【ルートヴィヒII世】
花組/宝塚大劇場/2000.11

男性版「エリザベート」に歌劇団初の女性演出家・植田景子氏が挑む。氏の大劇場デビュー作。

【共同通信社 配信原稿】

 「夢無くして人は生きられない」そう訴え、幻を抱いて湖の底に沈むルートヴィヒの姿を観たとき、清元の「保名」を思い出した。宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で上演中の宝塚ミュージカルロマン「〜夢と孤独の果てに〜ルートヴィヒII世」(作・演出、植田景子)のラストシーンである。

 バイエルンの若き王ルートヴィヒII世(愛華みれ)は政治よりも夢や理想を尊び、自らが生み出した美しい幻(大鳥れい)を追い求める。そんな王を精神科医グッデン(匠ひびき)はパラノイアと診断。王位を追われたルートヴィヒは、幻に招かれるまま幽閉先の湖に消えてゆく。

 この希代の夢追人を演じる愛華は軍服姿も華やかに「ヨーロッパで最も魅力的な君主」にふさわしい。
 幻役の大鳥は役を演じるというよりも場の雰囲気を作るムードメーカー。本来現実的な女性像が得意な人だけに今回の役は彼女のターニングポイントだろう。
 ルートヴィヒと対峙し現実を体現するのがグッデンの匠。黒衣に身を包み持ち前のダークなムードでルートヴィヒを追い詰めてゆく。一方のルートヴィヒは文字どおり夢のように美しく、この夢と現実の対決は見どころ。

 欲を言うなら愛華には王のノーブルさと夢に飲まれた者の狂気まで表現してほしかった。「保名」がチラついたのはそれゆえである。恋に狂う保名の見せ場は「呆け(ほうけ)」具合にある。夢と現実の対立の図を際立たせ、悲劇的ラストにより説得力を持たせる為にも、ルートヴィヒにもこの「呆け」を見たいと思った。今後千秋楽にむけて期待したい点である。

 演出の植田は宝塚初の女性演出家。今回が大劇場デビューである。この濃密な内容を混乱させずスッキリ観せた植田の手腕は新人としては出色の出来。
 併演はロマンチック・レビュー「アジアン・サンライズ」(作・演出、岡田敬二)。十二月十八日まで。東京公演は二〇〇一年二月十七日から。

【雑感】
 宝塚には出せば絶対、それもケタ外れに当たる忠臣蔵作品が3つある。ひとつは御存じ「ベルサイユのばら」、もうひとつは「風と共に去りぬ」。そして最後のひとつが「エリザベート」。どれもあまりのヒットに再演・続演・競演がくり返されています。

 その最後の「エリザベート」はオーストリアの美貌の皇后と彼女に付きまとう「死(トート)」の恋の物語だったのだけれど、今回の「ルートヴィヒII世」はどうもその「エリザベート」にインスパイアされた点が多いように思われます。エリザベートと同時代の舞台背景。エリザベートが「死(トート)」に魅せられたように。ルートヴィヒも幻に恋する。そして最後の悲劇的な死……。

 もっとも、短絡的な模倣作という訳ではなくて、かなり練り上げられた作品。インタビューなどで、作・演出の植田景子氏は長年あたためたテーマであったと語っていました。
 たしかにこれだけのボリュームの話は、正直一時間半では勿体無い、グランドロマンにしてもいいくらい。おそらく二本立て用にするにあたり、かなり推敲に推敲を重ねたことでしょう。氏の今後の作品にも期待が寄せられます。
  • 愛華みれ(ルートヴィヒII世)……
    キレイ。うん。キレイです。でも、原稿でも書いたけど脆さみたいな点がイマイチ。もっともっと悩んでるとろや、ヒューマニズムに溢れてるところなど、この世で生きるにはピュアすぎる点がほしかったかも。超ホンネを言わせていただければ、紫苑ゆうで観たい。

  • 大鳥れい(幻)……
    娘役より「女役」の人なので、苦労しているようだった。白っぽい格好が多いし、出るたんびに風体が変わるので、かなり存在感が無いと苦しいところ。
    ただし、「マリーアントワネット」の化身になる場面は、お得意のカンロク充分で見ごたえバッチリ。
    こちらも超ホンネを言わせていただくと、この方は頭が愛華みれにくらべると大きいので、娘役としてはソンしている。カップルバランスが悪く見えるのだ(シニヨンでデュエットダンスの時とか)。勿体無い。この人好きなのに。

  • 匠ひびき(グッデン)……
    非常にクールで黒〜い役。服もカツラも黒〜い。で安定した演じぶり。もっとも、この人の「枠」から出ていないのは、いつものことなのだが、それでも個性とピタッとあった役をもらっているので存在感バッチリ。

  • 渚あき(エリザベート)……
    同期(白城あやか)の代名詞を脇役として演じる。衣装も使い回しだろうか?肩がふくらんでいる喪服で登場するが、そのせいかずんぐりと、どうも小さく小さくみえてしまう。実際白城あやかよりも小柄なのだろうけれど。
    いわゆる「エリザベート」ではなく、ルートヴィヒを心配する「母親」的存在。

  • ゾフィー(彩乃かなみ)……
    エリザベートの妹役。随分依然からトップ娘役候補として、赤マル急上昇の彼女だが、また一歩前身といったところだろうか。通りのよい歌声が印象的。髪型をもうちょっと工夫してもよかったかも。

  • ショーの感想……
    アジアなショーはいままで沢山みてきたが、これはかなり本格。ちょっとした仕草や、小道具の使い方など、本場の雑伎団を思い出させる、目新しい表現・演出がテンコもり。それでいてロマンチックレビューのツボは押さえていて、中詰めの総踊りなど盛り上がる。
     芝居が難しいものなので、生徒全員ストレスでもたまっていたのだろうか?ウップンを晴らすように踊り捲るので、愉快痛快。オススメ。

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