Welcome外伝外伝
移ろい行く日々〜第1話〜
出逢いは、いつも突然に





ゴールデンウィークを翌日に控えたその日。
六分儀ゲンドウは、買い物の帰りだった。
両手一杯に紙袋とビニール袋を絶妙のバランスで抱えていた。

明日から休日だというのになぜ?

その疑問は当然だろう。
連休となれば、2人分の弁当を作る必要はない。
それなのにいつもと同じ、いや、いつも以上の食材を買い揃えたのは、
「目的の為には手段を選ばず、選んだ手段に目的を忘れる」という、
彼の難儀な性格に起因している。

今のバイト(居酒屋の板前)にすっかりはまり込んだ彼は、
まとまった休みには料理の研究に没頭するのが、ここの処のパターンだった。
懐具合が怪しいため、出来得る限り安い食材から究極の1品を!
それが彼の至高の目標だった。
何しろ、『めざせ!アイアンマン!!』である。
すっかりその気の彼が、全ての調理に1時間の時間制限を設けているのは、
かわいいと言うか、若いと言うか、・・・・表現に困るものである。

おかげで連休中はヒナが入り浸るコトになり、
彼にとっては少々うっとうしい。
食べるコトと寝るコトに青春の半分をかけている彼女が、
こんなおいしい話を見逃す訳がない。

「審査よ、審査」

そう言っては、丹誠込めた逸品の数々を食べ散らかし、
何だかんだとエラソうな批評を下してくれる。

(後片づけする者の身にもなってくれ〜!!)

決して口にするコトの出来ない叫びがゲンドウの心の中でこだまする。
結局、普段の2倍は時間をかけての後片づけとなる。

これまでにも何度となく出現した、
そして明日も確実に再現される台所の惨状思い浮かべ、
ゲンドウは深い深いタメ息をついた。
その様子がすっかり絵になってしまっているのが、何とも哀しい。


ゲンドウが彼女に気付いたのは、落ち込んだ気分を浮上させるため、
いつもと違う道をまばゆい新緑の繁る並木を眺めながら歩いていた時だった。
クラス委員のパートナーである碇ユイが、
こちらも何やら大きな荷物を抱えているのが見えたのだった。

彼女の私服姿を見るのは始めてではないが、どこかいつもと違って見える。
不思議に思いつつ、まじまじと見つめてようやく思い当たった。

普段はどちらかと言えばタイトな服装を好む(と思われる)ユイが、
ふわふわ、ひらひら、としたワンピース姿なのだ。
いつもにこにこと笑顔を絶やさない一方で、
クラス委員としての責任は何があろうとしっかり果たす。
1本芯の通った彼女のイメージとは何処か違和感を感じてしまう。

(へェ〜、碇さんでも、あんな服・・・・着るんだ・・・・)
(でも、・・・・ああいうのも、似合うな。彼女)
(美人は何着ても、カッコいいなぁ〜)
(でも、ヒナが着たら・・・・お笑いだな)

最後の独白を本人が聴こうものなら、第2新東京市中に血の雨が降るコトだろう。
もちろん、それを一番良く心得ているのは彼自身。
だから、決して口にはしない。
そんな台詞は既に4桁の大台に乗ろうかという勢いで彼の中で増加中だ。

そんなバカなコトを考えている間に、声が届く範囲に近づいていた。
一瞬の逡巡の後、ゲンドウは彼女に声をかけていた。

「い、碇さん、ぐ、偶然だね。買い物?
 それ、重そうだね。手伝おうか?」

彼女の腕の中には紙袋とそれに何やら一杯詰め込まれたモノで一杯だった。
どうにも収まりが悪いのか、今にも袋が破けてしまいそうだった。
それに気付いての台詞だったが、考えれば自分も似たような状況だ。
実際には手伝いようもないだろう。

(バカだな、俺・・・・)

彼女の目にはとんでもない間抜けに映ったコトだろう。
そう考えると、自嘲ぎみの苦い笑いが浮かんでくる。
柄でもない台詞を口にした自分がイヤになる。

そんなゲンドウの内面の葛藤など知らず、
彼女はただじっとゲンドウの顔を見つめていた。
澄み渡ったつぶらな瞳は魂の奥まで覗き込まれる様な気がする。
何か居たたまれなくなってしまう。

もそもそと、ゲンドウは身じろぎする。
すると突然彼女は真っ赤になって俯いてしまった。
不躾な視線でゲンドウを見つめていたコトを恥入っているかのようだった。
これにますますゲンドウは慌ててしまった。

碇ユイとは思えない反応−−−
霧島ヒナが絶対見せない反応−−−

女の子にこんな反応を返されたのは初めてだった。
ゲンドウが収拾不能の混乱状態に陥ってから、
たっぷり5分は経った頃、ようやく彼女がぽつりと一言口にした。

「誰?・・・・」

真っ赤になりながら、消え入りそうな声で、ようやく彼女の声が響いた。
だがそれは思いも寄らなかった言葉だった。
ゲンドウはかつてない程衝撃を受けた。
自分でも不思議なくらい激しい衝撃を受けていた。

(この間のコト(ヒナの胸触った事件)、まだ怒っているのかな?)

まず、それしか頭に浮かばなかった。
となると、ゲンドウに出来る行動は、もはや弁明しかなかった。
もともと豊富とは言えない語彙の粋を尽くし、
懸命に言い訳を並べ立てる彼の姿は傍目には滑稽の2文字でしかなかった。
とは言え、本人は必死だった。
一度学校で披露した言葉の繰り返しだというコトにさえ気付かないくらいだ。


ゲンドウの独演会は10分近くに及んだ。
さすがに息が切れてしまった瞬間を選んで、
彼女は紅潮した顔を隠すよう口元に軽く手を当てたまま、一言。

「私、あなたのコト知らない・・・・」

目の前が真っ暗になった。
比喩表現としてではなく、本当に真っ暗になった。
ゲンドウは絶望の底へと突き落とされた。


と、その時だった。

「あら、どうしたの? 六分儀君?」

いつものやわらかなユイの口調だった。
しかし、耳に届いたのは後方から。
不思議に思いつつも声の方に向き直ると、
白のブラウスに新緑色の薄手のジャケット、ジーンズ地のスカート。
そんないつもの出で立ちで碇ユイが立っていた。

「え? い、碇さん・・が・・二人・・・・?」
「姉さん・・・・」

呆然としたゲンドウから洩れた声に、ワンピース姿の彼女の呟きが重なった。
それまでの様子からは考えられない素早さで、
彼女はユイの後ろに隠れるように滑り込んだ。

「ケイ、どうしたの? あなた」
「連休・・・・寮が改修なの・・・・」

それっきり口を閉ざすケイ。
タメ息混じりのユイ。

「・・・・それで追い出されたって訳?」

ユイの言葉にケイは黙ったままこくりと頷いた。

「だったら、連絡の1本位入れなさいよ」
「・・・・」
「こっちにだって都合があるでしょう?」

再び黙ったままこくり。

「まったくしょうがないんだから。ゴメンね、六分儀君」
「い、妹さん・・・・いたんだ」
「あれ? 言ってなかったかしら? 私達双子なの」
「一卵性?」
「そう。・・・・やっぱり似てる?」
「ああ・・・・。全然判らなかった」
「この娘、どうしてもおばあさまの学校へ行くの嫌だって言って、
 他の学校行ってるの」
「へ、へぇ〜」
「昔から絵を描くのが好きだったから、美術科のある高校なの」
「え? 遠くない?」
「うん、だからこの娘、寮に入ってるの」
「そうなんだ」

妙に感心した表情でゲンドウはケイの方に向き直った。
彼女は、やはり頬を朱に染めたまま、こくりと頷いただけだった。

「まったく無愛想なんだから・・・・。ゴメンね。赤面症なの、この娘」
「い、いや・・・・。で、でも、凄いね」
「何が?」
「今から好きなことに打ち込んでるなんて」
「そんな大層なことじゃないの。単に反抗してるだけなんだから」

(身内には随分辛辣なんだ・・・・碇さん)

「で、何? その大荷物」

今にも破れそうな紙袋を見つめながらユイが尋ねる。
もっとも答えは知っているけどネ、ユイの顔はそう言っていた。

「絵の具・・・・」
「はぁ・・・・。また買ったの?」

こくり

「で、着替えは? 1週間はこっちにいるんでしょ?」
「・・・・ない」
「はぁ・・・・。ホント、しょうがないんだから。
 それじゃあね、六分儀君」
「あ、ああ」

紙袋を1つ奪うように取り上げると、ケイの背中を押すようにしてユイは歩き出した。
これまでにも様々な彼女の異なる面を覗いてきたと思ったが、
まだまだゲンドウの知らない彼女がいるようだ。
まぁ、女性を理解するなど男の思い上がりに過ぎないのだが。

呆気に取られたまま、ゲンドウは二人を見送っていた。




ゴールデンウィーク初日

突然ユイから電話があった。
彼女からの電話など始めてだったから、すっかり緊張してしまった。
声がうわずるのを押さえ切れない。

ひょっとしたら、デートのお誘いか?

誰がどんな目で見ようと健全な青少年であるゲンドウが、
そんな甘い幻想を抱いたとしても無理はないだろう。
議論の分かれる処かもしれないが、一応青春のど真ん中にいるハズなのだから。

「ど、どっどど、どうしたの? 碇さん?」
「どうしても出かけなければならないの。
 それでとっても悪いんだけど、ケイの面倒見てくれない?」
「へ?」

相も変わらずゲンドウの意表を突いてくれる言葉に、
ゲンドウは芸もなく、いつもの反応を返すのみだった。

「あの娘、夕べから新しい絵を描き始めたの」
「は、はぁ・・・・」
「だから、お願い」

さあ、これで解ったでしょ?
そんなユイの口調にますます混乱してしまう。
それでもここの処、暴走グセがついたせいか、さほど時間を置かずに立ち直れた。

「き、君が何を言っているのか解らないぞ」
「あの娘、描き始めると日常的なコト、み〜んな忘れちゃうの。
 食べるコトも、寝るコトも。誰かが面倒見てあげないと・・・・」
「だから、どうして俺が・・・・」
「だって、六分儀君料理上手じゃない」
「そ、そりゃあ・・・・」

料理は彼にとって今や大切なアイデンティティーの1つだった。
いや、レーゾンデートルだった。
それを否定するコトなど言葉の上だけでも不可能だった。
そんな一瞬を捉えて、ユイがトドメを刺した。

「あ、もう行かなきゃ。それじゃ、お願いね」
「ちょ、ちょっと! 碇さん!!」

ッー、ッー、ッー・・・・

ゲンドウのこめかみを冷たい汗が1筋流れた。




「ご、ご免下さい・・・・。い、碇・・さん・・・・?
 あの、誰か・・いらっしゃいません?」

恐る恐る声をかけるが、まったく反応が無かった。

碇家は第2新東京市の郊外、街を見下ろせる丘の上に建っていた。
それはゲンドウの基準から言えば、まさに御殿!だった。
その見事に立派な門構えにすっかり気圧されながら、
ゲンドウは呼び鈴を鳴らし、インターホンに向かって話し掛けている。

結局ユイの強引なお願いを無視するコトが出来ない小心さが彼にはあった。
未だ御対面していない彼女の怒りの面に脅えつつ、
クラス名簿を頼りにここまでやって来たのだった。
その時、彼の料理をアテにしているヒナのコトや、
孫煩悩は人千倍と噂される理事長・碇トキのコトはすっかり頭から抜け落ちていた。

すでに50回はピンポンのラリーを続けたはずだった。
しかし、返事はなしのつぶて。

(や、やっぱり、碇さんの冗談だったんだ)
(お、俺、からかわれただけなんだ)

自己欺瞞にようやく成功し、碇家の門に背を向けた時、
カチャリ、とロックがはずされる音が聞こえた。

(げ、幻聴だよ、幻聴。はは、疲れてるのかな?俺)

ひきつった笑いを浮かべながら、現実逃避を続行する。
しかし、現実は無情だ。
キィーーー、とわずかな音を立ててドアが開くのが気配として感じられた。

ゴクリと、唾を飲み込む。
何かに祈るような面持ちで目を閉じる。

静寂が辺りに満ちる。

「・・・・誰?」

それは昨日耳にしたユイの妹・ケイの声に間違いなかった。
昨日とはうって変わって、黄色のトレーナーにジーンズという、
ラフな装いだった。
昨日の会話から推測すれば、おそらくユイの服を借りたのだろう。

(やっぱり、美人は何着ても似合うんだなァ〜)

自分のおかれた立場も忘れ、のほほんとそんなコトを考えていた。
しかし現実に戻れば、ゲンドウは大きなタメ息を1つつくと、
いつものように「諦め」と共に現実を受け入れるコトにした。

「え・・とォ。俺・・・・あ、あ。ぼ、ボクは六分儀ゲンドウ。
 昨日逢ったよね?
 その、碇さん・・・・と、と。お姉さんのクラスメートなんだ。
 で、クラス委員なんだ、2人とも。
 それで・・そのォ・・・・なんと言ったらいいのか・・・・
 さっき、碇さん・・・・お姉さんから電話があって、
 その、き、君の食事、・・作ってくれって頼まれたんだ」
「ごはん?」
「そ、そう。き、君が絵を描き始めると食事もしないって、
 碇さん・・・・お姉さん、心配してて・・・・
 今日はどうしても出掛けなきゃいけないから、
 それで、お、俺・・ボクのトコにお鉢が廻ってきたんだ。ハハ」

普段からは考えられない饒舌さを発揮するゲンドウだったが、
何処か上滑りしているような気がした。
何だか凄く間抜けなツラをしてるんじゃないかと、情けなくなってきた。

「・・・・」
「それで、あのォ・・・・。け、ケイ・・さん。お昼、済んだ?」

相変わらず黙り込んだままのケイにゲンドウは最後の祈りを込めて尋ねた。

(どうか、食事済んでますように!)

その願いは当然天に届いていた。
そして、いつものように天は逆の目を振り出してくれる。
この事実に彼は未だに気付いていなかった。
それはゲンドウにとって幸福なコトだろうか?
果てしなく不幸なコトだろうか?

「・・・・まだ・・・・」
「そ、そう・・なんだ・・・・」

もう一度タメ息をつく。
そして、全てを受け入れる。

そうと決まれば、暗い顔をしていてもつまらない。
せっかくなら、最高の腕を振るって、彼女を唸らせてやる。
碇さんの妹さんだ。
笑ったら・・・・かわいいだろうな。

すっかり割り切ったゲンドウは、とっておきの笑顔を彼女に向けた。

「それじゃあ、台所どこ? 何か食べたいモノ、ある?
 何でもリクエストしてくれていいよ。
 最ッコーの料理、作ってあげるから」




碇家の台所は、その外見に劣らず立派なモノだった。
とても個人宅とは思えない器具が取り揃えてある。
バーナーなど、完璧業務用だった。

後でユイに聴いたのだが、何でも亡くなった祖父、
つまり現理事長の夫という人がとんでもない凝り性で、
その多彩な趣味の1つが料理だったとのコトだった。
それに仕事柄来客も多く、客をもてなす為にも必要だったという。


何はともあれ、これ程立派な台所に、ゲンドウが魂を奪われたのは無理もなかった。
そして、時間の経つのを忘れた。
ひたすら包丁が舞い、中華鍋が踊った。
そして、彼女の、碇ケイの笑顔を始めて目にするコトが出来た。
おずおずと、どこか遠慮するような笑みだった。
それでもゲンドウは、えもいわれぬ幸福感に包まれた。

それから、何処をどう気に入ってくれたのだろうか?
ぽつぽつとケイは、学校のコト、絵について、果ては将来の夢まで、
ゲンドウに語ってくれた。
これでますます有頂天になったコトを非難できる者がいるだろうか?


その時、玄関の方が何やら騒がしくなった。


「あ〜、疲れた。明日の服買うだけのつもりだったが、こんなになって」
「お祖母さまが無計画すぎるんです」
「そんな、年寄りの数少ない趣味をそんな風に言わないで。ネ、ユイ」
「何言ってんですか。お祖父さまと2人で、趣味の博物館って言われてたクセに。
 すみません、冬月先生。まるまる1日お付き合いさせちゃって」
「い、いや、気にせんでくれ。ユイ君。どうせ暇だったコトだし・・・・はは」
「ほら、言ったでしょ。冬月君は喜んで付き合ってくれてるんだから」
「お祖母さまっ!!」


そんな喧噪が近づいてくる。
それは分かっていたが、ゲンドウはどうしても身体を動かすコトが出来なかった。
まるで蛇に魅入られたカエルの如く、指先1つ動かせなかった。
碇ケイはそんなコトには無頓着に、
ただ幸せそうにゲンドウの作った食事を頬ばっていた・・・・


居間に足を踏み入れた碇トキは、その視覚に飛び込んできた情報に戸惑っていた。

(1)最愛の孫娘の1人が座っている。
(2)我ヶ校の男子(!)生徒が紛れ込んでいる。
(3)この家には他に誰もいない。
(4)コイツはユイにもちょっかいを出している。
(5)それどころか、他の女生徒にも・・・・。

以上の事実から、導き出される結論は・・・・。


なぎなたが煌めき、鏑矢が飛び交い、火縄銃が吼える。
そんな阿鼻叫喚の様を直視し、ようやく自宅に帰り着いた六分儀ゲンドウ。

「なんで、俺がこんな目に合わなきゃならんのだ?」

深刻な自問を呟くゲンドウだったが、自答出来るわけなどなかった。
例え出来たとしても不愉快な結論に達するに決まっている。

何気なく上着のポケットを触ると、カサッと音がした。

おや?

そう思って中を探ると1片のメモが入っていた。
そこには、こう書かれていた。

『どうもごちそうさまでした。
 とってもおいしかったです。
            K 』

やわらかで丁寧な字。
そして彼女の細やかな心配り。
ゲンドウはとても満ち足りた気分になっていた。


そんな六分儀ゲンドウを待ち受けていたのは、さらなる脅威であった。

「ただいま〜、っと言ったって、誰もいないか・・・・」
「〜〜〜っ!! お腹空いたァ〜っ!!」
「!! ま、待て! ヒナ! 話せば解る!
 い、いや、すぐに作る。腕によりをかけて。
 な? だから、・・・・な?」

すでに人語の通じない存在となったヒナの猛威から逃れる術などありはしなかった・・・・




後日談

「ひっどぉ〜い! ゲンちゃん!」
「な、なんだ? やうからぼうに」
「ゲンちゃん、ユイの妹と一日二人っきりで過ごしたんだって?!」
「な・・・・そんな誤解を招くような言い方やめてくれ」
「本当のことでしょ?」
「いや、確かにそうだが・・・・」
「婚約者の、こ・の・アタシをほっぽらかしにして、他の女と!
 キーッ!! くやしい」
「だから、誤解を招く言い方は・・・・」
「ユイもユイよ!」

それまでのほほんと、二人の会話を楽しそうに眺めていたユイにお鉢が回ってきた。

「あら、何が?」
「何って・・・・どうして、ゲンちゃんなの?
 女の子の面倒見るのが?
 アタシに言ってくれれば・・・・」
「・・・・ヒナ」
「な、何よ?」
「アナタ料理出来たの?」
「う・・・・」
「調理実習でいきなりお米を洗剤でつけ置き洗いしたの、誰だっけ?」
「うぅ・・・・」
「キャベツの千切りが乱切りになって、まな板までバラバラにしたの、誰だっけ?」
「・・・・」
 お魚おろせって言われてスリ金ですりおろし出したの、誰だっけ?」
「・・・・何よ、ゲンちゃん」
「え? な、なんだ?」
「何が可笑しいのよ」
「だ、誰も笑ってなど、いなっ・・・・わぁ〜!!」

この日六分儀ゲンドウが無事夕陽を拝めてかどうか、それは定かではない。








みきさんへの感想はこ・ち・ら♪   


月刊オヤヂニスト

ゲンドウ「きゅぅ・・・・何で私がいつもいつもいつもいつもこんな目に遭わなければならないのだ・・・・ぐぅぅ」

冬月  「人には持って生まれた性というのがあってだな」

ゲンドウ「そこ! さも知ったかぶりをして言うんじゃない!」

冬月  「他人からおもちゃにされるべく生まれた人間と言うのもいれば、だ」

ゲンドウ「それが私だと言いたいのかそうなのだな言いたいのだな!」

冬月  「他人をおもちゃに指定ながら、実はもっと強い人間には完全におもちゃにされてしまう人間もいるのだな。それがおまえだよ、碇」

ゲンドウ「なに?」

冬月  「あたりの人間をさんざん泣かせるおまえでも、数人の人間にはまるでぼろぞーきんのように弄ばれるのだからな(にやり)」

ゲンドウ「それをいうなら貴様とて同じではないか!」

冬月  「否定はしないぞ。しかし私の苦手な人間は貴様も苦手であることは事実。しかし貴様が苦手な人間に私が同じように遊ばれているかと言えばそうではない(にや)」

ゲンドウ「なんだと!?」

冬月  「たとえばこのように、だ(ぴんっと指を鳴らす」

ゲンドウ「な・・・・まさかまたか!? またなのか!」

ヒナ  「げ〜〜〜〜んちゃぁぁぁぁぁぁん♪ ふにっ」

ゲンドウ「だからヒナ! この耄碌ヂジイからはすぐに離れろと言っただろう! 道を踏み外しても私はしらんぞ!」

ヒナ  「っとっと、そうそう」

冬月  「ん?」

ばきっ!

ヒナ  「アタシはどこかのロボットじゃないんだから、指ぱっちんで召還しないでよねおぢさん

冬月  「・・・・おぢさん・・・・・おぢさん・・・・・・」

ゲンドウ「ほぅ。新たな称号だな(にや)」

冬月  「くぅぅ・・・・涙」

ユイ  「・・・・」

ゲンドウ「ってうどぉぉぉぉぉ!! なぜにユイがここに! しかも一瞬の気配も感じさせずに! 冬月貴様また召還したというのか!」

冬月  「おぢさん・・・・ヂジイよりはましかもしれないが喜ぶべきなのだろうか・・・・私には分からないぞ・・・・ぶつぶつ」

ゲンドウ「・・・・こいつが召還したわけでもないみたいだな・・・・ユ、ユイ?」

ユイ  「・・・・・・」

ゲンドウ「だからだな、ここで今私とヒナが一緒にいるのはだな、この耄碌おぢさんが彼女を連れてきたわけであって・・・・」

ユイ  「・・・・だれですか? この人・・・」

ヒナ  「だれ・・・だれ・・・・って・・・・私を忘れるなんてひっどぉぉぃ!!」

ユイ  「私・・・・その・・・・いきなりつれてこられて・・・・」

ゲンドウ「・・・・もしかして・・・・ケイさん?」

ユイ  「あの、その、いきなりこんなところに・・・・」

ゲンドウ「なんだ・・・・びっくりした・・・・私はまたユイが来たものだとばかり思って・・・・」

ユイ  「あの・・・・なにか姉さんが来ると・・・・まずいのですか・・・?」

ゲンドウ「まずいなんてものではない。私自身は無実潔白だというのにヒナや冬月のせいであらぬ誤解を招いては夕飯抜きだの小遣いカットだの成ってしまうのだ。知っているかね? おかげで私の今年のお年玉はたったの百円だ。百円! この時代じゃ缶ジュース一本買えやしないのだ!」

冬月  「おまえ・・・・その年でまだお年玉か・・・・をい(汗)」

ユイ  「でも・・・・それでも本人なりに楽しんでいるんでは・・・・?」

ゲンドウ「うぐ・・・・そ、そりゃぁ確かにヒナの ふにっ だとか そういうのはあるけれども! それは不可抗力だ不可抗力!」

冬月  「・・・・・・・・・・・・・・・(思考中)」

ゲンドウ「をい、何を考えている」

冬月  「(小声で)おい。おかしいと思わないか」

ゲンドウ「(やはり小声で)なにがだ?」

冬月  「(小声で)彼女はユイ君ではないのだろう?」

ゲンドウ「(小声で)ええ、双子の妹ですよ」

冬月  「(小声で)ならばなぜ、冒頭の名前欄が彼女の名前から変化していないのだ?」

ゲンドウ「(小声で)・・・・作者が間違ったままほったらかし、という・・・・のは考えづらいな・・・・」

ケイ  「・・・・姉さん・・・・」

ユイ  「あらケイ、こっち来ちゃダメって言ったじゃない」

ケイ  「ご飯・・・・」

ユイ  「あらいけない。もうそんな時間なの? ちょっと遊びすぎちゃったみたいね」

冬月  「・・・・・・汗」

ゲンドウ「・・・・・・滝汗」

ケイ  「・・・・おなか空いた・・・・」

ユイ  「じゃ、そろそろ帰りましょうか〜。そうそう、貴方も少しは私のふりができる練習しなさいよね〜。そうしないといつもいつもアタシが貴方になるしかできないじゃない」

ケイ  「だって・・・わたし姉さんみたいに大胆じゃないし・・・・」

ゲンドウ「あ・・・・あの・・・・その・・・・・・・ユイ・・・・」

ユイ  「あ、心配しなくてもご飯はちゃんと用意しておきますよ。あなた。不可抗力ですものね」

ゲンドウ「ユ、ユイ! わかってくれたか!」

ユイ  「でも、ふにっ の分だけは差し引いておきますから。そうね・・・・玄米とたくわんくらいにしておきましょう」

ゲンドウ「・・・・だばだばだば〜(涙)」

ユイ  「さーって、ケイのまねは楽だけど肩凝るのよね〜う〜〜〜〜ん!」



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