 |
|
【共同通信社 配信原稿】
最近のタカラヅカはクサさが足りない。かつて宝塚歌劇において「クサイ」とは「観客がシビれる」ことを意味していた。出の音楽に盛り上げられて登場する男役。娘役をガバと引き寄せて口元を隠しながら交わす接吻……と、書いてるこちらが赤面する演出の数々。最近では出演者も観客もあっさり好みになり、いつしかこんな「クサイ」演出も鳴りをひそめていたようだ。そんなことを思い出させてくれたのが、現在宝塚大劇場で星組が熱演中の作品「ベルサイユのばら2001 -オスカルとアンドレ編-」(原作・池田理代子)だ。御存じフランスを舞台にした革命と悲恋の物語。初演は昭和四十八年。演出を故・長谷川一夫が担当し、以来再演に再演を重ねた宝塚の十八番のひとつである。この星組版はわざわざ2001と銘打ち新世紀バージョンを強調しているだけあって、過去の再演から見どころある場面を抽出し、ブラッシュアップした集大成ともいえる。
歴代オスカルは数々あれど、今回格別の男らしさで挑んでいるのが、稔幸。彼女にとってはこれがサヨナラ公演にあたる。恋に悩む男装の麗人という点に重きをおいた場合、その男らしさゆえ物足りなさを感じるかもしれない。しかしバスティーユの戦闘で命を落し、先に戦死した恋人・アンドレに銀の馬車(!)で迎えられるラストシーン。この場面の稔オスカルの表情が最高に良い。アンドレを慕い、頼り、安堵し切った表情。生前はついぞみせなかった、恋する女のそれである。単に死んであの世で一緒になった、という場面では無く、男として生きることを義務付けられていた彼女が、死してやっと女にもどれた、そんな意味を持つ瞬間である。生前のオスカルが男らしければ男らしいほどこの幸福感が増すことになり、観客は救われるのだ。
また、男姿のオスカルを女に見せているのが、香寿たつきのアンドレ。男役としてある意味トップスターを超える事を要求された彼女は、期待に応えて包容力ある男ぶりを発揮。そんなアンドレの見せ場はなんと言っても革命を受けての出撃前夜、オスカルとのラブシーンである。これは宝塚史上稀に見る名シーンとして名高い。かつての上演では観客がこぞってオペラグラスを構えた為、客席一面が銀色に光ったという伝説も産まれたが、この日も大劇場には銀色の波がさざめいていた。こんなところに宝塚百年の不変を感じ、少々恥ずかしくもうれしい一日であった。(ライター・山本ちず)
(了)
|
|
    |