Sunday Morning




−−霧島邸−−

霧島ムサシは、これ以上ない程希望に満ちあふれた気分で野球部の遠征に出発した。

甲子園への道が見えた!などという理由では断じてない。
血の繋がらない妹、と同時に密かに想い続けている(つもりである。本人は)マナが、
友達以上恋人未満である碇シンジと仲違いしているらしい、唯それだけである。
耳に挟んだ話では、口もろくに利かないとか。
自宅でのマナの意気消沈した姿が、何よりも雄弁に噂の信憑性を訴えている。

マナのしょんぼりとした姿にキリキリと胸が締め付けられはしたが、
ここが肝要、心を鬼にしてムサシは推移を見守っていた。
マナを思い切り抱き締めたい衝動を辛くも抑えながら、
2人の破局(こう考えている事自体、2人の仲を認めているようなモノだが、
当人は気付いてはいない)を待ち続けた。

マナの落ち込みぶりは日ごとに激しく、
ムサシが理性を保ち続けるのに要した精神力は筆舌に尽くしがたい。
ただただ、大物を捕まえる為にひたすら忍耐の2文字を心に刻んだのだった。
涙ぐましいほどに、それはいじらしい努力だった。
明日の為に、今は耐える!!な、ムサシであった。

時間が過ぎ去り、事態が悪化しても、最終局面まではまだ到達しなかった。
これにはさすがにムサシも焦れていた。
週末、第三新東京市私立第壱学園高等部野球部は、
前々から予定していた泊まり込みの遠征試合がブッキングしていたのである。
野球部、まがりなりにもエースのムサシは無論出場しなければならず、
ムサシの焦燥をさらに募らせた。

(せっかくのチャンスなのに、どうしてこんな目に!?)

一応クリスチャンであるムサシが、この時ほど神の悪意を確信したコトはなかった。

だが彼にも一応は良識と分別と責任感が備わっているらしい。
ズンドコまで落ち込んだマナの様子には心が痛むが、
まあ、これなら簡単にどうにかなるコトもないだろうと判断し、
晴れやかな表情で出掛けたのであった。

のちに、己の浅はかさをどれほど後悔するとも知らずに。





Sunday Afternoon


**

涙をたたえるマナの瞳。
常ならば太陽の様な微笑みをたたえているその顔に、
今はひどく不似合いな表情が彩られていた。
それは、悲しみと混乱。

「お兄ちゃん・・・・アタシ、シンジ君に嫌われちゃったの・・・・」

マナの口から漏れるのは、かつてマナの愛した男の名。

「マナ、あいつのコトなんか忘れろ!!」
「でもでも、アタシ、シンジ君の事忘れるコトなんか・・・・!」

振り切れないマナ。
ムサシは、マナの想いを振り払ってやりたい・・・・そんな思いにとらわれる。
そして知らぬ内にムサシの口から出る言葉・・・・いや、激情。

「お、おれがシンジのコトなんか忘れさせてやる!!」
「・・・・!!・・・・有り難う、おにいちゃ・・・・ううん、ムサシ!!」

ムサシの心に触れるマナ。
その全身全霊をかけたムサシの言葉に、マナの心は揺り動かされる。
今まで兄だった目の前の人間を、自分を愛する一人の男として、マナの心は動き始める。

「マナ!!」

ムサシの思いの丈を込めた抱擁。
たくましく力強いムサシの腕の中は、不思議なくらい心地よかった。

この時の為に、この腕に抱かれる為に、アタシはこの世に生まれたのかも知れない。

マナはそんな想いにとらわれる。
見詰め合う二人。
そしていつしか、マナがそっと目を閉じーーーーーーー

**

「マナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「監督、霧島がいつもの発作です」
「ほっとけ。マウンドに上れば目が覚めるだろ。ダメなら、ボディに一発入れろ」
「へ〜〜〜い」
「ほら、ウチの攻めだ。気張っていくぞぉ!!!」
「「「「「「「おぉいっす」」」」」」」

第壱学園高等部の野球部は、時折妄想するムサシにおおむね寛容であった。
スポーツに必要なのは人格ではなくて、才能なのである。





Monday Afternoon

−−霧島邸−−

「母さん、それは本当なのか!?」
「なぁに? ムサシったら。そんなに血相変えちゃって」

開けて月曜日。
最高の旅立ちは、最低の到着によって終わりを告げた。
日曜の朝にはどんよりと沈み込んでいたマナが、
帰ってきてみれば上機嫌どころではない。
足が地に付いていないと言った言葉がピッタリ来るほど、
幸せいっぱいな顔をしていたのだ。

「シンジが・・・・マナと二人っきりで家に泊まったって?!」
「ああ、そのコト」
「なんでそんな事するんだよ!」
「だって、お父さんも、私も、ムサシだって昨日は家にいなかったでしょう?
 つまりはマナ一人っきりってワケ。
女の子一人っきりってのは不用心だと思ったから、
 ゲンちゃんに頼んでシンジ君に来てもらったの」

イタズラが成功したやんちゃ坊主の表情をした母ヒナの実にあっさりとした答えだった。
ムサシは本気で目の前が真っ暗になってしまった。

「だって・・・・そんな・・・・いくらなんでも、年頃の男と女が一つ屋根の下だなんて・・・・」

弱々しく反論を試みるムサシ。

「あら、ムサシはマナのコト信じられないの?」
「いや、そんなコト・・・・、! そ、そうじゃなくって」
「いざとなったら、あの娘がどんなに強いか、アナタが一番良く知ってるでしょ?」
「そ、そりゃあ、まぁ・・・・」

ヒナの問いにムサシが言葉を濁したのは、あまり触れたくない話題だったからだ。
どんなケンカをしても、ムサシがマナに手を出すコトはない。
まさに惚れた弱みである。
しかし、逆はその限りではない。
実際、風邪一つひいたコトのない程丈夫な彼が、
3日以上学校を休んだコトも1度や2度ではない。
何にしろ、ようやく納得したような表情を浮かべたムサシに、
トドメとばかりにヒナが続ける。

「だいたい、シンジ君にそんな度胸が有ると思う?」
「そ、それもそうだな・・・・」

母の言葉に得心がいったのか、ほっと、胸をなで下ろすムサシ。
この際シンジの男の尊厳と沽券は、当然というか、全くないがしろにされている。
当人がこの話を聞けば、
14歳にして余人に真似の出来ない父親譲りの深い深い溜め息をつくコトだろう。

何はともあれムサシは安堵の表情を浮かべる。
そんな彼の心情を知ってか知らずか、
旧姓六分儀ゲンドウなら速攻で逃げ出すに違いない、
にんまりとしか表現のしようがない笑みがヒナの顔に湛えられた。

「で・も」
「?」
「シンジ君がマナの相手なら、アタシも嬉しいんだけどなぁ〜〜」
「!!」

いったい自分の言葉がムサシにどれ程の破壊力を発揮したのか、彼女には解っているのだろうか?
解ってやっているのなら、全く始末におえない困った性格だ。
気づいていないのなら、それはそれで難儀な相手である。
氷の彫像の如く固まるムサシを残して、ヒナはパタパタとリビングから退場していった。

**

マナとシンジだけしかいない夜の霧島家。
食事を終えたマナとシンジの間には会話もなく、
点けっぱなしのテレビから流れるフランス映画の甘い男と女のささやきだけが、
リビングを支配していた。
そんな雰囲気に、シンジは息苦しさを感じた。

(静かだな・・・・)
(今、ココには僕とマナの二人っきり・・・・なんだよね・・・・)
(な、なんか・・・・変に緊張しちゃうな・・・・)

「あの・・・・シンジ君、コーヒー、飲む?」
「え? あ、う、うん。そだね、マナ・・・・」

シンジの反応にちらっと笑いを漏して、マナはいったんキッチンへと消える。
それから、さほど間を置かずにトレイをかかえて戻ってくる。
そして、迷うコトなくソファに腰掛けるシンジの隣に座った。
テキパキと準備を始めたマナの肌が時折触れる。
マナの太股に、膝に、肘にシンジの心臓は跳ね上がる。
マナの体温にドギマギしているシンジに言葉はなかった。
マナもまたコーヒーを煎れる作業に没頭している為に言葉はない。

手持ち無沙汰なシンジにとって、ひどく居心地の悪い空気がリビングを占拠する。
山奥で湧き出す石清水をコップに注ぐかのように、
じっくりと息苦しさがシンジの心を満たしていく。
シンジの中でコップの水が溢れそうになる寸前に、
マナの煎れたコーヒーがついとシンジの前に出された。

「どうぞ、シンジ君」
「う、うん、有り難う、マナ」

助けとばかりに、差し出されたコーヒーカップを手に取るシンジ。
シンジはミルクを注ぐコトさえ思いつかずに、慌てて口をつけた。

「あち!」

猫舌とまではいかないまでも、決して熱さに強いワケでもないシンジは、
今度は慌ててカップから口を離す。
ジンジンとしびれる唇を指で撫でる。
その様子にマナはクスリと笑い、

「はい、ミルク」

シンジの前に差し出した。

「ハハ、・・・・その、・・美味しいよ、マナ」

シンジの言葉に、マナは言葉ではなく幸せそうな笑顔で答えた。
その笑顔にシンジは先程までの緊張がウソのように、暖かな気持ちでいっぱいになった。

幸せそうな笑顔のマナ。
マナの笑顔が嬉しくて堪らないシンジ。

自然と見詰め合う2人。
いつしか2人の顔からは笑みは消え、真剣な・・・・けれども熱い眼差しが交わされる。

僅かに頬を上気させ瞳を潤ませたマナ。
普段は見せない真剣なシンジの顔・・・・マナの大好きな表情の一つ。
いつまでも映していたい、いつまでも忘れたくない光景が互いの目の前にあった。

マナは瞼を閉じ、心持ちおとがいを上げ、シンジを待った。
シンジもそのマナの表情に意を決し、マナの形の良い顎に手を沿え、マナの唇に自分のそれを・・・・


**

「どああぁああああああぁ〜〜〜〜っ!!」

霧島家のリビング。
突然の雄叫びに、何事かとマナが姿を現した。
そしてソファに兄の姿を確認すると、僅かに俯き加減でムサシに声をかける。

「・・・・お兄ちゃん?」
「・・・・・・・・」
「お兄ちゃんってば!!」
「・・・・・・・・」
「お〜に〜い〜ちゃ〜ん!!」
「・・・・・・・・!?
 マ、マナぁ〜!! やらん! 誰にも渡さん!!
 マナは、オレの、オレの! ・・・・オレのォ〜!!」
「キャッ!?」

何処か遠い世界へ旅立っていたムサシは、マナの声で現世に復帰。
しかし、妄想から抜け出すには至らず、本能の赴くままマナに抱き付いてしまった。
突然のコトに反応できなかったマナは成す術も無くムサシに抱きすくめられ、可愛らしい悲鳴を上げる。

「お、お兄ちゃん!?」
「マ、マナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
「お、お兄ちゃん、苦しいったら!!」
「ああ、ゴ、ゴメン、マナ!!」

本能だけではなく理性と常識のサルベージにようやく成功したムサシ。
慌てて状況を確認すると自分がマナを抱き締めている事に気付く。
さらに慌てふためき、本能の抗議をねじ伏せつつ、腕の中のマナを解放する。

「もォ、お兄ちゃんったら・・・・ふざけないでよネ!」
「そ、そのぉ・・・・ごめん、マナ」

気まずい空気の中、マナに頭を下げるムサシ。
彼の心は、マナに嫌われるんじゃないかという不安でいっぱいだった。
一方マナは、仕方がないわネ、そんな苦笑混じりの表情を浮かべている。
中学入学前後から時折別世界へと旅する兄の奇抜な行動に、
今更驚いたりなどしないのである。

「すまない、マナ!!許してくれ、何でもするから!!」

ムサシは、頭を下げたまましゃべり続ける。
マナの様子を窺い知れないムサシは、
妹が怒って口を利いてくれなくなるかもしれないと心配し、恐れていた。
何しろ子供の頃、(ムサシにとっては)些細なコトで怒らせてしまい、
一ヶ月の間まともに口を利いて貰えなかったという恐怖の原体験があるのだ。
だから、彼の謝罪は真剣そのもの、一所懸命という4文字熟語の生きた事例であった。
そんなムサシの言葉を聴いたマナが、
獲物を狙う猛禽類のように瞳をキラリと閃らせたコトにムサシは気づかなかった。

「何・・・・でも?」
「ああ、許してもらう為なら何でもする!!」

迷い無くキッパリ言い放つムサシ。
こういう発言が墓穴を掘るというコトに、まだ気付いて・・・・というより知らなかった。
気軽に「何でもする」と約束すれば、どんな結末が待っているやら・・・・
若さは思い至らないモノである。
元々マナは「お願い」をする為にムサシを探していたのだから、
この発言は彼女にとって好都合であった。

「じゃぁねぇ・・・・」
「・・・・」
「アタシのお料理、食べてくれる?」
「・・・・・・・・へ?」
「だーかーらーアタシのお料理食べてって事!」
「そ、そんな事でいいのか?」
「そんな事って何よ?
・・・・・・・・ふぅ〜〜ん。
 じゃぁ『デッキチェア』のケーキフルコースでもいいんだけどなぁ・・・・」
「!!!
ああ、いやぁ、その、もちろんマナの手作り料理だ、有り難く頂かせてもらうよ!」

マナの発言に、慌てて最初の提案に従う事を伝えるムサシ。
ちなみに『デッキチェア』とは第三新東京市中央駅に程近い場所に有る、
「ここはホントにケーキ屋か?」
と言いたくなるほど立派な店構えのケーキ屋である。

店構えもさる事ながら味の方でも第三新東京市随一との呼び声も高く、
当然値段のほうも正比例して高い。

「ケーキ奢ってやるけど、どこのがいい?」

第三新東京市へ引っ越してきてすぐの頃、
そう言ってマナをお茶に誘った際、ココを指定されたのだった。
この手の情報に疎い彼が軽い気持ちで応じたのは仕方がないコトだろう。
一方マナにすれば、友達に散々聴かされたケーキ屋を試すいいチャンスだった。
ピッシリと蝶ネクタイも決まったウェイターに案内され、
ビビリながらメニューを見たムサシは、
その値段に目玉が飛び出るほどビックリしたのである。
かといってマナとの約束をほごにも出来ず、
彼は一ヶ月の小遣いの8割を使うハメとなった・・・・


マナはムサシの反応に満足げに頷くと、

「はい、よろしい。さっそく、今からはじめるね!!」
「わ、わかったよ、マナ・・・・」

押しの強いマナにすっかり気圧され、ムサシは諾々と従うほか無い。
惚れた弱みという奴か、マナに頭が上がらないムサシであった。

(まぁ・・・・いいか。マナの手料理が食べられる・・・・ってのは、ありがたい事だからな・・・・)
(それに・・・・・・・・・・・・)
(これを踏み台に、更なる親密をマナと・・・・・・・・!)

**

「美味しい、ムサシ?」
「ああ、マナの作る料理は何でも美味しいよ!」
「よかったぁ・・・・美味しくないって言われたら、どうしようかと思ってたんだ・・・・」
「おれが、そんなマナを傷つける言葉を使う訳無いし、ましてや本当にマナの料理は美味しいよ!!」
「えへへ、ありがとう、ムサシ・・・・」
「マナ・・・・」
「ムサシ・・・・・・・・」

**

心で情熱を燃やすムサシ。
マナのお料理の練習の目的が、
『シンジに美味しく食べてもらう為に、最低限シンジと同じくらいの腕前になりたい』
であると知ったなら、ムサシの情熱は方向と質を変えてシンジに向けられた事であろう。

それを発散するならば『ニューダミーシンジ』が十体ほどは最低限必要に違いあるまい。


ちなみにヒナはこの日も仕事と称して外出した。
彼女は自分の家事全般、特に料理に関する才能をよく知っていた。
娘のマナは、昔から「お母さん、そっくりですねェ〜」と言われる程、
彼女の遺伝子を忠実に引き継いでいる。
料理を習い始めたばかりのマナにレクチャーを施せる夫は、まだ出張中。
手伝うと称して、調理の80%以上に手を出してしまうおせっかい、碇シンジもいない。
・・・・となると、論理的帰結は1つしかなかった。

このあと一週間に渡って、ムサシは転校以来初めての病欠を続けるコトとなった。

<了>






みきさんへの感想はこ・ち・ら♪   


月刊オヤジニスト

ゲンドウ「むう、さすがだマナ」

冬月  「ん?なにがだね?」

ゲンドウ「ムサシくんを秒殺するその料理の腕前。さすがは母親譲りだ」

冬月  「(本人は秒殺するつもりはないとおもうがのぉ))・・・・ヒナくんの料理はそんなにひどかったのかね?(にや)」

ゲンドウ「それはもう、筆舌に尽くしがたい・・・・っと、やめたやめた」

冬月  「なに?」

ゲンドウ「貴様のその手にはのらんぞ。儂だとて命は惜しい

冬月  「ちっ、ばれたか」

ゲンドウ「きさまのそのにやつく笑いを見れば分かるわ。またどうせ懐に録音装置でも潜ませておいて、ワタシが言ったヒナの悪口をあとで本人にタレこむ気だろう。そうすればあの有史以来最強最悪、並ぶものとてない凶悪さを持ったヒナが黙っているわけがない。それこそ儂は秒殺、貴様も万々歳という寸法だろう。いやいや、そんな手にはのらんぞ」

冬月  「・・・・をい。思いっきり今ヒナくんの悪口を言っているではないか」

ゲンドウ「ぐはっ! し、し、しまった!」

冬月  「やはり、貴様にはよけいな策略など必要ないようだな。自分からぽろっと地を出してくれる(にや)」

ゲンドウ「・・・まあいい。お遊びはその辺にして、さっさとよこせ(ずいっ)」

冬月  「・・・なんだ、その手は」

ゲンドウ「そのテープをよこせ、と言っているのだ。冗談も大概にしろ」

冬月  「さて、どうしようかのう(ほぅ)」

ゲンドウ「なんだその人を見下したような目は! さっさとよこせと言っているではないか!」

冬月  「碇君。人にものを頼むときにはそれ相応の態度というのがあるのではないかね? どうもきみは学生の頃から態度が悪かったなぁ(にやにや)」

ゲンドウ「うぐぐぐぐ・・・・この陰険ヂジイめ・・・・有利な立場に立ったと思いきやいきなり高飛車になりおって・・・・」

冬月  「まあ、この場で土下座して「お願いします冬月様」とでもやれば、返してやらんこともないがな〜」

ゲンドウ「く・・・・く・・・・くっくっく」

冬月  「な、なんだその笑みは」

ゲンドウ「くくくくく・・・・そうか・・・・そうなのか・・・・ならばやむを得まい・・・・」

冬月  「なんだというのだ貴様!」

ゲンドウ「このまま行けばワタシはヒナに瞬殺される身。ならば失うものは何もない。くくくくく・・・ならば冬月先生。あなたも道連れになってもらいましょうか!」

冬月  「貴様・・・・一体何を考えている!」

ゲンドウ「おや、ワタシが知らないと思っているのですか。この間ヒナにヂジイよわばりされて以来、冬月先生が自宅裏の神社の境内で夜な夜なヒナのわら人形に釘を打ち付けていることを」

冬月  「なにぃ! な、なぜそのことを!」

ゲンドウ「ほら、ここにその実物が」

冬月  「あ! それはワタシが昨日打ち付けたわら人形ではないか!」

ゲンドウ「昨日こっそり回収させていただきましたよ。しかも冬月先生の名前入り

冬月  「なくさないように名前を入れておいたのがあだになったか!」

ゲンドウ「(恨み参りの人形に自分の名前を入れてどうするというのだ)冬月先生。知られたくなかったら、わら人形と釘を持ったあのスタイルのままコンビニに行くのはやめておくことでしすな。周辺住民がおびえまくって警察に駆け込んでいるそうだし」

冬月  「な! し、しまったあのときのあれか! くそう、冬月コウゾウ一生の不覚!」

ゲンドウ「・・・・「どちらへおでかけですか?」「ええ、ちょっと五寸釘打ちに」とわら人形を持ち上げてにこやかに返答している姿が何度も目撃されているというのに、それが一生の不覚というか・・・・・やはり耄碌しているようだな・・・・」

冬月  「シャーーーーーー! だまれだまらぬか!」

ゲンドウ「さて、どうしますか? ワタシとしては穏便に事を済ませたいのですが」

冬月  「ぐぬぬぬぬ・・・・やむをえまいか・・・・せっかく貴様を葬り去れると思っていたのに・・・・(ごそごそ)」」

ゲンドウ「ふっ。今度はもう少しうまくやることですな。ふむ、これが証拠のテープか。早めに処分しないとな」

ヒナ  「あーーーゲンちゃんだ〜!」

ゲンドウ「げっ! ヒ、ヒナ!」

冬月  「どきっ!」

ヒナ  「ねーねーいいオヤヂが二人で何やってるの〜」

ゲンドウ「ななななななんでもないなんでもない!」

ヒナ  「・・・・ほんとに?(ぢぃぃぃぃぃぃ)」

ゲンドウ「ほ、ほ、ほほほんとうだってほらなにもしてない」

冬月  「(碇よ・・・・脂汗びっしょりだぞ・・・・露骨に怪しい)」

ヒナ  「ふーん・・・なんか怪しいカセットテープねそれ」

ゲンドウ「げはっげはげはっ! (しまった!さっきしまうのを忘れていた!)」

ヒナ  「どれどれ〜(とラジカセに差し込む)」

冬月  「・・・・・さて、ワタシはこの辺で失礼しようかの」

ゲンドウ「ワタシを見捨てていくのか!」

冬月  「テープを見つけられたのはおまえの不手際ではないか。そこまで関知する義理はワタシにはない」

ゲンドウ「・・・・おまえ・・・・気づいているのか?」

冬月  「?」

ゲンドウ「さっきのわら人形云々の会話も・・・全部テープに入っているんだぞ。録音され続けていたんだから」

冬月  「・・・・・・・・・・・ダッシュ!」

ゲンドウ「こら! 逃げるな! 逃げるな!」

ヒナ  「ゲンちゃん! ヂジイ! 待ちなさいっ!!」

ゲンドウ「ぐはあああああああああああああああああああ!!」





ムサシ 「・・・・・ん。わら人形が落ちている・・・・そうだ! こいつで碇シンジを呪ってやればいいのか! そうだそうだそうだ! としたら早速釘を買いに行かねば! ・・・ってこの血痕は・・・・」

冬月  「ぐは・・・た・・・たすけ・・・て・・・」

ムサシ 「・・・なんだ。ヂジイか」

冬月  「ヂジイ言うな・・・・ぐはぁ」

 




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