Tom Scott with The California Dreamers
HONEYSUCKLE BREEZE
(ユニバーサル ビクタ-
impulse! MVCJ19164)





June 04, 1999

 What's Newもレヴュー・コーナーと化してしまいそうです。今回は、トム・スコット・ウィズ・ザ・カリフォルニア・ドリーマーズ/ハニーサックル・ブリーズ(ユニバーサル ビクター MVCJ19164)を紹介しましょう。ハル・ブレイン狙いで、何枚 かのジャズ・アルバムを買ったことがありますが、ハル抜きのレッキング・クルーがらみでジャズをゲットしたのは、これが初めてです。一応、分類はフュージョン・ジャズというようですが、フュージョン・ファンに聴かすのはもったいないです。この手のものは、VANDAではあまり取り上げられませんが、ソフト・ロック・ファンにこそ聴いてもらいたいCDです。オリジナル・リリースは1967年。プロデュースは、ボブ・シール。

 メンバーですが、トム・スコットは、どうでもよろし。ギターにグレン・キャンベル、パーカッションに、エミール・リチャーズ、ドラムにジム・ゴードン、ベースはキャロル・ケイ姉御。9人からなるコーラス隊のザ・カリフォルニア・ドリーマーズのメンバーのなかにアル・キャップス、ジョン・ベイラー、トム・ベイラー、ジャッキー・ワードの名が見られます。ジョンとトム・ベイラー兄弟は、ラヴ・ジェネレーションのメンバーとして知られています。ジャッキー・ワードとは、ワンダフル・サマーのロビン・ワードですね。興味沸いてきたでしょう。さらに、ビル・プラマーのシタールを加えて、サイケの味付けを出しています。ジャケットもサイケしております。
 曲目は、ビートルズの「シーズ・リーヴィング・ホーム」、ドノヴァンの「メロウ・イエロー」、アソシエイションの「ネヴァー・マイ・ラヴ」、ジェファーソン・エアプレーンの「トゥディ」、ジョーン・バエズの「ノース」というように、ジャズというよりポップスといったほうがいいかもしれないですね。

 一応、トム・スコットがリーダーですので、サックスやフルートを持ち替え、アドリブで頑張っておりますが、どちらかというとさわやかなコーラスを楽しむボーカル・アルバムと考えたほうがいいと思います。ダバダバダのスキャットを聴いてニール・ヘフティの「シンギング・インストルメンタルズ」を思いだしてしまいました。そこで、ヘフティのCDを取りだしてみたら、なんと、プロデュースはボブ・シールでした。似てるはずじゃん。もちろん、レッキング・クルーのサポートも聞き逃せません。これがデビュー・アルバムとなったトムは、この時19才といいますから、ま、大したものです。

 さて、日本語ライナーには、サポートしているミュージシャンにはまったく触れておりません。残念です。で、ひとつ疑問に残るのは、「ニューヨークにて録音」というところです。たしかに、インパルスはニューヨークのレーベルですが、トム・スコットもLAのミュージシャンであり、そのほかのメンツもLA在住です。そんでもって、わざわざ大挙してニューヨークくんだりまで行くのかしらね。ボブ・シールひとりが、ロスに来たほうが安い、早いと思うのですけど。
 ところで、小川隆夫氏の書き下ろしエッセーのなかで、「ジャズのミュージシャンがロックのレコーディングに参加すると、ちょっと胡散臭い目で見られることがあった」と書いていますが、何をたわけたことを言っているのか、です。スペクターは、ロック・ミュージシャンはあてにならないから、ほとんどジャズ・ミュージシャンしか使わなかったというのに。譜面に弱いイースト・コーストのジャズ・ミュージシャンが、3コードしか知らないガレージ・バンドのレコーディングに参加する、となれば、弁護のひとつもしたくなるだろうし、一格上に置きたい気持ちも、わかりますがね。
 それはさておき、忘れずにジャズ・コーナーにも足を延ばしましょう。


Bud Shank with The Bob Alcivar Singers
LET IT BE
( 東芝 LIBERTY LP 8957 / World Pacific ST 20170)

1. Let It Be (Lennon/McCartney)
2. Games People Play
3. Something
4. Long Time Ago
5. Both Sides Now
6. Love's Been Good to Me
7. A Famous Myth
8. Didn't We
9. The Long and Winding Road (Lennon/McCartney)
10. For Once in My Life





August 12, 2001

真夏の夜の邪図、第二夜。

 第二夜は、70年ころにリリースされた、日本盤タイトルでいうところの「レット・イット・ビー/イージー・リスニング・バッド・シャンク」です。
 1926年生まれのバド・シャンクは、ポスト=パーカー世代のホットなプレーヤーのうちの1人として、50年代からロサンゼルスのウエスト・コースト・シーンで活躍している現役のアルト・サックス奏者です。一時期、フルートも併用していて、フルートのアルバムもいくつか残してます。中には日本の琴と競演したものもあり、ジャズに於ける革新者ともいえるかもしれません。その最たる例といえるのが、ブラジル人ギタリストのローリンド・アルメイダと組み、ブラジル音楽とジャズを融合した作品を53年に発表したことでしょう。これは、アントニオ・カルロス・ジョビンに影響を与え、ボサ・ノヴァの形成に一役買ったといわれています。(以上、受け売りでございます(^^;)
 
 さてジャケットですが、緻密なイラストそのものは、なかなかだと思います。でもですね、「イージー・リスニング」というテーマからすると、ちょっとキモイではありませんか。これも、オリジナル盤を見たことがないので、なんともいえませんが、東芝レコード内部で、「キモイから替える」という声はなかったのでしょうか。あるいは、オリジナル盤はごく普通の図柄だったにもかかわらず、ハイセンス(死語?)なお偉いさんが、「カエルコール」をしたのかもしれません。

 キモイ図柄はともかくとして、中身はキモチよく、とてもくつろげるものです。オリジナル・タイトルでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、「WITH THE BOB ALCIVAR SINGERS」が、このアルバムのキモでございます。ボブ・アルシヴァルといえばフィフス・ディメンションやカーニバルなどにアレンジを提供した人物なので、おそらく、このアルバムのサウンドも想像できるのではないかと思います。おい、これがジャズといえるかぁ?今でいうソフト・ロックじゃんかよぉ!というジャズ・マニアの声が聞こえそうであります。
 事実、バド・シャンクもイントロと間奏のアドリブだけお仕事している、といっても過言ではありません。

 裏面の解説によりますと、ボブ・アルシヴァル・シンガーズは、(一人ひとりの名前は残念ながら不明なのですが)「9人からなるコーラス隊」と書かれております。
 おっと、「9人からなるコーラス隊」で思いだされるのが、以前ご紹介したトム・スコットのアルバムに爽やかなコーラスを添えてくれたカリフォルニア・ドリーマーズでございますね。ドリーマーズは、同様にガボール・ザボの2枚のアルバムでも、すてきなハーモニーで和ませてくれました。

 パーソネルは次の通りです。キャロル姉御がいらっしゃいます。

■アルトサックス:バド・シャンク
■ピアノ:ロジャー・キャラウェイ
■ギター:
デニス・バドミール、ハワード・ロバーツ
■オルガン、エレクトリック・ピアノ:ラリー・ニッチェル、マイケル・ラング
■ベース:キャロル・ケイ
■ドラム:ジョン・グリーン
 またもや、レッキング・クルー調査隊、隊長オオノ氏、関東師団長鶴岡氏より、日本盤のクレジットの不備を指摘していただきました。ボブ・アルシヴァル・シンガーズのメンバーがカリフォルニア・ドリーマーズと重なる部分が多いことも判りました。

Produced by Richard Bock
Arranged and Conducted by Bob Alcivar
Engineers: Bert Agudelo, David Brand, and Mike Denecke
Art Direction and Design: Ron Wolin
Backliner Photography: Ron Woline
cover Illustration: Shaeleen Pederson
MUSICIANS: All Tunes Bud Shank, Alt Sax
Roger Kellaway
, Piano
Dennis Budimir
, Guitaar
Carol Kaye
, Bass
John Guerin
, Drums
Howard Roberts
, Guitar on all But A Famous Myth, Let It Be, and Something
Michael Anthony
, Guitar on Afamouth Myth, Let It Be and Something
Larry Knechtel
, Organ and Erectric Piano on All but Both Sides, Now, Long And Winding Road, Love's Been Good To Me, and Long Time Gone
Michael Lang
, Organ and Erectric Piano on Both Sides, Now, Long And Winding Road, Love's Been Good To Me, and Long Time Gone
VOCALISTS: John Bahler, Loren Faaber, Ronald Hicklin, Gordon Mitchell, Louis Morfard, Ian Freebairn-smith, Sally Stevens, Susan Tallman, and Jackie Ward

TOM SCOTT WITH THE CALIFORNIA DREAMERS /
HONEYSUCKLE BREEZE (impulse! MVCJ19164)

GABOR SZABO AND THE CALIFORNIA DREAMERS /
WIND, SKY, AND DIAMONDS (impulse! MVCJ19113)


ザ・カリフォルニア・ドリーマーズも9人からなるコーラス隊で、名前の通りのさわやかなハーモニーはサニーサイドのお供にピッタシ!!
ちなみにメンバーは、
アル・キャップスジョン・ベイラートム・ベイラー兄弟ジャッキー・ワード(ロビン・ワード)ロン・ヒクリンイアン・フリーバーン=スミスサリー・スティーヴンススー・アレンローレン・ファーバー