「困った事なのだよ。一応、ネルフは一枚岩の組織という事になっているのだ」
「一枚岩?誰がそんなたわけた事を言ったのですか?」
「現。総司令閣下だ」
「なるほど。しかし、当然でしょうな。司令が全てを掌握していたのなら各地の支部が半ば独立領の用に振る舞う事は無い。そうでしょ?」
「そうだ。現実は違うのだよ。それに気が付いてないのは司令だけだ」
「世の中が自分と同じルールで動いていると思う奴はよっぽどの馬鹿」
「口を慎め。何処に盗聴機があるか、わかったものではない。それに話しが横道にずれているぞ」
「これは失礼しました。で、と言う訳です」
「要約のしすぎだ。それに対象は甘くは無いぞ。こちらの手管は知り尽くしている」
「それは、分かっています。なあに。何とかしますよ」
「君の暴走を危惧する意見がある」
「この事は我々だけの内密な事では無かったのですか?」
「私が危惧を抱いているのだ。とにかく。明確な結果が欲しい。この世で白黒つくのは葬式だけでは無い。それを証明して欲しいのだ。でなければ君を指揮権無視で呼び出した意味が無い」
「分かっています。せいぜいやりますよ」
「何か”玩具”は必要か?」
「失礼ですけど、僕のいる組織では秘密兵器は防衛出動か災害出動。それに巨大怪獣が出た時以外使ってはならない事になっているのですよ」
「セカンドインパクト前までは毎年どこかに襲来していたらしいな」
「ええ・・・まあそうです。使徒の場合は別ですけどね」
「まあいい。せいぜいがんばってくれ」
「了解しました」
ネルフ諜報部
「やあ。どうもどうも保全班です」
突然現れた男に、穂高エリは半ば唖然として「はあ・・・」と答えた。
男。かなり身体に脂肪の蓄積された男はどうにも人に暑苦しさを与えてやまない姿を気にした風も無く、いかにも楽しそうに。どちらかと言えば少女相手に会話を楽しむ異常性癖者の様な感じで話し出した。
「いや、なに。ちょっとお聞きしたい事がありましてね」
と言うと男は制服の内ポケットから煙草のパッケージを取り出す。
「あなたがた。加持一佐とあなたは何をしているのですか?」
「質問の主旨が私には理解できませんが」
と、言いながらエリは無言で机を指した。灰皿は無かった。
太った男は煙草のパッケージ(ラッキーストライクだった)をしまうとさっきと同じ調子で言った。
「一体。何をしようとしているのですかね?加持一佐は」
戦略自衛隊統合情報局
旧防衛庁情報本部をベースにして拡大された組織の頂点に立つ男の執務室に飾られた大和級戦艦一番艦の精密な模型。それを覗き込む男がいた。
「毎度の事ながら。素晴らしい出来ですな」
男は執務机の向こうにいる初老の男に向かって視線をそらさずに言った。
「それが。最後だからな。他のフネと軍港は燃えた。それが最後の艦だったのだ」
模型から目を話した男を見ながら、執務机の男は続ける。
「ダーシェンカは二度と同じ失敗はしない。君はどうなのだ?明石二佐」
明石と呼ばれた男は微笑みを、自身に裏付けられた微笑みを浮かべて言った。
「二度としませんよ。ご先祖の名に賭けて」
明石ゲンジ二佐は、決め台詞にしている言葉を言った。
「では。期待している。行きたまえ」
「ご期待に添えるよう努力します。早瀬陸将」
ドイツ。ぺーネミュンデ特務機関ネルフ特殊技術研究所
黒服の警備員が数メートルおきに並んだ最高警備区域を我が物顔に歩いていく女性がいた。
ヒールの音を規則正しく鳴らしながら世はなべて事もなしといった感じで歩いていく。
自動小銃を持った警備兵が塞いでいるドアの前に立ち、白衣の裾から身分証を出し、兵士に見せる。兵士は失礼しましたといってドアを開けた。
そこは、独房のような。いや、事実独房である部屋だった。
白衣の女性は独房の中央まで進み、壁にもたれかかっている女性を見た。
亜麻色だった髪の色は失せ、瞳も光を失って肌は艶のない灰色に近くなっているが、明らかにアスカ。惣流・アスカ・ラングレーだった。
白衣の女性はアスカに歩み寄り、腰を低くしてアスカの顔の正面に自分の顔を置くと、いかにも楽しげな口調で、涙すら流しながら恐怖でひきつった顔をしているアスカに向かって優しくいった。
「アスカ。日本に帰してあげるわ」
つづく
あとがき
「第三新東京のやさしい掟」急展開ですな。これまでいささか遊びすぎました(伊吹マヤでさえも、遊びである)。
ま、地名と人名と会話は分かる人は分かるもののパロディなんすけどね。
さて、と。アスカに殺されないうちに帰るか。
トライアングル・アロウで指名手配もされてるし・・・と
参考文献
東京のやさしい掟
佐藤大輔著
徳間文庫
ゲンドウ教入信希望者及び12式臼砲さんへの感想はこ・ち・ら♪
管理人(その他)のコメント
マヤ 「遊びですって!! それじゃあ死んでしまった私の立場はいったいどうなるっていうんですか、12式さん!!」
カヲル「どうにもならないだろうね。だって、君はもう死んでしまったわけなんだし、一部ではショタコンだとかいわれているし。ついでにいってしまえば、赤木博士と・・・・」
アスカ「それ以上いうんじゃないわよ! 映画のネタバレになっちゃうでしょ!!」
どかばきぐしゃっ!!
カヲル「うぐはぁっ」
アスカ「マヤさん、運が悪いのよ。あんな巨悪ににらまれたんだから。・・・・でも、あたしよりマシじゃない。なにしろあたしは夜道で・・・・ううっ・・・・」
マヤ 「アスカ・・・・」
カヲル「ふっ、そんな些事はおいておいて、と」
アスカ「何が些細よ!!」
マヤ 「どこが些細なんですか!」
ばきっ!!×2
カヲル「ぐはっ!! ・・・・そ、それはともかく、この話もそろそろ展開が出てきたようだね。一部の人間にしか分からない人物とかも出てきたし」
アスカ「一部の人にしかわからないっていえば、トライアングル・アロウってなに?」
カヲル「なんだ、そんなことも知らないのかい?」
アスカ「えーえー、あいにくとアタシは無知ですからねぇ」
カヲル「トライアングル・アロウというのはだね」
アスカ「ふんふん」
カヲル「3本の矢(しれっ)」
アスカ「・・・・・・(とっさの反応が出てこない)」
カヲル「・・・・・・(ギャグをはずしたことに気づいた)」
マヤ 「ええと、二人が固まっちゃったみたいなので、私が変わりに説明しますね。トライアングル・アロウっていうのは、佐藤大輔さんっていう小説家さんが書いている「レッドサン・ブラッククロス」の中で、クーデターを起こそうとした人々が逮捕された事件のことを指しているんです」
カヲル「それに関わっていたわけではないんだけど、どうもそれと同じくらい怪しい行動をとっていたのかな?」
アスカ「アタシにとっての12式はね」
カヲル「ああ。なるほど(ぽんっ)」