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【共同通信社 配信原稿】
「夢無くして人は生きられない」そう訴え、幻を抱いて湖の底に沈むルートヴィヒの姿を観たとき、清元の「保名」を思い出した。宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で上演中の宝塚ミュージカルロマン「〜夢と孤独の果てに〜ルートヴィヒII世」(作・演出、植田景子)のラストシーンである。
バイエルンの若き王ルートヴィヒII世(愛華みれ)は政治よりも夢や理想を尊び、自らが生み出した美しい幻(大鳥れい)を追い求める。そんな王を精神科医グッデン(匠ひびき)はパラノイアと診断。王位を追われたルートヴィヒは、幻に招かれるまま幽閉先の湖に消えてゆく。
この希代の夢追人を演じる愛華は軍服姿も華やかに「ヨーロッパで最も魅力的な君主」にふさわしい。
幻役の大鳥は役を演じるというよりも場の雰囲気を作るムードメーカー。本来現実的な女性像が得意な人だけに今回の役は彼女のターニングポイントだろう。
ルートヴィヒと対峙し現実を体現するのがグッデンの匠。黒衣に身を包み持ち前のダークなムードでルートヴィヒを追い詰めてゆく。一方のルートヴィヒは文字どおり夢のように美しく、この夢と現実の対決は見どころ。
欲を言うなら愛華には王のノーブルさと夢に飲まれた者の狂気まで表現してほしかった。「保名」がチラついたのはそれゆえである。恋に狂う保名の見せ場は「呆け(ほうけ)」具合にある。夢と現実の対立の図を際立たせ、悲劇的ラストにより説得力を持たせる為にも、ルートヴィヒにもこの「呆け」を見たいと思った。今後千秋楽にむけて期待したい点である。
演出の植田は宝塚初の女性演出家。今回が大劇場デビューである。この濃密な内容を混乱させずスッキリ観せた植田の手腕は新人としては出色の出来。
併演はロマンチック・レビュー「アジアン・サンライズ」(作・演出、岡田敬二)。十二月十八日まで。東京公演は二〇〇一年二月十七日から。
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