昭和89年
平成26年
第二新東京テレビ局
「いやだ、絶対にいやだ」
テレビ局内にシンジ皇子の叫び声がこだまする。
「こんっのバカシンジ、あたしがこれほど頼んでるのにいやだって〜の」
冷たい目で睨むは、ブラウンシュヴァイク公アスカ。
「僕は前から皇子とか皇帝とかいやだったんだ。そんなの馬鹿々しいじゃないか。そして一番いやなのは、あの父さんから何かを受け継ぐことだ」
ひどい嫌われようである。アスカは突然、目をふせる。
「ひどい・・・なんであたしたちがどれほどの苦労と犠牲の上でここまでこれたと思ってるの・・・」
「アスカ・・・」
シンジはアスカの目から一筋の涙がこぼれ落ちるのを見た。
「すべては・・・あんたの・・・」
「すべては、また貴族生活が戻ってうはうはするためですよね、叔父上」
横からつぶやいたリツコ男爵にアスカの拳が炸裂する。
ドガァ
「あんたバカァ?! なんでこの場で本当のこというのよ!!」
殴った瞬間アスカのポケットから、目薬が転げ落ちる。
「・・・・・じゃ」
全てを悟ったシンジは、そう言い放ったのちいきなり逃げだした。
「させるか〜!! とぉう」
ズバッ
「うわぁー」
アスカのスライディングタックルがシンジに決まる。アスカは急いで自分の靴下を脱ぎ、シンジの鼻先に押しつける。
「むぐっむぐぐぐぐ・・・ぱた」
シンジは気を失った。
「ったく、世話かけんじゃないわよ。リツコ、しょうがないからシンジの意思に関係なくやってもらうわ。準備しておいて」
「わかりました」
ニヤリ
リツコは邪悪な笑みを浮かべた。
富士山要塞指令室
指令室にいる全ての者がモニターに注目している。その中で目が血走り、息が荒いのが富士山要塞司令官惣流ラングレーである。
「馬鹿シンジ!! そんなとこでなにやってるのよ」
っとモニターに向かってどらりちらす。となりにいるフレデリカ・グリーンヒカリは読者目線で言った。
「よくテレビに話しかける人っていますよね・・・ぐはっ」
とげし
惣流ラングレーの膝蹴りが決まった。
「あんた、こんどこそ本気で死んでみる?」
ぷるぷるぷるっとグリーンヒカリを首を横に振る。
『それでは、我が自由同盟と帝国正統政府がともに手を取り合い簒奪された帝国を取り戻し、その暁には平和条約が結ばれ長かった戦争も終結するということですね、ブラウンシュヴァイク公』
『そうです。今まで戦争が長引いたのも、25話26話が意味不明なのも、納豆が臭いのも、み〜んな青髪の小娘のしわざです。シンジ皇帝陛下も御立腹ですわ』
『うむ、余はご不満なのだ』
「ぬわにが、余よ!! なにがなのだよ!! 馬鹿シンジィ!!!」
どなる惣流ラングレー。
「・・・あの・・・どう見ても、後ろの人が言ってるみたいなんですけど・・・」
申し訳なさそうにグリーンヒカリ。画面のシンジは首手足がだらーんとなってままで、後ろにいる黒子の格好をしたリツコ男爵に操られていた。もちろん今のはリツコが言ったのである。
『それでは、シンジ皇帝陛下に抱負を語っていただきましょう』
『うむ、余は平和になったら、このアスカとふわふわ〜を楽しむのだ。であるからして、皆のもの余につくすがいいぞなもし』
『まあ、皇帝陛下ったらぁ』
アスカは顔を手で隠しいやんいやんしている。
「こ、このあたしとは一度もふわふわ〜をしたことがないってのに、あんな女とやりたいですってえ〜」
「ですから、後ろの人ですってば・・・それに、そのふわふわ〜ってなんなんですか」
グリーンヒカリの言ってることには耳をかさず、惣流ラングレーは突然薄気味悪い笑い顔を浮かべた。
「フフフフフフフフ、殺す。 このあたしの手で殺す。 全軍、戦闘準備。目標は第二新東京市よ!!」
「だめですってば、提督。そんな私的な戦争はゆるされませんよ〜」
司令席を降りてドッグに向かおうとする惣流ラングレーにグリーンヒカリは抱きついて止めているが、ずるずると引っ張られてしまう。その時警報が鳴った。
「帝国側にて艦隊発見。数、計測不能」
「提督ぅ〜、聞こえてますかぁ〜、敵が来たんですよ」
ようやく、惣流ラングレーは止まった。
「ふっ、こんなときに敵とはね・・・・やっこさんにこの時期に来たことを地獄に行っても後悔させてやるわ」
先ほどの笑い顔のまま言った。
第三新東京市NERV帝国宮殿ターミナルドグマ
すこし時間が戻る。
ドオン
室内に乾いた銃声が鳴り響いた。肩を押さえその場にくずれおちるカヲル。
「そこまでにしてください。カヲル様」
銃の先から煙がとちのぼっている。それを手に持っているのは帝国軍総参謀長オーベルカジ上級大将であった。
「くっ、とんだ伏兵だね・・・」
カヲルは辛いながらも笑みを絶やさなかった。
「綾波伯は帝国にとって大事なお方。一人にさせるわけにはいまきせんよ」
オーベルカジは銃口をカヲルに向けたまま、ちらりと綾波伯レイの方に目をやる。だがカヲルはその隙をのがさなかった。
ダン
ドオン
一歩遅れてオーベルカジの銃声が鳴った、しかしカヲルはすでにその場にいなかった。
「さすが皇帝陛下のチルドレン。後ろからじゃないと凡人には勝てませんな・・・おっと、綾波伯は」
いつもの調子が戻ったのか軽口をたたき、倒れているレイの方に駆け寄った。すばやく脈と呼吸を確認する。
「ふう・・無事か。あれだけの攻撃を受けてこの程度か・・・皇帝陛下に感謝すべきかな」
オーベルカジはレイを抱きかかえ、ターミナルドグマを後にした。
第三新東京市綾波元帥府
応急手当てをした綾波伯レイは元帥府にて、JA自由同盟と帝国貴族が手を結んだことを聞いた。
「そのうえ、シンジ皇子を皇帝に据えるようです。貴族達にシンジ皇子を先に奪われたのは私の失態です」
オーベルカジは頭を下げる。二人とも先ほどのことは話題にのぼらせない。
「済んだことはしかたがないわ。それにしても同盟がこれほど敵対してくるとはね・・・」
「同盟は帝国との両存を望まなかったのでしょうな」
白い手を優美なあごにあて、レイはしばらく考えた。
「最高作戦会議を召集して」
「わかりました」
第三新東京市海鰯
名前変更のショックで精神病院に入院していた帝国軍大将てミュサトが高級士官のクラブ「海鰯」に久しぶりに顔を見せた。きょろきょろと見まわしオーベルカジがいないことを確認してがっくりきたが、キープ君のミッターマコトがロンゲシゲルと一緒に飲んでいたのでそこにたかりに行った。
「いや〜、病院の鉄格子も見飽きてね。引きちぎって逃げてきたわ」
そういいながらがぶがぶと酒を飲み干す。
「てミュサトさんの場合、お酒が飲みたかったからでしょ」
あこがれのてミュサトが一緒に飲んでくれて、ミッターマコトはほくほくである。一人疎外感を感じたロンゲシゲルは二人に別れをつげて帰っていた。
「な〜に、ロンゲシゲル提督、また誰かに手をだしてるの」
「こんどは、ミス第三新東京市のマヤちゃんみたいです。どーせ、いつものパターンで振られるんですよ」
普段仲がよさそうなミッターマコトとロンゲシゲルであったが、お酒が入るとつい本音がでてしまう。ついこの間も、
「女ってやつは、プレゼントしたり食事をおごったりしてるのに、なんだって一発やらしてくれない」
「そりゃお前がもてないからだろ」
「そのうえ、電話で呼ばれりゃ車で向いにいったり、靴をなめたりしてるのになんでだ!!」
「女というものはそういうものさ。男を便利に使うことばかり考えてるんだよ」
実際てミュサトにそういう扱いを受けてるだけあって、ミッターマコトの言葉には実感がこもっている。だが手玉に取られている数から言ったらロンゲシゲルのほうが上だった。
「偉そうなことを言うな。お前がおれ以上に女を知っているわけがない」
「おれはエヴァンゲリオンを知っている。エヴァンゲリオンの葛城さんは女だ」
「アニメのキャラなんて女のうちにはいらん」
「この軽薄野郎、なんでそんなことがわかる」
「なにかというと、エヴァンゲリオン、エヴァンゲリオンだ。このオタク野郎。アニメのキャラがそんなにいいか、二次元コンプレックスめ」
そして、殴りあいになるのであった。翌日になってもちゃんと喧嘩した理由ははっきりおぼえているのだが、他に友達もいないのでまたにこにこしてつきあっている。こんな二人が「帝国の双璧」と呼ばれているようでは帝国も意外と底が浅いのかもしれない。
綾波元帥府
最高作成会議の参列者は十八人になった。
帝国元帥綾波伯レイ、主席副官シトライト少将、次席副官リュツコ大尉、職場の花ヒルデガルド・マヤ。三名の上級大将−−オーベルカジ、ロンゲシゲル、ミッターマコト。十一名の大将−−キールン、てミュサト、ファーユツキハイト、トッジ、ケンスケラー、ビックリヒカリ、メックリツコー、シュタユインメッツ、レイネンカンプ、アカギナォッコ、数学の先生、以上である。
「卿ら今日集ってもらったのは、貴族達と結び付き帝国に害をなすJA自由同盟を叩きつぶすため・・・そして」
綾波伯レイはいったん言葉を切る。
「今回は富士山回廊を通らず、大坂回廊から同盟に侵入するわ」
場がざわめく。帝国と同盟の戦争では大坂回廊は一種のタブーになっていたのだった。なぜなら・・・
「そ、それでは、おたくアイテムが失われてしまいます」
ミッターマコトがしどろもどろで言う。
「その年になってもほしい?」
14歳の少女にそういわれてしまったら、こう答えるしかないだろう。
「・・・・・い゛り゛ま゛せ゛ん゛」
さめざめと涙を流すミッターマコト。ほんんどの提督達も心の中で泣いていた。
「でぇ〜、これだけすっごい作戦なんですから、それにみあうチョーかっこいい作戦名がほしいですよね」
暗くなった雰囲気を明るくしようと、てミュサトは懸命にもりたてる。
「作戦名は、『エデンの黄昏』作戦」
レイは淡々と答えた。
おおー
(なんだか意味はわかんないけど、とにかくすごい自信だ)
どよめきながらも、理解に苦しむ提督達である。
そして、作戦の段取りがオーベルカジによって発表された。
「まず、ロンゲシゲル提督の陽動部隊が富士山要塞を攻撃。その後同盟の目が富士山要塞に注目しだい、本体が大坂を急襲・占領する。そこで軍再編成し、同盟に侵攻する。よろしいですか、綾波伯」
レイは無言のままうなずいた。
富士山要塞
指令室内はあわただしく動いている。索敵に、第二新東京市への連絡に、艦隊出撃準備に、要塞砲の球込めなどである。
「敵はトゥールハンマーの射程ぎりぎりのところで、停滞中」
索敵結果が要塞司令の惣流ラングレーのもとに届く。
「ちっ、うざいわね〜。とっとと突撃してこないかしら・・・第二新東京市への援軍要請は」
副官のフレデリカ・グリーンヒカリに訪ねる。グリーンヒカリは持っているメモを見ながら答えた。
「えーと、『我に余剰戦力なし、現状戦力にて応戦されたし』です・・・・あうっ」
がんっ
惣流ラングレーの踵落としが決まった。
「あいつら馬鹿ぁ?! この富士山要塞が唯一の防衛線じゃない!! ここを守んないでどこ守るのよー」
「どこなんでしょうね」
復活したグリーンヒカリは余計な突っ込みをして、また殴られた。さすがの惣流ラングレーも帝国が大坂回廊を目指しているということには気がつかなかった。
第二新東京市統合作戦本部ドック
ドックには同盟の最新鋭艦が何台も並んでいる。だがそれらには帝国の旗が掲げられていた。
「ふふ、ヨブ・時田も気前がいいわね。こんなに戦艦がもらえるとはね」
ほくほくのブラウンシュヴァイク公アスカ。実は第二新東京市にある戦艦はみ〜んなあげちゃてて、富士山要塞に援軍は送れなかったのだ。
「よく、これほどの最新鋭をゆずっていただけましたな、叔父上」
どう見ても、年上にしか見えないリツコ男爵がたずねる。
「ブラウンシュヴァイク家に伝わるトランスフォーマーのLDボックスをくれてやったのよ。そしたらあの中年、涙流してよろこんでたわ」
「同盟も大したことはありませんな」
「せいぜいあたしの役にたってもらうわ。そういえば、シンジ・・・じゃない、皇帝陛下はどうしてる」
「今確認します」
そう言えと、リツコは携帯電話を取った。
「もしもし・・・うんうん・・・そうそう、あそこで切るのは酷いわよね。あれ見た後、夏までどうしろっていうのよね・・・うん、じゃ、ばいばい。逃げられたそうです」
ばきっ
アスカのコークスクリューパンチがリツコの顔面をとらえた。
「あんた、バカァ?! 何なごんだ会話してんのよ!! とっとと捕まえに行きなさいよ!!!」
「はひぃ」
あわてて、リツコはその場から逃げ出す。息を整えたアスカは一人寂しくたたずんでいた。
「・・・バカシンジ・・・あたしのこと嫌いになったの・・・・」
大坂
シンジ皇子(本人が皇帝をいやがるので皇子と呼称)は第二新東京市から逃げ出して、大坂に戻ってきた。本当なら富士山要塞に行きたかったが、戦争状態に入ったため戻れなかったのだ。
「やれやれひどい目にあったな・・・富士山要塞が落ち着くまでここで、遥か未来めざすための羽を休めますかね」
シンジは公園のベンチで体を伸ばして、空を見ていた。
「ん?!」
快晴の空に黒い染みのようなものが見える。その染みはだんだんと広がっていった。シンジは立ち上がり目を凝らして見てみる。
「・・・まさか、帝国軍・・・綾波か!!」
長い間、中立を保っていた大坂がついに帝国軍の手に落ちた。同盟も大坂も帝国いる人達でさえも誰もが夢想だにしなかった現実である。大坂にいる人達はパニックを起こしみんな行商人の格好をして、帝国軍にものを売り歩いたという。
「綾波・・・会って話をしなくちゃ・・・父さんのことを」
シンジはその場からかけ出していた。
・・・第三新東京市の歴史が、また一ページ・・・
作者コメントのようなもの
青柳「だうも、青柳康平です」
グリーンヒカリ「みなさんこんにちは、フレデリカ・グリーンヒカリです」
あ「今回はすちゃ裏をまねして、こんな形式にしてみました」
ぐ「作者コメント書くことがなくなっちゃったんですよね」
あ「うーん、まーそうだね。それに、たまにはこういうのもいいかなーなんて思ってたんだよ」
ぐ「そうですね。作者まじりの対談っていままで一回もなかったですから」
あ「メールではやってたんだけどね」
ぐ「それにしても三英伝も七話目になりましたね」
あ「ううーん、予想よりもおくれてるんだよ。銀英伝一冊につき一話のつもりで10話くらいで終わらそうとおもったんだけど・・・」
ぐ「六話、七話ともに銀英伝第四巻の話でしたね」
あ「こまった〜、これじゃあいつになっても終わらないよ。しょうがないから第一次ラグナロックと第二次ラグナロックを同時にやっちゃおうか」
ぐ「ラグナロックっていうのは、三英伝でいう『エデンの黄昏』のことです。それにしてもいいんですか、そんなことしちゃって」
あ「だって、このあとって金髪のこぞうが病気がちになってくんだろ。綾波伯に病気は似合わないよ」
ぐ「そうですね、私と惣流ラングレー提督が結婚するわけにもいかないですからね」
あ「決め決め、圧縮しよっと」
ぐ「がんばってくださいね、父さん」
あ「はぁ? 今何て言った」
ぐ「だから、がんばってくざさい、父さんと」
あ「なんで、私が父さんなんだよ!!」
ぐ「だって、私たちの創造主ですからね。だからグリーンヒカリの父さんなんですよ、ニヤリ」
あ「・・・君、三英伝での役がらに不満があるだろ」
ぐ「別に、毎回毎回殴られることに関してはすこーしも不満はありませんよ」
あ「わかったこうしよう。トウジを何らかの形で惣流ラングレーの幕僚に加えようじゃないか」
ぐ「いやー、青柳さん。早く次を書いてくださいよ次を」
あ「・・・君もなかなか現金な人だな・・まあいいや」
ぐ「それよりも、いつものシメをやらないと」
あ「そうだな・・・ごほん、ナギサちゃーん、見ての通り紳士的な私ですよ〜、全然こわくなーい。だからいつでも洋館に遊びにきてね」
ぐ「・・・分譲住宅のはずれにこの作者の本性が隠されてます・・・」
あ「貴様、次も不幸にしてやる」
管理人のコメント
カヲル「やあみんな。今日はアスカ君は「山村」とか言う人のトコロに「どうしてもはずせない」用事があるとかいって、マサカリかついででていったんだ。だから僕一人さ。そうそう。アスカ君から、そのお詫びというか、手紙を預かっているんだよね。えーっとどれどれ・・・・。
「青柳。コロス」
・・・・あれ?(汗) アスカ君にもらったときにはこんな文面だったかな・・・・(^^;;。うん? もう一通、あるな。
「グリーンヒカリ。コロス」
・・・・なんかやばい雰囲気になってきたから、今日はこのへんにしようか。そそくさ」