【花の宝塚風土記/シニョール ドン・ファン 】
作・演出:酒井澄夫/植田景子


月組/宝塚大劇場/03.2
出演:紫吹淳・映美くらら・汐風幸・彩輝直 ほか

現代要素溢れる和もののショーと、ファッション業界を舞台の芝居で、和洋両面のファッションナビゲーター的作品

【雑感】

 今年の前半は日本物イヤーの宝塚。春公演は日本物のショーがきました。プロローグの辻村ジュサブロー的衣装や、「サクラ幻想」の羽根扇もっての舞踊といい、かなり現大要素が強い作品です。またここはトップコンビの学年差も大きく、特に映美くららがチャーミングな現代っ子なので、形は時代ものでも、現代人に見えるんですよ。スピリチュアルな面が現代人だからでしょう。
 洋物芝居は植田景子の大劇場二作目。まさに「女の夢」を絵に描いたようなストーリー。宣伝文句の「愛の寓話」性よりも、ミステリー面でのストーリーが楽しめました。
 ドンファンを巡る女性たちの芝居もそれぞれ個性的で楽しめるものの、入魂は男役の嫉妬の演技。なかでも、植田女史の理想的男性とされるスティーブ役の大空祐飛が渋さと鋭さを兼ねそなえた、セクシーなジェラシーを表現していました。
 また話題だrtらコシノヒロコデザインの衣装。主演の紫吹淳はさすがの着こなしでお仕着せ感ゼロなのはさすが。また、衣装発表の時はどうなるだろうかと不安だった、男役のガクランスーツも、実際に男役に着用され踊っているところを見ると、シャープさと色気があってなんともいい風情。その反面コシノコレクションをそのまま持ってこられたプロローグの娘役陣はかなり苦戦の後が見えていました。あの筒状の衣装をモデル並に着こなせていたのは、正直紫城るいぐらいだったように感じました。
 いずれにしても衣装とヘアメイクのセンスはこの公演で月組、かなりレベルアップしました。

【共同通信社 配信原稿】

 春の宝塚は「目もあやに」という言葉が似合う。その理由の一つが初舞台生だ。四月の公演では宝塚音楽学校を卒業したばかりの生徒が初々しい初舞台姿を披露する。さらに初舞台生が加わることで出演者総勢約120名という華やかさも極まれりといった舞台が出来上がる。東京公演が通例化した今でもこれは宝塚大劇場だけの特権だ。今年の初舞台公演は月組「花の宝塚風土記」と「シニョール ドン・ファン」。
 「花の−」は、日本の歳時記と歌舞伎の変遷を描いた日本物のショー。オーソドックスな題材をテンポよく多彩に観せる。見どころは本作が退団公演となる汐風幸が、雅楽師東儀秀樹の音楽で素踊りを見せる「石庭」と、松本悠里が長崎丸山の遊女に扮した「花燈籠」。華やかなシーンが続く中でこの二場面は静かな情感が印象的。特に松本は現在の宝塚で日舞の頂点と言われる舞手。しっとりとした舞の世界に引き込まれる。
 「シニョール−」はイタリアファッション界を舞台にしたミステリータッチのミュージカル。トップスター紫吹淳が現代のドン・ファンと呼ばれるデザイナーに扮し、華麗な女性遍歴を披露する。紫吹にからむ娘役たちの演技もさることながら、汐風幸・彩輝直・大空祐飛・月船さららといった男役スターたちが、栄光に満ちた主人公に様々な形の嫉妬を抱くのがポイント。ジェラシーという男役の色気が感じられる作品だ。
 本作はコシノヒロコが衣装デザインを担当したことも話題のひとつ。衣装に出演者をはめるのではなく、衣装を提供し着こなしを各自に任せる形をとったため、出演者のヘア・メイク、着こなしのセンスなどが全体的にアップしたように見える。中でも宝塚のファッションリーダー的存在である紫吹の着こなしがひときわ洗練されておりさすが。甘く華やかで危険なムードに満ちたプレーボーイの貫禄充分だ。和洋の華やかさをとことんまで楽しめる公演は五月一九日まで。東京公演は六月二十七日から。(ライター・山本ちず)

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