The Howard Roberts Quartet
GOODIES
( 東芝CP 7535 /
CAPITOL ST-2400)

1. Love
2. Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me)
3. Three O' Clock In The Morning
4. Marie
5. Girl Talk
6. Fly Me to The Moon (In Other Words)
7. Goodies
8. More
9. I Know A Place
10. Summer Wind
11. Chim Chim Cher-ee





August 01, 2001

真夏の夜の邪図、第一夜。

 「日本はジャズ・マニア天国である」。控えめに「有数の」という形容詞を付けてもいいのですが、とにかく名盤からアッと驚く為五郎盤まで、手を変え品を変え復刻している国もそんなに多くはないでしょう。かつて、米国のマーキュリーの倉庫まで乗り込んで発掘作業したディレクターがいたかと思えば、サボイ・レーベルを丸ごと買い取ったり、日本人のジャズの対する情熱は凄まじいものがあります。
 それはそれとして、じっさい復刻されるものの大半は、ジャズ評論家のお眼鏡にかなったというか、売れスジものばかりの様な気もしないではありません。ゲテモノ食いのぼくとしては、ちょこっと残念でなりません。これから3回に分けてご紹介する3枚のジャズ・アルバムはジャケットの図からしてちょこっと邪道であり、ジャズ・マニアからすれば、ちょこっとどころか、かなり白い目で見られる内容かもしれません。
 
 第一夜は、ハワード・ロバーツ・カルテットの「ラヴ」。オリジナル・タイトルは、お菓子の意味の「Goodies」、1965年にリリースされました。左のジャケットをご覧ください。ジャズの持つクールさの微塵も感じられない、ポール・モーリア・オーケストラか、はたまたレイモン・ルフェーブル・オーケストラか、といったムード音楽の趣の、嘆かわしいデザインでございます。オリジナル盤は見たことがありませんので日本独自のデザインかもしれません。でも、それならアルバム・タイトルも「Goodies」ではなく「Love」と表記したほうが、帯や裏面の解説と一致してやや


Howard Roberts
Something's Cookin & Goodies
( EUPHORIA 184)
今回紹介した 「ラヴ」は
2 albums on 1 CDとして
リリースされてます。
やっぱ、ジャズのジャケットは
こうでなくっちゃねー。

こしくないので、たぶんオリジナルもそうなのでしょう。おかしな話です。
 レッキング・クルー調査隊、隊長オオノ氏より、日本盤と米国盤とはデザインが異なるという報告を頂きました。
 1929年生まれのハワード・ロバーツは、スペクター・セッションでもおなじみのジャズ畑のギタリストです。嘘か誠か、セッションが過酷で指から血を流した、というエピソードの持ち主でもあります。それ以前にも、スペクターがフィル・ハーヴェイ名義で1959年に出した「バンバーシュート」にも彼が(うんざりしながら?)サポートしていました。
 また、ジャズ・ギタリストといっても、映画、テレビ音楽をはじめポップ、ロック・レコードなどのセッション・マンとしての仕事がメインだったため、日本のジャズ・ファンにとって、ハワード・ロバーツの知名度は低いようです。

 さて、カルテットと称しながら、メンバーは4人だけではなく、じつに興味深い名前が並んでいます。

■ギター:ハワード・ロバーツ、ドナルド・ピーク、トミー・テデスコ、キャロル・ケイ、ジョン・ピサノ、ジョン・グレイ
■オルガン:チャールス・キナード、ピート・ジョリー、ヘンリー・ケイン
■ベース:チャールス・パーゴッファー、マックス・ベネット
■ドラム:ハル・ブレイン、フランク・キャップ、シェリー・マン、ラリー・バンカー

 曲によっては、複数のギターが加わって音を厚くしているものもあり、厳密な意味でのカルテットではありません。楽器が4種類という意味ではカルテットなのでしょうかね。
 で、内容ですが、ジャケット・デザインから想像できるイージー・リスニング・ジャズでございます。これはこれで、ようござんすがねぇ、ジャズがジャズとして売れる時代じゃぁない、というセールス重視の一枚でしょうか。

 タイトル曲の「ラヴ」ですが、太鼓はおそらくハル・ブレインでしょう。ベースもカッコイイですねぇ。おそらく、…やめときましょうね(^^;。



Bud Shank with The Bob Alcivar Singers
LET IT BE
( 東芝 LIBERTY LP 8957 / World Pacific ST 20170)

1. Let It Be (Lennon/McCartney)
2. Games People Play
3. Something
4. Long Time Ago
5. Both Sides Now
6. Love's Been Good to Me
7. A Famous Myth
8. Didn't We
9. The Long and Winding Road (Lennon/McCartney)
10. For Once in My Life






August 12, 2001

真夏の夜の邪図、第二夜。

 第二夜は、70年ころにリリースされた、日本盤タイトルでいうところの「レット・イット・ビー/イージー・リスニング・バッド・シャンク」です。
 1926年生まれのバド・シャンクは、ポスト=パーカー世代のホットなプレーヤーのうちの1人として、50年代からロサンゼルスのウエスト・コースト・シーンで活躍している現役のアルト・サックス奏者です。一時期、フルートも併用していて、フルートのアルバムもいくつか残してます。中には日本の琴と競演したものもあり、ジャズに於ける革新者ともいえるかもしれません。その最たる例といえるのが、ブラジル人ギタリストのローリンド・アルメイダと組み、ブラジル音楽とジャズを融合した作品を53年に発表したことでしょう。これは、アントニオ・カルロス・ジョビンに影響を与え、ボサ・ノヴァの形成に一役買ったといわれています。(以上、受け売りでございます(^^;)
 
 さてジャケットですが、緻密なイラストそのものは、なかなかだと思います。でもですね、「イージー・リスニング」というテーマからすると、ちょっとキモイではありませんか。これも、オリジナル盤を見たことがないので、なんともいえませんが、東芝レコード内部で、「キモイから替える」という声はなかったのでしょうか。あるいは、オリジナル盤はごく普通の図柄だったにもかかわらず、ハイセンス(死語?)なお偉いさんが、「カエルコール」をしたのかもしれません。

 キモイ図柄はともかくとして、中身はキモチよく、とてもくつろげるものです。オリジナル・タイトルでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、「WITH THE BOB ALCIVAR SINGERS」が、このアルバムのキモでございます。ボブ・アルシヴァルといえばフィフス・ディメンションやカーニバルなどにアレンジを提供した人物なので、おそらく、このアルバムのサウンドも想像できるのではないかと思います。おい、これがジャズといえるかぁ?今でいうソフト・ロックじゃんかよぉ!というジャズ・マニアの声が聞こえそうであります。
 事実、バド・シャンクもイントロと間奏のアドリブだけお仕事している、といっても過言ではありません。

 裏面の解説によりますと、ボブ・アルシヴァル・シンガーズは、(一人ひとりの名前は残念ながら不明なのですが)「9人からなるコーラス隊」と書かれております。
 おっと、「9人からなるコーラス隊」で思いだされるのが、以前ご紹介したトム・スコットのアルバムに爽やかなコーラスを添えてくれたカリフォルニア・ドリーマーズでございますね。ドリーマーズは、同様にガボール・ザボの2枚のアルバムでも、すてきなハーモニーで和ませてくれました。

 パーソネルは次の通りです。キャロル姉御がいらっしゃいます。

■アルトサックス:バド・シャンク
■ピアノ:ロジャー・キャラウェイ
■ギター:
デニス・バドミール、ハワード・ロバーツ
■オルガン、エレクトリック・ピアノ:ラリー・ニッチェル、マイケル・ラング
■ベース:キャロル・ケイ
■ドラム:ジョン・グリーン
 またもや、レッキング・クルー調査隊、隊長オオノ氏、関東師団長鶴岡氏より、日本盤のクレジットの不備を指摘していただきました。ボブ・アルシヴァル・シンガーズのメンバーがカリフォルニア・ドリーマーズと重なる部分が多いことも判りました。

Produced by Richard Bock
Arranged and Conducted by Bob Alcivar
Engineers: Bert Agudelo, David Brand, and Mike Denecke
Art Direction and Design: Ron Wolin
Backliner Photography: Ron Woline
cover Illustration: Shaeleen Pederson
MUSICIANS: All Tunes Bud Shank, Alt Sax
Roger Kellaway
, Piano
Dennis Budimir
, Guitaar
Carol Kaye
, Bass
John Guerin
, Drums
Howard Roberts
, Guitar on all But A Famous Myth, Let It Be, and Something
Michael Anthony
, Guitar on Afamouth Myth, Let It Be and Something
Larry Knechtel
, Organ and Erectric Piano on All but Both Sides, Now, Long And Winding Road, Love's Been Good To Me, and Long Time Gone
Michael Lang
, Organ and Erectric Piano on Both Sides, Now, Long And Winding Road, Love's Been Good To Me, and Long Time Gone
VOCALISTS: John Bahler, Loren Faaber, Ronald Hicklin, Gordon Mitchell, Louis Morfard, Ian Freebairn-smith, Sally Stevens, Susan Tallman, and Jackie Ward

TOM SCOTT WITH THE CALIFORNIA DREAMERS /
HONEYSUCKLE BREEZE (impulse! MVCJ19164)

GABOR SZABO AND THE CALIFORNIA DREAMERS /
WIND, SKY, AND DIAMONDS (impulse! MVCJ19113)


ザ・カリフォルニア・ドリーマーズも9人からなるコーラス隊で、名前の通りのさわやかなハーモニーはサニーサイドのお供にピッタシ!!
ちなみにメンバーは、
アル・キャップスジョン・ベイラートム・ベイラー兄弟ジャッキー・ワード(ロビン・ワード)ロン・ヒクリンイアン・フリーバーン=スミスサリー・スティーヴンススー・アレンローレン・ファーバー



The Mariachi Brass
featuring Chet Baker
HATS OFF
( World Pacific WP-1842 / WPS-21842)

1. Happiness
2. Sure Gonna Miss Her
3. Bang Bang (My Baby Shot Me Down)
4. The Phoenix Love Theme (Senza Fine)
5. These Boots Are Made For Walkin'*
6. On The Street Where You Live
7. Armen's Theme
8. Spanish Harlem
9. Chiquita Banana*
10. When The Day Is All Done (Foyo)
11. You Baby*
12. It's Too Late

* arranged by Jack Nitszche





Twin VQプレーヤーは無料で入手できます。上のアイコンをクリックすると、YAMAHAのホームページにアクセスできます。
Twin VQは、MPEG4に採用されたオーディオ規格で、MP3に比べて音質と圧縮率が勝っています。

August 23, 2001

真夏の夜の邪図、第三夜。

 いよいよ最終夜となりました今夜のお題は、チェット・ベイカーをフィーチャーしたザ・マリアッチ・ブラスでございます。ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスの二番煎じミエミエの企画盤でございますね。ちょっと聴いただけでは、その違いに気が付かないかもしれません。しかし、ハーブ・アルパートの陽光輝くトランペットの音色に対して、チェット・ベイカーの憂いのあるフリューゲルホーンの音色は、マリアッチ・サウンドにはミスマッチかと思います。それでも第一弾の「テイスト・オブ・テキーラ」が結構売れたのでしょう。さらに3枚作られました。ここで取り上げた写真は66年にリリースされた第二弾の「ハッツ・オフ」。おへそが見えるジャケットがナイスです。あ、ただしモノラル盤だけね。ステレオ盤は、トリミングが上下ずれて向かって右のひじ辺りでカットされておへそは見えません。できれば「ハッツ・オン」のほうがよかったのにねぇ。
 冗談はさておき、ジャズにふさわしいデザインかというと、やや疑問を挟まずにはいられません。ジャズ・ファン以外の人たちに向けて購買欲をそそるような図であるのがミエミエであります。ワタクシ的には、それは見事に成功したと、正直に告白せざるを得ません。

 このマリアッチ・ブラスのシリーズは1965年から66年にかけてリリースされたようですが、その前年の1964年にチェットは5年にわたるヨーロッパの放浪の旅から帰ってきたところでした。放浪の旅などと書くと聞こえはいいですが、ヤクヅケの日々で、イタリアでは17ヶ月間刑務所に放り込まれ、映画の仕事で英国に渡ったかと思えば、国外追放の憂いき目に会い、ドイツでは逮捕後病院送りと、とてもまっとうな旅とはいえなかったみたいです。
 そんなこんなで、チェット救済の意味合いの強いアルバムでもあります。チェットの研究家も「お金のためのレコーディング」と、にべもありません。そのためでしょうか、彼のアルバムもかなりの数がCD化されていますが、このマリアッチ・ブラスの4枚は復刻の気配がありません。

 さて、内容ですが、先に述べましたようにティファナ・ブラスの二番煎じでありまして、しかも、マリアッチ・ブラスの実態もティファナ・ブラスと重なる部分が多いような気もします。いいかえると、レッキング・クルーの関わりが濃厚である、ということです。ハーブ・アルパートとチェット・ベイカーが入れ替わった、と思っていただいて結構かと。当然のことながら、ジャズ・ファンにはほとんど見向きもされないキワモノになってしまいました。
 
 ジャズ・マニアはともかく、ポップス・ファンには注目すべき点が他にもございます。それは、このアルバムのアレンジャーです。「テキーラ」では全曲、「ハッツ・オフ」では3曲をジャック・ニーチェが担当していることで、その筋の方には要チェックのアルバムといえるからなのでした。2作目の残りと3作目の「ダブルショット」と4作目の「イン・ザ・ムード」のアレンジャーは、ジョージ・ティプトンです。ティプトンは、ジャッキー・デシャノンやヴィッキー・カー、ジャン・アンド・ディーン、ホセ・フェリシアーノなどのレコードで目にすることがありますね。
 
 というわけで、ニーチェがアレンジした「チキータ・バナナ」のサウンド・ファイルを御用意しました。このドラムの入り方は、ハル・ブレインっぽいですねー。

 話は違いますが、偶然にも「真夏の夜の邪図」で取り上げた3枚は、みなキャピトル傘下のレーベルでした。東芝EMIさん、何とかならないもんですかねぇ、CD化。

 再生には、サウンドVQプレーヤー(無料)が必要です。

9 8 7 6 5 4 3 2 1 0

enter

THE WALL OF HOUND enter
このサイト名の由来は、もちろんフィル・スペクターが創造したWALL OF SOUNDの語呂合わせです。 HOUNDには、マニアという意味もあるようですが、特に深い意図はありません。また、ぼくは吠えたりもしません。このサイトでは、そのフィル・スペクターの再認識と知名度の向上を第2の目的としたものです。(文責: 大嶽好徳)
yoxnox art gallery
で、第1の目的はといいますと、ぼくの本業であるイラストを紹介することです。
プロフィール代わりに、どうぞご覧になってください。
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Links  2/27/2001 更新
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