ミーンミンミンミンミンミーン うだる様な暑さの中、静かにたたずむマンションの303号室……
ここは、只の一般家庭の家では無かった…
「暑いな…」
物語の最初の台詞を発したのは、一見気の弱いおとなしい少年だった。
「シンジ君は暑いのは嫌いかい?」
その、誰に話しかけたともない少年…シンジと呼ばれた少年の愚痴に答えたのは、
透けるような色白の肌、そして見る者を自然に惹き付けてしまうルビーの如き…赤い瞳。
しかし、その中性的な美しさを持った少年の問にもう一方の少年は”平常心”
とプリントされたシャツにハーフパンツをだらしなく着たまま答える。
「そうは言うけど、カヲル君。見てよ!もぅ三十八℃も有るんだよ!暑いに決まってるじゃないか」
シンジは暑さのせいか、いつもより一オクターブ高い声で言った。
「ふぅ、シンジ君。君はまだ解っていないようだね…」
カヲルと呼ばれた少年はやれやれ、といった表情で言った。
「な、何が解って無いって言うんだよ…」
その問を待っていました、とばかりに返答するカヲル。
「シンジ君も気付いているんだろ、心頭を滅却することは、暑さを乗り越える為の壁だと云う事を」
「カヲル君、何を言っているか分からないよ!!」
「遺言さ……」
しばしの間303号室は沈黙が支配し――
『ハァ』と言う二人のユニゾンしたため息がこぼれた。
「ボケてみたところで暑いのは変わらないから、やめよ……」
心底くたびれた口調でシンジは言う。
「まったくその通りだね、リリンと相反するモノ。ボケを使ってまで間を引き伸ばそうとするリリン、
僕には理解出来ないよ。」
…………………(^^;;;
「と、取り敢えず依頼のメールが来てないか確認しようか………?」
シンジは今までその、女性の様なか細い足を乗せていたテーブルの引き出しから
依頼を受ける時専用のPHSを出す。
「どうだい?シンジ君……」
カヲルが心配そうに聞いてくる。
するとシンジは下にうつむいたまま肩を震わしている。
「フッ、シンジ君お約束はいけないな、どうせ来てるんだろ依頼。」
シンジは黙ったまま頷くことで肯定の意思をカヲルに伝えた。
「やっぱりね、お約束をすることで君の心は満たされ………?」
カヲルは後一歩の所でアチラの世界に行ける所を、
今だうつむいたままのシンジを見て帰ってくる。
「どうしたんだい?シンジ君?どんな依頼なんだい!?」
珍しくもカヲルは声を荒立てて言う。…それだけ、シンジの事が大切なのだろう。
「あう、あぅ、あうううー。カ、カヲルくーん」
思いっ切り!情けない声で話すが、カヲルはさして気にせずに状況判断に勤しむ。
「どうしたんだい!?一体誰からの依頼なんだい!!?」
カヲルもやや興奮気味にシンジに問いかける。
……さて、何故この普通の中学生が探偵業なぞをやっているかといえば、実は二人は只のお留守番だったのだ。
話しは暫く前に遡る……………。
・
・
・
・
キーンコンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン
「はい!今学期は今日、今を以って終ー了!!はぁ、これで気がねなくビールが飲めるわー!」
その言葉を引き金にして教室全体がざわめき立つ。
「シンジ君、僕と一緒に帰らないかい?」
シンジが帰り支度をしていると、カヲルがいつの間にか机の前に立っていた。
しかも、にこにこと満面の笑みを浮かべながら。
「おうおう、おホモ達は仲のよろしいこって!」
「イヤーンな感じ」
シンジの学友達が、余にもアヤシイ
美少年たちを冷やかしてくる。当然の事だろう、何故なら
”第壱中男女別人気”(相田チャート調べ)で
開始当初から一位をキープし続けている渚カヲルとルックスはそれ程ではないものの、
何故か女子からの支持率が高い碇シンジ、
此の二人は戸籍上は兄弟ということと相成って
一緒にいない所を見る事の方が少ないと言った具合である。
しかし、冷やかされている当人達は至って冷静であり。クラスメートの嘲笑もさして、
気にしてはいない様子だ。何故なら、すぐにまとめ役が来ることを知っているからだ。
「こらっ!鈴原!!いい加減にしなさい!」
顔に若干のソバカスがあるものの間違い無く美少女の部類に入る
おさげの少女が鈴原トウジ………インチキ臭い関西弁を喋る男の耳を引っぱり上げる。
「痛たた…、何すんのや!いいんちょ。」
「馬鹿なこと言って無いで、さっさと帰りなさい!」
いいんちょ…説明するまでもなく、二年A組における最重要ポストの人間だ。
彼女、洞木ヒカリが居なければ担任の無責任さから来るカオスが、
A組全体を包み込むであろう。(単にうるさいクラスに成るだけ)
「有難う、洞木さん助かったよ。」
シンジが礼をヒカリに言う。ヒカリはにっこりと笑い、返事する。
「いいのよ、碇君。でも火の無い所に煙りは立たぬっていうでしょ、兄弟だからって程々にね。」
何が程々なのか知らないが、ヒカリは言い終えると
『さっ』と身を翻し帰って行った。
「さぁ、早く帰ろう。シンジ君」
カヲルはシンジの瞳を見つめながら、改めて言う。やはりアヤシイ雰囲気だ。
「う、うん。分かったよ。」シンジが『ガタッ』と椅子を鳴らしながら立ち上がり、
さぁ帰ろうとしていた時に、一人の妙齢熟女が現われシンジ達に声を掛ける。
「えーっと、シンジ君に渚君、お母様から何か聞いて無い?」
おちゃらけている時とは違い、『きりっ』と引き締まった凛とした大人の女性の顔である。
その、いつもとのギャップに驚きシンジは一瞬返事が出来なかった。
その代わりにカヲルがいつもと同じ様に答える.。
「いえ、何も聞いていませんが……、それが何か?」
カヲルは返事を返すとすかさずミサトに問いかける、
好奇心と探求心と生まれ以っての探り癖、と云うことからそんな行動を取ってしまう。
知りたがりなのだ、それも生まれつきその才能持っている。…彼の、赤い瞳も才能に上乗せの如く、
燦然と輝いている。
「ん?いやー、聞いて無ければいいのよ」
しかし、”亀の甲よりなんとやら”でカヲルの”僕の目を見てもう一度言えるかい?”
攻撃にも口を割らず、逆にあっけらかんと、いつもの表情で返されてしまった。
「じゃ、気を付けて帰るのよー!」
昼前に終わった筈なのに、シンジ達が校門の外に出たのは十二時半だった。
何故ならカヲルがひつこくミサトに質問し続けたからである。
その間ずっとシンジは退屈だったのでやっと帰れる、
と顔に安堵の笑顔が張り付いている。
「さ!カヲル君!早く帰ろうよ!」
「ああ、分かっているよ……」
未だ納得していないのか、
歯切れの悪い返事であった。そして、カヲルはゆっくりと思考の海に沈んで行ってしまったのだが、
シンジはそんな兄の様子を見てもなんら、表情の変化は見受けられなかった。
…慣れているのだろう。
「カヲルくーん、早く行こうよ。」
シンジが同じ様な事を言ったのはそれから十五分後の事だった。
あの後、ミサト教諭との会話から何かを説き明かそうとしたカヲルだが、
明らかに情報は少なすぎたので、十五分という時が流れる間
ずっと思考の海を漂っていたのだった。それに呆れ返ったシンジは、
母親の経営する本屋……
ネルフにカヲルを引きずって来たのだった。
『ピーンポーン』店のドアに付けてあるベルが小気味の良い音で鳴り響き、店内から
「いらしゃい。」
と言う、うるさく無く、かと言って陰気な訳でも無い声が
シンジ達の耳に届く。……男の声だった。
「今日は、青葉さん。」
シンジは『ペコリ』と頭を下げ、青葉…青葉シゲルに挨拶をする。が、しかし
「何だ、シンジ君か…」
落胆の色を顔に露骨、と迄は行かないものの少なからず浮かべながら、返事をする。
「何だ…って迷惑でしたか?」
何時の間に復活、もとい考えを中断したのか、カヲルが青葉に問い直す.
「あ、いやそういう訳じゃ無いんだけどね。」
「じゃあ、どうしてそんなことを言うんですか?」
……カヲルの癖がまた出た様だ、何にでも首を突っ込みたがる。
そして、じっと青葉の目を睨み……何か言おうとしたのだが、耐え切れなかった青葉が喋り出す。
「そんな怖い顔をしなくてもいいじゃ無いか。実は此の時間の店番ってのは誰も来ないし、………」
青葉はそこから先は言い辛いのか、口ごもっしまった。
しかし、シンジは納得した様だコクコクと頷いている。
「ふむ、青葉さん?ひょっとして……」
カヲルが謎を説き明かした探偵の如くに『ポツリ』とつぶやく。
「な、なな、なんだい?」
こちらは『もう、ネタは挙がってるんだぞ』と言われた犯人の如くにびくびくしている。
「カヲル君!もういいよ!!」
そしてシンジは犯人の身内よろしく、謎の求明を止めさせようとしている。
しかし、カヲルは首をゆっくりと横に振り、
「駄目だよシンジ君!真実は常に一つ!また、犯された犯行は必ず暴かなければならないんだよ!」
「は、犯行って…。ち、ちょっと聞いてるかい?」
青葉はぼそぼそと、ハイテンションな二人に話しかける、だが、シンジ達はもちろん聞いていない。
「言わしてもらうよ、青葉さん!」
「な、何を!俺は無実だよ!!」
「そうだよ!カヲル君!」
シンジとの話しがまとまったのか、青葉に言い寄るカヲル。
そして、内心は、あのことかな?このことかな?とびくついている青葉。
そしてカヲルは手頃な椅子に座り、足を組む。
「青葉さん、貴方は”何だ、シンジ君か…”と言いましたね?」
「ああ、言ったけど?」
青葉は気楽にカヲルの問いに答える。するとカヲルは笑った、かに見えた。
「”何だ、シンジ君か…”つまり、此の言葉には他に誰か来ることを知っていなければならない。」
みるみる内に青葉の表情が曇る。シンジは心配そうに見ているだけだ。
「そして、今までの青葉さんの素行、性格、これらを合わせて考えると………」『ニヤッ』
青葉はもう冷や汗を顔中から流している。それを見てカヲルが笑った様に、シンジには見えた
「青葉さん!」
と強い声で名前を呼ばれた本人は『ビクッ』と体を震わせる。
「………………………くすっ………女の人を連れ込もうとしていたね?…………」
『カツーン』
『ピシッ』
一際大きい音を立て、青葉の懐の携帯電話が床に落ちた。
何時間にも思える、ほんの数秒の沈黙、そして再びこの空間に音を立てたのは……カヲルだった。
「シンジ君!」
自分のせいで石化してしまっている青葉を放って置いて、カヲルはシンジに話しかける。
「え、え?あ、な、何?」
シンジはあたふたと返事を返す。
「青葉さんとの会話で分かった事があるんだ。」
カヲルは、にこにこといつもの笑顔を浮かべていた。
「何が?」
「いや、大した事じゃ無いんだけど、ユイさんはここにはいないってことさ。」
「あ、それもそうだね、母さんが居るのに女の人は呼べないものね。」
シンジはなるほどと云った顔で言った。
「それじゃあ、行こうか?シンジ君」
「うん!ミサト先生の事もあるしね。」
「……さぁ、僕の疑問が説き明かされる………」
・
・
・
「ただいまーー!」
「……ただいま帰りました。」
カヲルの挨拶が陰気なのは、謎の究明に勤しんでるからだけでは無い。
心苦しいのだ、仲の良い母子の間に自分の様な拾い子が養子として生活している事が。
だが、自分の事を兄弟として見てくれているシンジに対し、
いつまでも他人行儀に、陰気に暮らしたのでは申し訳無いという事から、
玄関に入れば気持ちを切り替えよう、と自分の心に堅く約束しているのであるが………
「あれ?カヲル君入らないの?」
「…あ、ああ……。」
…そんな健気なカヲルの誓いを、この鈍感男が気付く訳は無く………。
しかし、鈍感でも自分と、この世界との絆であるシンジには
常に笑顔を見せたいとカヲルは思い-------笑う。
「おかえりなさーい!」
家の奥から若々しい声が響いて来る。
「ただいま!母さん!」
シンジが外に居る時とはうって変わって元気な声で返事をする。
「はい、おかえり!」
にっこりと、それこそカヲルより奇麗な微笑みを浮かべる。
「……只今帰りました。」
シンジ達、母子が醸し出すうららかな感情の中で
カヲルは温もりを感じながらも、戸惑い、悩み、そしてうつむいて
”ただいま”の挨拶をする。
「……カヲル、……おかえり!」
『にこっ』シンジに対しての微笑みと何ら変わらぬ極上の笑み。
母の愛は何人にも分け隔ては無かった。
「ハ、はい!」カヲルはこれ以上無い位の極上の笑みを
碇ユイ…どう見ても二十七歳位にしか見えない、シンジの母親に返した。
「カヲル君、確か聞くことが在った様な……。」
どこからどう見ても、親子水いらずの二人に無造作に声を掛けるシンジ。
「あ、ああ。そうだったね。」
「どうかしたの?」
ユイさんが優しく問いかけてくる。
「母さん、ミサト先生に何か言った?」
シンジはユイに問いかける。
「………えーっと?何か言ったかしら?」
「ひょっとして、仕事関係じゃないですか?」
暫しの沈黙。『ちっくたっく、ちっくたっく…………』
時計の音だけが部屋に木霊し--------
「あーーーーーーーっ!!思い出した!!」
果たしておとぼけ母ちゃん、
碇ユイの思い出した事とはっ!!!?
待て!次号!!!! 5/6/97
後書き文書(笑)
ドラゴニック以後D「いいのか?碇」
菊地「ああ、問題無い」
D「そうか?」
菊地「ああ、それに私は碇などでは無い!菊地啓一だ!!」
D「それを言うなら、俺は冬月じゃ無くてDragonickだ!!」
菊地「ふっ、問題無い」
D「大有りだー!!」
菊地「てめぇ、弟の分際で兄に逆らうか?」
D「貴様など”あに”では無いっ!!」
菊地「よくぞ言った!さぁ、死ねぃ!!!!」
(以下、肉弾戦により割愛)
D「決着は後だ!!、それより良いのか?こんな事をしていて?」
菊地「なんで、そー思うんや?」
D「当り前だっ!!!貴様は学生だろうが!」
菊地「ふん!それを言うんやったら火◯さんや十二◯さんはどーなんねん!?」
D「しかし、貴様は高一!もといナインスグレードだろうが!!」
(ここで菊地からのお知らせ。オレは97/5/7の時点でU.S.に住んでいる、
更にこっちに来て一年も経って無いのに現地校通い、
だから本当は日本語に触れている暇は無いのだが--------実は………………
Q会のフリートークを見てください(滅))
D「喰らえ!!N2爆雷!!!!!!」
菊地「き、貴様ぁぁぁああああぁ!」D「もう一度!!!!!」
D「喰らえ!N2爆雷!!!!」
菊地「は、はううううぅうぅうぅぅぅうう!!!!!!!!」
D「愚か者に死!あるのみ!!!!」
菊地「さ、最期にお知らせ!第一話Bパートは上記の理由から遅くなるやもしれまへん。
(だって、Aパート書くだけでも一ヵ月かかっているんだもん(T_T))
よってえ、月観……」
D「お、おい!?兄貴ぃ?」
菊地「あやや、間違えた。コホン!月刊ペースでの更新に成ると思います。」
D「こんな、愚かな兄貴の小説だが、付き合ってくれたら…感謝!!」
菊地「うむ、ご苦労であった!下がりませい!!」
バキッィ!!スタスタ………
菊地「痛ててて……。えー、此の場を借りてお礼をば。」
ネタ:場所提供:深澤直樹:丸山直之
原作:深澤直樹
執筆:菊地啓一(^^;
ありがとう、ございました!!
管理人(その他)のコメント
カヲル「というわけで、正式版です」
アスカ「手抜きはなはだしいわよ!! 正式版を出さずにお試し版とは!!」
ぼこっ!!
カヲル「し、しかたないんだ・・・最初にもらったものがあそこまでだったんだ・・・・」
アスカ「確認せずにアップするアンタが悪い!! おかげでアタシも大恥よ!!」
ばきどかぐしゃ!!
カヲル「きょ、今日はなぐられっぱなし・・・ぐはっ」