シオンsidestorys「全思考停止?」


―――――揺らめく景色の中、佇む。

揺らめいているのは蜃気楼?それとも私?
立っているのかですら、あやふやな感じ。


「シオン。」


後ろから名を呼ばれる。
「シオン」、それは私の名前だ。

「なんですか?志貴。」
この揺らめきの中、ハッキリと見える彼の姿。
私ですら確かでないこの場所で彼の存在だけがハッキリとしている。

「志貴、ここは何処です・・・っ!?」
突然、彼の手が私の背中に回される・・・・・

「ちょっ・・・っ!?ぁっ!・・・志、・・・貴!?っ。」
何、この感じ・・・・・・自分の肉体が管理できない。
コトバが上手く吐き出せない、カラダが動かない、鼓動の高鳴りが抑えられない。

「っ、志貴、いったい何のつもりですか・・・・・」
「シオン、エーテライトで俺の思考を読んでごらん」
志貴から流れ込んでくる思考


・・・・・シオン・・・・スキ

「――――っ!!!!!?!?」
顔がボッと赤くなった・・・・というのは正しくないが表現としては的確だ。

・・・・シオン・・・・・スキ
この単語から予測される結果は・・・・・


「あ、あの、志貴。私は・・・・・」
私の高速思考がかつてない程の速さで働く。
しかし、答えは出ない。いや、出せない。

志貴の手が私の頬に触れる。
「あぁ・・・志、貴ぃ・・・」
思考が鈍る。

「俺の気持ち、解ってもらえた?」
志貴の顔が近づく・・・・・

もう、何も考えられない。思考回路完全停止・・・・・・
「志貴、私は・・・・貴方が―――」













「シオンさーん、朝ですよ〜♪」
瞼が持ちあがる。
「―――――!?」
陽気な雰囲気で琥珀がいる。

状況確認。
ここは遠野家。私が居候している屋敷・・・・・
眼前に琥珀がいる。志貴は・・・・・・いない。


「シオンさん?」
琥珀が私の顔を覗き込む。

「・・・・・・夢?」
そのときの私は何て情けない顔をしてたんだろう。
後に琥珀がしつこく語ってくれたのは余談である。



あの夢はいったい・・・・・
思い出すだけで恥ずかしくなる。
錬金術師であるこの私が思考を止めてしまうなんて・・・・

いや、違う。そうじゃない。
本当に恥ずかしかったことは

あの人に全てを曝け出してしまいそうになっていたなんて・・・・





窓辺に視線を感じる。
黒い猫が私を真っ直ぐ見つめている。
あれは、確か・・・・・・・・・・・

「どうやら私の心は見透かされていたらしいな。」
不思議とその事実を素直に受け止められることが気持ち良かった・・・・・


<続く・・・・かも>