『レッドアスカ・ホワイトレイ』外伝

『綾波帝国・誕生』


 

彼女は、5年前に彼と出会った。

 

何かのパーティー会場で、着飾った紳士淑女の群れから、レイはようやくの事で脱出に成功した。

人ごみが苦手なレイは、パーティー会場を勝手に抜け出ると中庭にあった噴水の脇に座り込んだ。冷たい夜の風がレイの火照った頬を冷却する。

ふと、視線を感じて横を向くと、レイと同い年位の少年(そういうにはいささか若すぎるが)が、レイの方を見ていた。

「何見てるの?」

レイが言うと、少年はいずこかへと走り去っていった。

「どうしたの?レイちゃん」

レイは声がした方を向いた。そこにはよく世話をしてくれる女性。赤木リツコが立っていた。レイは彼女に言った。

「さっき。私と同じくらいの。男の子がいたの」

リツコは少し考えた後、言った。

「それは、今日来てたアメリカの議員さんの御子息ね。確か碇シンジって言ったかしら」

・・・・・碇・・・・シンジ・・・・・

 

彼女は、再び彼と出会った。

 

2年後。日本とアメリカの仲が険悪さを増していたころ、彼女は二年前と同じ場所で、噴水の脇に腰掛けていた。

レイは自分が何を考えているのか分かっていた。

碇君と、一緒になりたい

その思いは、2年の間レイの心中で、膨れ上がる一方だった。

11才となったレイは、その不思議な魅力で、多くの人間を虜にしてきた。もちろん、誘いも多かったが(中には特殊な性癖を持つ侯爵家の頭主もいた)レイは全てを断った。

彼女の思いはたった一度きり出会った少年にのみ注がれていた。

レイは物憂げな視線を、水面に向けた。

水面に映った、レイの顔・・・・そして・・・・

レイは恐ろしげに、後ろを見た。そこには少年が立っていた。

少年は、しばし躊躇していたが口を開いた。

「横に・・・座ってもいいかな?」

レイは無言でうなずいた。

レイはそのとき、自分の気持ちに確信を持った。

私はこの人と一緒になりたい

 

しばらくの間、レイにとっては心地よい沈黙が流れた。しかし、それは一人の男に破られた。

「シンジ・もう行くぞ」

太い、威厳を感じさせる声が聞こえた。それが聞こえると、シンジは「じゃあ」といいのこして立ち上がった。レイは、シンジの方を向くと誰も見た事がない。微笑みをおくった。

 

そして、歯車が用意される。

 

2年後、14才の誕生日の朝、レイの元には無数のプレゼントが届けられていた。

彼女の魅力は2年でさらに磨きがかかり、さながら宝石のような無言のきらめきを発するようになっていた。それゆえに、彼女の元には多くのプレゼントが届けられた。

 

レイは、送り主の名前だけを見て、次々と”不要”と書かれた箱に入れていく。

しばらく後。レイの手が止まった。一通のエアメール。

封を開けると、中には一通の手紙が入っていた。

読み進んでいくうちに、レイの顔が青ざめていく。

その手紙には、シンジがドイツの一政党の娘と政略結婚されそうになっている事が記されていた。

 

レイはしばし呆然としていた。

その時、彼女の部屋の電話がなった。受話器を取る。

受話器の向こうでは、男がクーデターやら象徴やら国家打倒と叫んでいた。

レイの返答はただ一言。

「引き受けます」

 

その半年後。1939年。突然のクーデターにより大日本帝国は崩壊。綾波帝国が生まれた。それは奇しくもアスカ総統率いるドイツ軍がポーランドへ侵攻したのと同一日だった。

 

そして。世界大戦という歯車が動き出す。二人の少女の思慕の情を動力源に・・・・

 

 

 

作者とその他のコメント

 

12式:いやあ。ひさしぶりにいいもん書いた。

アスカ:ちょっと作者。ひとつ聞いていい?

12式:はい?

アスカ:このレッドアスカ・ホワイトレイって、硬派な軍事小説よねえ・・・

12式:いや。違うぞ。この物語は世界を又にかけて闘われる代理恋愛戦争の話だ。

 

アスカ:あんた・・・・バカでしょ・・・・

12式:これぞ”恋愛シミュレーション”とな。いやはっはっは

アスカ:・・・・・・・駄目だこりゃ

 


 ゲンドウ教入信希望者及び12式臼砲さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

カヲル「世界を又にかけてたたかわれる代理戦争・・・ そんなもので、加持リョウジは葛城ミサトと戦い、死んでいたのか・・・彼も哀れな・・・」

レイ 「いいのよ。わたしは碇君を手に入れるためなら何でもするから」

カヲル「まあ、君のばあい、いろんなぺえじで<アスカ君に負けているからね。この辺でがんばっておかないと」

レイ 「・・・わからない。わたし、多分3人目だから」

カヲル「・・・・他のぺえじのきみが2人しかいないわけないだろうに・・・・すくなくとも50人目くらいのはず・・・汗」

レイ 「・・・・そう、よかったわね」

カヲル「なんか禅問答している気分だ・・・・」


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