まあ時々は出張で出かける国アメリカ。日本人がアメリカに抱くイメージは様々あるけれども、たいていはホームドラマにあるような、広い一軒家でリビングのソファーとテレビと親子と飼い犬と庭の芝生みたいな感じが一番大きいかもしれない。あるいはニューヨークマンハッタンだったりロスだったりと。それに比べて日本はなんてひどいことかワーキングプアは増えるし働いても働いても貯金も増えず税金ばかりで……と。
しかしこの本を読むと、アメリカという国の全く違う側面が見受けられる。今の大統領選の民主党候補者選びのポイントに医療費改革があげられているけれども、アメリカの医療費負担はクレイジーに近い。虫垂炎で1日入院して132万円てどんだけ高いんだか。医療保険で全額なんてカバーできないので、この手の入院する病気を1度やってしまうと、低所得者層は一気に貧困層へと落ちてしまうのだという。出産費用で2万ドルってどこの高級病院に入るのかと思ったらそれがふつーの産婦人科でたった三日の入院だなんて!
しかも民間医療保険は年間1万ドル近く払っているくせになんやかんやと難癖つけて支払い拒否……何のための保険なんだか。そんなこんなで保険だので個人の医療負担が年間個人所得の10パーセントを超えてるのが5000万人近くって……ありえない。なんつーかあり得ない。 日本の医療保険の個人負担ががんがん値あがってるといっているけど、それを吹き飛ばしそうな勢いの負担額。がんばれ日本、そんな風にだけはなってくれるな。
まあそれはともかく医療保険意外にも羅列されている内容はものすごくヘビー。軍隊のリクルーター活動も効率最優先のため、入隊を拒否しずらい低所得者層を対象に、様々な優待制度をエサに(言い方は悪いが)効率的に狙っていくという方法や、教育予算・給食制度などの削減によって、持たざるものは選択の余地がない状態のまま貧困から抜け出せず、中産階級もふとしたきっかけで貧困層へと落ち込んでいく可能性を秘めている。そしてごく一部の富裕層は栄えていくという構図がこの本では描かれている。
手にしたわずかなお金でおなかを満たそうとするときに、栄養価を考えて買うわけもない。1ドル数10セントのジャンクフードでお腹を満たすしか選択の余地のない生活になればそりゃ栄養失調で肥満体質にもなろうっていうものだ。学校給食ですらそのような食事をして、肥満児を減らそうと言うのがそもそもおかしいのよね。
もちろん、ソースが偏っている可能性は否定できないし、この本がすべての真実を語っているとは考えない方がいいとは思う。しかしある切り口から見たアメリカという国の姿のサンプルとして読むには読み応えのある1冊かもしれない。
ちなみにこの本、2008/1/22に初版が刷られているが、2008/2/22ですでに第4版になっている。2月明けから新宿、神保町、八重洲などの本屋を回って見たもののあらゆる本屋で全滅。岩波ブックセンターにすら置いてなかった(笑)のであまぞんせんせで購入したものである。