【琥珀色の雨に濡れて】
花組/宝塚大劇場/2002.3

 チャーリー&ミドリでとうとう復活した伝説の名作。

【共同通信社 配信原稿】
胸をゆさぶる匠の慕情
宝塚花組「琥珀色の雨にぬれて」

 宝塚には「男役十年」という言葉がある。一人前の男役になるにはそれだけのキャリアが必要という意味だ。だが運良くトップスターになったとしても任期は三、四年。花咲く期間は短い。その最短記録を塗り替えることになったのが、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で上演中の花組公演「琥珀色の雨にぬれて」の主演、匠ひびきである。  彼女はこれがトップお披露目公演であると同時に最後の作品となる。それが“再演もの”とは意外だが、なにしろ「琥珀色の―」は一九八四年の初演以来、心理描写の難解さが役者を選び、長らく封印されてきた秀作。「芝居よりもダンス」という印象が強かった匠が、最初で最後の大舞台で役者としての実力を存分に見せつけた。
 純粋な青年公爵クロード(匠)は可憐(かれん)な娘フランソワーズ(遠野あすか)と婚約中だが、静養先で知り合った自由奔放な美女シャロン(大鳥れい)に強く惹(ひ)かれる。一度はシャロンを思い切りフランソワーズと家庭を持ったクロードだが、偶然の再会をきっかけに二人の仲は再燃。妻を置いてシャロンと共に旅に出ようとするが……。
 一九二〇年代のパリを舞台に、登場人物がフランス映画さながらの心理劇を展開する。大人の女を演じられる大鳥を初め、娘役たちの確かな演技もこの難しい舞台を支えている。
 クロードは、単なる浮気男ではない。シャロンとの旅立ちの朝、フランソワーズのことを気にする彼女にクロードは言う。
 「あちこち方々嘘(うそ)で固めてとりつくろう、それだけの余裕が僕には無かった。ただ君とこうして出発することだけが僕には大きな意味があった」
 人間だれしも自分をだまして日々の平穏を保っている。クロードの行動はそんな平穏な人生へのレジスタンスなのだ。人としては幼いけれど、ひたむきに生きるクロード。彼の慕情をストレートに演じた匠に、胸をゆさぶられた。
 四月八日まで。東京公演は五月十一日から。(ライター・山本ちず)
(了)

【雑感】
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