Lunch Time |
「シンジ!アタシのお弁当は?」
午前の授業が終わると元気な声が教室に響く。
第壱中学公認のカップル(本人達は否定するが)のいつもの会話だ。
「うん、ちょっと待って。・・・・はい」
「グズグズしてんじゃないわよ!まったく・・・・それじゃ、行こ。ヒカリ」
いつもの一方的な物言いにいつものように気弱げな微苦笑を返すシンジ。
そんなシンジの様子を顧みたヒカリの胸の内では、委員長としての血が
ふつふつと騒いでいた。
『ありがとう、の一言くらい言ってあげてもいいじゃない』
『今日こそは言ってやらないと!』
そう決心するヒカリだった。
屋上にはすでにお弁当を囲んでいるグループがいた。
アスカとヒカリもいつもの場所でそれぞれお弁当を広げる。
ヒカリご自慢のお手製弁当、それに負けず劣らずアスカのもおいしそうだ。
「碇君て、ホントにお料理上手ね」
ヒカリの言葉にすごくうれしそうな顔をして、アスカが答える。
「うん。あいつ、普段はボケボケってしてるし、
何やらせてもあんまりパッとしないけど、家事全般は別格ね」
「ふ〜ん」
『自分のことのように得意げに話すアスカはすごくかわいい』
『いい顔してるわ。碇君にも見せてあげたい』
『でも、そんなこと口にしたら真っ赤になって怒るのよねぇ』
「ホント、炊事、洗濯、掃除、どれをとっても完璧ね!」
「へ〜、そうなんだ」
「あ、ヒカリ!今言ったことシンジに話しちゃダメよ!
褒めたりなんかしたら、あいつ自惚れちゃうんだから」
『まったく、素直じゃないわね。碇君もかわいそうに・・・・』
ん?ん?ん!?
そのとき、ヒカリは何かひっかかるものを感じた。
それが何なのか分からず、額に手を当てて考え込んでしまう。
「ちょっと、ヒカリ。どうしたの?大丈夫?」
心配そうにアスカが声をかけてくる。
「うん、違うの。何かちょっと気になることがあったような・・・・」
「?」
「あ!わかった!」
自分の疑問に思い当たったヒカリは、
真剣な面持ちでアスカの方に向き直った。
「ど、どうしたの?ヒカリ」
「ねぇ、アスカ。碇君、家事全般得意だって言ったわよね」
「う、うん」
ヒカリの只ならぬ様子に怯みながら返事をする。
「お料理上手よね?」
「うん」
「お掃除は?」
「文句無いわ」
「お洗濯?」
「完璧よ」
「ところでアスカの所、今は碇君が家事全部をこなしてるのよね?」
「そうよ」
「それじゃあ、聞くけど」
「な、何?」
「下着、誰が洗ってんの?」
「は?」
「アスカの下着よ!ブラにパンツ!」
「ああ、シンジよ」
なぁんだ、そんなことか、アスカの表情はそう言っている。
ヒカリの尋常でない表情と口調からいったい何を聞かれるのかと
身構えていただけに肩透かしだ。
でも、ヒカリはなんでそんなことに真剣な顔してるのかな?
一方、あっけらかんとしたアスカの返事にヒカリは目眩を覚えていた。
あまりのショックにたっぷり1分間は固まってしまった。
沈痛な面持ちのヒカリは教え諭すような口調でアスカに話しかける。
「あのね、アスカ。年頃の女の子が下着を他人、それも男の子に
洗ってもらっていいと思ってんの?」
「え、何で?別にいいじゃない。何かまずいことあるの?」
「あるに決まってんじゃない!」
「そ、そっかな?」
「まったく。乙女の恥じらいってものがないの?」
「乙女の恥じらいって・・・・シンジにぃ」
プッ、くすくす、アハハハ・・・・
ヒカリの(アスカにとって)思いもかけない言葉に
ついつい吹き出してしまうアスカ。
「いや〜ねぇ、ヒカリ。別に気にする必要無いじゃない。
あいつって、てんでお子様なんだから。
それにあいつも喜んでやってんだから」
(それはそれで問題ないか?)
『ホンットにかわいそうね、碇君』
すっかり気力が抜けてしまったヒカリ。
それでもつい聞いてしまう。
(やめておけばいいのに)
「それで、他にどんなことやらせてるの?」
「他にって、別に大したことはないけど・・・・」
(すでに十分大したことだよ!)
「え、と、爪のお手入れでしょ。耳掃除でしょ」
「ちょっ、ちょっとアスカ」
「それと、お風呂!背中流してくれるの」
「!」
「初めはそうでもなかったんだけど、最近じゃ湯加減も完璧だし、
このアタシの玉の肌、傷めないように、それでいて十分な強さで
磨いてくれるの」
そう言って、アスカは目の前にかざした右腕をうっとりと眺める。
「アスカ?」
「そして、その次は髪を洗ってくれるの。
あいつもアタシの髪好きみたい。
ホントに大事そうにあらってくれるの。
いろんな本で勉強したみたいで、今じゃプロ並みよ!」
「惣流アスカさ〜ん!」
「ん?何、どしたの?ヒカリ」
うっとりと自分の世界を旅していたアスカを
ヒカリの声がようやく現実に連れ戻す。
「はぁ〜。それでアスカは碇君のこと、どう思ってんの?」
(答えは決まってると思うが・・・・)
「? どうって、下僕に決まってんじゃない!」
二の句の繋げようもないアスカの断言に
ヒカリはもう一度大きなため息をついた。
『ホントに、ホント〜に、かわいそうな碇君』
(そうかぁ?替わって欲しいと思う男は多いんじゃないか?)
話も一段落したところで、今日も元気なアスカは
おいしそうに、最高の笑顔でシンジお手製のお弁当を頬張るのであった。
ある一日のお昼休みの情景でした。
管理人(その他)のコメント
アスカ「し、し、シンジ!!」
シンジ「何アスカ?」
アスカ「アタシの下着がなんで足りないのよ!!」
シンジ「え?」
アスカ「それにこれ!! なんでアタシの入浴中の写真が巷で売られているわけ!!」
シンジ「こ、これは強烈な・・・・」
アスカ「風呂には言っているアタシの写真を撮れるのはアンタしかいないのよ!! 玉のようなアタシの肌を傷つけないようにとか気を使っている振りをして、じつは写真なんか撮っていたのね、きーっ!!」
シンジ「ちょ、ちょっと待ってよアスカ!!」
アスカ「おまけにこの写真、アタシの背中を流しているアンタまで写っているし!! おかげでアタシとアンタの変な噂まで流れる!! どう責任取ってくれるって言うのよ!! もう我慢ならないわ!!」
シンジ「わーっ!! マサカリ振り回すのは待った!! 僕がそこに写っているってことは、写真なんか取りようがないじゃないか!!」
アスカ「・・・・?? そ、そう言えばそうね・・・・」
シンジ「それにほら、そういうことをしそうな人間に心当たりはない? 写真が好きで、それをさばいている・・・・」
アスカ「・・・・・あ・い・い・つ・らかぁ!!」
関西人「いや〜ごっつもうかったなぁ」
マニア「なんのなんの、これもひとえに僕の写真技術のすごさだって」
関西人「ワイの販売網にもよるけどな」
マニア「しかし、こいつはいい商売だなぁ。シンジの奴に聞けば惣流の入浴時間はばっちり。しかも遊びに行けば大抵その辺に下着が干してあるからもってきほうだい」
関西人「のぞきはええことやないけど、ま、これも金銭のためや。しゃーないなぁ。ああ、これでたこ焼きが死ぬほど食える〜(にやり)」
マニア「ほらほら、口の端からよだれよだれ」
アスカ「ほほう、じゃあ死ぬほど喰らわしてあげるわ〜アタシのパンチを!!」
マニア「げっ!! そ、惣流!!」
ヒカリ「鈴原!! あんたなんてことを!!」
関西人「い、いいんちょ〜!!」
二人 「アンタ(あなた)たち、覚悟しなさい!!」
別の二人「ひえ〜〜〜〜〜!!(汗)」