遥かなる空の向こうに・・勝手に外伝っておいおい


   

*注意 このお話は第八話までを元に、勝手に私の想像力に任せて書いたものです。ですから、苦情等については、丸山先生の所に送っては駄目ですから・・。

   

第X話:鏡

原作 丸山御大先生  

外道 踊りマンボウ  

   

『・・レイ、それをね、好き、っていうのよ』

「好き?・・ワタシは碇クンが・・好き・・」

 彼女が教えてくれた言葉を口にする。

 感情・・。

 今まで知らなかったこと・・。

「好き」

 でも、その言葉を口にしてもワタシには、実感が無い。

 ただ、言葉の発声としてワタシの口から出ていくだけ。

『シンジがいれば、安心する?』

 碇クン・・。

 何だか安心する。

『シンジがいないと、不安でしょうがない?』

 待ち合わせ・・。

 ワタシだけ、先に来てたとき・・不安だった。

 そう・・不安だった。

『いつでも、シンジのことを考えている?』

 碇クンのこと・・。

 いつでも・・考えてる。

『・・レイ、それをね、好き、っていうのよ』

 そうなの?

 口にしても解らない。

 鏡の前のワタシは答えてはくれない・・。

「誰か、ワタシに教えて・・そして・・伝えさせて・・」

『いいわよ・・』

 鏡の前のワタシが・・笑った。

   

「おーい、綾波。ご飯の用意できたから・・」

 シンジがいつものようにご飯の用意を済ませてから同居人の少女を呼びに部屋に入った。

 その時、綾波レイは薄暗くなった部屋で鏡と向き合っていた。

「・・」

「綾波?・・どうしたんだい?」

 呼びかけても、返事が無いのを不思議がって彼女に近づいていく。

「・・」

「綾波?」

 ぽんっと肩を叩いてみる。

「碇クン・・」

 そこでようやく、レイは、シンジの方に顔を向けた。

 美しい紅い瞳が、シンジを捉える。

「あ、気がついた?ご飯の用意できたから・・」

 レイの瞳に、どきりとしつつも、シンジは平静を装い、食事の準備が出来たことを告げる。

「好き・・」

「・・え?」

 突如、レイが口にした言葉にシンジは自分の耳を疑った。

「好き・・」

 もう一度レイが口にする。

「・・」

 咄嗟に、何と答えていいか解らず、シンジは黙り込んだ。

「ワタシは・・碇クンが・・好き」

「・・あ、綾波・・」

 シンジを前にしつつ、まるでシンジが居ないかのように一人呟くレイ。

「好き・・」

『ガタン』

 その時、部屋のドア付近で物音がした。

「だ、誰?」

『やばっ、みつかっちゃった・・しょうがない・・』

 シンジの問いかけに、ばつが悪そうにアスカが部屋に入って来た。

「アスカ!な、何してるんだよ・・」

「・・シンジ!アンタこそ、何よ!レイを呼んでくるぐらい、すぐ済むでしょう」

「う、うん・・ごめん。ちょっとレイの様子が変だったから・・その・・」

 ちらりとレイの方に視線を向ける。

「・・好き・・碇クンが・・」

 そして、またその言葉を口にする。

「レイ・・?」

 アスカは、レイの言葉を聞いてぞっとした。

 感情の篭っていない言葉。

 棒読み的な、白々しさも何も無い・・ただの音の固まり。

 しかも、録音したテープを再生するような淡々とした感じ。

「あっ・・」

 アスカの呼びかけに、レイが戸惑いの声を上げる。

「え・・?碇クン・・それにアスカ・・?」

 そして、今まで二人が居るのを知らなかったかのように驚く。

「綾波・・?」

 シンジはレイの急変に何が何だか解らないようである。

「ワタシ・・?何を・・」

 先程まで、意志の感じられなかった瞳に、意志の光が宿る。

「な、何でもないわよ・・ね、シンジ!」

「あ、う、うん」

 咄嗟にアスカは嘘をつくことを決めて、目でシンジに合図した。

 シンジは戸惑いつつも、アスカに合わせる。

「そう・・なの?」

 レイは自分の質問に慌てる二人を不思議そうに見る。

「あ、そ、それよりご、ご飯の用意できたから・・」

「そ、そうよ。アンタが遅いから・・ホントにもう・・」

「・・うん・・」

「さ、さあ行こう。綾波・・」

 シンジは、これ以上追求される前に誤魔化してしまおうと、レイを急かした。

「・・碇クン・・」

 レイは、シンジの手を取った。

「さ、シンジ行きましょう!」

 その様子を見て、アスカも対抗するようにシンジの腕を抱いてひっぱった。

「あ、アスカ、そんなに引っ張らないで・・」

「・・」

 レイも負けじと、ぎゅっとシンジの手を握る。

「あ、綾波も・・その・・」

「・・」

「・・いいよ、さ、行こう・・」

 レイの真剣な瞳に、シンジは言葉を飲み込んだ。

「両手に花ね、シンジ!」

 アスカが、シンジをからかう。

「・・」

 ふと、部屋を出る時に、レイは部屋の中に誰かが居るような気配を感じた。

 じっと、部屋の中を見つめる。

「・・?綾波どうしたの?」

「・・ううん・・、何でもない・・」

 シンジの呼びかけに、レイは視線を前に戻して居間へと歩き始めた。

『・・くすくす・・代わりに言ってあげるのに・・』

 誰も居ないはずの部屋で、誰かの声がした。

 鏡には・・レイの姿が映っていた。

『・・遠慮しなくてもいいのに・・ねえ』

 鏡の中のレイは、歪んだ笑みを浮かべていた。

   

「誰か・・居るの・・?」

 食事を終えて、鏡と向かい合う。

 確かに誰かが居た。

 そして、それはワタシに話し掛けてきた。

『アタイを呼んだかい?・・くすくす』

 鏡の中のワタシが笑っていた。

「アナタは・・誰?」

『アタイ?・・アタイのことなんてどうでもいいだろう?』

「・・」

 そっと、鏡に手を翳す、が、鏡の向こうのワタシは変わらず笑って手を下ろしたままだった。

『何の真似だい?・・くすくす・・』

「・・」

 鏡の中のワタシ・・。

 歪んだ笑みを浮かべているワタシ。

『だから、言ってるだろう。アタイがアンタの気持ちを代わりに言ってあげるって・・くすくす』

「・・ワタシの代わり?」

『そう・・あの子。シンジ君のことが好きなんだろう?・・だから、代わりに言ってあげるって・・ふふっ』

「さっき、碇クンが・・困っていたのは・・アナタの所為なのね・・」

 戸惑うワタシに、妙に落ち着き無い二人。

 そう、鏡を見ていて・・意識が遠くなって・・気付いた時には、外は薄暗く、二人が食事の準備だとワタシを呼びに来ていた。

『ふふ・・代わりに言ってあげようと思ったのにね・・ちょっと邪魔が入ってね・・』

「・・代わり?・・でもそれはワタシじゃない・・」

『でも、アナタは好きってことを知らないのよね・・。そんなんじゃいつまで経っても、告白なんてできないよ・・くすくす』

「・・告白?」

『そう、アンタの時間は・・もう無いんだからね・・。自分の気持ちに気付くことなんてできっこないよ・・可哀相に』

「・・可哀相?」

『そうさ、だから・・アンタの代わりに・・なっ?』

「・・」

 鏡の中のワタシが、悪戯げに笑う。

『シンジのことが、好きなのか』

『・・分かりません。今のわたしには、まだ分かりません。でも・・』

『でも?』

『残された時間の中で、見つけてみたいと思います』

 あの人と、話したことが不意に頭によぎる。

 そう・・ワタシは、今まで通りの生活を・・碇クンやアスカや・・みんなと生きようと思った。

   

 たとえ、残された時間が僅かでも・・。

「違う・・」

『違う?・・何が違うのさ?』

「ワタシは・・アナタの力なんて借りない!」

『何だって?・・わ、何をするんだい!』

 握った拳を振り下ろす。

『ガシャンッ!』

 派手な音が辺りに鳴り響き、鏡は不自然なまでに砕けた。

「・・これで・・いいのよ。・・これで・・」

 ワタシは、ワタシ自身に言い聞かせるように呟く。

「・・痛っ・・」

 振り下ろした腕がじんじんと痛む。

 血が、ぽたぽたと、床に滴り落ちる。

 鏡の破片で、少し腕を切ったようだ。

 血の匂いがする。

 それは、懐かしくもあり、嫌でもある・・。

   

 鏡の割れる音に、シンジとアスカは慌ててレイの部屋に入ってくる。

「綾波!どうしたの?・・わっ!」

「レイ!何があったの!・・ってちょっと!」

 入ってくるなり、それぞれ驚きの声を上げた。

「あ、碇クン・・アスカ・・」

 レイは血だらけの腕をかばいながら、入って来た二人の方を向く。

「あ、綾波・・その腕・・それに鏡・・」

「・・ごめんなさい・・」

「どうしたの?・・」

「ちょっと、シンジ!そんな呑気なこといってないで、包帯なり持ってきて、レイの腕なんとかしてあげなさい!」

 アスカは、シンジに怒鳴り、自分は鏡の破片を回収し始めた。

 バケツを持ってきて、その中に砕けた鏡の破片を入れる。

「・・それにしても・・どうしたんだい突然・・何があったの?」

 消毒、薬塗布、包帯巻きと、手際良く、こなしながらシンジはレイに聞いた。

「ごめんなさい・・どうしても・・割らなければいけなかったの・・本当に・・ごめんなさい・・」

「・・そう・・わかった。なら、今は何も聞かない・・。いつか、話せるようになったら教えて・・」

 レイの辛い顔を見て、シンジはそれ以上聞くのを止めた。

「うん・・ごめんなさい・・」

「・・レイ・・」

『何なのよ。あの娘・・突然鏡を割るなんて・・』

 アスカは、黙々と鏡の破片を集めていた。

『教えてあげようか?』

「え?誰?・・って誰かいるはずもないか・・」

『ふふ・・』

「?・・!」

 何事かと辺りを見回すアスカの目に、一枚の鏡が目に入った。

 無数の自分が映っている中に、一つだけレイの姿が映っていたのだ。

「・・」

 レイとシンジの方を見て、アスカはさらに驚く。

 レイは、アスカに背中を向けており、まず正面の顔が鏡に映るはずも無い。

「ほら、綾波・・出来た・・」

「・・うん・・」

 その時レイは、さっき鏡の中の自分と話していたことを考えていた。

「碇クン・・好き・・」

 そして、言葉を口にした。

「え!」

 シンジは、またもや聞き違いかな?と思った。

 救急箱の片付けに掛かっていて、はっきりと聞き取れなかったのだ。

「痛っ・・」

 その時、アスカが悲鳴を上げた。

「あ、アスカ・・!」

「あ、シンジ。な、何でもないの・・何でも・・」

 アスカはそう言いつつも、指を庇っている。

「何でもなくないよ!ほら、指見せて!」

 シンジは、アスカの手を強引に取り、傷口を見た。

 僅かだが、白い指先に赤い筋がくっきりと浮き上がっている。

 傷の見た目は軽い感じだが、鋭く切れており、後から痛みがついてくる。

「・・ほら、こんなに血が出て!」

「だ、大丈夫よ・・」

「・・」

 シンジは黙って、アスカの指を口に含んだ。

 ぱっと口の中に、苦い血の味が広がる。

「し、・・シンジっ!」

 アスカの声が裏返る。

 その声が、アスカの動揺を表わしていた。

「ほら、これでいいから・・」

「・・」

 手早く絆創膏を指に巻きつけて、笑顔を見せるシンジ。

 何か言おうとしたアスカは、その笑顔で言葉を失った。

「・・碇クン・・」

 レイは、仲のいい二人の様子に、ちくりと胸が痛んだ。

「・・あ、・・碇クン!」

 と同時に、別のことに気付いた。

「え?・・何?綾波・・」

「何だか・・焦げ臭い・・」

「え?」

「え?」

 アスカとシンジは、同時に声を上げ、部屋に流れてくる匂いを嗅いだ。

「ホントだ・・」

「あー、そういえばお鍋、ガスにかけたままだった!」

 そこで、シンジは思い出した。

 レイの部屋で、何かが割れる音を聞いて、作り始めた煮物をそのままにやってきたのだ。

 少し凝ったものを作ってみようと、近頃、料理の研究しているのだ。

「アンタバカ!何ぼさっとしてるの!」

「あ、うん・・」

 シンジの尻を叩く形でアスカが怒鳴る。

「ほら、レイも!・・今夜はもういいから・・ワタシの部屋で寝なさい。片付けは明日にしましょう!」

「あ・・うん」

 レイは頷いてアスカに従った。

「ほら、・・レイ・・足に気をつけて・・破片が散ってるから」

「うん・・」

『・・』

 誰も居なくなった部屋。

 けれど、鏡の一欠片には、綾波レイの姿が映っている。

『なあんだ・・自分でちゃんと言えるじゃないの・・それが相手に通じるといいね・・くすくす』

 耳障りな笑い声を残して、鏡に映っていた少女が消えた。

『・・がんばってね・・レイ』

 消える寸前、少女の顔に不思議に穏やかな笑みを見せた。

 今までの、意地悪な口調とは違った落ち着いた言葉だった。

 それっきり、レイの前に少女は現れなかった。

 とある日の不思議な出来事である。

   

遥かなる空の向こうに・・勝手に外伝っておいおい

   

第X話:鏡      

原作 丸山御大先生  

外道 踊りマンボウ  

終わり   

   


   

すちゃらか裏話出張版

   

作者 「どうも、踊りマンボウです!」

ナギサ「皆様、またお会いできましたね。アシスタントの雪風ナギサです」

アスカ「・・ちょっと・・いい?バカ作者?」

作者 「?何・・アスカちゃん」

アスカ「何?じゃないわよ!・・アンタ自分が何したのか分かってるの?」

作者 「何って、『遥かなる空の向こうに』の外伝書いただけ、だけど?」

『どげし☆ばきゃ☆』

 作者、アスカに思いっきり蹴られる。

アスカ「・・この腐れ外道が!何考えてんのよ!人の作品をパクるより非道なことして!」

ナギサ「でも、アスカさん。・・それ以前に私たち自身エヴァを・・その」

アスカ「それはいいの!」

ナギサ「きゃん☆・・アスカさん恐いですの・・くすん」

作者 「・・ううっ・・あ、綾波へぼレイがお迎えに来ている・・くるくる〜・・ぱた・・」

ナギサ「まあまあ、これはいけませんわ・・」

 ナギサ、力を使い作者を治療する。

アスカ「それよりも、自分の作品も書かないで人のを利用して書くなんて・・何考えてんの・・」

作者 「・・ふ、復活ぅ!作者ぁぁぁぁ」

『げしっ☆』

アスカ「ホント・・どこかに埋めてやろうかしら・・」

ナギサ「ぐすん・・また怪我を・・」

作者 「あ、ありがとうナギサちゃん・・」

アスカ「で、何でなの?」

作者 「は?」

 作者、アスカに睨まれてじりじり下がり始める。

アスカ「は?じゃなくて・・人のを利用するなんて・・」

作者 「・・じゃっ!」

 作者、ダッシュで逃亡。

アスカ「あ、こら!またこのパターンか!こら待て外道」

碇司令「呼んだかね?アスカ君」

アスカ「アンタじゃない!」

 沈黙するその場。

ナギサ「・・おあとがよろしいようで。・・それでは皆様ごきげんよろしゅう」

アスカ「・・って終わったら裏話でもなんでも無いじゃない。もういいわ!・・手早く言うと、バカ作者の発作ね。アイツ自分の作品の執筆が上手くいかないから人の作品に逃避してきているだけ。解った?」

作者 「なんだアスカちゃん、知ってるじゃない」

アスカ「・・ふっ・・そこか」

作者 「・・し、しまった!」

アスカ「のがさん!」

 アスカ、作者を追いかけて退場。

ナギサ「・・こ、今度こそ本当に、皆様ごきげんよろしゅう・・」

 ナギサも続いて退場。

碇司令「・・ワタシは、何のために呼ばれたのだ?」

 一人立ち尽くす、ゲンドウ。

 オチ無いまま、閉幕。

   


踊りマンボウさんへの感想はこ・ち・ら♪   


臨時出張・分譲住宅管理人(と作者など)のコメント

作者 「はううううううう」

カヲル「何を喜んでいるんだい? そんなに感涙して」

作者 「いやいや。ワタシのくされ小説を元ネタに外伝なんてものを書いてくれるなんて、まさに感涙、感動、涙でディスプレイが見えない、キーボードが塩水に浸かっちゃう状態ですね」

カヲル「でも、こっちの方が話のデキ、いいんじゃないのかな。第9話破棄してこれに変えたほうがいいかもね」

作者 「そうしちゃいましょうかね。ってぐらいいいですよ。今回はカヲル君。君の言葉に賛同したいね」

アスカ「却下却下却下!!!

カヲル「でたね、不許可1号

アスカ「・・・・何よ、その不許可1号って言うのは」

カヲル「ああ、許可1号君のパクリだから気にしないで」

アスカ「・・・・また「あ〜る」なんて古いマンガから・・・・と、とにかく、X話の9話昇格は不許可!!」

カヲル「なぜなんだい?」

アスカ「アンタバカァ? これが9話になってみなさいよ。こいつは(びしっ!と作者を指さす)調子にのって10話以降の執筆も踊りマンボウにまかせちゃうわよ!!」

作者 「ぎくっ!!」

アスカ「ほらご覧なさい。露骨に動揺しているわ。あんた、「すちゃエヴァ」の執筆止める気? 仮にも分譲住宅の一大執筆者なんだからね・・・・メールの裏話でアタシのぱんつを話題にする悪党かどうかは別にして・・・・」

カヲル「そうそう、あの話題、なかなか面白かったよね、丸山さん」

作者 「ええ、わたしも年甲斐もなく少年のように興奮して・・・・」

アスカ「ふふふふふっ・・・・・おのれら、本人を前にしていい度胸してるわねぇ・・・・覚悟ぉ!!

 ごしゃぁ!!ぐしゃっ!!べきゃっ!!

作者 「は、はううううう・・・・」

カヲル「・・・・ぐふっ・・・・」

アスカ「ここには渚はいてもナギサはいないわ・・・・・ふっ、おとなしくくたばるのね」


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