学園ドラ&エヴァ



「いてっ!」

「あ、ごめん。」

第三新東京高校の昼休み。

幼なじみのアスカに頼まれ、購買でジュースを買ってくるよう言われた碇シンジは、

そのパシリの帰路で、身体の大きな学生とぶつかった。

そして、誰なのかと相手の顔を見、最悪の相手と衝突してしまったことを知る。

「いってーなー。」

ドスをきかせた声でうなる、その人物は。

高校、いやさ第三新東京でも最強の高校生といわれる乱暴者、剛田タケシその人だ

った。一年生にして、高校をシメてしまったほどである。俗にいうところのジャイアン、

こう説明した方が早い。

げっ……。声にも出せず、シンジはうめく。

クラスメートなのだが、最近何故か相性が悪くなっている相手だった。

「の野郎……。俺にぶつかっといて、謝りもしねえとは、いい度胸じゃねえか。」

上から威圧するかのように、睨み付けるジャイアン。その姿は、まるでヤクザ。

「いや、その…。謝ったけど、既に。」

シンジは当然のツッコミをする。

ジャイアンはそれを聞き、言葉に詰まったようになりながらも、

「ぐっ……うるせえ!あんなもの、謝ったうちに入んねーんだよ。」

赤面しながら怒鳴った。

おかげで廊下中の注目を集めてしまう。

大勢の視線を浴び、ジャイアンはとっとと用事を済ませてしまうことにした。

「シンジ、てめえ、本気で悪いと思ってんなら、世界地図持ってこい!」

「はあ?」

唐突に意味の判らないことを言われ、戸惑うシンジ。

「ついでに弁当と小遣いを百円だ!一時間以内にだぞ!」

むなぐらをつかみ上げ、ジャイアンは言い放つ。

「君が何を言ってるのか判らないよ、ジャイアン。」

「うるせえ、判る奴だけ判ればいいんだよ。いいからとっとと、持ってこい。」

ジャイアンは顔を近づけながら、傍若無人な振る舞いを続ける。

シンジは戸惑ったように、視線をあちらこちらに、さ迷わせるだけだった。

「それがもし嫌だってんなら―――そうだな。惣流アスカと―――」

ジャイアンが言おうとした寸前。

「アタシがどうかした?」

廊下の向こうから、惣流・アスカ・ラングレーがやってきて、ジャイアンに向け、言う。

シンジの幼なじみにして、学園一の美少女(嫌な表現)。

「いっ……いや、なんでもないぜ、ホント。その……つまり―――なに?」

慌てまくるジャイアンは、シンジに言葉を向けた。

無論、胸ぐらをつかんでいた右腕は、声がかかると同時に離している。

「いや……何?って言われても……。」

シンジは困惑したように答えた。当然だろう。

ジャイアンすら、何を言おうとしているのか判っていないのだから。

「つまり用は無いってわけね。」

呆れた調子で二人を見やると、アスカはシンジの腕を取った。

「まったく……アンタはジュースを買うのに、何分かかってんのよ?」

「しょうがないじゃないか…。混んでたんだから。」

「そう言う時は、全力ダッシュするもんよ。」

「やってるよ。僕も苦労してるんだよ、誰か僕に優しくしてよ。」

「情けないわねえ…。」

言い合いながら、廊下の奥に消えていくシンジとアスカ。

それを呆然と見つめるジャイアン。

そしてそれを更に奥から眺めていた影一つ。

その人物は、吐き捨てるように言った。

「ちっ……ジャイアンのデク野郎め……。役に立たないなあ…。」

そして物陰から出ると、シンジ達と同じく、教室へと戻った。

特徴的な長髪が魅力の、高校生だった。



昼休み。

シンジが買ってきたジュースを渡された後、アスカ、シンジ、レイの三人は仲良く

昼食タイムに入っていた。椅子と席とを突き合わせ、楽しくお食事。

基本的に会話は、アスカがシンジを苛め、それをレイがとりなすという……まあ、

いつもの感じで行われていたわけで。

どちらにせよ、男一人に女の子二人。しかも学校一二を争う美少女(だから嫌だって、

この表現……)。

女の子に縁の無いクラスメート達には、なんだか光り輝いている別空間の様に写った。

とりわけ、中心たるシンジへの風当たりは強かったが、既に夏休みを過ぎ季節は秋。

もうこの光景にも、慣れ始めているクラスメート達だった。

そして、その明るい空間とは対照的に、一人カメラを磨きながら、もそもそと食事をする

眼鏡少年もいれば、怪しいジャージを着込み、芯の強そうな女の子と不器用ながらも

食事を楽しんでいる2人組など(取りたてて誰とは言わないが)。

そしてクラスの一番外れに、向かい合って弁当を食べる二人組があった。

「ったく……ジャイアンも役に立たないんだから……。」

片方の長髪の学生が不満気に呟く。先程、物陰で呟いていたのも彼である。

ぶっちゃけて言ってしまえば、要するに、スネ夫の事だけども。

対するジャイアンも口を尖らせる。

「仕方ねえだろお?!」

そして声を潜め、

「本人の前で『惣流アスカと別れろ』なんて、言えるわきゃねーんだからよ。」

「まあ……ねえ……。」

言ってスネ夫は、弁当箱の卵焼きを箸で突き刺した。

それをもぐもぐと食べながら、

「要するに―――『シンジ君を苛めて、アスカちゃんと別れさせよう』作戦は失敗

したわけだ。」

「まあな。あれ以上やると、ホントいじめっ子になっちまうからな。」

ジャイアンはなんだか感慨深そうに言う。

スネ夫は肩をすくめて、

「今更、言ってらあ。ジャイアンが苛めを封印してたなんて初耳だよ。」

「っていうか、シンジを苛めると、アスカちゃんが出てくるだろ?」

「ほう……。ジャイアンも、女の子を殴る拳は持ってないって?」

「というよりな。」

更に声を潜め、口に手を当てて、ジャイアンはスネ夫に囁いた。

「お前も知ってんだろ?アスカちゃんの噂は。」

「………まあね。ヤンキーをタコ殴りにしたってヤツだろ?」

惣流アスカ。この高校どころか、第三新東京一の美少女(三度目…うえっ)と謳われる

少女だが―――

ドイツの方の血が混じっているらしく、容貌や髪の毛の美しさに関しては――――

と、ここでぐだぐだと書くのは避けるとして、ともかく抜群の容姿を誇っている。

そこから受ける印象は勝ち気な美少女(……四度目)だったが―――

「14の時、ゲーセンで絡んできたヤンキー数人を、あっという間に返り討ちにしたって

いう武勇談。そんな女の子、相手にしたくねえぜ、いくら俺でもな。」

「まあ―――女の子相手に全力をだすなんてのは、格好悪いからねえ。」

ジャイアンは別に、アスカを好きなわけではない。

というより、好きな娘はいなかったし、小学生時代は『男女差別せず』。

独自の美学、ジャイアニズムを炸裂させていた。

が、今では妹との兼ね合いで、フェミニストを強制させられている。

「それにしてもねえ……。」

スネ夫はちらり、シンジ達三人の机を見やった。

明るく楽しげに会話を続ける三人―――シンジ、レイ、アスカ。時折、嬌声がスネ夫の

元にまで届いた。

それを黙って見つめるスネ夫の視線は、なんだか複雑なものを抱えている。

ジャイアンはそんなスネ夫を黙って見つめた。

無論、箸は止まっていないものの。というより、この隙を突いてスネ夫の弁当箱から食べ物を、

幾つか失敬していた。

もぐもぐと口を動かしながら、ジャイアンはふと考え込む。

(こいつ……なんだか妙な奴だよなあ……今更ながら)

ジャイアンとスネ夫、そしてのび太、しずかちゃんの四人は同じ中学を卒業後、それぞれの

進路をめざし、別々の高校を受験した。

が、しずかちゃんとスネ夫は受験に失敗。

のび太とジャイアンは、驚異的な勉強量によって成績向上の末―――

何故か四人は、同じ高校に進学していたのだった。

それを知ったスネ夫などは、『なんで私がこんな高校に通わなくちゃならないんだ!私は

勉強して自衛隊に入るんだ。それで特殊部隊を作るんだ!』などと、意味不明な事を

わめきちらしていたが。

ちなみに出来杉君は、有名高校に無事進学。のび太達との交流はなくなる。

だが、そのスネ夫の不満も、同じクラスに惣流アスカと綾波レイという、二大巨頭がいると

いう事を知り、それなりに納得する。

というより、滑り止めとは言えしずかちゃんも進学しただけあり、それなりに有名校ではあった。

文句を言ったのは、スネ夫特有の性格だろう……と、ジャイアンはあたりをつけているが。

ただアスカとレイの存在を喜んだのは、スネ夫だけではない。

ジャイアンとのび太、その他数人の諸事情を除くと、ほぼ全ての男子学生がアスカとレイ

の存在に狂喜、先を争ってアプローチをかけたが……。

全てが特攻、全滅に終わり、今に至る。

特に惣流アスカの方は、シンジを好いているのが明白というか、バレバレだったので、

全ての学生達は手を引き(無論、ヤンキーボコ殴りの噂も影響を与えていたが)、今で

は綾波レイに人気は一極集中。

だが、スネ夫は今になってから、アスカ攻略を始めた。

というより、それまでは無関心を装っていたのだが……。

この豹変といい対応といい、ジャイアンもスネ夫に困惑していた面があった事は事実。

しかもスネ夫自身が、アスカと話したり何かをしたことはほとんどない。

せいぜいが、お互い呼び捨てあえる、というくらいの親しさ。普通のクラスメート的な間柄でしか

なかった。

そのスネ夫が何をもって、アスカ攻略としているかというと、ジャイアンを使い、外堀を埋めよう

としているだけ。報酬がいいので、効率の良いバイトだと、ジャイアンは開き直っているものの

スネ夫の真意は分からない。

アスカに惚れている、という点に関しては疑うべくもないだろうが。

「まあね……色々あるとは思うよ。」

ぱかぽこと、シンジの頭を殴り始めたアスカを見つめていたスネ夫は、不意に呟くと、体勢を元

に戻した。

奇妙に減った弁当箱の中身を怪訝な面持ちで見つめたのは一瞬。

「お、ジャイアンにスネ夫じゃないか。」

唐突に声をかけられる。

机の脇に立ち、スネ夫らを見下ろすその男こそ―――

「のび太じゃねえか、何の用だよ?お前、クラス違うだろうが。」

ジャイアンは冷淡に突き放した。

のび太はひょいとおどけてみせ、

「冷たいねえ。彼女が居ないと、心が凍てつくのかい?」

しゃーしゃーとぬかす。

「ころすぞ、この野郎……。」

ジャイアンが押さえた声音で、震えていた。

「で、何のようだ?」

スネ夫は比較的冷静に、のび太を見つめ、続きを促す。

「いや、君たち無縁男には用はないよ。しずかちゃんを誘いに来ただけさ。」

「屋上でメシを食うってか?飽きないねー、君たちも。」

怒りを懸命に押さえているジャイアンを無視し、二人は会話を続けた。

「ま、ね。僕にようやく訪れた春だからね。」

言って、のび太はしずかちゃんの机へと向かった。

仲間内ではのび太だけが、別のクラスに編入されている。

高校入学を機に、本格的にしずかちゃんと付き合い始めたのび太に、かつての面影は

無い。成績もソコソコ、運動はそれなりにこなし、手先の器用なことと合わせ、繊細な

イメージを作り上げることに成功。

髪を染め上げ、コンタクトを入れ、容貌自体全く異なっていた。

しずかちゃんに関しては言うまでもない。

スネ夫達が誇る、最高の才媛。

アスカやレイほどではないが、そのかわいらしさにも定評があり、二人は今や、学校でも

有数のベストカップルとなっていた。

しずかちゃんと二三、言葉を交わし、教室の外へと消えていく。

それをなんとはなしに見つめながら、

「のび太の奴も変ったよな……。」

スネ夫はぽつりと言った。

ジャイアンが間髪入れず吠える。

「けっ、あのぶぁかが!あいつは昔からああなんだよ!」

そうか?と正直スネ夫は思ったが、口には出さず、

「ま、いつかコロスリストに掲載するには充分だけどね……。ドラえもんが未来に帰ったって

のに、あいつはよくやってるよ。」

「お前、のび太の保護者か?」

「そーいうわけじゃないけど……。情けなかった友人の成長を見守るのもいいもんだよ。」

「……変ったのはスネ夫。お前の方だと思うぜ。」

ジャイアンは呆れたように言って、食事を再開する。

スネ夫も置いていた箸を手に取った。



学校が終わり、放課後。

各々、自分の友人や方向の合うクラスメートなどと、帰り支度を始める。

シンジ、アスカ、レイの三人はいつも一緒に帰っていた。

なんでもシンジとアスカは隣同士の幼なじみらしいし、レイもまた近所に住んでいるという。

そのおかげで、まだフリーな筈のレイにも、「一緒に帰ろう」と誘える人間がいなかった。

というよりも、断られるのが見え見えだったからだが。

スネ夫も、アスカと一緒に帰るなどという妄想は捨てている。

のび太はしずかちゃんと登下校なので、必然的にスネ夫とジャイアンの二人が一緒に帰る

習慣となった。

支度を終え、下駄箱にて。

「あの……。」

おすおず。

そんな表現がピタリ、という風に、一人の少女がスネ夫に話し掛けた。

「ん?何?」

スネ夫は軽い口調で応じた。

傍らのジャイアンも野次馬モードに入った。

(隣のクラスの……名前はなんてったっけ?霧島さんだっけ?信濃ちゃんだっけか?)

ジャイアンは今一つ、名前を思い出すことが出来ないでいたが―――

華奢な感じの、今時珍しい可憐なタイプ。

(可愛いじゃん……隠れキャラって奴か?それとも新キャラか……)

直接何の関係も無いジャイアンは、好き勝手なことを考えている。

「私、B組の――――」

などと自己紹介を始める少女。

スネ夫は先を促す事無く、静かに佇んでいた。

と、少女は意を決したように、

「あ、あの……。今度、一緒に映画、見に行きませんか?」

まさしく勇気を振り絞ったかのような言葉。

傍らで、ぽりぽりと後頭部をかくジャイアン。

(まあ……珍しいこっちゃねーけど)

骨川スネ夫は高校入学以前より、その容貌を小学生の時より、まったく異にしていた。

唯一のコンプレックスだった身長は既に180を超え。成績は当然ながら、優秀。運動神経

も抜群。長いさらさらなストレートヘアは、肩にかかるほどまで伸び、よく芸能人に例えられ

る程のレベルの高い容姿。挙げ句、家は金持ちなので、ファッションにかける金も無尽蔵。

はっきりいって、抜群のルックス(へぼへぼな表現ですな)だった。

性質は違うが、シンジ君とタメを張れる唯一の男子、というのが専らの評価。

ジャイアンが知る限りでも、告白関連のイベントは―――

(もう、三度目か……高校だけでも)

スネ夫の後ろ姿を醒めた目で見つめながら、

(モテるんだよな、こいつ……異常に。それなのになんで)

「わり。俺、好きな子、いるから。」

軽い会釈めいた感じで頭を下げると、何事も無かったように、靴を履き替える。

「じゃ、帰ろうぜ。ジャイアン。」

言って、少女に見向きもせず、帰ろうとしたが―――

「噂は本当だったんですね………。」

寂しげに呟く声を聞きつけ、

「ん?なに、噂って?」

持ち前の好奇心からか、スネ夫は振り返り、質問する。

(っていうか……アスカちゃんが好きだ、なんてジャイアンにしか言ったことないけど……)

という点が気になった。

スネ夫は、アスカに惚れているなどという素振りを出したことはない、と思っていたし。

どんな噂がたっているのか―――それが気になった。

傷心の少女は、躊躇いながらも言う。

「骨川さんが……剛田さんとデキてるって………。」

スネ夫は硬直し、その場で立ちすくむ。

――――スネ夫の時は止まった――――



「いやー、笑わかしてもらったぜ。」

「人事じゃないよ、全く……。」

妙にご機嫌なジャイアンと、ふて腐れた様な表情で憮然とするスネ夫。

制服のまま、スネ夫の家に寄り、こうして先程の一件を振り返っていたらしいが―――

「ま、アレだな。断ってばっかしいるから、天罰でもくだったんだろ。」

言って、ジャイアンは豪快にポップコーンを口に運ぶ。

骨川邸で恋愛の話をする時は、つまみはポップコーンというのが掟だからだが。

「って、ジャイアン!自分のことでもあるんだぜ?ジャイアンが彼女をつくれば、何の

問題もないのに……。ホモ疑惑なんて、冗談じゃないよ。」

驚きと怒り、覚めやらぬ、といったようなスネ夫。

「俺は、女つくってる暇がねえからよ。」

別にムキになるでもなく、ジャイアンは静かに言った。

「ジャイ子ちゃんか……?」

「まあな。」

ジャイアンの妹、クリスチーネ剛田こと、ジャイ子もまた素晴らしい成長を遂げていた。

かつての醜さは、まさしく蝶が成長する以前の幼虫の如しで、今のあでやかなまでの

美しさは尋常ではなく。その蝶にたかろうとする虫達の駆除に、ジャイアンは大忙しだ

った。そういう意味で彼女云々ではない。決してモテないという訳ではなく。

「ジャイ子は……男に免疫がねえからな。」

ぽつりと呟く。

兄貴として、手のひらを返したように群がってくる男達に、腹を立てているのだろう。

(妹の為に……か)

「ジャイアンは良い兄貴だあね。」

照れたようにスネ夫は応じた。

「言われるまでもねえよ。」

ぼーん、ぼーん。

壁にかかった時計の針が五時を示す。

スネ夫はそれに視線をやりながら、

「もう五時か。……とっとと『シンジ君を苛めて、アスカちゃんと別れさせよう』作戦に次ぐ、

新たな作戦を考えなきゃね。」

言って顎に手をやり、考えに沈んでいく。

「って、お前よお。」

「ん?」

「なんで、さっきの子の誘いを断っちまったんだ?結構、可愛かったじゃんか。」

言われ、スネ夫の目が急に細められた。

その後、

「……私はね、ジャイアン。あの程度の女の子と付き合う為に、己を磨いてきたわけじゃ

ないんだよ。私が目標にしているのは、霊峰富士に匹敵するほどの娘なのさ。伊達に

小学生の頃から、真剣に恋愛を考えてきたわけじゃないんだよ。」

(アブねーな、コイツ……)

今更ながら、背筋に寒いものを感じつつ、ジャイアンも口を開く。

「で、アスカちゃんが富士山だってか?」

スネ夫は曖昧に首をかしげながらも、

「少なくとも、私にとってはね。」

平気な顔をして、てらいなく言ってのける。

「だけどよお……。」

ふうっ、とばかりの溜め息の後、

「スネ夫、お前もさあ。ホントのところは判ってんだろ?お前が立てた計画―――なんだっ

け?『プールで恥をかかせてアスカちゃんに幻滅させよう作戦』とか『テスト勉強を邪魔し

て落第させ、見捨てさせよう作戦』とかで、あの二人が別れる筈がねーって事をさ。」

スネ夫は無言のまま。

「それにあの二人はお互い素直じゃねえし、意地っ張りな面があるから、崩しやすいと見

てるのかもしんねーけどよ。尋常じゃねえぞ、見たか、あのヤキモチぶりを?!ちょっと

アスカちゃんのシンジのあんちゃんへの想いは、半端じゃねえぞ。金渡したら、何処まで

でも逃げていっちまいそうだぜ。」

「逃亡ってかい?」

「いや、それはともかく……。まあ、そういう事だよ?なんで、お前がこんなにアスカちゃん

にこだわるのかが、わかんなくってね。」

ジャイアンはいつになく、真剣な表情でスネ夫を見つめたが、スネ夫は口を開かない。

と、ジャイアンは慌てたように手を振って、

「いや、言いたくなけりゃ言わなくてもいいけどよ。人の気持ちなんてな、言葉じゃねー

しな……。」

「くく、ジャイアンにしては、月並みすぎるよ、言葉が。」

「うるせえなあ……で、どうなんだよ?」

スネ夫はきょとんとした表情を一瞬浮かべた後、おもむろに、

「まあ……なんていうか……あの二人は確かに素直じゃないよ。―――だからこそ、

他人が付け込む要素もある訳でね。素直じゃない―――というのは、可愛さである

と同時に、隙でもあると思うんで。そういう観点からは、私にも希望があるんじゃない

かな―――と。」

ひょっとしてコイツ、人を好きになるって初めてか?

初恋、という単語が頭に浮かんだジャイアン。

だが気恥ずかしさから、ぶるんぶるんと頭を振って追い払うと、

「まあ、俺はバイトだと思ってっから付き合うけどよ。」

「悪いね、ジャイアン。」

「金貰えれば、ある程度は付き合うさ。そんだけだよ。」

「ふん、別に照れなくともいいさ。」

「それで―――新たな作戦は思いついたか?」

「まあね、その名も―――」

「ふんふん。」

一瞬押し黙った後、スネ夫はにんまりとして言った。

「『レイちゃんを利用して、二人を別れさせよう』作戦だ!」

ジャイアンは一瞬、ほうけたような表情を見せ、

「相変わらずまんまな作戦名だけど内容は、っていい!解説はいらねえ。」

言って、オーバーに両腕を振る。

「タイトルだけで、全部判ったよ。」

「そうかい?」

スネ夫は残念そうな顔つき。

「どっちにしろ、失敗するんだろうしな。」

ジャイアンは溜め息つきつつ言う。

それを聞いてか、スネ夫に何とも言えない微笑みが浮かんだ。

「ふふ、成功と失敗は等価値なのさ。私にとってはね。」

ジャイアンはその意味を測り兼ねていたが―――

一人、こっそりと溜め息をつくのだった。


つづく


高原さんへの感想はこ・ち・ら♪    

高原さんのぺえじはこ・こ♪    


コメント(お試し版)

カヲル「今回のコメントはお試し版です。1月14日を過ぎ次第、正式版に切り替えます」

シンジ「・・・・作者さんもぜいぶんへろへろみたいだね。なんでもリポD飲んでももう頭もーろーだとか」

アスカ「鈴原並の思考パターンしかないから今頃苦しむのよ。自業自得ね」

カヲル「まあまあ。それはこっちにおいといて、と。高原さん。作者のわがままを聞いて下さっての投稿、ありがとう。彼はへろへろだけど喜んでるよ」

シンジ「・・・・しかし・・・・僕はここでもいじめられてるのか・・・・あののび太くんでさえすっかり性格かわっているって言うのに」

アスカ「アンタはそう言う星の元に生まれているのよ」

カヲル「スネ夫とジャイアンが出来ている・・・・ふっ、そう言う展開があれば僕にはよかったんだけどな」

アスカ「・・・・このやおい使徒が・・・・頭クサってんじゃないの?」

カヲル「ふっ、気にしないでくれ。ぼくはこういう星の元に生まれているんだから。じゃあシンジ君。彼ら二人のかわりに僕たちがそう言う世界を・・・・」

シンジ「かかかかカヲル君!」

アスカ「あ・ん・た・わああああああああ!!」

 ごすっ!!

カヲル「・・・・ふっ、・・・・さすがはヤンキータコ殴り・・・・ぐふっ・・・・」


管理人(その他)のコメント正式版(笑)

カヲル「ふう、ということで、コメントの正式版をお送りします。β版は削除も考えたのですが、やっぱりのせておいてもいいだろうと作者が判断したので、そのまんまです」

アスカ「ふんっ! どうせ別ファイルにするのがめんどくさい、とか、削除しない方が字数が稼げていいとか、そんな浅ましい根性が根底に流れてるのよ、あいつには!」

シンジ「またアスカはそう言って作者をいじめる・・・・」

アスカ「みんながアタシをあがめ奉ればなんにも問題ないのよ! たとえばこの学園ドラ&エヴァの作者みたいに、下僕登録してハンドルネームはフィールドアスカ、とかね」

カヲル「・・・・ヤンキータコ殴り女に人生狂わされた人って、けっこういるんだろうね(しみじみ)。このスネ夫くんなんかその典型的存在だし」

アスカ「な、なによその哀れむような口調は! そもそもこの美貌に目もくれない男なんて、他に好きな彼女でもいない限りどこかおかしいのよ! のび太はしずかとかいう相手がいるからまだしも、なに、あのジャイアンとかいう奴は!シンジをねちねちいじめてアタシと別れさせようですって! シンジがアタシのもとから離れるなんてこと、世界がひっくりかえってもないわよ! さてはジャイアン、アンタ「逃亡」読んでないわね! 今すぐジャンキーの館にいってその曇りまくった目を醒ましておいで!」

カヲル「・・・・シンジ君が逃げても、君がどこまでも追っていくの間違いじゃないの?」

アスカ「ぬあんですってえええええ!!」

 どかっ、ばきっ、ぼこっ!!

カヲル「・・・・ふっ・・・・・ヤンキータコ殴り・・・・おそるべし・・・・ぐふっ・・・・」

シンジ「なんかβ版と同じオチのような・・・・汗」

アスカ「ふん、こんな奴はほっといて、シンジ、行くわよ!」

シンジ「ど、どこへ?」

アスカ「ジャンキーの館よ! 気分直しに「逃亡」を見に行くの! ほら、さっさと来なさい!!」

シンジ「・・・・・・は〜〜〜い・・・・・」


作者のコメント

 ドラ大のパラレルワールドこと学園ドラ&エヴァ。高原さん、ありがとうございます。感想ですが、うーん、まシンジとアスカのらぶらぶぶりはいつものことですが、それを突き崩そうと必死になっているスネ夫とジャイアンがおもしろいっすね。のび太はしずかちゃんと二人の世界を築いているからまあほっといてもいいんですが、どうやら次ではレイちゃんが関わってくるようす。今回ほとんど登場がなかった分、なかなか楽しみです。はたしてスネ夫はシンジとアスカの間を割くことが出来るのか! できねーだろーなー(笑)。あ、カメラを磨いてる男とか、ジャージを着ている男とかは多分もうでてこないでしょうね(笑)。

 ということで、高原さん、ありがとうございました。


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