そして、それから。

 

第一話 平穏な日々

 

 

シンジ「アスカー。急がないと学校に遅れちゃうよ。」

アスカ「そんなこといちいち言われなくても分かっているわよ。」

カヲル「その割には毎日毎日遅刻しかけているけどね。」

アスカ「う、うるさいわね。」

 

ここは第三新東京市。シンジたちは高校一年生になっていた。まだ復旧が十分でないので歩道は

閑散としている。そこをシンジたち4人は全力疾走していた。

 

レイ「予鈴がなったわ。急ぎましょう。」

 

そういって速度を上げるレイ。対抗してアスカも速度を上げる。その様子をカヲルはシンジと併走しつつ

見ていた。顔には苦笑の色が濃い。

 

カヲル「やれやれ。あの二人もよく毎日飽きないものだね、シンジ君。」

シンジ「うん、そうだね。まあ、以前みたいに喧嘩ばかりしているよりは良いんじゃないかな。」

 

話しながらも走る速度が少しも下がらない。角を曲がると学校が見えてきた。

 

カヲル「まずいね、門が閉まり始めている。やはり朝のあれがまずかったかな。」

シンジ「そうだね。今度アスカやレイに言っておいてよ。」

 

今朝、シンジはいつも通りに起きた。レイやカヲルもだ。アスカはいつも通りシンジに起こしてもらった。

このとき寝ぼけたアスカがシンジをKOして再び寝てしまわなければ、或いは朝食の時に目玉焼きが

半熟過ぎるとだだをこねてシンジがそれを焼き直したりしなければ、それを見たレイがアスカへの

対抗心からシンジにおかわりを要求したりしなければ或いはこんなことにならなかったかもしれない・・・

 

そんなことを考えつつカヲルは速度を上げ、シンジに先行する。正門に面した校舎の窓から多数の生徒が

こちらを見ている。さっきまではレイとアスカ目当ての男子生徒が主だったが、今度はシンジとカヲル

目当ての女子生徒中心だ。

 

教師「こら、渚、それに碇。もう間にあわんぞ。諦めて・・・」

 

そこまで言って生活指導の教師の目が驚愕に見開かれる。カヲルが勢いを殺さずに跳び上がり左手だけで

4分の3程閉まった門に掴まったのだ。そこにやや遅れてきたシンジが跳び上がってくる。それを右手で

支えると、シンジはそれを足場にしてさらにもう一回跳び、羽根のように軽やかな動きで着地した。

一方カヲルは足で門を蹴って左手を軸にして一回転し、優雅に着地する。そして門が閉まったそのときには

二人は教室へと走り出していた。

 

シンジ「ちゃんと門が閉まる前に学校内に入ったから遅刻じゃないですよー。」

 

呆然とする教師に走りながら一応断っておく。カヲルはといえば見物している女生徒に手など振っている。

 

カヲル「じゃ、シンジ君、お昼休みにね。」

シンジ「うん、カヲルくん。」

 

カヲルと別れるとシンジは自分の教室に入った。シンジは一年なので一階。カヲルは二年なので二階だ。

教室に入るなりトウジが話しかけてきた。

 

トウジ「おはようさん。いやー、せんせ今日はまたえらくやばかったやないかー。」

シンジ「おはよう、トウジ。今日はちょっとね。」

トウジ「なんや。また惣流のせいかい。」

アスカ「ちょっと、なんでそうなるのよ。」

シンジ「その通りだと思うけど・・・」

アスカ「あんたは黙ってて。だいたい遅れた原因の一つにはレイだってあるのよ。私のせいだけに

しないでよ。」

レイ「原因の大半はあなたでしょ。」

ヒカリ「もう、いいかげんにして。ほら、先生が来たわよ。鈴原もアスカもやめなさい!」

アスカ「しょうがないわね。ヒカリに免じてここは許してあげるわ。」

トウジ「いいんちょに免じて許したるわ。」

ふんっとそっぽを向くトウジとアスカ。そのいつもの風景にケンスケは呟く。

 

ケンスケ「平和だねー。」

 

 

 

アダムとともに初号機がいなくなった後、ミサトたちはマギを使って国連側にゼーレの過去の悪事を

すべてばらし、サードインパクトを起こそうとしているのはゼーレだと主張した。量産型をすべて失い、

かつ初号機の圧倒的な力を見せつけられて既に戦闘意欲を失っていた国連軍はこの主張を受けて

ゼーレの調査に乗り出した。しかし、ゼーレのメンバーは全員行方不明。しかもネルフのほうでも

全てを知っているはずのゲンドウと冬月が行方不明。結局、ゼーレに関係のあったと思われる政治家、

軍人その他を処罰してこの件は決着がついた。ネルフは組織そのものは残ったがその権限は大幅に縮小。

使徒の調査、及びエヴァの技術の管理、研究が主な仕事になった。

そして、失踪したゲンドウと冬月の代わりにミサトが司令、リツコが副司令になった。

 

 

シンジたちは現在、4人でシンジのマンションに住んでいる。あの後、レイがシンジと住みたいと

言い出したのだ。

 

レイ「碇くん・・・私碇くんと一緒に住みたい。」

シンジ「ええっ?」

アスカ「なんですってえ?あんたなに考えてるのよ。」

レイ「私は戸籍上は碇くんの妹なのよ。一緒に住んで当然よ。あなたこそどうして碇くんと一緒に

住んでいるの。」

アスカ「う・・・それは・・・」

カヲル「僕も君と一緒に住みたいな。」

アスカ「あんたまで・・・どういうつもりよ?」

カヲル「好きな人のそばにいたいってことさ。君は違うのかい?」

シンジ「えぇ?」

 

思わず赤くなるシンジ。それを見て別な意味で赤くなるアスカ。こんな時素直になれない自分が恨めしい。

 

アスカ「あんたはどうなのよ、シンジ。誰と住みたいのかはっきりしなさいよ。」

 

3人の視線がシンジに集中する。

 

シンジ「えっと・・・・べつに一人を選ばなきゃならない訳じゃないんだし、みんなで一緒に住めば

良いんじゃ・・・・」

アスカ「あんた馬鹿ぁ?あのマンションにはもう後一人しか住めないわよ。カヲルかレイのどっちか

を選びなさいよ。」

カヲル「別にそうしなくてもアスカくんがでていって僕とレイがシンジ君と住むって選択支もあるよ、

シンジ君。」

レイ「それ、ナイス。」

アスカ「なんですってえ。何であたしがでていかなきゃなんないのよ。」

カヲル「簡単だよ。僕もレイもシンジ君と住みたい理由がある。でも君にはない。だからさ。それとも君にも

シンジ君と住みたいわけがあるのかい?」

アスカ「(くっ・・・こいつ、わかってていってるんじゃないでしょうね。)」

シンジ「あのさ、別にそんなことしなくてもみんなで住めば良いんじゃないかな。指令になってから

ミサトさんは全然マンションに帰ってこないし、どこかに広いマンションを借りれば・・・」

カヲル「ま、妥当な案だね。・・・・・それにしてはアスカくんは不満そうだけど。もしかしてシンジ君

と二人きりの方がよかったのかい?」

アスカ「そ、そんなわけないでしょ。ふざけないでよ。」

 

 

こうして4人で住むことになった。もっとも、アスカはミサトがいなくなってこれでようやくシンジと

二人きり、という思惑がはずれてかなり不機嫌だったが。

 

 

 

アスカ「ちょっとシンジ、なにぼうっとしてんのよ。しゃきっとしなさいよ、しゃきっと。」

 

アスカの声で現実に戻ったシンジ。今は男女混合の体育の時間だ。普段は男女別なのだが先生が休みとか

いうわけでこうなった。バスケをやっているのだが人数が多いので半分ずつ試合をすることになっている。

暇だったのでつい回想に耽ってしまったようだ。見ればトウジがシュートを決めたところだった。

トウジの足はクローン技術の粋を集めて作られたものだ。初めはさんざん苦労したらしいが、今では

全く問題がなくなっている。かつて、トウジが片足を失ったということが信じられないくらいだ。

尤も、本人の努力によるところも大きいのだが・・・

 

試合はトウジたちのチームの勝ちだった。続いてシンジたちの出番になる。

女子の方はレイとアスカが別のチームになったようだ。

 

トウジ「なんや、綾波と惣流は別のチームかい。いいんちょ、こりゃあかんで。」

 

シンジはトウジの意見に全面的に賛成した。何しろあの二人は何かにつけて張り合っている。

その原因が自分だとは気づきもしない鈍いシンジだった。

 

シンジ「(・・・どちらかは不機嫌になるだろうな。お昼までには機嫌がよくなってると

良いんだけど・・・)」

 

そんなことを考えつつも、とりあえずシンジは試合に集中する。パスをもらってたてつづけに

シュートを決める。伊達にエヴァのパイロットをしていたわけではない。まあ、それだけではないのだが。

この活躍も今のシンジの運動能力からすれば当然のことだった。もう一学期も終わりだというのに未だに

運動部の勧誘が絶えないほどなのだ。

とりあえず自分のチームが圧倒的に有利になったので、シンジは防御に回った。ちらりと女子の試合を

見てみるとこちらは既にレイ対アスカの一対一の勝負になっていた。

 

アスカ「今日こそは決着をつけてあげるわ、レイ。」

レイ「望むところよ。」

 

ハイレベルな攻防を続けるふたり。いつもなら教師かヒカリが止めるのだが、教師はおらずヒカリは

トウジと楽しそうに話している。勝負に熱中する二人は授業が終わったのにも気が付かなかった。

 

シンジ「二人とも、もう止めてお昼にしようよ。」

 

シンジの声で我に返るレイとアスカ。既に他のクラスメイトは更衣室へと向かっている。

 

アスカ「そうね、今日のところは引き分けにしておいてあげるわ。」

 

結局、アスカとレイの決着は着かなかったようだ。無難な結果になってシンジはほっとした

 

 

 

トウジ「はー、やっと終わった。めしやめしー。」

ケンスケ「なんかトウジはいつもそればっかりだなあ。」

トウジ「当たり前や。いいんちょの弁当は最高やからなー。」

シンジ「アスカー、先に屋上に行ってるよー。」

アスカ「わかったわ。」

 

制服に着替えて屋上に上る。既にカヲルは来ていた。

 

カヲル「おや、レイとアスカは?」

シンジ「あとかたずけがあるから少し遅れるってさ。」

カヲル「ふーん。」

少ししてレイとアスカがやってくる。

アスカ「あーおなかすいちゃった。」

シンジ「じゃ食べよう。」

 

和やかな談笑とともにいつものメンバー(シンジ、アスカ、レイ、カヲル、ヒカリ、トウジ、ケンスケ)

での食事が始まる。

 

ケンスケ「後一週間で夏休みかあ。トウジはなんか予定があるのかい。」

トウジ「わしか?わしは休み明けに大会があるからなー。休み中部活があると思うで。」

ヒカリ「アスカは何か予定あるの?」

アスカ「うん。ねえシンジ、前から計画してた旅行はどうなったのよ。」

シンジ「うーん・・・・あまり考えてないけど京都とかはどうかなあ。」

アスカ「えー。」

シンジ「別にきっちり予定を立てなくても適当にいろいろ見て回れば良いんじゃないかな。どうせ時間も

予算も十分あるんだし。」

カヲル「さすがシンジ君。良いアイディアだね。」

アスカ「それって単なる行き当たりばったりって言わない?」

レイ「私はそれで良いと思うわ。」

アスカ「・・・・そうね。たまには当てもなくぶらぶらするのも悪くないかもしれないわね。」

 

そのやりとりを見てシンジは思わず微笑んだ。以前のアスカならムキになって反対していただろう。

シンジは今の状況に幸せを感じていた。そして何時までもこの平和な時が続けばいいと思った。

今まで続いてきた、そしてこれからも続くと信じていた平穏な日々が。

 

 

だが、いつかはこのときが終わると知っていた。

でも認めたくなかった。後少しだけ・・・・・・・この一時の平和を噛みしめていたかった。

 

 

 

そのときが何時なのか今のシンジたちには知る由もなく、時はただ穏やかに過ぎていく・・・・・・

 

シンジたちの運命の歯車は再び動き出す。

 

そして始まりを告げるモノは闇の中で覚醒の時を迎えようとしていた。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

後書き

 

K「ついに始まってしまった・・・・」

 

ごすうっ

 

アスカ「そんなこというくらいならやらなきゃいいでしょ。だいたいなんであたしがヒロインのラブコメ

ものにしないのよ。」

カヲル「既に気絶しているよ・・・作者は。」

アスカ「ちっ・・・打ち所が悪かったようね。」

レイ「あなたの怪力で殴ればどこだろうと大差はないわ。」

シンジ「でも、作者が気絶しちゃったら後書きが続かないよ。」

カヲル「心配いらないよ。僕が代わりをつとめるから。えーと、この話は前作の続きということになって

いるのでそちらも見てくれると嬉しいな。」

アスカ「あーいう話の続きが何でこんなのになるのよ。シリアスものを書くなんて無謀ねえ。」

レイ「さあ・・・知らない。」

シンジ「前作の最後でいっていた謎は解けるのかな?」

カヲル「まあ、流石に真相は全て闇の中に・・・なんて事はしないだろうさ。」

K「しません。ちゃんと書きます。」

レイ「あら、復活したわ。」

アスカ「映画を見てから・・・とかいうんじゃないでしょうね。」

K「ぎくううっ」

レイ「ありえるわ・・・・この人、既に鋼鉄のガールフレンドの影響を受けているもの。」

K「はうううっ」

シンジ「掲示板に書いていたようにマナがでてくるの?」

アスカ「何嬉しそうにしてるのよ、シンジ。」

シンジ「いや・・・別に・・・その・・・・・」

アスカ「大丈夫なんでしょうね?(じろり)」

K「そうだ、僕は僕だ。僕でしかない。僕はここにいたい!ここにいてもいいんだ。」

カヲル「既に壊れてしまったようだね。この作者は。」

 



Kさんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

カヲル「いらっしゃい、Kさん。この分譲住宅へようこそ」

アスカ「すでにコンフォート17マンションで会っているくせに・・・・ぼそっ」

カヲル「気分の問題だよ、気分の」

アスカ「しかし、今回の話も何か裏がありそう」

カヲル「なーに。そんなもの気にする必要はないさ。なにしろこの物語はやがて僕とシンジ君の純情熱愛ダイナミックサスペンスアクションロマンス長編小説になるんだからね」

アスカ「・・・・今の、もう一回言ってくれるかしら?(にやり)」

カヲル「え、えーと、純情熱愛ダイナミックスリルとサスペンス・・・・らぶらぶアクションコメディ長編・・・・あれ、何か違うな」

アスカ「繰り返せないような意味不明の台詞を言うんじゃない!!」

 どこっばきっぐしゃっ

カヲル「ふひ〜っ」

アスカ「しかし、ファーストのやつ、いつのまにあんな手管を身につけたのかしら・・・・侮れないわね・・・・ちいっ」

レイ 「呼んだ?」

アスカ「呼んでないっ!!」

レイ 「・・・・そう・・・・」

アスカ「まったく、自分の名前を何処で聞きつけてくるのかしらね、あの女」

カヲル「それはだね〜」

アスカ「余計な解説も不要!!」

 げしげしげしっ!!

カヲル「あうううううううっ」



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