その日、アスカは珍しく一人で街へと繰り出していた。数日後にやってくる碇シンジの誕生日。そのプレゼントを買う為に、一人で第三新東京市の中心部にある繁華街をうろうろしていた。プレゼントは2時間程で決まり、それを真っ赤な包装紙で包んでもらうと、家への帰途に就いた。

 第三新東京市市営地下鉄の駅に向かう道を、アスカだけが知っている、路地裏の近道を通っている時。その事件はおきた。

 アスカが人通りが全く無いと言っていい路地裏の小道を早足で歩いていたその時、突然アスカの後頭部を何かが直撃した。

 ボクッという鈍い音を聞きながら、アスカの意識は暗転した。

 

 夜の8時を過ぎてもアスカは帰って来なかった。すでに、洞木さんの家のほか、行きそうな所へは電話を掛け終わっていた。しかし、帰ってくる答えは決まっていた。来ていない。

 

 9時半を少し過ぎたころ、ミサトさんから本部への呼び出しがあった。

 

 10時少し前、僕は本部の今まで入った事の無い場所へ連れられていった。途中女性用トイレから真っ青な顔をして出てきたマヤさんが、軽い驚きのあとひどく悲しそうな表情をしていたのが妙に気にかかった。

 

 がらんとした肌寒い部屋に入った時。その光景に嫌な予感を覚えた。その、コンクリートの地肌がむき出しになった部屋の中央には白いシーツをかけられたベッドが一つあり。そのベッドの脇にミサトさんが、これまでに無いほど悲しそうな表情で僕の方を見つめていた。

 足が鉛になったように感じる。一歩一歩進むのにもひどく苦労した。

 ベッドの脇にたどり着くと、ミサトさんがためらいながらベッドにかけられたシーツを外した。

 ”それ”を見たとたん息がつまり、心臓の鼓動がどくんどくんと高鳴った。足の力が抜け、思わず床にへたり込んでしまう。僕はやっとのことで声を絞り出した。

「ミ・・・ミサトさん・・・嘘でしょ?・・・これ・・・嘘でしょ?」

 ミサトさんは目を僕からそらしてうつむくと。肩を震わしながら答えた。

「いえ・・・・・事実よ・・・”これ”は正真正銘・・・アスカよ・・・・」

 ミサトさんはあきらかに自分がそんな事を言わなければならない事に嫌気がさした声で言った。僕は呼吸を整えてから、改めて”ベッドに横たわっているモノ”を見た。

 

 アスカの顔・・・見慣れたアスカの顔・・・・

 アスカの顔を凝視している僕の目を、虚ろな眼窩が見返していた・・・・・・そう・・・ベッドに横たわっているアスカの遺体から・・・あの、青い瞳をした眼球がえぐり取られていた。

 ミサトさんが、ベッドの脇に置いてあったものを取って、僕に渡した。

「シンジ君・・・これ・・・アスカが最期まで持っていたもの・・・・」

 その紅い包みを開けてみると・・・・・中には紅いシャツとともに一枚のカードが入っていた。それには、アスカの字で

”これでアンタも少しはオシャレしなさい!ばかシンジ!!”

 と書かれていた。不意に涙がこみ上げてきた。僕にはアスカの遺体の側で泣く事しか出来なかった・・・・・・・。

 

裏極超巨悪短編
彼女の思い出とともに・・・

 

 翌日の朝、僕には一つの決心が固まっていた。アスカのかたきをとる。ほんとうに馬鹿みたいな決心かもしれない。しかし、僕にとってはそれをやらなければならないような義務を感じていた。

 僕はまず。返却されてきたアスカの遺品をくまなくしらべた。何度も涙がこみ上げてきたけど、どうにか押し殺してその作業を続けた。一応の収穫はあった。

 シャツを買った店のレシートと、地下鉄の往復切符だ。それ以外には、めぼしいモノは無かった。

 しかし、アスカの遺体が見つかった場所と、その店は地図で見る限り直線で2キロ以上ある。しかし、その間は碁盤め状に区切られた大通りが500メートルおきにはしっている。

 しかもアスカが発見されたのが9時45分。まだ繁華街は閉じる時間じゃ無い。一体犯人はどうやって、アスカの遺体をそこまで運んだんだ?近くを通っている川を使って?いや、それ

 じゃあ人目を避ける事は出来ない。下水道?ちがう。マンホールは大通りにしか無い。じゃあどうやって?

 ここで考えていてもしょうがないと感じたぼくは出かけるしたくを始めた。僕の頭には、アスカと一緒に最期に見たテレビ。ずっと昔の刑事ドラマに出て来た初老の刑事が新人に向かって決まって言う言葉「分からない時は現場に100回通え」が渦巻いていた。

 

 僕はアスカの遺体が発見された場所に立っていた。これと言って特徴の無い公園の外れに打ち捨てられていたアスカの亡骸を、諜報部の人が発見したという。しかし、辺りにはうっそうと茂る雑草しか無かった。何も無い筈が無い。僕はそう思って現場周辺をくまなく探したが。何も手がかりは見つからなかった。日が暮れて来たので帰ろうと思い、公園から出ようとした時、何か鎖の様なものに足を引っかけて転びそうになった。

 そこにはマンホールとは違う。何かの蓋があった。蓋の表面にはこう彫られていた”第三新東京市市営地下鉄 第18点検溝”と、閃くものがあった僕は家への道を急いだ。

 

 その日もミサトさんから帰りが遅くなるという電話があったので、僕は居間のテーブルの上でこれまでの情報を整理していた。これまでの情報を整理してみる。

 1.アスカが服を買った店から駅は600メートル位の所にある。

 2.アスカの財布に入っていたレシートには4時59分と、買った時の時刻が記されていた。

 3.死亡推定時刻は5時から5時30分

 4.亡骸の発見場所は2キロ程離れた公園の、目立たない茂みの中。

 5.そのすぐ近くに、地下鉄の点検溝がある。

 

 それをふまえて僕は仮説を立てた。

 犯人は、服を買った店から駅へ向かう道のどこかでアスカを殺した。そして両方の眼球をえぐり取った後、どこかの点検溝入り口から点検溝に入り、構内を移動。発見現場の点検溝の蓋を開けて、アスカの亡骸を捨てた。

 

 はっきり言って自分でも不確定要素が多すぎると思ったけど、僕にはそれ以外思いつかなかった。これに賭けてみるしかない。

 と、思った時、ミサトさんが帰ってきた。

「ただいま」

「お帰りなさいミサトさん。お風呂わいてますよ」

 見るだけでミサトさんがつかれているのが分かる。いったん部屋に入って着替えを持つと、直ぐにお風呂場に直行した。その隙に僕は後ろめたさを感じつつも、ミサトさんの部屋に入り、脱ぎ捨ててあるジャケットの中に手をいれた。目的のものは、あった。取り出してみる。

 ”それ”は月明かりを受けて鈍い鉄の光を放っている。僕はそれを懐に仕舞うと。自分の部屋にいって懐中電灯とアスカが死ぬ直前に買った紅いシャツを着て、マンションの出口を出ようとした、少し考えて振り向くと僕は呟いた。

「さようなら、ミサトさん。御免なさい」

 僕はその時もう二度とここに来る事は無いだろうという気がした、結末が、どうであろうと。

 

 しばらくして、葛城ミサトは身体にバスタオルを巻き付けて風呂場から出てくると、残った一人の同居人の名を呼んだ。

「シンジ君?」

 返答は無い。見てみると、閉めたはずの自分の部屋のふすまが開いている事に気がついた。いやな予感が身体を走った。自分の部屋に入ると、脱ぎ捨てたはずのジャケットがちゃんとハンガーにかけられていた。中を探る。無い!ミサトは電話を取ると急いで諜報部の番号を押した、相手が出る。

「シンジ君のガードに伝えて!すぐ捕まえるように!!」

 

 地下鉄に10分ほど揺られてから。歩いて夜の公園に向かう。不思議に心は落ち着いていた。と、同時に僕には分かっていた。今日僕は人を一人殺す。

 公園につくと、点検溝の入り口をふさいでいる鉄の蓋を全力でどかす。僕が入れる位の隙間を開けると、その中に入り込む。中は真っ暗だったので、懐中電灯を着けると、以外な事が判明した。薄くつもった埃の上に、往復したような足跡が残っていたのだ。それをたどっていくと、ある出口の付近で消えていた。僕はその出口の梯子を昇って外に出た。そこは地下鉄の駅のすぐ近くにある公園だった。周りを見回すと、一個所だけ公園を囲むフェンスが破れた所があった、そこをくぐってから、前を向く。

 細い直線の道を100メーターほどいった向こうぬは、繁華街の明かりが見えた。僕は唖然とした。まさかこんな所に抜け道があったなんて思いもしなかった。

 しばらく前に行くと、地面に何かが落ちていた。拾ってみる。それは見覚えのあるアスカお気に入りのイヤリングだった。周囲を見回すと。4メーターほどいった所に扉があった。扉の前にたって。懐からミサトさんから盗んで来た拳銃を出すと、ドアを静かに開けた。

 ドアを開けたとたん、僕は硬直した。薄暗い照明に照らされて僕の方を見つめている

 目玉。目玉。目玉。何かみょうな液体の入ったガラスの瓶に入れられ。戸棚に整理されている人間の目玉。部屋の隅で何かを見ている男に僕は銃を向けた。そして言った。

「アスカを殺したのはおまえか!?」

 ”そいつ”はこっちを向くと、いやな笑い声をあげて、一本のガラス瓶を僕に見せた。

 焦点を失い、液体の中に沈んでいる青い瞳。それを見た瞬間僕の中で何かがはじけ飛んだ。

「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!」

 連続する銃声。鼻をつく硝煙の匂い。吹き飛ぶ”そいつ”の頭。無数の眼球。それらが僕を狂わせた。

 

一月後、第三新東京地方裁判所被告人控え室。

 結局ネルフの特権も僕を守り切ることはできなかった。別にそんなことしてほしくもなかった。あれから僕が警察に捕まって、殺人の容疑で拘置所に入ってからミサトさんは毎日僕の所に着てくれた。そして今日1回目の公判がある。僕は弁護人を拒否した。罪状も否定するつもりはない。昨日ミサトさんが来た時に多少の情状酌量の余地はあっても、5年から10年は固いと言った。そして出てくるまで部屋は残していてくれるとも言ってくれた。僕は有り難うと言った。それに僕は寂しく無い。なぜなら。アスカは、今も僕の中のアスカの思い出とともにあるのだから・・・・・・・・・・

 

END

 

後書き

・・・・・・・・・・作者、逃走・・・・・・・・・・・・・・・

ふっ作者か?逃走した。

全くあいつには失望した。この程度で反撃が恐くて逃げるとはな。

ま、今はいい。作者から伝言がある「批判まってます」

そんな事言うのなら逃げるな!と言いたいが・・・所詮人間の敵は人間か・・・・


 ゲンドウ教入信希望者及び12式臼砲さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

アスカ「12式ぃ〜〜〜〜〜!!(怒)」

カヲル「ま、まあまあ、落ち着いてアスカ君」

アスカ「こ、これが落ち着かずにいられるわけないでしょ!! 銃弾浴びて血塗れになって死んだと思ったら、こ、こ、こんどは目玉くりぬかれて・・・・ううっ。食事中の人は読まない方がいいわね」

カヲル「しかし、君は幸せだよ」

アスカ「ど・こ・がよっ!!」

カヲル「だって、シンジ君は君のために人を殺して、刑務所行き。それでも彼は後悔していないんじゃないか」

アスカ「そ、それは、シンジが勝手にやったことでしょ」

カヲル「そこまでシンジ君に思われていて、君は幸せじゃないのかい?」

アスカ「ううっ・・・・そ、それは・・・・」

カヲル「ああ、こんなことならぼくが殺されていればよかった」

アスカ「はあ?」

カヲル「シンジ君に復讐してもらえるなら、僕は本望だよ」

アスカ「・・・・じゃあ、アタシが殺してあげるわよ! あんたをね!!」

 べきどしゃぐしゃ!!

カヲル「・・・・ぐはあっ・・・いつもこれか・・・・」

アスカ「いくら殴っても死なないって結構便利ね。良い鬱憤晴らしだわ」


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