『レッドアスカ・ホワイトレイ』外伝
「標的は、”綾波”」前編
神聖アスカ帝国首都アスカポリス。
その巨大な都市の外れにあるプリンツ・アルブレヒト通り。その人気の無い通りの丁度真ん中あたりにあその建物はあった。
神聖アスカ帝国親衛隊国家保安部。
その、同じアスカ帝国人からも忌み嫌われる組織の本部で一人の男がデスクに向かってファイルを眺めていた。
国家秘密警察”ゲシュタポ”長官カヲル・ナギサベルクSS少将である。
彼は、怜悧な瞳でファイルに目を通し。サインを書いて行く。
ふと、彼は時計を眺めた。そして呟く
「あと4時間。全く、何でこんな作戦をやるのか。僕には分からないよ」
と言った途端。机の上の直通電話が鳴った。
カヲルは「盗聴器があったのかな?」と呟くと受話器を取った。
「カヲルですが」
受話器から男の声が聞こえてくる。彼にはその声に聞き覚えがあった。
親衛隊国家保安部長官リョウジ・カジドリヒ中将。彼の直属上官である。
「今から私のオフィスに来て欲しい」
カヲルは、目元に笑みを浮かべて言った。
「わかりました。今すぐ伺います」
というと、受話器を戻して立ち上がる。ドアに向かって歩いて行くが、途中鏡の前で立ち止まって自分の姿を確認した。
黒の制服に銀髪。そして赤い瞳。それらが一種異様なコントラストを造り上げていた。
彼は自分の姿に満足げな笑みを浮かべると部屋を出た。
「我らが親衛隊国家指導者であるキールは我々の事を何と言ってるか知ってるかい?」
リョウジに問いに、苦笑を浮かべてカヲルは答えた。
「貴方はただの結婚詐欺士。僕は同性愛者でしたっけ?」
「そうだ。俺はともかく君に対する評価は間違ってるな」
リョウジは、親衛隊に入る前に結婚詐欺の疑惑で海軍を追い出されていた。
同時に追い出されそうになった同じような名前の同期生は被害者が詐欺じゃなかったと言い張ったので無罪放免だった。リョウジ・カジドリヒが綾波人に対して妙な嫌悪を抱いているのもその被害者が綾波海軍の留学生だったのが原因らしい。
リョウジの言葉に、カヲルは全くです。と言いたげな表情で答えた。
「本当に。僕はかわいい子が好きなだけなんですよ」
「ははっ君にとっては男と女は等価値なのだな?」
「ええ。まったくそのとおりです」
「ふん。男と女はどっちの方がいけるのかな?君の場合」
「もちろん男ですよ。」
ふと、カヲルは考えた。こんな所で最高指揮官二人が猥談してるような作戦が成功するのだろうか?と。
綾波帝国海軍。大神工廠
工廠衛兵司令の碇シンジ予備大尉は、司令室の椅子に座ってぼけっとしていた。
別に、衛兵司令だからと言って多忙なわけではない。逆に暇なくらいである。
丸山直之少将が実権を握っている海上護衛総隊と聯合艦隊によって、最も厳重に警戒されているこの大神工廠にやって来れる敵は存在しないのである。
したがって、衛兵司令という配置は、どちらかと言うと疲労した将校への休暇配置と言える。
碇シンジ大尉も、そんな中の一人である。
彼は2月前まで輸送船団護衛の駆逐艦に乗っており、3隻近い潜水艦を葬っている歴戦の対潜将校であった。しかし、敵の空襲の真っ最中に敵潜水艦部隊の群狼戦術にはまった輸送船団は大損害を被ってしまった。
常々、予備士官であると言う事を意識していたため任務に対して非常に高い責任を感じていた彼にその光景は耐えれるものではなかった。
結局、全ての責任が自分にあると考えた彼は休暇が出ても実家に帰らず、ぼけっとしていたため。見かねた予備士官過程の頃の教官だった人物からこの職をあてがわれたのだった。
「ふう。今日も何事も無く過ぎていくなぁ・・・」
シンジは湯呑みを持って呟いた。すると、副官役をやっている綾瀬という名の曹長が緊迫した面持ちで司令室に入ってきた。
「大尉。海上護衛総隊からですが。潜水艦をここの近くで見つけたらしいです」
シンジはしばらく考えてから言った。
「沈めれたのか?」
「いえ。見事に逃げられました」
シンジはううん。と唸ってから、綾瀬の方を向いて言った。
「うん。それで、貴方は僕に一応の警報を出す事を要請しに来たと、いう事だね」
それに綾瀬は無言でうなずいた。
「わかった。古参の下士官のいう事は聞かなきゃね。それに、確かに怪しいね。ここまで潜水艦が来るなんて」
大神工廠より約10kmの海岸
衛兵の太田一等兵は、決められた順路にしたがって海岸を歩いていた。
すると、茂みの中からざわざわと怪しげな音が聞こえてきた。
彼は小銃を構えると「誰だ!」と言った。
しかし、茂みから出てきたのは明らかに綾波人の将校だった。
それを見た太田は慌てて小銃を降ろして敬礼した。
茂みから出てきたのは綾波帝国陸軍の男二人と英連邦軍の将校二人だった。
「すまないが。君。ここは大神工廠の近くかな?」
メガネをかけた陸軍の将校が彼に聞いた。
「ええ。ここから10km程であります」
と、言った時。彼はある事に気がついた、そして口をついてその疑問が出る。
「失礼ですが大尉殿。それはアスカ軍の小銃では・・・」
と言ったとたん。軍人らしかぬ長髪をしたもう一人の陸軍将校が彼の頭を銃床で強打した。
「おい!青葉少尉!何故勝手に襲い掛かった!!」
気絶した太田を縛り付けて茂みにほうり込んだ後、メガネの大尉は青葉に厳しい声で言った。
「ふん!帝国主義の走狗を消しそこねた。残念だよ」
「貴様が襲わなければどうともごまかせたのだ!」
二人の険悪なムードを見た英連邦の将校が彼らに言った。
「喧嘩はやめろ。君達は同じ義勇SS「アンノヒデアキ」師団で戦った戦友だろう」
「そうや。喧嘩しとる暇はあらへん。わしらは早くいかなあかんのやろ」
その言葉に、二人は渋々と従った。そして、大神工廠へと歩いて行く。
続く
作者注
リョウジ・カジドリヒSS中将は、加持リョウジ大佐とは別人です。
後書き
久しぶりの中編レッドアスカシリーズでス。
多分三話形式になるのじゃ。
さてと、今度はとびきりスプラッターなのを書くかな・・・・
管理人(その他)のコメント
アスカ「くううっ!! 「標的は”綾波”」かあっ!! 12式! 見直したわっ!!」
カヲル「くううっ!! 「黒の制服に銀髪。そして赤い瞳。それらが一種異様なコントラストを・・・・」とはっ! 12式さん! 見事な僕の描写です!!」
加持 「ふふっ。死んだと思っていた俺だが、又役目を与えられたようだが・・・・しかし、その「結婚詐欺」はなんとかならんかなぁ・・・・汗」
カヲル「青柳さんの三英伝方式だね。死んでも死んでも別の役所で復活するというのは」
アスカ「普段なら「さすが巨悪同士ねっ」とでも悪態つくんだけど・・・・今回に限り許すわ! 存分にあのファーストをこてんぱんにしておしまい!!」
カヲル「ふうっ(ため息笑い)」
アスカ「なによ、前回の「アスカ様の最後」がそのまんまの題名なんだから、今度も「綾波」はこてんぱんにのされるんでしょ!」
カヲル「はははははっ 本編を知らない人は気楽に話が出きるものだね」
アスカ「本編? そんなものは丸めてくずかごにぽいっ!! よ!!」
カヲル「まあまあ、せいぜい虚しい期待を抱いていてくれたまえ、ふっ」
アスカ「スプラッタ・・・・アタシ以外の人間なら許すけど・・・・今度「あの」作品みたいにアタシやシンジを殺してごらなさい!! た・だ・じゃおかないからね!!」
カヲル「あの、って・・・・数が多すぎて分からないよ・・・・」