【プラハの春】
原作:春江一也 脚本・演出:谷正純
【LUCKY STAR!】
作・演出:中村一徳
星組/宝塚大劇場/2002.4
出演:香寿たつき、渚あき、彩輝直他 第88期初舞台生48名


 皆殺しの異名を持つ谷正純氏演出作品。「これは原作でも死ぬんです」と氏自ら原作優先をアピールしていた、やっぱり誰かしら死に谷現代革命劇。

【共同通信社 配信原稿】

歴史伝える熱意で魅了
宝塚星組「プラハの春」

 まず「共産主義とは何か」を理解することからはじまった―。宝塚大劇場で上演中の星組公演宝塚グランド・ロマン「プラハの春」のけいこのことである。
 舞台はチェコスロバキアの首都プラハ。日本大使館で働く外交官堀江亮介(香寿たつき)は、偶然東ドイツ人女性カテリーナ(渚あき)と知り合う。お互いを忘れがたく思う二人だったが、冷戦時代、日本人外交官は東ドイツ人との接触を禁じられていた。しかもカテリーナは反体制活動家としてプラハに追放になった身だった。折しも自由を求める学生や労働者が活動を開始。プラハにはソビエト軍の影が忍び寄る…。原作は春江一也の同名小説。
 「今の劇団生は共産主義や冷戦というものがあったことも知らない世代だ」と語るのは演出家の谷正純。普段の公演ならば出演者のアドリブに任されるような街頭演説のせりふも、専門用語が分からず言葉をつくれなかった。出演者たちは、まず当時の記録ビデオを鑑賞し、現代史を学んだ上で演技のけいこに入ったという。
 宝塚で革命ものといえば「ベルサイユのばら」が代表格。それに比べると冷戦時代の革命運動「プラハの春」は華やかではなく悲壮で重い。しかしドラマのスケールに遜色(そんしょく)はない。むしろ真実の重さはこちらが上だと言えよう。香寿演じる主人公をはじめとして登場人物の大部分は実在の人物がモデル。その事実に触れた出演陣が、わずか三十余年前にほんとうにあった歴史を、伝えようとしている、そんな熱意に引き込まれる公演だった。
 併演のグランドレビュー「LUCKY STAR!」(作・演出、中村一徳)は、レビューの基本である優雅さはそのままに、ダンサブルな迫力にあふれた作品。なお、この公演では第八十八期初舞台生が恒例のラインダンスを披露し、宝塚の“春”により一層華を添えている。五月二十日まで。(ライター・山本ちず)
(了)

【雑感】
 祝!渚あき娘役トップ大劇場お披露目(長い)。
 というムードも吹っ飛ぶような、重厚かつ歴史の重みを感じさせるドラマ。「宝塚グランドロマン」と言うよりも「宝塚近代劇」といった方がいいかも。舞台を楽しむというよりも、美しく包装された史実と向き合い、何かを考えさせられるそういう作品ではありますが、それを「グランドロマン」というエンターテイメント作品として消化しきれていたかというと、課題が残るでしょう。(でも主題歌は「グランド・ロマン」ぽいし、ステンドグラスの美しさは圧倒的)。
 消化不良的なところも多いけど、生徒たちも何かを伝えようとしているのが痛いほど分かるし、見終わった後は「このままで良いのか?!自分!」と、なんだか焦ってしまう。そういう意味でも、この原作を宝塚でミュージカル化したという意味は大きいでしょう。
 本作に限っていていえばパック旅行の団体さんを入れるより、修学旅行をもっと入れろ!ガンガン!ガンガン!
  • 香寿たつき(堀江亮介)……
     安定してます。今回は「傍観者」の役なんですよね。主役の男役としては異例の見守るだけの役。そのへんの焦燥感が欲しいところ。ヘル堀江はもっと若い役なんですよね。年下の青年が、海外赴任で年上の革命家と出会い恋する。これ非常に絵になる設定なのに、それがイマイチ見えないんですよね。彼女の為に役に立てないイライラや心配が見えず。落ち着いているんですね(それが彼女の持ち味なんだけど)。包容力はあって分別もある外交官、という点ではタータンの堀江はどんぴしゃり。でもその落ち着きが外交官としての傍観に見えてしまう時もあるので、少々損な配役だったかと。

  • 渚あき(カテリーナ)……
     娘役としてはもうベテランの域なので、フレッシュさには欠けるものの、しっとりした大人の情感はお手のもの。それでいて、大人の女役のなかに純粋さというか、あどけなさみたいなところが残っているのが、この人の魅力だと思います。今回は彼女のそんな魅力が、ウマく役とかみ合ってたかと。
     大学教師、三十路、革命の闘志といった役所ですが、原作はただただ力強い女でしたが、渚カテリーナは、理想に燃えていた分、どこか世間知らずなとこを残しています。よくいるじゃないですか、何かに没頭してる人で、30過ぎても人並みの主婦的老け方とは無縁って人。そういう感じがするんです。ガチガチの闘士で、なおかつ恋愛する余地もある、その両方をかなえた女性像でした。

  • ショー「LUCKY STAR!」の感想……
     脳みその中までガチガチになってしまうような、重いテーマの作品の後だったせいだろうか、生徒がはじけていたのが分かりました。観客も同じです。明るい、分かりやすい、華やかなショーということで、客席の空気も「ほっ」としてました。
     ただし、楽しくてノリはいいんだけど、どこか上滑りな感じが無くも。最近のショーにどれも言えることなんですけど、中詰めの総踊りはノリのいい音楽をもってきて、強引に拍手をさらってる感じがしなくもない。音楽に頼るだけの盛り上げ方はちょっと食傷気味なので……。
     大階段前の群舞は、黒燕尾&白ドレスで久しぶりに正当派系。残念なのはせっかくパッショネイト系の音楽を持ってきてるのですから(デュエットダンスは赤い衣装なのに!)、もうちょっとぐっせまるもの、大人のコンビに相応しい濃さが欲しかったかなと。
     どちらにしても、クラシック路線を走りすぎて、古めかしい印象があった一徳先生ですが、ここで一本スパーンと抜けた印象を受けました。ずいぶんパワーがついてきたぞ!(でも、ダルマ好きはなんとかして……)

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