『先日、ドイツで初飛行に成功した飛行船はツェッペリン社の・・・・』
「ねえ、飛行船だって」
「・・・・ああ、スイスの観光用に造られた奴だろ?」
「あんたの好きな飛行船の話じゃん」
「まあ、な。でも、こいつは軟式飛行船。俺は硬式飛行船の方が好きなんでな」
「なにそれ?」
「軟式って言うのは、骨組みを持たない飛行船。乱暴な言い方をすれば、風船にゴンドラつけてるようなモノだ。まあ、それほど大きいのは作れない」
「ふんふん」
「で、硬式飛行船って言うのは骨組みの中にガスを納めた気嚢を複数詰めてるんだ。これだとでかくて、安定性のいいやつができる」
「じゃあ、なんでその硬式飛行船を造らないの?」
「でかい、高い、それにつきる」
「なんで?」
「考えても見ろよ。全長300メートル近いなんて言ったら、えーと、ほらなんて言ったっけ、この間映画で人気になった船・・・」
「タイタニック?」
「そうそう、あれと同じ、もしくはそれ以上の長さのものが空に浮くんだぜ?」
「へぇ〜」
「浮いてりゃいいけどな。降りたときの置き場所やら費用やら考えると、誰も造らないんだよ」
「なんかもったいないよね〜」
「ああ。だれかつくってくれねーかな。でっかい飛行船」
「なんで飛行船って消えていっちゃったの?」
「ヒンデンブルク号って知ってるか?」
「うん」
「あれがまたど派手に墜落したおかげで、飛行船は危険な乗り物だ、っていうイメージが定着しちまったんだ」
「あれってこわいよね〜」
「おいおい。俺に言わせりゃ今の飛行機が一回墜ちる方がよっぽど大被害だよ。だいたい、ヒンデンブルクの事故じゃ乗客のかなりの数が助かってるんだぞ」
「何でそんなに派手に墜ちたの?」
「ガスだよ。浮力ガスに水素を使っていて、それが何かの拍子で爆発したんだ」
「水素・・・危ないモノ使ってるんだ・・・・ってまさか今の飛行船も?」
「いや、今の飛行船はヘリウムを浮力に使ってるから安全なんだ。それなのにまだ飛行船はすぐに爆発すると思っている低能がいるのはこまったもんだよ」
「なんでじゃあそのガスをヒンデンブルクは使わなかったの?」
「そりゃぁ、当時のヘリウムはアメリカでしかみつからなくて、そのアメリカがヘリウムは売らないって言っていたからだよ」
「何で売らなかったの?」
「なんでって・・・・なんでだろうな・・・・法律があったってはなしだけど・・・」
「でも、いくら貴重だからって売ってあげてもよかったのにね」
「うーん。どうやらそういう交渉があったことはあったらしいんだけどな」
「ほんとなの?」
「ああ。この間、神田の古本屋を漁ってたら、そういう話の書いてある本をみつけてさ。これだよこれ」
「ふーん・・・って、また私に内緒でこんな高そうな本買ったわね!」
「あちゃ、しまった!」
「こらまて、逃げるな!」
「怒らなければ逃げない!」
「素直に怒られておいた方が身のためよ!」
「なんだそれは〜!」
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Progressive2収録
Presented by N,Maruyama
[Twilight of Eden]
Drawn by tonton
[eos]
「終わりの、始まり」
8月16日、コミックマーケット54にて販売予定
東京有明ビックサイト
西地区”と”01a
[Progressive2]
オフセットA5サイズ
表紙デザイン:Sim
総項数:未定
価格:未定
発行:Progressive
発売:ジャンク・ヤード
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