さて、脛斬りといえば柳剛流が有名だが、実のところこれがどれだけ使われていたかは疑問がある。3枚目の写真を見るとわかるように、相手の脛が切れるポジションをとるということは実のところ目の前に剣先がくる位置になる。仕掛けた方の体勢もあまりいいとは言えないから、この状態からそそくさと逃げ出すのは難しい。これで相手が「脚の一本ぐらいいらんわ!頭は貰った!」とか考えるとぜんぜん間尺が合わない。つまり脛を斬った時点で勝負が決してくれないと困るわけだ。 あるいは、薩摩あたりだと示現流で頭を割られましたという死体がずいぶん報告されているようだが、「こいつは足がないから柳剛流の仕業に違いない」なんてのは小説の類を除いてもう一つ聞いたことがない。 このへんから、実は脛斬りというのは軽くてリーチの長い竹刀専用の戦法なのではないかという疑いが出てくる。竹刀であれば大きく踏み込む必要もないし、片手打ちにすればさらにリーチを稼ぐことができる。現代でいえばスポーツチャンバラのような戦法をとることになるわけだ。とはいえ、今回は木刀を使用してやってみることにする。 |
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基本型 | |
右:仕太刀 左:打太刀 |
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抜刀しつつ | |
大きく踏み込んで脛を斬る。 打ち太刀の剣尖の位置に注目。 |
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返し技1 | さて、小説などでは脛斬りは悪役が使ってくることになっているので、当然返し技が考案されている。冗談はおいておいて、実際当時の道場経営者たちは結構戦々恐々としていたらしい。こちらは当時の某有名剣術家が考案した物。 |
踵を尻に打ち当てるつもりで跳ね上げて剣をかわす。文面からするとジャンプしているような雰囲気なのだが、とりあえず片足のみ。 | |
返し技2 | 剣で受ける。このときに攻撃の勢いに負けないように剣先を地面に突き立てるというのだが、こういうことをするとまず間違いなく剣が駄目になる。剣を買うというのは現代で言えば外車を買うのに匹敵するような経済行為だったそうなので、本当にこんな事をしたかはちょっとわからない。 |
剣で受ける。刃先は外に向け刃と刃が打ち合うようにする。「刃で打ち合うと刃がダメになるから峰で受ける」と言っているところもあるが、刀というのは構造上峰の方からたたかれると非常にもろい。場合によっては受けたはいいがそのまま打ち折られるということもあり得る。まあいろいろ考え方があるということで。 | |
返し技3 | 佐々木小次郎の「つばめがえし」も実は脛斬りだったという説がある。これはその説をとった物。 |
脛斬りに来たところを飛び越えて頭を割る。 |