第三新東京市英雄伝説



 

昭和75年

平成12年

  

 セカンドインパクト勃発のどさくさにまぎれて、碇ゲンドウは第三新東京市を首都としてNERV帝国を建国。またたくまに日本を支配した。

 しかし、全ての日本人がNERV帝国の軍門に下ったわけではなくそれに反対する人達が第二新東京市を根城とするJA自由同盟を建国。NERV帝国に宣戦布告した。

 それから14年間戦争は続き、膠着状態におちこんだ。

  

昭和89年

平成26年

  

帝国首都第三新東京市NERV宮殿発令所

 皇帝ゲンドウ一世(こんな名前を受け継ぐ奴がいるか)の謁見の間であった。

 ゲンドウは指令席に座り、手を組み口もとを隠していた。その横には宰相である冬月公コウゾウが立ち、発令所の中は一人の人物を取り囲み大勢の人がいた。

 冬月は持っていた巻き物を読み上げた。

「綾波伯レイ、今回の叛徒どもとの戦いにおいて優秀な戦績をおさめたので、帝国元帥の位を授ける。平成26年 NERV帝国皇帝 ゲンドウ一世」

「はい」

 言葉少なに返事をしたのは、発令所の中心でひざを突き頭を下げている少女綾波伯レイであった。日本人離れした青い髪が目を引くが、それよりも顔の方が特筆に値した。美形なのだ。若くして美形そして帝国元帥ときては嫉妬しないものがいないわけはなかった。その最右翼がブランシュバイク公アスカとその甥(?)、リツコ男爵であった。

「あのロリコン。たいした戦積をあげたわけでもないのに帝国元帥を授けるですって。ぶぶぶ不様よ」

 はき捨てるようにリツコがアスカに話しかける。

「ふん、分不相応な地位についたって、どうせあとで化けの皮がはがれるわよ。あの青髪の小娘

 青髪の小娘というのは反レイ派が好んで使う蔑称だった。リツコの言いぐさはもちろん嫉妬からのものであり、レイの戦績は誰にも文句のつけようがないものだった。

「よくやったな、レイ」

 ゲンドウが声をかけるが

「はい」

 とレイは愛想なく返事をするだけだった。

「冬月、あとはたのんだぞ。プリンセスメーカーの続きがあるのでな」

 とそんな勝手なことをほざいた後、ゲンドウはとっとと退出してしまった。そして帝国元帥杖授与式は終わった。

  

NERV宮殿の廊下

 ブラウンシュバイク公アスカとリツコ男爵が話し合っていた。

「叔父上、このままあの青髪の小娘の好きかってにさせてよろしいのですか。あんな貴族ともいえない小娘が帝国元帥の位に着くなんて帝国の伝統が守られないわ」

 ちなみに、貴族というのはゲンドウ一世がかわいい女の子を見つけては、勝手に与えているものだった。

「まったく皇帝のぼけが進んだようね。あたしみたいな美少女より先に、あんなのに元帥杖を渡すなんて・・・んっ?! 誰かいるの!!」

 廊下の柱の影から、微笑みを浮かべた少年が出てきた。そしてその少年は軽く手をあげて言った。

「やあ、お二人さん。こんにちは、ごきげんはいかがかな」

 アスカは顔を真っ赤にさせ怒鳴った。

「あんた馬鹿ぁ?! これがいいように見えるわけぇ、だいたいあんたは小娘の腰ぎんちゃくじゃないの。あたしたちの前に顔をみせるなんていい度胸じゃない」

「叔父上、これは私たちの動きを監視しているのですわ。さっさと私たちの前から消えないとコロスワヨ

 少年は笑顔をたやさぬまま言った。

「そんな怒った顔をしては好意に値しないね。まあいいや。二人に有益な情報をもってきたのさ。皇帝がねシンジ皇子の結婚を急いでるんだ。もちろん相手は君たちじゃない。誰が相手かは聡明な君達なら理解してくれると思うんだけどな」

ぬわんですってぇ!!!!

 アスカとリツコは同時に叫んだ。ちなみにシンジ皇子は14歳なのだが、ゲンドウが勝手に法律を改正してしまったことは言うまでもない。

  

シンジ皇子の私室

 ゲンドウ一世の息子シンジ皇子は、暗くしずんでいた。そもそも陰にこもりがちな性格だったが、いきなり結婚しろと言われてなおさらだった。シンジにはゲンドウの企みが読めていた。息子の嫁に手を出す気なのだ。

 ・・・僕にはわかってるんだ。母さんが死んでから父さんは、美少女を作るんだと言って遺伝子研究に没頭し、それが駄目だとわかるといきなり日本を自分の国にして日本中から美少女を集めてはべらし、さらにそんなイメクラまがいのことまで考え出すなんて・・・

 こんなくだらない父親の息子として歴史に名が残ることが、死ぬほどいやだった。

「どうしたらいいんだろう、ふぅ」

 とため息をついたとき、部屋のドアが蹴り開けられた。

「あんた、馬鹿ぁ?! そんなに嫌だったら逃げればいいのよ。あたしと一緒についてきなさいよ」

 ブラウンシュバイク公アスカだった。

「あ、アスカ。でも、逃げちゃ駄目だっていうの僕の座右の銘なんだけど・・・」

「あんたは、そんなにあんな小娘と結婚したいの!!」

「えっ、結婚相手って誰だか聞いてないんだけど・・・」

「ふぅ、もういいわ。とにかくあたしの言うことを聞いてればいいのよ。わかったぁ!!!」

 アスカとシンジは幼馴染みだった。そしてシンジは昔からアスカの言うことには逆らえなかった。

  

元帥府

 レイは自分の部下となるものたちの選定をしていた。

 元帥になれば自由に部下の任免が行えるのであった。

 トントン

 ドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

 ドアが開き、一人の少年が入ってきた。

「ご報告します。ブラウンシュバイク公アスカとその他大勢の貴族が、双子山要塞に立てこもりました。その際シンジ皇子が誘拐されました」

 シンジという名にピクンとまゆを動かしたが、レイは淡々とたずねた。

「彼女らの暴走の理由は何、カヲル」

「私にはわかりかねますが・・・レイ様」

 表情を変えずに言うカヲル。

「そう」

「もうじき皇帝からの、討伐令が下されるでしょう。この貴族連合さえ倒せば、いよいよレイ様に対抗できる勢力はいなくなります」

「めったなことをいうものではないわ、カヲル。まだ彼女らを倒したわけではないのだから」

「もうしわけありません」

  

双子山要塞

 ブラウンシュバイク公アスカは壇上の豪華な椅子に座っていた。その隣にはシンジ皇子がいた。

「それじゃあ、軍事に関してはミサト上級大将にまかせるわ」

 ミサト上級大将は顔を両手でぱちんとはたいた。

「よっしゃあ!! 1%未満の成功率の作戦もこなしたこの私ならどんな相手でも負けないわよ」

「ふふふ、これであの青髪の小娘も終わりね」

 シンジはいかぶしげな顔をして、アスカに聞いた。

「あのさ、ここに立てこもった理由ていうのは、父さんに反省してもらうためだよね。なんで綾波と戦うのさ」

「しょうがないじゃない。レイが皇帝の命令をうけて戦おうとしてるんだから。戦う前に、ごめんなさいなんていえるわけないじゃん」

「まーそうだけどさー・・・」

 ぶいーぶいー

 警告音が流れる。オペレーターの声がスピーカーから流れる。

「芦ノ湖前線基地にレイの軍が攻撃を開始しました」

「芦ノ湖前線基地は誰が守ってるの」

 アスカがミサトに尋ねる。

パチキ一つで上級大将までのぼりつめた装甲擲弾兵総監トウジ上級大将です」

「芦ノ湖が落ちるのも時間の問題ね」

  

旗艦エヴァンゲリオン

「芦ノ湖は戦力としては対したことないけれど、無視するわけにはいかないわ」

 綾波伯レイは、副官のカヲルに言った。

「では、全力をあげて攻撃に取りかかります」

 その時、指揮官用のディスプレイに通信が入り込んできた。

「おい、青髪の小娘聞いとるか。わいがトウジや。たいした実力もないくせにロリコン親父にとりいって階級増やして元帥になったかて、このわいには勝てへんで」

 カヲルはおそるおそるレイの顔をのぞいた。レイはいつもの無表情であったが、レイの前で皇帝の悪口を言って、無事でいたものは誰もいなかったのだ。

「カヲル、あのにせ関西弁を私の前に連れてきて、生きたままでね。私自身の手で、ピーして、○○して、××して、***した後、道頓堀に投げ捨てるわ」

「・・・わっ、わかりました・・」

 その後トウジは、す巻きにされた状態で道頓堀で発見された。

  

双子山要塞

「なんですって!! 第一中学校で反乱!!!」

 ブラウンシュバイク公アスカは立ち上がり、つばをはきちらして叫んだ。

「はい、アスカ様のブロマイドだけでは満足できないので、レイのブロマイドもよこせと・・・」

 アスカは顔を真っ赤にして拳をふるわせている。シンジはアスカの怒りが自分に来ないことを願った。

「恩知らずの馬鹿中坊どもに、正義の刃を加えてやるわ。第一中学校に汚物攻撃しなさい」

「何言ってんだよアスカ。僕らの中学校じゃないか。そんなことしたら、掃除するのが大変じゃないか」

「あんた馬鹿ぁ?! 私に逆らったものはみんな不幸になるのよ。命があるだけでもありがたいと思うのね」

   

旗艦エヴァンゲリオン

「ブラウンシュバイク公アスカは第一中学校に、汚物をまいたそうです」

「そう」

  

双子山要塞

「なんで、こんな人を軍事顧問にしたんだろ」

 ミサト上級大将がビール瓶を両手に持って直接口にくわえてのんでいる姿を見て、シンジ皇子は顔をしかめていた。

「なんだかんだ言って、青髪の小娘、ここまできちゃったじゃないの、ミサト。あんた酒ばっかりのんでたみたいだけど、作戦は考えてたの?」

 陽気な調子でミサトは答える。

「だーいじょーぶだって、ヒック、レイの軍はここまで来る間だいぶ疲弊してるから、ヒック、全軍で突撃すればよゆーで勝てちゃうわよ、ヒック」

「そっか、そうよね。あいつらが長く遠征してるから、もうへとへとよね」

 楽観的に喜ぶブランウシュバイク公アスカ。

「NERVから双子山って自転車で三十分の距離なんだけどね」

 シンジはぼそっとつぶやく。

   

旗艦エヴァンゲリオン

 カヲルがあわてて指令室に入ってきた。

「双子山要塞から全軍出撃したもようです」

 綾波伯レイは無表情のままで、しばらく考え込んだ。

「おかしいわね。戦術的には要塞にこもっているほうが正しいのに」

 カヲルは笑って答える。

「きっと、軍事顧問が無能なのでしょう。我々にとってはありがたい話ですが・・・」

   

双子山要塞

 ブラウンシュバイク公アスカは床に転がっていたビール瓶を蹴飛ばした。

「結局負けちゃたじゃないの、あの酔っぱらい軍事顧問はどこいったのよ」

 シンジ皇子は肩をすくめて答える。

「とっくに投降しちゃたよ、もう残ってるのは僕とアスカしかいないよ。それにしても、これからどうしよう・・・捕まったら絶対、父さんにしかられるよ」

 パァン

 アスカは手のひらに拳をたたきつけた。

「どうあってもあの青髪の小娘に頭をさげるのだけはごめんこうむるわ。こうなったら最後の手段よ。いいシンジ、あたしはは今から死んだふりをするからベットかなんかでレイのとこまで運ぶのよ。そうしたら私がレイを人質にして形勢逆転させてみせるわ」

「もう、あきらめたほうがいいと思うけど・・・」

「やるのよ!!!」

    

旗艦エヴァンゲリオン

 シンジ皇子ははがらがらとベットを押している。ベットの上には白いハンカチを顔にかけたブラウンシュバイク公アスカが横たわっていた。エヴァンゲリオンの指令室には綾波伯レイとその腹心カヲルがいた。

「あの、その、今回の首謀者のアスカは死んじゃったんだけど、えーと、一応首謀者だから、綾波にわたさなきゃいけないかなーと思って、その」

 レイは少し表情をやわらげ、言った。

「碇君が無事なら、そんな女どうでもいいわ。碇君、怪我はない?」

 ぶちっ

「そんな女ですって!! この外国人形が!! あんたをどうにかすればこの勝負はあたしの勝ちなのよ!」

 がばっと、ベットから起き上がったアスカはレイに向かって殴りかかっていった。

 ヒュッ!

 しかしレイは首を横に曲げただけでかわしてしまった。

「そんな動きでは、私には勝てないわ。あなたは碇君にふさわしくないわ」

 レイは右足をあげて地面に平行にアスカに向かって蹴りを放った。

 バスッ!

 アスカは両腕で体をガードした。

「シンジにふさわしいかどうかは、あんたが決めることじゃないでしょ。あたしかあんた、どっちがふさわしいかシンジに聞いてみればわかるわよ」

 レイは臨戦態勢を崩さないまま、うなずいた。

「そうね。碇君どっちが・・・って、碇君は?」

 アスカはその場できょろきょろしてシンジを探した。

「あら、どこいったのかしら・・・ばかシンジでてらっしゃい」

 レイは、はっと気がついた。

「しまった、カヲルもいない。してやられたわ」

    

小田急ロマンスカー

 カヲルとシンジ皇子は向かい合って座っていた。

「カヲル君、大丈夫かな。勝手に逃げ出して」

「だってNERVに帰って、皇帝に怒られるのがいやなんだろ、シンジ君は」

「それは、そうだけどさ・・・だいたい行くあてとかはあるの」

「JA自由同盟の惣流ラングレー提督を頼ろうとおもっているんだ。激しやすい人物で、すぐ人に八つ当たりをするそうだよ」

「・・・なんか、虎からにげて熊のところへ行くみたいだね・・どうりでアスカは惣流公アスカじゃなかったんだ」

   

            ・・・・第三新東京市の歴史が、また1ページ・・・・  


作者コメント

どうも、こんにちは。作者の青柳康平です。銀英伝ファンとエヴァファンを敵にまわした、この作品はいかがでしたでしょうか。銀英伝を読んだことのない方は、小説一巻と二巻を買ってからこれを読むとわかりやすくなります。あと感想のメールまってまーす。最後まで読んでくれた人、ありとうございました。

   

 青柳さんへの感想はこ・ち・ら♪     


管理人(とその他)のコメント

カヲル「青柳さん、この分譲住宅へようこそ。待っていたよ」

シンジ「・・・・カヲル君、何で僕がここにいるの?」

カヲル「決まってるじゃないかシンジ君。ここは僕と君の愛の巣なんだから。」

 どげしぃっ!!

アスカ「ぬぁにが愛の巣よ!! この腐れ使徒が! そもそも何で、アタシがあんなへっぽこブラウンシュバイク公爵なんかになってるわけ? いやぁ〜わけわからない!!」

シンジ「まあまあアスカ。公爵と言えばとってもえら〜い人なんだから。みそっかす男爵のリツコさんにくらべればいいじゃないの」

 ばこっ!

アスカ「あんなあばずれ女と一緒にしないで! そもそもシンジですら皇子だっていうのに、何でワタシが公爵風情に・・・・ワタシにふさわしい席はただ一つ! それは皇帝よ!!」

カヲル「・・・・君には絶対に無理だろうね。僕には分かるよ」

シンジ「ああっ、カヲル君、それを言っちゃ・・・・あわわわわ」

アスカ「シィ〜ン〜ジィ〜〜〜!!」(バックに炎)

シンジ「あ、あ、それじゃ僕はこれで。さいなら〜〜〜」

アスカ「あんた、「逃げちゃダメだ」が座右の銘じゃなかったの!! こら待ちなさい!!」

カヲル「さぁて。では僕が次回予告をしようか。「JA自由同盟へと愛の逃避行を続けるカヲルとシンジ。一方そのJA自由同盟では、疲弊する国家予算にも関わらずNERV帝国との決戦を叫び軍備を増大させる最高評議会議長、ヨブ・時田の姿があった。そして最前線で日々怒りをまき散らす惣流ラングレー。カヲルとシンジの愛の行方はいかに! 次回、第三新東京市英雄伝説・第二話、「タイトル未定」。第三新東京市の歴史が、また1ページ・・・・」

アスカ「この、ばっかも〜〜〜〜ん!!

 めきょっ!

アスカ「なにが次回予告よ! これ書いてる青柳さんの了解も得ずに勝手にそんなこと書いて! しかも「タイトル未定」ですって!! どうせつくならもっとそれらしいウソをつきなさいっ!! それから作者の青柳! 次に書くときはアタシをもっと活躍させなさいよ!! なんであの「青髪の小娘」ばっかりいい目をみなきゃいけないのよ! ずえったいによ!! いいわね!!」

カヲル「・・・・・ふっ・・・・・いまのパンチは・・・・効いたよ・・・・」

 ぽろっ

アスカ「ひ、ひ、ひえええええっ!! く、首がもげてるうう!! ・・・・はうっ」

 (気絶するアスカ。何でもないように首を拾うカヲル) 

カヲル「失敬な。人を化け物みたいに言わないで欲しいな。さあて、シンジ君をさそって小田急ロマンスカーでも乗りに行こうか。なにしろ二人だけの愛の逃避行だからね・・・・」

 


作者コメント

 いやー、笑わせてもらいましたわ。銀河英雄伝説とエヴァを両方知っていると、もう最高ですね。とくにトウジの役所がナイスです。「パチキ一つで・・・・」ふっふっふ。笑いが止まりません。酔っぱらいミサトさんの無能ぶりも笑えますし、そのほか随所に笑いどころがあって、ひじょーにナイスな作品ですよ。いやー、青柳さん、分譲住宅へお引っ越しいただきまして、ありがとうございますですはい。しかし・・・・この終わり方を見るとどうも続きそうな雰囲気なんですが・・・・続くんでしょうかねえ。ワタシにとっても謎であります。


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