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第三新東京市は澄んだ青空が広がっていた。
林立するビルの群。
その一角にある高層マンション。
さわやかな朝の光がカーテンの隙間から射し込んでくる。
相田ケンスケは至福の時を噛みしめていた。
こんな気持ちのいい朝にゆっくり寝坊が出来る。
これに優る贅沢は、そうそう有るものではない。
彼の両親は出張や早出が多いので、
誰にも邪魔されず、心ゆくまで自堕落な時間を満喫できる。
夢うつつに寝返りを打ち、愛用の枕と友好を深める・・・・
ぷるるるるる・・・・
ぷるるるるる・・・・
突然、電話が鳴りだした。
急速に意識は覚醒するが、この最良の時間を手放すのが惜しくて、
彼はしばらく放っておいた。
こんな朝っぱらにそんな重要な電話なんて・・・・
そう決めつけていた。
しかし、いっこうに呼び出し音は鳴りやみそうにない。
枕を頭の上に被るって、さらに無視する。
ぷるるるるる・・・・
ぷるるるるる・・・・
それでも、電話は鳴り続ける。
とうとう根負けした彼は、
「こんな朝早くから、何だってんだよ」
などと、ぶつぶつ言いながら、ベッドを降りた。
そして、大きく伸びをすると、電話をとった。
「はい、相田ですが・・・・」
ついつい、声に不機嫌さが混じってしまうが仕方あるまい。
それでなくても、未だ寝ぼけているのだから。
しかし、受話器の向こうから聞こえてきた声に、
彼の眠気などすっかり吹っ飛んでしまった。
「第壱学園、学園長の碇だ・・・・」
「が、がくえんちょう!?」
如才ない彼が、こんな反応をしてしまったのだ。
その驚愕の大きさが想像できよう。
な、なんで?
どうして?
「・・・・これは録音テープによるモーニング・コールだ。
君はいつも遅刻している。
ゆえに君が遅刻しなくなるまで毎日コールする。
善処したまえ・・・・プッ、ツー、ツー・・・・」
真っ青になったケンスケの額を流れる汗が、
窓から差し込む朝日をキラリと反射した。
この日を境に、相田ケンスケは第壱学園を卒業するまで、
その辞書から遅刻という文字は消去されたという。
月刊オヤヂニスト
冬月 「碇・・・・はっきり言って怖いぞおまえのその録音テープは」
ゲンドウ「何を言う。生徒のためを思っての録音テープでの目覚ましなのではないか」
冬月 「だったら何もおまえの声でなくてもいいではないか。ただ単に生徒を怖がらせて喜んでいるようにしか見えないぞ」
ゲンドウ「何を根拠にそう言う」
冬月 「知っているんだぞ。録音テープといいながら、おびえる生徒の声を密かに側で聞いて楽しんでいるおまえの姿を」
ゲンドウ「な!」
ぷるるるるっ
ゲンドウ「む・・・もしもし」
ユイ 「もしもし、あなた」
ゲンドウ「げっ! ユ、ユイ!?」
ユイ 「これは録音テープによる電話よ。寄り道しないでまっすぐ帰ってきてね(はぁと)」
ゲンドウ「・・・・・汗」
冬月 「ふっ 罪の報いだよ・・・碇」
ゲンドウ「誰が罪だ!!」
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