空へ(仮題)


 今回の作品はまだ曲がありません。従って、実際に曲を付けるとすれば、 相当歌詞が変わるかもしれません。
 個人的には今回は激しい曲にしたいな、と思っています。



 風邪ひいてベッドの上で寝てました。東京に来てからもう半年以上住んでいる、 狭っ苦しい寮の一室で。同僚も丁度ノックダウンし、ベッドの上にいます。 彼は薬が効いて眠れているのでしょうか。今は物凄く静かです。

 繰り返す嘔吐の為、ベッドからトイレを行ったり来たり。ベッドからの最短距離にして、 1メートルあるかなしか、実際に身体を移動させる距離も1〜1.5メートルでしょう。 そこを這いずるようにして行き来する以外は、ベッドの上だけが今の自分の居場所です。
 寝静まった同僚を起こさないために気を遣う為、咳も思うように出来ません。 倦怠感、悪寒、高い発熱、嘔吐感、頭痛。この諸症状に追加して、時折意識がぼんやりと成ります。夢うつつの状態に入ると、胃が逆流して現実に引き戻します。

 半分以上死にかけの状態で唯一の救いは、自分の枕元にある写真立て。 そこにある微笑みだけです。以前なら体調崩したときには、 見舞いのメール等がきたものですが・・・。別れるとこんなものでしょうか。 それでもあのほほえみを見ているだけで、自暴自棄になりそうな心が救われます。

 窓の外でカラスがないています。声からして数羽いるのでしょう。
 カラスってなんか凄く不気味ですよね。真っ黒で、変わった鳴き声。そして妙に大きい。 とても怖い存在です。体調不良の自分を見透かし、まるでその死を待っているような。
 ベッドに近い出窓は空気入れ替えの為にカーテンを開け、横窓を少しあけています。 実際には外は囲いがあって殆ど見えないのですが、僅かな隙間から張れた空が見えます。
 あの大きな青空。あの空のように明朗快活だった自分が、慣れない東京での暮らし、 無茶な仕事、鬱積する不満、見知らぬ土地に怯えて引きこもる生活・・・ 気付いたら鬱屈して彼女や親しい者に当たるような、情けないだけの存在に堕していました。 もっと言えば、培った実力に不相応な待遇や、常に疑問を感じていた世の中の理不尽さへ、 たまり溜まったものが自分を知らず、歪めてしまったのでしょう。

 このままじゃ死ねない。終われない。

 別に死ぬつもりもないのですが、もう一度足掻きたい、夢を追って飛翔したい、 心の底からそう思いました。
 鬱屈した想いに抗し切れなかった自分。若く脆すぎた自分。でもそれでは終われない。 曲げられ歪んだ自分をかなぐり捨てて、叩き壊して、もう一度まっすぐ飛翔したい、 そう思って勢いのままに造りました。ですからタイトルはかなり適当です。

 このまま終わってたまるか! 僅かに見える大空を睨み据えて。必ず戻ってやるぞ、と。




title : 空へ(仮題)


儚い夢ばかり見ていた 狭すぎる空気の腐ったこの小部屋で
ベッドの上に繋がれ 手の届きそうな天井 見つめるものは 己? 夢? 未来?
カラスが窓の外鳴いてる 俺の死 新鮮な屍肉を待っているように
愛情 抜け殻 死んだ街 声殺して泣いた
 迷路を彷徨って ナイフでこの胸えぐり出し
 流した涙と血液で 部屋を全て濡らす
  くだらぬ日々 握りつぶし
  造られた俺を 叩き壊す
  飛び出せ 未来を手に入れる為に
  戦え 抜け出せ あの大空へ

微笑む写真を見てた 罪のない理想 脆く砕けて
闇夜に包まれ 光失う星 月も消えていった
独りで足掻いて見せた 失う事 ただ恐れて反逆
この手足を折られて いつまにか崖に追い込まれてた
 愛を唱えた唇が 哀の色を纏い
 炎で焼かれたこの胸を 悪魔が貫く

  歪んだ自分を ゴミ箱に捨てて
  見つめろ 夢を 真実の姿を
  刃を 煌めかせ 嘘を切り裂き
  抗え 吼えろ 自分だけの空へ

 見つめた想い 純粋すぎて
 踏みにじられた 運命 漆黒い悪魔に

  腐った己れを かなぐり捨てて
  傷まだ癒えぬ 背中の翼で
  飛び上がれ 夢よ 星より高く
  さぁ飛べ 翔けよ 自由の空へ




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