なんですか〜?」

管理人 「難しいほうが、「あ、なんかわからないけどすごいんだ〜」って思えるじゃないか」

お姉さん「むー。・・・・そうすると、私はだまされてるんですか?」

管理人 「だまされて・・・・って・・・・」

お姉さん「この本小説は題名は難しいけど、その分中身はぎっちりだから、っていって勧められたのに、難しそうだから「すごいんだ」ってだまされてるんですか?」

管理人 「・・・・『And live in the world forever』・・・自分のページの小説にだまされて、どうするっちゅうねん〜!」




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