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敵、敵、敵。どこをみても化け物がひしめき合う様にしてKIYONOを取り囲んでいた。
幾つの屍を作っただろう?幾つの恨みを買ったのだろう?殺しても殺しても溢れかえるように増える化け物は、
完全にKIYONOの戦力を圧倒していた。幾重にも取り囲まれ、最早逃れる事も許されない窮地にあって、
尚戦意を失わなかったのは一体何を支えにした結果なのか?しかしそれも長く続きそうには無かった。
「あはは・・・ちょっと深入りし過ぎたわね・・・」
口唇をかみ締めながら後ずさりする。manaも無く矢も殆ど底を尽きかけていた。
「・・・!!」
背中に何かが当たり一瞬身体がビクッと大きく震える。いつのまにか壁際まで追い込まれていたのである。
「これで・・・最後になるのかな・・・?」
クロスボウを握り直す。流血で手が滑るが、構え直し一矢放つ。
「グェ!」
また一匹、異形の化け物が表現に困る断末魔をあげて崩れ落ちる。しかしその穴はすぐに別の化け物によって埋められた。
「あ・・・!」
化け物の背後に、巨大な影が揺らめいた。わずか一瞬であったが、KIYONOは見逃さなかった。
「デ・・・デーモン・・・」
口唇から漏れた声は、KIYONOの全身の力を奪い取っていった。紅に染まった手からクロスボウは滑り落ち、
膝は床に崩れ落ちる。
「(もう駄目・・・)」
床にへたり込んで、絶望に抱きすくめられた瞳で化け物どもをみつめた。
そんなKIYONOを嘲るかのように化け物はゆっくりと仲間の骸を越えて近寄ってくる。
「シェァー!」
うち一匹がKIYONO目掛けて跳びかかった。
「ヒッ!」
反射的に両の腕で顔を隠す。生暖かいものが一瞬頬のあたりに飛んできたが、
化け物の斬撃は遂にKIYONOの身体を打つ事はなかった。
「・・・?」
恐る恐る腕を除けると、そこには一人の男が立っていた。男は手を伸ばし、KIYONOの頬を濡らした血を指で拭った。
「大丈夫か?」
先ほどの化け物を片足で踏みしめながら片手で軽々とハルバードを振り、血糊を飛ばす。
「まだまだオヤスミの時間にゃ早すぎるぜ」
真紅のマントを翻し、化け物に向き直った男の顔を見る事は出来なかったが、KIYONOにはそれが誰であるか分かっていた。
「・・・来てくれたんだ・・・」
両目が熱く潤み、そしてすぐに頬を伝って落ちた。
「オラオラうざってぇぞ、どきやがれこの雑魚助どもがぁ!」
ハルバードを振り回して次々と屍を作って行く男の背中は、涙で曇ってよく見えなかったが、声を限りにその名を呼んだ。
「CONAN!」
首を捻る様にして男は振り向き、片頬で器用に笑うとウィンクを一つ投げ、
「ちょいと待ってろ、さっさとケリを付ける」
そう言って敵の真っ只中を突っ切り、背後に揺らめく影に向かって斬撃を叩き込んだ。
崩れるように揺れる影の周囲の化け物は、CONANを包み隠すに見えた。
「駄目、危ない!」
KIYONOが叫ぶ己の声と化け物の声以外にCONANの低く呟く声を聞いた。
「荒れ狂う風の精霊よ、偽りの闇を引き裂いて我が敵を滅ぼせ・・・Vas Ort Grav!」
続けざまに稲妻が虚空に走り、一瞬の膨大な光を生んだ時には化け物の大半が焼けこげて床に転がっていた。
「こいつで終わりだアスタロト!」
閃光にも似た斬撃が鈍い音を生んで大きな影に叩き込まれると、影は轟音と共に崩れ落ちた。
「雑魚がぁ・・・・」
流血を求める脂ぎった眼光は、完全に化け物たちを呑み込んでいた。
「・・・・!!!」
KIYONOは立ち上がると思わず真紅の背中に飛びつき、
そして泣き声のまま何度もCONANの名を呼んだ。
「なんだよ、どうしたんだ?」
振り向いて尋ねるCONANの声は、いつもの優しい声音に戻っていて、指で涙を拭いながら優しく語り掛けるだけで
KIYONOの心を落ち着かせた。
「ありがとう・・・まさか・・・来てくれるなんて思ってもみなかった・・・」
「うん?あぁ、お前が一人でhythlothに言っていると聞いてな。久しぶりに会いに来たんだ」
「わざわざ?危険なのに・・・」
「危険なのは分かってるさ。でも一人じゃ危ないしな。それに昔を思い出してしまってな」
仲間の危機と聞けば、ただそれだけで互いに救援に駆けつけたあの日。当たり前の事が懐かしくさえ感じる。
「でも・・・嬉しい・・・」
首筋から耳朶まで赤く染め上げ、少し俯き加減で舌っ足らずに答えた。
「お互い死線を越えた仲だろ?気にするなよ」
そう、あの頃から何も変わってない。でも気持ちは・・・いや、あの頃からずっとそうだったのかもしれない。
「あの・・・でも・・・その・・・ありがと・・・」
CONANのローブの胸の辺りを両手で弄ぶようにしながら答える。
「まぁ無事で何よりだ・・・二度とこんな無茶するなよ?」
CONANは己のマントを外すと、KIYONOに巻き付けてやった。
「あ、汚れちゃう・・・」
急いで外そうとする手を押さえて、
「駄目。偶には俺の言う事を聞け。汚れなんか気にする必要はないよ」
首を軽く横に振りながら、諭すように答える。
「・・・ゴメンね」
すまなそうに答えるKIYONOの肩を軽く叩くと、 「ははは。じゃ、そろそろ戻ろうか。いつまでも長いは無用だ」
街へのゲートを開いた。
「さぁ、行こう」
CONANの誘うままに歩を進めるKIYONO。
「このゲートを通ったら・・・」
このゲートを通ったら、自分の気持ちに素直になれるだろうか?
そう考えながらKIYONOはゲートの無重力に身を委ねた。



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