へぼへぼ学園第2話:お昼ごはんうぉーず
「・・・・はっ!」
目をさますと、そこはほけんしつでした。
白いシーツのベッドの上で、あたしは寝ていました。
「ううう、また恥かいちゃったわ・・・・しくしく」
さっきのきょーしつでの光景を思い出して、あたしは悲しくなりました。せっかく転校初日くらいはかっこよく決めよーと思っていたのに・・・・うるうる。
「あら、目が覚めたのね」
え?
見知らぬ声にふりむくと、そこには女の人が立っていました。
しょーとかっとの黒髪で、鬼のような赤木せんせえとはちがって、やさしそうな人です。
「私はここの保険医で、伊吹マヤっていうの。よろしくね、綾波さん」
「あうあうあう、よろしくおねがいします・・・・って、何であたしの名前、知ってるんですか?」
「なんでって・・・・あなた、赤木先輩がこんど引き取ったって子でしょ? 先輩から、あなたの話は聞いてるわよ」
は、はうううっ!!
こんこんなやさしそうな人が、あ、あ、赤木せんせえの後輩・・・・うう、そうすると、この人もあんな事やこんな事を、影でやってるのかしら・・・・赤木せんせえの関係者は全部あやしー人だから、外見にまどわされないように・・・・ぶるぶる。
「あら、どうしたの? まだ気分悪いの?」
用心深く(半分以上はおびえの表情で)マヤせんせえを見ていたあたしに、せんせえは不審に思ったらしく、額に手を当ててきました。
「・・・・うーん、熱はないみたいだけど・・・・一応、お昼休みが終わるまではここで寝ているといいわ。あなたのは軽い貧血だから。しかし・・・・いくら女の子だからって、朝御飯くらい食べないと、ダメよ」
「・・・・・・はい(うるうる)」
だいえっとでごはん食べてないわけじゃないのに・・・・食べたくてもごはんがないの・・・・ひさしぶりの食パンは小鳥さんに食べられちゃうし・・・・ううう、こんどあの小鳥さんでもつかまえて食べようかしら、しくしく。
・・・・って。
「あのう・・・・今、何時ですか?」
「え? もうお昼休みよ」
「ほへ、ほへえええ!!」
あたしはびっくりしました。はうっ、って教室で気を失ったのが朝のほーむるーむのときだったから・・・・。
「しかし、ずいぶんよくねてたわね。ほんとに」
昨日の夜は、あたし、学校でドジしないようにいろいろ考えてたの。それに、バラック小屋のすきま風がぴゅーぴゅー寒くて・・・・ううう、眠れなかったの・・・・。
「さて、じゃあ、私はちょっと職員会議で外すけど、ちゃんと寝てなさいね」
「はいぃ・・・・」
マヤせんせえはそう言うと、保健室を出ていきました。後には、あたし一人です。
「ううう、クスリのにおいって、きらいなの・・・・」
いろいろなかこがあって、あたしはクスリのにおいが大嫌いなんです。嫌いなものを三つあげろっていわれたら、びんぼーと赤木せんせえとあわせてあげたくなるくらいキライです。
いちばん好きな匂いは・・・・・おいしいごはんの匂いです・・・・って。
「ん?」
あたしは、その大好きな匂いがどこからか漂っていることに気づきました。
「ふがふがふが?」
クスリの匂いに混じって、それは机の上から漂ってきました。マヤせんせえの机の上です。
あたしはそのゆうわくに耐えきれなくなって、ベッドをおりてふらふらと歩いていきました。
「あうううう、お、お、おべんとおだわ・・・・」
それは、マヤせんせえのお弁当箱でした。机の上のはじっこのほうに、ちょこんと置かれていたお弁当箱。あうううう、ものすごくいい匂いがただよってきます。じゅるじゅる。
「あ、開けるだけなら、いいわよね・・・・せんせえのお弁当を脳裏に刻んで、それでお昼をがまんがまん・・・・」
ぱかっ。
お弁当箱を開けると、おいしそおなおかずがずらっとアタシの目の前にみえました。たこさんういんなーに卵焼き、ゆでた野菜、リンゴ、そして白いごはん・・・・ふりかけ付き・・・・ううう、ものすごおくおいしそう・・・・じゅるじゅるじゅる。
「はっ、よだれよだれ、ごしごしごし・・・・ううう、それにしてもおいしそおなおかず・・・・こんな豪勢なおべんとお、もう何年もたべてないわぁ・・・・」
ここんところ、あやしいお食事が続いていたから・・・・。ううう、あたしって、あたしって・・・・しくしくしく。
「あああ、たこさんがあたしをみてるわ・・・・食べて、食べてって・・・・ぱくぱくぱく・・・・ああ、おいしひ・・・・」
・・・・・・・・。
はうううっ!!!!
気がつくと、あたしはまやせんせえのたこさんういんなーを食べていました。い、いつの間に手が・・・・。
「ま、まずいわこれは・・・・せんせえのお弁当をつまみ食いしちゃうなんて・・・・あああ、たこさんの部分がぽっかりと開いてる・・・・まずいわ・・・・ぱくぱくぱく」
・・・・・・・・・・・。
は、は、はううううううっ!!!
「い、いつのまにあたしの手が卵焼きをぉおおお・・・・・きょろきょろ」
あたしはマヤせんせえが帰ってこないかあわてて辺りを見回しました。
まずいです。ほんとおにまずいです。このまま逃げたら、あたしがつまみ食いしたってぬれぎぬを・・・・ぬれぎぬじゃないけど、とにかくそう思われてしまいます。「せんせえ、おべんとお、あたしが食べちゃいました。てへっ」といって、許してくれるわけがありません。だって、マヤせんせえはあの、あの赤木せんせえの後輩なんだもん。ああああ、いったいどんなお仕置きが待っているのか・・・・ぶるぶるぶる。
「て、転校初日からこれはぴ、ぴんちだわ・・・・ぱくぱくぱく・・・・・」
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・う゛。
「なぜ・・・・・(涙)。あたしの手が、あたしの手が気づかないウチにごはんを食べてるわ・・・・しくしくしく」
じょーきょーは最悪です。これぢゃどうごまかしても「だれかがおべんとおをたべたわね!」とマヤせんせえに気づかれてしまいます。だって、だって、
「あとはリンゴしか残ってないんだもの・・・・ううううう・・・・・しゃくしゃくしゃく・・・・ああ、おいしかった・・・・」
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
「あうあうあう・・・・やってしまった。ああ、やってしまったわ・・・・・しくしくしく・・・・」
とおとおやってしまいました。マヤせんせえのお弁当箱はからっぽです。きれーいに何もないです。お米一粒も残ってないです。ああああ・・・・。
「あたしって、あたしの手って、よくぼおに忠実なのね・・・・って、そんなこと言ってる場合じゃないわ。あせあせあせ」
何か対策を考えなければなりません。このままぢゃ、このままぢゃ・・・・おろおろ。
「うううううううううううううう」
あたしはあたまをかかえてひっしに考えました。なにか、なにかマヤせんせえにおべんとおを食べちゃったことを気づかせない方法は・・・・。
「考えるのよ、考えるのよ・・・・いままで読んだいっぱいの絵本といっぱいのあやしい小説から、何か解決方法を・・・・」
・・・・はっ!!
あたしはそのとき、こないだ読んだマンガを思い出しました。
「ええと、確かあれは、お酒を飲んで、目が覚めたら前の日の記憶がなかったっていう内容だったような・・・・」
・・・・これよ、これだわ!! マヤせんせえにお酒を飲ませて、ぐうぐう寝かしちゃえば、起きたときにごはんがなくてもぜったいに、ぜったいに気づかれないわ!!
あたしはぢごくで救いの神を見たような気がしました。
「そ、そうと決まればまずはお酒を探さないと・・・・ごそごそごそ」
あたしは、さっそく辺りのクスリ棚を探しました。お酒はあるこーるが入っている飲み物だから、あるこーる、って書いてある瓶は・・・・ええと、どこかしら、ごそごそ。
「・・・・あ、あったわ」
あたしは、「めちるあるこーる」と書かれた瓶をとりだしました。
「めちる、ってなんの事か分からないけど、あるこーる、ってかいてあるから、お酒なのよね。多分「めちる」って、お酒のぶらんどかなにかなのね・・・・。よし!」
瓶を片手に。あたしはちからいっぱいさけびました。
「さあ、名付けて「レイちゃんのおべんとおウオーズ」、作戦開始よ!!」
・・・・なんか、情けないような気も・・・・しくしくしく。
「・・・・あら、まだ休んでいたの?」
マヤせんせえが戻ってきたのは、お昼休みも終わりに近づいたときでした。
「職員会議が長引いちゃってね。綾波さん、そろそろ授業がはじまるわよ」
「あ、は、はい・・・・」
あたしは布団の中で、「めちるあるこーる」の瓶を片手に機会をうかがっていました。「せんせえ、これ飲んでね」と、面と向かって言ってマヤせんせえが飲んでくれるわけがありません。そのための補足けえかくもちゃんとたてています。うふっ、あたしって天災ね。
あいやちがった、天才ね。だわ。ううう、漢字のお勉強もしないと・・・・。
「さあて、あたしはそろそろお弁当をたべるわね・・・・」
マヤせんせえは机に座りました。あたしには背を向けています。
ちゃーんす!!
あたしはベッドから抜き足差し足でおりると、ゆっくりとマヤせんせえの背後に近寄っていきました。左手には「めちる」の瓶。そして右手には・・・・。
せんせえ、ごめんなさい!!
びゅっ!!
めきょっ!!!
「・・・・・・・・はううっ!!」
マヤせんせえはお弁当を開けようとした体勢のまま、どさり、と机の上に倒れ込みました。あたしが振り下ろした「金属ばっと」が、せんせえの脳天を直撃したからです。
え? 何で金属ばっとがあるのかって? ・・・・なんでだろう? そこに置いてあったけど・・・・取ってのところには「伊吹マヤ」ってお名前が書いてあるし・・・・。
ぶるぶるぶる。あたしは深く考えないことにしました。とりあえず、いまはマヤせんせえにこの「めちる」を飲ませるのが先決です。
ぴくぴくぴく。
マヤせんせえは全身が激しくけいれんしています。何か、頭の部分からどくどくと血が流れています。・・・・ちょっと、やりすぎちゃったかしら・・・・で、でも、これもあたしが罪をまぬれるため・・・・ごめんなさい、マヤせんせえ。成仏してね。
・・・・なんか当初の目的と違うような気がするけど・・・・まあ、いいわ。
「さて、と。じゃあこのめちるの瓶をあけて・・・・と」
きゅぽん!
線を抜くと、あるこーるの強烈な匂いが鼻をつきました。
「うううう、こんなもの飲む大人の気が知れないわ・・・・あたしは白いごはんのほうが大好きだわ・・・・ごそごそ」
あたしは「めちる」を近くのコップに移すと、それをもってマヤせんせえの体を抱き起こしました。
「さあて、あとはこれを飲ませてここから逃げ出せば・・・・どきどき」
そして、あたしが最初の一口をまやせんせえの口に含ませようとしたとき・・・・。
がらっ!
「マヤ、さっきの職員会議で言い忘れたことが・・・・って、レイ! 何やってるの!!」
・・・・・・・・・・・・・。
は、は、は、は、はううううううっ!!
保健室のドアを開けて、赤木せんせえが入ってきました。そして、そして、あたしの今の姿を見られてしまったのです・・・・ま、ま、まずいわ・・・・・。
「あいや、その、せんせえ、これはですね、マヤせんせえがいきなり倒れたから、それで、あたしがかいほおを・・・・」
「・・・・その傍らにある、血塗れの金属バットはなに?」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あいや、これはですね、その、いえ、ですから・・・・びくびく」
「その、マヤに飲ませようとしてるのは何? 傍らに、「メチルアルコール」っていう瓶が転がってるんだけど・・・・」
・・・・・・・・・・・・・。
「あいえ、ですから、その、あの、ええと、あせあせあせ」
「レイ・・・・(じろり)」
・・・・・・・・・・・・・。
あああああ、もう、もうごまかせないわ・・・・。あの、あの赤木せんせえのへ、へ、蛇のように怖い目で見られちゃうと・・・・ううううう。
「あなたが、やったのね(ぎろり)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、そうですぅ・・・・・」
赤木せんせえはあたしの自白に小さくため息をつくと、ちいさくこういいました。
「今月の生活費。半分カット」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ひ、ひ、ひえええええええっ!!
生活費半分かっとってそ、それは、もしかして月当たり5000円のお金を、に、に、にせんごひゃく円しかくれないって、ことなの・・・・・ううううう。
「そうとも、言うわね」
「ううううう、しくしくしくしくしく」
あたしは赤木せんせえにおべんとつまみ食いやマヤせんせえを殴って「めちる」飲ませようとしたところを見つかったことよりも、生活費半分かっとのほうがものすごくショックでした。
うううう、明日から一月、どうやって暮らしていこう・・・・・しくしくしく。
あんた・・・・月5千円しかもらってないの・・・・?
ううううう、やっと、やっと本店でのお米支給から現金に変わったっていうのに、いきなり半分なんて・・・・しくしくしく。
きょうび小学生だってそのくらいもらっているって言うのに・・・・あわれね。
・・・・・アスカちゃん、なんで、顔怒ってるの? いつもならあたしがいぢめられると「やーいざまーみろ」みたいな顔で笑っているのに・・・・。
うるさいわねっ!!
ぽかりっ!!
はうううう!! なんで、なんでぶつのアスカちゃん・・・・。
あんた、何で今回、あたしの出番がないのよ!! せっかくまるしーがアップされるからってコメントしに来たのに、この扱いはいったい何? こら丸山! きちんと説明しなさいよ!! 事と次第によっちゃ青竜刀でクビ落とすわよ!
あうあうあう、アスカちゃんそんなの出さないで・・・・
うるさい!! どこだ、まるやまぁああああああ!!
ひ、ひ、ひえええええっ!! アスカちゃんこわい〜!!