サイレント・エヴァ

 

1st Mission −発火するアジア− B Part

 

 

 アジアの軍拡をして、「国家威信を満足させるためだけのオモチャの軍拡だ」と評した人物がいた。

 オモチャの兵隊は、小さいながらも、そこそこ一流の装備を与えられ、狭い域内で、不毛な軍拡競争を繰り広げていた。

 一方が戦闘機を買えば、もう一方は早期警戒機を導入し、一方が空母を買えば、一方は、あわてて駆逐艦を購入した。矛と盾の軍拡競争には、際限がなかった。

 そうする一方で、カンボジア和平は遠い過去のものとなり、周辺諸国は、バッファーゾーンとしてのカンボジアの行く末に介入しようと、時期をねらっていた。

 アメリカは、極東アジアには展開していたが、東南アジアには、ほとんどなんの足場も持ってはいなかった。同様に、東南アジアへの関心もなかった。彼らにとっての関心事は、ミャンマーの人権であり、タイの軍事政権であり、マレーシアやインドネシアの西欧の価値観から乖離した特異な文化形態であり、アメリカ市場を脅かすシンガポールの華僑の存在だった。

 彼らは、この地域が、自らまいた兵器という種で、火薬庫と化しつつあることに注意を払わなかった。

 たとえ実際に火がついても、彼らが駆けつけなければならない必要性などないのだ。今度、ここで先頭に立ち、犠牲を払うのは、極東に出現した、新たな国連常任安保理国に他ならなかった。

 彼らは、この地域の安定にすこぶる意欲的で、太平洋戦争の無惨な失敗を、輝かしい外交努力と、随一の経済パワーで、歴史から抹殺するチャンスをうかがっているのだった。

 それが可能になりつつあることを、誰もが感じとっていた。時代は変わったのだ。新たな覇権ゲームが到来しようとしていた。

 

「親愛なるタイ国民の諸君。私は、陸軍司令官のウー・ゲンドウ将軍である。残念ながら、スルワット殿下を乗せた潜水艦サタヒップは、海中に沈んだままである。この件に関して、わが国政府は、なんら有効な手を打てず、我々の庭先でのシンガポール海軍の傍若無人な振る舞いに、今も対応策を打ち出せずにいる。なぜか? 理由は簡単である。政府は、シンガポールからの資本流入を期待して、弱腰外交を展開する一方、軍事力の整備も怠った。

 このような政府に対して、国防を預かる私は、これ以上の忍従は不可能と判断した。それが、国防に理解を示し、タイ海軍と共に人生を歩まれたスルワット殿下の願いでもあろうと思う。

 われわれは、新たな植民地主義と断固として戦うことをここに表明する。シンガポールの経済侵略と戦い、カンボジアの市場を独占しようともくろむ勢力と戦う。国王陛下とともに、タイの利益を断固として守り抜くことをここに表明する

 私はここに、暫定内閣の総理として就任し、現在の混乱を回復させることを表明する」

 

 「自由と責任党」党首である橋本ユイ首相は、ブラインドから差し込む夕日を眺めながら、「もうこんな時間ですか……」と漏らした。

 海上自衛隊の江田ナオコ海幕長は、慎重に言葉を選びながら説明をしていた。相手は、物腰柔らかな女性ではあるが、政界再編の最後の最後まで表舞台に立つことなく、じっとチャンスを待ち続けていた策士なのだ。若年男性有権者に受けがいい母性的で理知的な美貌からは想像もできないほどの闘志と野心を身につけた女として知られていた。

「間もなく、潜水艦救難母艦の「ちよだ」と「ふしみ」が、呉と横須賀から出港します」

「どのくらいで到着するのです?」

「普通でしたら、五日はかかります。なにしろ原付きバイクに毛の生えた程度のスピードしか出ませんから。最高スピードで、海面も穏やかですので、三日と少々で到着できるかもしれません」

「助かる確率はあるのですか?」

「沈んでいる深さが、八百メートル程度と聞いております。ほとんど生存の可能性はありませんが、この深さで船体を叩いて合図を送るなどのシグナルを発しても、ASEAN諸国の海軍の能力では、探知できないかもしれません」

「我々がトラブルに巻き込まれる可能性は?」

「救難任務ですから」

 橋本ユイ首相は、わずかに眉をしかめてみせることで、内心の不快感を表明してみせた。

「私は総理です。軍隊の経験はありませんし、外務大臣の経験もありません。しかし、可能な限り全ての事態を把握し、予測する義務があります。気休めは止めてください」

 江田ナオコ海幕長は、恐縮してみせた。

「申し訳ございません。トラブルに巻き込まれる可能性は、無論あります。ただ、現状では、それがいかなるトラブルになるか予測がつかないというのが率直なところなのです。そして、それはまた、外務省のご専門でもあります」

 橋本ユイは、今度は穏やかな微笑みを浮かべた見せた。

「先ほど、シンガポール大使の岡崎さんと話をしました。彼はもっとざっくばらんに話をしてくれました。戦争になっても乗り切る覚悟がおありなら、自衛艦を出しなさいと。それにしても、海軍さんというところは、昔からスマートが取り柄だと聞いていますが、まさしくそのようですね。補給艦だけで、万一発生した戦闘行為に巻き込まれる可能性等を考慮しましたか?」

「はい。防御兵器のみを搭載した試験艦を一隻先行させます。これは、もっとも先進的な聴音システムを搭載しており、沈没した潜水艦の位置特定に威力を発揮します。そういう理由で、ASEAN諸国も、武装艦であるとは主張できないと考えました」

「あなた方軍人が言う防御兵器というのは、相当に怪しいものであるという気もしますが、よろしいでしょう。カンボジアの問題もあります。慎重に行動してください。カンボジアの解決にはタイの協力が不可欠です。全力を尽くすことをお願いします。同じく海に生きる仲間のためにも」

「はい、最善を尽くします」

 

 シンガポール大使の岡崎コウゾウは、昼食前に、首相官邸に呼ばれた。官邸の警備は、いつもの三倍の人員に強化されていた。

 迎えは若い秘書官だけで、他の大臣の同席はなかった。

 首相のト・ゲン・ドウは、疲れている様子だった。昨夜から一睡もしていないのは明らかだ。

 ソファから一瞬立ちあがると、白いテーブルクロスの掛けられた閣議用テーブルに、岡崎を導き、その隣に腰掛けると「誰も入れるな」と秘書官に命じた。

「岡崎、君とは長いつきあいだ。正直に言う。途方にくれている」

「バンコクの大使館の様子なら、私も憂慮しています。いざというときは、日本大使館へ避難してください、むこうの大使は、私の後輩です。術を尽くすよう伝えてある」

 バンコクのシンガポール大使館は、サタヒップ沈没の報が入ってから、抗議のデモ隊に包囲されていた。

「どちらを取る? カンボジア情勢に大きな影響力を持つタイと、商売人の国に過ぎないシンガポールと」

「日本人は、そういう二者選択になれてはいないんですな。まあしかし、有り体に言えば、現状ではタイ側につくでしょうな。カンボジアの正常化には、なにしろ新米の安保理事国の面子と外務省の威信がかかっている」

「実はとても不可解なことがある。インドネシアの潜水艦が、船体を叩く音をソナーでキャッチした。その情報を、タイ海軍のフリゲート艦に伝えたが、いまだにタイ国内でその発表がない」

「フリゲート艦からの無線はキャッチしたんですな?」

「出ている。ここだけの話だが、相当部分の解読に成功した。何故だ?」

「それを発表しても、第一に、生存者の中にスルワット殿下がいるかどうかわからない。第二に、スルワット殿下がその中にいたとしても、助かるという保証はない。そして、第三に、スルワット殿下の生還を歓迎しない勢力が海軍の中にもいる」

「シンガポールが発表するとなると、あれこれ勘ぐられることになる。なにより、日本の救難母艦は非武装だ」

「そこまでやりますかな」

「私は、軍人というものを信用しない。メッセンジャーブイが切断された。艦隊の指揮官に直接問い合わせた。犯人は、我が軍でもインドネシア海軍でもないと回答をよこした。タイのフリゲートだよ、多分」

 

 

 カンボジア西部のプルサトとバッタンバンの中間地点に位置するパンチュアンに進出した陸上自衛隊第二派遣施設中隊を指揮する西郷リツコ二佐は、午前五時半に、現地警察官の訪問によってたたき起こされた。

 その警察官は、すっかり怯えている様子で、早く通訳を起こすようゲートでわめきたてた。

 通訳の神田レイ二曹は、タンクトップのまま上着も着ずにゲートに走り、抱え込むようにして警官を導き入れた。

 隊長室がノックされたときには、リツコもまだ下着姿のままだった。

 素手に周囲は相当に明るく、双眼鏡でもあれば、人の顔を判別するくらい簡単だった。

 リツコはベットから起きると、急いで作業服に着替え、ダイニング・ルームでその警官を迎えた。警官と言っても、ピストル一丁腰にぶら下げているだけで、さほどの威厳はない。情報屋として、たまに小遣いを与えてあった。

「本人が司令部棟では目立つから、と」

「かまわないわ。緊急事態だというのは、顔を見ればわかるわ」

 リツコは小さな冷蔵庫から、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、紙コップに注ぎ、二人に差し出した。

「ポルポト派が今夜襲撃。一個大隊規模、迫撃砲を装備」

「指揮官は、誰?」

 神田レイ二曹が通訳した。神田は、生っ粋のカンボジア人で、難民として日本へ渡り、国籍を得て自衛隊に入った口だった。自衛隊には、他に二人、同じ経歴の自衛官がいた。

「クー・トウジ将軍」

 リツコの顔色が真っ青に変わった。

「彼はラオス国境のはずじゃないの?」

「顔を見たと」

「それはまずいわ……」

 クー・トウジ将軍は、ポルポト派きっての智将として知られていた。連戦連勝。一ヶ月前も、パキスタンの部隊が襲撃を受けて、二〇名を超える戦死者を出した挙げ句に白旗を掲げるはめになった。

「バッタンバンから援軍を呼ぶわ。狙いはここなのね」

「そう」

「他に情報は?」

 警官がものすごい早口でしゃべるのを、レイは無表情にリアルタイムで通訳してみせた。

「当分ここには来れない、と」

「ええそうね」

 リツコはベット・ルームに消えると、金庫を開け、使い古した一〇米ドル札一〇枚をセーラムの箱にしまって、警官に差し出した。

「危険を冒して警告してくれたことに感謝します。元気でいて欲しいわ」

 警官は、報酬にありついた瞬間だけ、ちらと笑顔を見せた。

 リツコは、レイが警官をゲートまで送っていくのを見守っていた。やっかいな情報だった。とうてい援軍が来てくれるとは思えない。来たとしても、敵は日にちをずらすだけだ。

 バッタンバンから援軍を呼ぶにしても、陽動作戦の可能性もあった。本当はバッタンバン攻略が狙いなのかもしれないのだ。

 リツコは、プレスの利いたシャツに着替え、さっそく救援を求める電文の作成にかかった。音無アスカならば、きっと来てくれるだろう。つい三日前、そう言い残してここを去ったのだから。

 

 当の音無アスカは、横浜中華街のホリディイン・ホテルの部屋で目覚めた。坂崎ヒカリからの携帯電話によるモーニング・コールであった。

「至急基地へ帰ってきて。レイにもこれから電話入れとくから。一緒に帰ってきてね」

「なんの騒ぎ? 海底に出かけて潜水艦を引っ張ってこいとか言うんじゃないでしょうね?」

「カンボジアからよ。施設部隊が、夜半に精鋭部隊の攻撃を受ける可能性が出てきたそうなの」

「逃げりゃいいのよ」

「軍隊はそうもいかないでしょ。それに、向こうから届いた文面だと、アスカは、いざとなったら半日で駆けつけてみせるって豪語したそうじゃない?」

「酒の席での話よ。まったく……」

「とにかく、昼には政府専用機が成田に到着するそうだから。それで行ってもらうわ」

「あんたも帳簿を抱いて乗り込む?」

「お断りします。土門一尉はどうするの?」

「あいつパラシュート・バッチを持っていたっけ?」

「一応レンジャー・バッジを持っているみたいよ。身上書で読まなかったの?」

「あんなバッジ、マゾッ気のある奴なら誰でも取得できるわ。とりあえず準備させておいて」

「わかったわ。急いでね。ラッシュになる前に高速に乗っちゃってね」

「女の身だしなみには時間がかかるものよ。昼までに帰れるくらいに思っておいて。なんのために帰ってきたんだか……」

 まったく、帰国したそばからこれだもの……。

 アスカは、二〇分後には、司馬レイ一尉と二人で、化粧っ気のない顔を並べて高速に乗っていた。二人して、まるで朝帰りをする不良OLみたいだった。

 

 リツコは、基地を俯瞰撮影した航空写真をテーブル上に並べた。サッカー上を二面並べたほどの基地は、この三ヶ月の間に、少しづつ拡張されていた。まず、視界の妨げになるようなブッシュは切り払い、とりわけ藪が深い西側のフェンスの内側には、塹壕を掘っていた。見張り大は、二〇メートルの高さのものを二基建設してあったし、いつ奇襲を受けてもうろたえることのないよう、重機や建築資材が、建物を囲むように盾として配置してあった。

「西のブッシュを、もう一〇メートル切り開きましょう。朝のうちにやってしまえば怪しまれずに済むわ。本日の作業工程は予定通りこなします。夕方部隊が引き上げたら、土嚢作りに励むわよ。武器は、どれくらいあったかしら?」

「八九式小銃が二〇丁です、先輩」

 副隊長の香我美マヤ三佐があきらめ顔で答えた。

「ロケット砲に迫撃砲でこられては、ひとたまりもありません……」

「見張り台から、一番近いブッシュまで二〇〇メートルもないわ。狙撃手に狙われたならひとたまりもないわね。ここのサーチライトは、リモコン操作できたわね?」

「出来ますが、監視員が地面にいるのでは、監視能力が格段に落ちます、先輩」

「地雷啓開車のリモコンも動くようにしておきなさい。それから地下壕よ。隊舎を囲むように、深さ二メートルの円形の塹壕を掘って、真ん中に交差する十の字の連絡路を作るわ。ここも地下にしましょう。上に一メートルばかりの盛り土をすれば、急場はしのげるわね。その要所要所に、土嚢で囲った砦を築きましょう。その外側をさらに重機や建設機械で固めて……。ここは夜の風向きはどっち?」

「東からです、先輩」

「敵が西のブッシュから来るのであれば、都合がいいわ。西のフェンス際に、ちょっとした溝を掘って、ガソリンのドラム缶をおいておきましょう。いざとなったら火を点けて、煙と炎で威嚇します」

「さすがです、先輩」

 アスカから、そうアドバイスを受けたのだった。

「偵察を出しますか? 先輩」

「やめておきましょう。見晴らしのいい場所もないし、ブッシュが深すぎるわ。いざとうとき、孤立するおそれがあるわ。そういえば、誰か慰問にダッチワイフをもらった者がいたわね。あれは取り上げて、戦闘服を着せて見張り台に立たせておきましょう」

「不潔です、先輩」

「……基地内での我々の移動は、極力目立たないようにすること。作業に出る隊員に知らせる必要はないわ。では始めて。神田二曹は残って。別の任務があるわ」

 神田レイ二曹を残して皆が出ていくと、リツコは、ベットルームから再びドル札を持って出てきた。今度のは額が大きかった。

「一万ドル使っていいわ。隊のトラックでプルサトまで行ってちょうだい。メアス少佐に会って、武器を買ってきて。とりわけロケット砲を歓迎するけれども、なにもなければ中国製のトカレフでもかまわないわ。もし、一万ドル以上の武器を夕方までにここに運んでくれるというのであれば、もっと出してもいいわ。ここで、私自身が払うと伝えてちょうだい」

「彼は危険です。ポルポト派にも横流しをしています。武器買い付けの情報が筒抜けに」

 リツコは、思案ありといった表情で笑った。

「まさにそれが狙いよ。我々の任務は、無用の戦闘を避けることよ。それでポルポト派が今夜の襲撃を思いとどまってくれれば、何も言うことはないわ。金で解決するのは、日本人のお家芸ですもの。だから、メアス少佐に、念押しする必要はないわよ。彼がしゃべりたければ、しゃべらせておきましょう」

「了解」

「いざとなったら、責任は私一人が負うわ。とにかく、武器が無ければ話にならないもの」

 レイが出ていくと、リツコはもう一度、航空写真を眺めた。

 アスカは豪語したものだ。この程度の防備と装備なら、一個小隊をもって、三〇分で陥落させてみせると。リツコは、誰も当てに出来なかった。パキスタン軍の犠牲で、国連軍幹部が話し合ったことといえば、警備の強化だけであった。

 せめて一晩は持ちこたえてみせようと思った。戦争は犠牲を強いるという現実を彼らに理解させることが出来れば、月一の大攻勢を、せめて三ヶ月に一回の頻度に落とすことが出来る。それだけでも、こちらが犠牲を払う価値があるというものであった。

 

 アスカが基地に帰りついたころには、五台のトラックが、自衛隊のペイントを消して、民間の引っ越し業者のペイントを塗りつけられているところだった。なにしろ、政府専用機のダッシュ−四〇〇は、隣接する木更津の滑走路に降ろすわけにはいかないのだ。

 戦闘服姿の土門シンジ一尉が、部隊装備品リストを手に持ち、ジャングル戦装備の項目をチェックし、搭載品を一個一個調べていた。

 戦闘服姿になると、結構身体を鍛えていることがわかった。この歳にしては贅肉が無い。アスカは、内心、彼の評価を一段階アップさせることにした。

「バカシンジ、個人装備だけで降りるわよ。SAL便荷物は無し。自由落下しか出来ないバカは困るわよ。たとえそれが兵士でもね」

「パンツァー・ファーストはどうしましょう?……」

「あんた、バカ? 歩兵相手にそんなもの、いるわけないじゃない。アーウェンがあれば十分よ。施設大隊ってのは、バカじゃないんでしょう?」

「はい、防御に関してはプロです」

「で、本当にあんたも行くつもりなの?」

「……同行させていただければ、光栄であります」

「暑いのよ。二〇キロを超える荷物を背負って、湿度八〇パーセント、気温四〇度を軽く超える地面を匍匐前進しなければならないのよ。だいたいあんたは予防注射も受けていないんでしょう?」

「はあ。でも、体は頑丈ですから」

「しかたないわね。三日もあればカンボジアを脱出できるはずだからね。あんたは、MP5のSDのシリーズを持って行くのよ」

「サイレンサー・タイプのサブ・マシンガンですよね? 威力が落ちますけど……」

「あんた、本当にバカね。音がしない。マズル・フラッシュが見えない。的にならなくて済む。そういう理由よ。第一空挺団きっての降下のベテランをつけてあげるわ。降下訓練塔へ行って、二〇キロ背負ってパラシュートをコントロールして無事に着地するだけの技量を身につけてきなさい」

「了解しました」

「ツォン・レイはどこ?」

「司令部です。千歳の連中と、航路に関して電話で話しているみたいです」

 アスカは、大股で司令部棟へ入り、ブリーフィング・ルームで地図を見つめながら電話で話しているアルビノの少女を見つけた。ツォン・レイ二曹は、形ばかりの敬礼をよこした。

「そういうわけで、故郷に帰ることになったわ。残念だけれども通訳としての出番はあまり期待できそうにないわ」

「大丈夫です」

「うん、そんなに長引かないつもりよ」

「隊長、私が死んでも、可能であるなら遺体は持ち帰って下さい。私はもう日本人です」

「そうするわ。ブッシュでの行動になるわ。ワルサーのWA2000を持っていきなさい。いざという時、ためらうんじゃないわよ。命取りになるからね」

「はい」

 アスカは、それから陸幕へ電話をかけ、むこうの施設部隊が、どんな防御処置を講じているかを尋ねた。こちらの降下地点を示し合わせておく必要もあった。そこまで政府専用機がたどり着ければの話だが……。

 

 

 沈没から四時間が経過しようとしていた。

 シンジ・スルワット副長は、まず残存酸素量を計算させた。

 トウジ・ワライ中尉と、シンジ・スルワット副長、そしてカヲル・ロンノル副長は、電池室の暗がりの中で、額を寄せあって電卓を叩いた。

「生存者は三十八名ですわ。それで割りまして……」

 五八という数字が電卓のモニターに浮かび上がった。

「五八時間。三日ももたないんだ……」

「これでも幸運な方ですわ。炭酸ガス吸着マットは、バッテリー次第ですわ。とにかく、安静に保つことですわな。出来ることなら飯を食うのも止めた方がええんとちゃいます? 飯を食うのもエネルギーをつかうよってからに。そいつは、えらい量の酸素が要り用ですからな」

「乗組員には、三日もつということにしておこうよ。この数字は、三人だけの秘密にしよう」

 シンジ・スルワット副長は、無事だった発令所に帰り、ハンドマイクを取った。無事な乗組員は、めいめいの場所で、傾斜した床で適当にあぐらを組み、ただ呆然としていた。

「みんな、よく聞いて欲しい。こちらは副長だ。僕たちは幸運にも生き残った。それ自体、僕たちが運に恵まれているということなんだ。酸素は、三日はもちそうだ。けれども、これは僕たちが生活レベルを最小限に抑えて酸素消費量を減らしたときの数字なんだ。三日間、救援が来るまで生き延びよう。じきに、艦内は凍りつく。めいめい暖房処置を講じて、睡眠に入って欲しい。食事も制限するし、動いてもいけないんだ。しゃべっても駄目だ。ただひたすらに息をこらえ、時間の経過と戦おう。以上―――」

 上では、アクティブ・ソナーのピンガーの発信音がかすかに聴こえていた。だが、相当に浅い様子で、果たしてこの深さのフネを発見できるか疑問なところだった。

 メッセンジャー・ブイが発見されることを祈らずにはおられなかった。

 

 海幕防衛課に所属する無坂トウジ一尉を乗せたSH−60Jシーホーク対潜ヘリコプターは、宵闇の中、伊豆沖を南下する試験艦「あすか」(四二〇〇トン)を見つけて降下を始めた。

 後部キャビンに乗った対潜員は、彼が乗り込んでいる間に、基盤がむき出しになっていたコンピューターのカバーを締め、ネジを回し、MOディスクを突っ込んで、プログラムが走ることを確認して、

「うふふふふうふ」

 と、メガネを怪しくきらめかせながら、一人ほくそ笑んでいた。

 対潜員でありながら、階級はトウジと同じ一尉、その谷口ケンスケ一尉は、彼の防大同期であった。

「まあ、なんというか、ハイブリッド・アナライザーだからね。大きな変更点は無いよ。細かな改造ですませた」

「当たり前や。で、パフォーマンスは?」

「うふふ、最低でも二倍はいくよ。処理量だけならね。能力自体は、四倍はかたいだろうなあ」

「いざというとき動けば、やろ」

 トウジはいいかげんあきれたように言った。技術屋という連中は、往々にしてスペックにしか興味がいかないから困る。

「まあ、そう言うなよ。技術革新は、技術屋にとっての唯一最大の動機なんだからさ」

 エンジン音が変わり、加速度が身体を見舞い、シーホークは、「あすか」の後部甲板上でホバリング態勢に入った。不格好なトラス状マストが、ライトに照らし出されていた。試験艦とはいえ、このごちゃごちゃしたマストは、ステルス性というものをまったく放棄していた。

 三〇ノットでぶっ飛ばす「あすか」の甲板に、ベアトラップで強制的に引き寄せられる。着艦した瞬間、ケンスケは大事そうにコンピューターの小箱を抱いた。

 ローターが動きを止めるまで待ち、シーバックを持ってデッキに飛び降りると、艦内スピーカーが彼を出迎えてくれた。

「無坂一尉、すまないけれども省力艦なので、出迎えはいないわ。艦長室に顔を出してちょうだい」

 聞き覚えのある声だった。トウジは、シーバックを抱えたまま、艦長室に顔を出すはめになった。

 艦長の土井リツコ二佐は、彼が初めて乗り込んだ護衛艦の副長だった。

 艦長応接室には、副長とおぼしき人物がいた。

「副長の相原マヤ二佐です」

「無坂トウジ一尉、命令により「あすか」への乗艦を命ぜられました。乗艦許可願いますわ」

「はい、許可します。オカの暮らしはどうだった?」

「はあ……。毎員電車の毎日ですわ」

「事態に進展はあった?」

「特に新しい情報はありませんわ。こちらの方が、そういった情報は届いておるんとちゃいますか?」

「いえ、そういう情報じゃなくって、その、ネットワークに乗らない、ヒューマン・インテリジェンスのほう」

「陸の方に、反対する人がいるそうですわ。カンボジアの教訓から、火傷する羽目になるゆうて」

「それはいるんでしょうね……。誰か偉い人が来る予定とかは?」

「聞いておりませんですわ。その場合には、どなたかの座乗もあるんとちゃいます?」

「期待しない方がいいんじゃない。何が起こるか、上の方でも判断しかねているんじゃないかしら?」

 マヤが海図を畳みながらいった。

「救難母艦は、予定通り出港出来るとのことですわ」

「メッセンジャー・ブイが上がっているんでしょう? だったらあたしたちが行く必要、ないじゃない」

「ああ、すんません、忘れてましたわ。最新の情報では、ブイはワイヤーが切れて沈んだっちゅうことです。どうも、シンガポール海軍とタイ海軍が交差するうちに、スクリューに巻き込んだ様子で」

「そんな状況なの? 現場」

「なにしろ、シンガポール海軍もミサイル艇を失っていますやろ。実弾が飛び交っとらんのが不思議なくらいですわ」

「最後に、スルワット殿下と会ったのはいつのこと?」

「去年、訪問艦隊でバンコクを訪れたのが最後です。ついてなかったんやね、彼、とにかく王族としての使命に燃えておったからなあ。率先して危険な任務に就きたいと言うてはりましたわ。国民に範を示すのが、わてらの仕事やと。ところで、防御兵器は搭載しとるんですか?」

「あなた、調べてきてないの?」

「自分は、スルワット殿下の防大同期というだけで、乗艦を命じられたんですわ」

 いかにも困惑しているような口振りであった。

「それで、防御兵器の方は?……」

 その瞬間、突然艦長室の扉が開き、谷口ケンスケ一尉が、期待と興奮にそのメガネをキラキラさせながら部屋に飛び込んできた。

「防御兵器は、はっきり言って完璧だぞ。この防御兵器の鉄のカーテンを突破して本艦を撃沈するには、アメリカ第七艦隊が二つばかりいる。攻撃兵器も、まったく積んでいないというわけじゃない。まあ、大船に乗った気持ちでいてくれ」

「はあ……」

 ここまでいくと、大風呂敷どころか誇大妄想もいいところであった。

「荷物を置かせていただいて、よろしいでっしゃろか?」

「ええ、個室があるわ。迷う前に、対潜員に艦内を案内してもらって」

 対潜員とは、谷口ケンスケ一尉のことだった。

 トウジは適当にうなずくと、自分の寝床を確保し、ケンスケに艦内を案内してもらった。

 彼は、隣であれこれと得意気に「あすか」のことをしゃべくりまくっているケンスケの言葉を聞き流しながら、いささか空恐ろしさのようなものを感じていた。

 艦長はもとより、副長にしても、根が技術者だ。0と1のデジタル思考の集団がこのフネを動かしていると思うと、内心げっそりするような気になってくるのも、しかたのないことであった。

 現場海域までは、この三〇ノットの足を持つ「あすか」にしても、二日はかかる遠い道のりであった。「サタヒップ」の乗組員らが生存している可能性など、万にひとつもなかった。

 

 デジタル時計の文字盤を光らせると、一〇時を回った頃だった。バルクハッチに耳を押し当てると、微かに水が流れる音がした。浸水は、止まったり、新たに始まったりを繰り返していた。艦自体は、水圧によって縮小している。最初浸水していた箇所も、時間が経つにつれ、水圧によって形が整い、まるでパッキングしたように浸水が止まるのだ。新たな浸水は、しかし、逆に水圧によって持ちこたえられなくなったリベット周辺からのものだった。

 幸いにして発令所が生き残っていてくれた。最初の数時間は、バッテリーを外して、緊急の電源確保と、炭酸ガス除去フィルター用のファン確保の作業にあたった。酸素を節約するために、乗組員の七割方はすでに眠っていた。ただし、海面へ彼らの生存を知らせるため、壁がレンチによって打ち鳴らされていた。

 気温は、一〇度以下へと落ち込んでいた。ほとんど冷蔵庫の中にいるようなもので、これが衰弱の引き金になることは目に見えていた。

 シンジ・スルワット副長は、自分が眠りに就く前、生き残った五人の士官を発令所に集めた。

 皆、極端な仰角を取ったフネの中で、なにかにつかまり、もたれていた。油の臭いが蔓延していた。

 マグライトの明かりが一本、天井に向けられ、副長の顔をぼんやりと照らしていた。

「今日はご苦労様。なるべく早く助けが来ることを祈ろう。でも、どんなに早くても、三日以内に深海救難艇が駆けつけてくれる見込みはないと思う。みんなは、正確な残存酸素量を知る立場にはないけれども、おおよその見当はついていると思う。ぎりぎりもって三日なんだ……」

 誰がどんな顔をしているのか、シンジ・スルワット殿下には、ほとんど判別がつかなかった。

「今のうちに、君たちに命令しておくよ。生存者が半分になれば、残りの半分は、その倍を生き延びることが出来る。誰かが、すぐに思いつくと思うけど、僕一人を助けるために、酸素消費量を減らす手段を。

 でも、もう銃は僕が預かっているからね。ここでの僕は、王族である前に、副長なんだ。いかなる事態に陥っても、みんなの生命に責任を負っているんだ。僕は、僕一人が生き残るために、誰一人として部下が犠牲になって欲しくない。そんな行為に走った部下を、僕は絶対に許さない。そんな謀議に荷担したならば、軍法会議に掛ける。また、この問題に関して、話し合うことも禁止するからね。

 全員が、一緒に浮上するか、そうじゃなければ全員ここで死ぬかだ。僕をそのメンバーから排除しようとするのは、侮辱であると判断するよ。

 以上だけど、質問はしないで。ゆっくり休んで欲しい」

 シンジは、マグライトで後部区画へのハッチを照らし、皆にさっさと出るように命じた。一人一人、悲壮な表情で敬礼しながら消えていく。

「明日からは、僕もみんなと一緒に寝るようにするよ。ひとかたまりになっていれば、無茶も出来ないだろうから」

 ハッチを半開きに締めるカヲル・ロンノル航海長に、シンジは言った。斜めになった床にマットレスを敷き、毛布を三枚重ねて横になった。

「正直なところ、カヲル君が真っ先にそういうことを言い出しそうな気がする」

 他の乗組員に聞こえないように小声でつぶやいたシンジに、カヲルは、彼の背中にぴったりと寄り添い、耳もとにささやきかけた。

「もう考えた後さ。乗組員が全員、今死ななければ、シンジ君一人すら助けるなんてことは出来ないだろうね。もし無事に助かれば、なぜ自決しなかったんだと責められるかもしれないが、幸いにしてその時には、君も助かっている。だから非難されるいわれもない。死んだ後のことまでは、考えても仕方がない」

「なるほどね、一筆書いておくよ。その時のために。みんな、献身的に努力したと。国民である兵士と運命を共にしたと言われれば、僕も嬉しいよ」

 シンジは自分に貼りついているカヲルをひっくり返すと、背中を合わせ、マグライトを消した。

「だけれど、シンジ君には是が非でも助かってもらわないと困るな。僕らに乗り上げたフネは何処のものだと思う?」

「スピードを考えると、軍艦だと思うよ。それも、駆逐艦よりもミサイル艇なんじゃないかな。持ち上げるエネルギーでは、こちらが勝っていたしね。だとすると、シンガポール海軍が相手なんじゃないかな」

「タイ国民は、残念ながらシンガポールに対していいイメージを抱いていない。もし僕らの遭難が公になっていれば、今ごろはきっと、シンガポール大使館が焼き討ちにあっているだろうね。陸軍は、このチャンスを見逃しはしない。きっとなにかを仕掛けてくるだろうね」

「なら、僕は浮上は出来ても、水面で溺死ということになるかもしれないね」

「そんなことはやらせないよ。君は海軍の人材だ。連中には手は出せないし、陸軍に寝首をかくような真似もさせない」

「生きて帰ろうね。なるべく早く」

「大丈夫さ」

「とにかく寝よう。酸素は貴重だもの」

 カヲル・ロンノル航海長は、とうに覚悟を決めたいた。少なくとも、生き残った乗組員の半数は殺さなくてはならない。家が貧しい者からリストアップするつもりであった。彼らには、王宮からの弔慰金が余計に支払われるはずだ。

 タイのためであるというより、それが人生の全てを捧げた友人のためであると思った。常に王族としての義務を果たそうと考えているシンジのためを思えば、なんとしても、彼を無事な姿で国民の前に帰さねばならない……。

 

 タイ海軍のフリゲート艦「チャ・パヤ」(一九二四トン)を指揮するムサシ・ロングヲン中佐は、インドネシアのフリゲート艦「ファタヒラ」から発せられた無線で、サタヒップに生存者がいるらしいことを知らされた。

 艦長は、自ら艦内スピーカーを用いて、その情報を皆に伝えた。その瞬間、一分以上にも及ぶ大歓声が、艦内を包んだ。

 ムサシ・ロングヲン中佐は、一通りその歓声につきあった後、胸の内で舌打ちした。これで、メッセンジャー・ブイを切断したのもフイになった。きっと、世界各国が潜水艦の救出に血眼になるであろう。

 彼の知識では、「サタヒップ」が酸素を使い切らぬ内にDSRVがまにあう可能性は全くなかったが。

 その意味ではさして心配していなかったが、危機一髪のところでシンジ・スルワット殿下が助かり、国勢に関してあれこれ発言するような最悪の事態だけは避けねばならなかった。

 シンジ・スルワット殿下は、タイ変革のための、殉教者になって貰うのだ。

 ムサシ・ロングヲン艦長は、そう考えていた。

 誰もがシンジの救出を願っていたわけではなかった。海軍にすら、殉教者として彼が尽くしてくれることを願う集団はいた。

 それが明るみになるのは、残念ながらもっとあとのことだった。

 ムサシ・ロングヲン艦長は、本国へ向けて至急伝を打たせると、このニュースがどう作用するかを考えた。一度は生存していることがわかりながら、結局は助からなかったとなれば、国民の怒りはいやでも増すだろう。

 それを利用する手はある。たとえ明日、日本のDSRVが到着しても、妨害する術はいくらでもあるのだ。その一つ一つを、シンガポールのせいにするのが肝心なのだ。

 

To Be Continued C Part  


  後書き ――もしくは、まったく関係ない人物による言いたい放題――

 

金物屋忘八:
 こんばんわ、おひさしぶりです。長らくお待たせいたしました、「サイレント・エヴァ」1st Mission B Partをお届けいたします。

山岸マユミ:
 こんばんわ。皆様お元気でしたでしょうか。山岸マユミです。さて、店長さん?

金物屋:
 はい、なんでしょう?

マユミ:
 今回は、ほとんどアスカさんと「サイレント・エヴァ」のメンバーが出てきませんでしたね。

金物屋:
 ああ、それですか。まあ、お話の展開上、今回は、次から始まる大活劇の状況説明のようなものですからね。次にアスカの凶悪無比な活躍を、皆さんにご覧いただけると思いますよ。

マユミ:
 凶悪無比、ですか?

金物屋:
 その通りです(キッパリ)。

マユミ:
 …………………………。

金物屋:
 ……どうもあなたは、惣流・アスカ・ラングレーという人間に対して、ものすごい誤解があるような気がするのですが(笑)。

マユミ:
 いえ、アスカさんは、凶暴でも、粗暴でも、極悪でも、サディストでもなくて、ただ単に肩ひじ張っているだけだと信じています。

金物屋:
 なるほど。ですが……。

マユミ:
 私は、碇君を信じているのと同じように、アスカさんも、綾波さんも、信じていますから(キッパリ)。

金物屋:
 ……そうですか。

マユミ:
 ですから、潜水艦の中でのカヲルさんの妖しい行動も、きっと、なにかあるんです。

金物屋:
 ……………。(ううむ、きっちり読んでいるとは。侮り難し(笑))

マユミ:
 よろしいですね。

金物屋:
 はい(汗)。

マユミ:
 それでは、また近いうちに次のお話で、「エデンの黄昏」の皆さん方とお会いできると思っております。今度こそ、碇君を店長さんが救済してくださると信じておりますから。

金物屋:
 ……はあ。それでは皆様、これで失礼いたします。マユミさんも、今日はどうもご苦労さまでした。

マユミ:
 はい。それではこれで失礼いたします。よろしければ、また呼んでいただけると嬉しいです。それでは。


 



金物屋忘八さんへの感想は、こ・ち・ら♪   
そして金物屋さんのぺえじ「楽描工廠」はここ   


管理人(その他)のコメント

カヲル「密室で〜シンジ君と〜ふったりきり〜♪」

 どかばきぐしゃ!

アスカ「おのれはいっぺん死ね! いやいっぺんじゃなく、永遠に日本海溝の奥深くにでも潜水艦と一緒に沈んでいなさい!」

カヲル「う・・・・ひどい言い方・・・・」

アスカ「そもそも乗組員の半分殺すっちゅうんなら、まずアンタが真っ先に行きなさいよ! なにシンジの背中にひっついて耳元に息なんか吹きかけてるのよ! ああ、イヤらしい!」

カヲル「・・・・女の嫉妬は怖いねぇ・・・・ぼそっ」

アスカ「ぬ、ぬあんですってえええええええ!!」

 (しばらくお待ちください)m(_ _)m

アスカ「ふう〜すっきり」

カヲル「うきゅぅ〜〜〜〜〜」

アスカ「しかし金物屋! あとがきの「凶悪無比」ってなによ! いかにもアタシが人外魔境の鬼畜みたいな言い方をして! こんな人畜無害な14歳の乙女を評する台詞としては最悪じゃない?」

カヲル「う、うぐぐ・・・・」

アスカ「ん? 何か言いたいことがあるの?(にやり)」

ゲンドウ「ふっ。彼は「君が人畜無害なら、放射能も毒ガスもダイオキシンも人畜無害なものだね、といいたいらしいぞ。うむ」

カヲル「げっ! な、なにを!」

アスカ「ほぉ〜〜〜〜〜〜まだそれだけのことを言う元気が残ってたのね〜(にやり)」

カヲル「ぬ、ぬれぎぬだ〜!!」

アスカ「じゃあ本当に思ってなかったの?」

カヲル「いや、そういうわけじゃないけど・・・・あ(^^;」

アスカ「やっぱりそうじゃないの!」

 (お子さまには見せないでください)m(_ _)m

カヲル「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アスカ「ふっ。勝利!」

ゲンドウ「それでは、さらばだ! あでぃお〜す♪」

アスカ「・・・・・? ね、あのオヤヂは」


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