アスカの果てしなき妄想

エデンの黄昏 130000HIT記念 その弐


「かわいいアスカちゃん」



 コンコン・・・カシュッ

 ジューーーーーーーーーー・・・


 アタシは、軽やかにフライパンを振るう。
 今作っているのは、ハムエッグ。これは、まだ部屋で寝ているシンジの分よ。
 でも、そろそろ起きてくるはず。ちゃんと、分かってるんだから。

「おはよう、アスカ。」

 ほらね。

 シンジが、輝くような笑顔で朝の挨拶をしてきた。
 だから、アタシも笑顔で答えるの。

「おはよう、シンジ。」

 シンジが椅子に座るのと同時にハムエッグも出来上がった。
 それを、丁寧にシンジの前の皿へ盛り付ける。
 時間ぴったり。出来立てのホヤホヤ。
 アタシの分は、すでに出来上がっているのよね。
 だから、少し冷めてるけど、シンジには暖かいやつを食べて欲しいから。

 そして、アタシもシンジの隣の席に座って、二人きりの朝食が始まる。
 こうやって、朝の輝く光に包まれながらシンジと二人で朝食を口にするのが、
朝の日課。

 誰にも邪魔されることのない、二人きりの時間。


「おいしいよ。やっぱり、アスカの作るハムエッグは最高だね。」
「ありがとう、シンジ。」

 毎朝、こうやって誉めてくれる。
 やっぱり、こうやって好きな人に誉めてもらうと、それが何回でも嬉しいわね。

 なんだかねぇ、巷では、アタシが料理が出来ないなんていう噂があるけど、
ちゃんと出来るのよ。それに、掃除も洗濯も。家事をシンジだけにやらせて、
アタシはグータラしてるだけなんて、とんでもないレッテルを貼られちゃって
迷惑してるんだから。
 考えてもみなさいよ。アタシが出来ないなんてことあるはずないじゃない。

 アタシは、きつね色に焼けたパンにジャムとバターを塗ってシンジに渡す。

「はい、シンジ。」
「ありがとう。」

 シンジは、そのパンをおいしそうに食べる。
 あ、シンジの口の端にジャムが付いてる。

「シンジ、ほっぺたにジャムが付いてるわよ。」

 シンジは人差し指で頬を擦る。
 でも、的外れなところを触ってるから、全然取れてない。

「そこと違うわよ。」
「え?この辺?」
「もう、しょうがないわね。アタシが取ってあげる。」

 チュッ!

 もどかしいから、アタシが取ってあげた。もちろん、唇で。

「あ、ありがとう。」

 ふふふ。シンジったら、少し赤くなってる。

「ねえ、アスカも付いてるよ。」
「じゃ、シンジが取ってよ。」

 そう言って、アタシはほっぺたを差し出す。

「嘘だよ。」

 ああ、酷い、騙された。
 悔しいから、わざとほっぺたにジャムを付けてっと・・・

「ほら、付いてるわよ。」
「しょうがないなぁ。」

 チュッ!

 シンジが取ってくれた。
 こうやって、ちょっとしたわがままを聞いてくれる。

 なんだかねぇ、巷では、アタシが無理難題をシンジに押し付けて言うことを
聞かせてるなんて噂があるけど、そんなのは、みんなデタラメよ。
 アタシは、こういう可愛いわがまましか言わないんだから。



 って、言ってる間に朝食が終わっちゃった。
 支度をして学校に行かなくちゃね。

 シンジは、起きてきたときには既に制服を着ているから、部屋にカバンを取
りに行くだけ。
 でも、アタシは女の子だから、身だしなみを整えないといけないの。

 ドレッサーに座って髪を梳かしたりする。
 リップを塗って、鏡の自分に向かって軽くウィンク。
 我ながらうっとりするわ。これで、男の子の視線は、アタシに釘付けね。
 って、そんなのはどうでもいいのよ。一番の目的は、シンジによそ見させな
いこと。これに尽きるんだから。

 アタシは部屋を出て玄関へ向かう。
 そこでは、シンジが待っていてくれた。

 ちゃんとこうして、アタシが来るのを待っていてくれるのよね。

「さ、行きましょ。」

 アタシは、そう言ってシンジの手を握って、引っ張るように玄関を出る。
 そして、そのまま学校へ。
 もちろん、手は離したりなんかしないの。シンジも、もう慣れちゃったのか
全然嫌がらない。それどころか、シンジの方から手を握ってきてくれることも
あるのよ。
 こうして仲良く手を繋いで登校するようになってから随分と経って、みんな
も慣れちゃったのか、いちいち見なくなった。
 アタシとシンジの仲を見せ付けてやりたいっていう気持ちもあるから少し残
念だけど、でも、そのお陰でシンジも手を握ってきてくれるようになったんだ
し、これでいいかな。

 なんだかねぇ、巷では、アタシが無理矢理にシンジの手を握ったり腕を組ん
だりしてるっていう噂があるけど、そんなことないのよ。
 シンジは、ちゃんと喜んでくれてるんだから。

 あ!ファーストが前を歩いてる。
 ちょっと、歩くスピードを速めて、ファーストに追いつく。

「おはよう、ファースト。」
「あ、惣流さん。おはよう。」

 こうやって、ファーストと、ごく自然に挨拶を交わす。
 ファーストが、シンジの隣に並んだ。シンジは、アタシとファーストに挟ま
れる格好になっている。
 この子も、シンジに気があるから、こうやってシンジの隣を貸してあげるの。

 なんだかねぇ、巷では、他の女の子がシンジに寄ってくると、アタシが目く
じらをたてて邪魔するなんていう噂があるんだけど、そんな了見の狭い女じゃ
ないのよ。
 それに、アタシとファーストは険悪な仲だなんて言ってる人がいるようだけ
ど、本当は仲が良いんだから。なんたって、同じエヴァのパイロットなんだも
んね。



 そんなこんなで学校に到着。
 そして、校舎へ入る。
 さすがに、上履きに履き替えないといけないから、ここでアタシとシンジは
手を離す。
 でも、ずっとこうしていたいな・・・。
 よし、手を繋いだままでいよう。

「アスカ、手を離してくれないと、上履きが履けないよ。」
「だって・・・。」

 少し顔をふせて上目遣いにして、おねだりするような目をシンジに向ける。
 シンジが、ちょっと困ったような表情になった。

「ねえ、学校が終わったら、また手が繋げるんだから。ねっ。」
「・・・うん。分かった。」

 シンジに諭されて、しぶしぶ手を離す。
 これ以上、駄々をこねて嫌われたらイヤだもんね。

 そして、アタシは自分の下駄箱の扉を開ける。

 ドサドサ

 アタシにはシンジがいるっていうのに、まだラブレターを出してくる人がい
るのよね。もっとも、今では、ファンレターみたいなものだけどね。
 アタシは、それを持ってきた袋に詰めるの。家に帰ったら目を通すのよ。

 なんだかねぇ、巷では、アタシが片っ端からゴミ箱に放り込むっていう噂が
あるけど、そんなことはしないわ。だって、せっかく書いてきてくれたんだか
ら、読まないと失礼でしょ。

 あ、シンジが複雑な表情で見てる。
 ふふっ、妬いちゃってるのかな。大丈夫だから、安心していればいいのに。



 上履きに履き替えて教室へ。

「おはよう、アスカ。」
「おっはよう!ヒカリ。」

 席に着くと、ヒカリが来た。

「ねえねえ、昨日のドラマ、面白かったね。」
「あれでさぁ・・・」

 早速、昨日のTVのドラマの話を始める。
 いつの時代も、乙女は恋愛ドラマに目が無いのよ。

 その話しもひと段落して・・・

「ところで、鈴原とはどうなの?」

 アタシは、小声でヒカリに尋ねる。

「う、うん。今は、お弁当を食べてくれてるから。もう少ししたら・・・ね。」
「もう少しもう少しって、いつになったら鈴原に言うのよ。」
「だ、だって・・・。私、アスカみたいに出来ないし。」
「ダメよ、もっと素直にならなきゃ。そのうち、取り逃がしちゃうわよ。」

 アタシは、こうやってヒカリの相談役になってあげるの。

 なんだかねぇ、巷では、ヒカリがアタシの相談役だっていう噂があるけど、
違うのよ。アタシは、そういう方面では先輩なんだから。だから、こうやって
色々とアドバイスをしてあげてるの。



 朝のHRが終わって授業が始まる。

 まあ、アタシは大学を出てるから、中学の授業なんてどうでもいいんだけど。
でも、真面目に授業を受けてるのよ。こうやってノートも取ってね。見てよ、
この美しい字。漢字も覚えたし、字だって上達したんだから。

 なんだかねぇ、巷では、授業中は居眠りしてるだとか、シンジにちょっかい
を掛けて苛めてるとか、字がメチャクチャ下手だとかいう噂があるけど、そん
なことあるはずないじゃない。
 ホント、失礼しちゃう。



 さて、そんなこんなで、お昼休み。

 アタシは、持ってきたお弁当をシンジに渡す。もちろん、アタシの愛情がた
っぷり篭った手作り弁当よ。
 そして、ヒカリたちと一緒に食べる・・・って、あれ?シンジが、お弁当を
持ってファーストのところへ行っちゃった。
 なにか話をしてる。どうしたのかな・・・。
 あっ!お弁当をファーストに渡して戻ってきた。

「ごめん、僕、パンを買いに行くから、先に食べててよ。」
「え?!ちょっと、シンジ・・・。」

 行っちゃった・・・。

 なんで?どうして?
 ファースト・・・アタシがシンジに作ったお弁当を食べてる。
 きっと、なにか訳があるのよね。

 でも・・・イヤ。

 せっかく、シンジのために作ってきたお弁当が、他の女の子に食べられるな
んて。それも、寄りにも寄って、ファーストに。
 ダメダメ、嫉妬なんかしちゃ。

 でも、やっぱり、イヤ。
 もしかして、シンジ・・・ファーストのこと・・・。
 いえ、そんなことあるはずないじゃない。ダメよ、信じなきゃ。

 でも・・・ううぅ・・・。やだ、どうしよう、涙が出てきちゃったよ。

「あ、アスカ、どうしたのよ。」

 ヒカリが、心配して声を掛けてきた。

「ううん、なんでもないの。」
「なんでもないって言ったって・・・。」

 早く泣き止まなきゃ、シンジが戻ってきちゃう。
 ああ・・・どんどん涙が出てくる。止まんないよぉ・・・。


「アスカ、どうしたの?」

 あ、シンジが戻ってきちゃった。

「どうも・・・しない・・・。」
「どうもしないのに、泣くわけないだろ?訳を話してよ。」

 優しいシンジの声。
 どうしようかな。話そうかな。でも、嫌われちゃうかもしれない。

「ねえ、僕には、言えないの?」

 そう、大丈夫よ。シンジなら、きっと分かってくれる。

「シンジが・・・ファーストに、お弁当渡したから・・・。」
「ああ、ごめん。綾波が、財布を忘れてきたって言うから。それで。」

 ・・・・・・そういうことだったの。

 そうよね。シンジが訳も無く、そんなことするわけないもんね。
 ファーストに自分のお弁当を渡して、それで、自分はパンを・・・。
 やっぱり、アタシのシンジは優しい。

 でも、アタシったら、ほんの少しでもシンジのこと疑っちゃって。
 謝らなきゃ。

「ごめんね、シンジ。」
「え?なにが?」
「アタシ、嫉妬しちゃったの。シンジのことだから、きっと訳があるはずなの
 に、なのに・・・。ごめんね。ごめんね。」
「いや、気にすることないよ。僕が、ちゃんと、訳を話してればよかったのに。
 僕の方こそ、ごめんね。」

 シンジ・・・本当に優しい。
 その優しさに包まれて、アタシの心が暖かくなってくる。

 なのに、アタシは、嫉妬して・・・。

「アタシって、嫉妬深いイヤな女でしょ?嫌いになっちゃったでしょ?」
「そんな、嫌いになんてなるわけないじゃないか。そういうアスカって、すご
 く可愛いよ。」
「本当に?」
「うん。本当に。」

 やだ・・・また涙が出てきちゃった。嬉しいのに。止まんないよ。

「さ、食べよ。」
「うん。」



 午後の授業も終わり、夕方のHRも終わった。

 アタシとシンジは、一緒に家に帰る。
 もちろん、手を繋いでね。

 途中で、スーパーに寄って仲良く買い物。
 今日の夕食は、シンジの当番。

 家に到着すると、アタシとシンジは着替えをする。
 そして、シンジは夕食の準備に取り掛かる。
 アタシは、キッチンテーブルの席に座って、料理をするシンジを見つめるの。
 だんだん出来上がってきたところで、お皿を出したり、盛り付けを手伝った
りして。

 なんだかねぇ、巷では、シンジが料理をしているとき、アタシは寝転がって
TVを見てるとか、早くしろ!って怒鳴って急かしたりとかいう噂があるけど、
そんなことしないわよ。
 こうやって、甲斐甲斐しくお手伝いをしてるんだから。

 やがて、料理が出来上がって夕食が始まる。

 シンジと、今日の出来事とかの話をしながら、二人きりの食事。
 やっぱり、シンジの作った料理は最高ね。
 これを、一人占めできるなんて、アタシは果報者ね。


 あれ? シンジがアタシのこと見つめてる。

「ねえ、どうしたの?」
「いや、アスカって、ニンジンとピーマンが嫌いだったのに、今では、ちゃん
 と食べてるから、すごいなって思って。」

 嬉しい。そんな些細なことでも、アタシのことを想って見てくれるのね。

 なんだかねぇ、巷では、アタシがニンジンとピーマンが嫌いだなんていう噂
があるど、ちゃんと食べられるのよ。
 実を言うと、前は食べられなかったんだけど、頑張って克服したのよ。アタ
シは、努力する女なんだから。

 あっ、そうだ。いいこと思い付いた。

「頑張ったでしょ。だから、ご褒美ちょうだい。」

 そう言って、アタシは目を閉じる。

 シンジもすぐに、それがどういうことだか分かったみたいで、アタシの肩に
手を回してきた。
 こうして目を閉じていても、シンジが近づいてくるのが、手に取るようによ
く分かる。

 トクン・・・・・・トクン・・・・・・トクン・・・トクン・・・トクン

 だんだん、鼓動が高鳴ってく。

 トクン・・・トクン・・・トクン・トクン・トクン・トクン・トクン・トクン

 ああ、ドキドキして胸が張り裂けそう・・・。





 ・・・ピピピピ・・・ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ

 ハッ!

 なに、この音。ああ、目覚し時計か・・・。
 って、なによ!今のは、全て夢なの!!
 あ〜あ、もう少しでシンジとキスできたのに・・・。

 って、言っててもしかたがないから、起きようかな。
 あっ!バカシンジのやつ、起こしに来なかった。職務怠慢よ!!キツく叱っ
てやらなきゃね。

 アタシは、ベッドから跳ね起きて部屋から出る。
 そして、シンジを怒鳴り付けるべく、キッチンへ飛び込んでいく。

「バカシンジ!!なんで、起こさないのよ!!」

 って、あれ? シンジがいない。

 ミサトが、ひとりでビールを飲んでる。まったく、酔っ払い女が。よく考え
たら、毎日酔っ払い運転してるんじゃない。警察はなにしてんのよ!

「シンちゃんなら、先に学校に行ったわよ。」
「ええ?!なんでよ!」
「昨日の夜、喧嘩したからでしょ。」



 ああ、そうだ。

 ニンジンとピーマンを食べる食べないで、大喧嘩したんだった・・・。



             − つづく −      わけ無いってば

----------------------------------------------------------------------
後書き

 作者:ラブラブだぁ!!
アスカ:確かにラブラブね。
 作者:なんか、あんまり嬉しくなさそうですね。
アスカ:ふふふふふ・・・。嬉しいと思う?
 作者:変だなぁ。喜んでもらえると思ってたのに。でも、これで、「レイの
    1日」と相殺されてチャラですね。

 バキグシャッ!!

 作者:ふええええ。
アスカ:なにが相殺よ!!キスして終わってれば良いものを、こんな落ちにし
    ちゃってえ!!相殺どころか、おじゃま●よ てんこもりよ!!
    すっかり、「可愛いアスカちゃん」なんて題名に騙されたわ。
 作者:いちばん可愛いのは、ラストのアスカ様なんですよ。
アスカ:え?ラストのアタシ・・・。あの喧嘩してたの思い出して茫然とする
    アタシが?
 作者:そうですよ。あの夢の中のアスカ様みたいな子は、ただ鬱陶しいだけ
    ですから、付き合っても10日も経たずに別れてしまいますよ。
アスカ:ってことは、やっぱり、シンジはアタシじゃないとダメってことね。



杉浦さんへの感想はこ・ち・ら♪   




アスカ様とその下僕たちのコメント

カヲル「っだああああ!! 何だこのコメントのタイトルは!!」
作者 「さっき、アスカちゃんがペンキ持ってきてかってに書き換えていきました」
カヲル「どうして止めなかったんだい?」
作者 「この顔の痣を見て、まだそれをいうかね」
カヲル「・・・・・わかったよ。そういうことだね」
アスカ「ほーっほっほ!! さあ、あたしの下僕たち!」
カヲル「出たね、自称世界の女王」
アスカ「だれが自称よ!!」
カヲル「だれか認めているかい?」
アスカ「この世の中のすべての人間がよ!」
カヲル「・・・・そういう事を言うから、君に関する「上で君自身が言っているような」
    うわさが流れるんだね。あながちうそとも言いきれないじゃないか」
アスカ「あれは杉浦が流す怪文書よ! アタシ自身はまったく知らないの!
    ・・・・そう、完璧な人間はいつも妬まれるものだから・・・・」
作者 「げー」
 ごすっ
アスカ「何かいったかしら、丸山さん?」
カヲル「・・・・いまは何も言えない状態だね、彼は・・・・」
アスカ「まったく、あたしが乱暴だとかそんなうわさが流れるのも、ぜーんぶこいつのせいなのかもしれないわね。
    いい機会だから、そんな事が二度とできないようにしてやりましょ」
 どかぐしゃべきべきべき・・・・
カヲル「あーあ、あんなにマサカリ振り回して・・・・汗」


上のぺえじへ