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【共同通信社 配信原稿】
かつて宝塚歌劇は不良の描写が下手だった。リーゼントに黒の革ジャン、小道具はナイフと。あまりにもステレオタイプすぎたのである。
しかし九〇年ごろから表現にがでてきた。ハードボイルドを得意とする若手作家たちが続々とデビューしはじめたからである。現在宝塚大劇場で上演中の宙組公演「カステル・ミラージュ〜消えない蜃気楼〜」の作・演出、小池修一郎もその一人だ。彼は今や日本のミュージカル界を牽引する力のある演出家でもある。
物語は第二次世界大戦前夜のニューヨーク。少年時代のささいな賭けから暗黒街に身を投じたレオナード(和央ようか)は、幼なじみの女優エヴァ・マリー(花總まり)と再会し、彼女のために砂漠の街・ラスベガスに巨大なカジノ・ホテルを建設を計画する。マフィアの一員でありながら少年の純粋さを失わないレオナードは「暗黒街の天使」と称され一般市民からも支持される。しかしホテルオープンの夜、窮地に陥ったエヴァ・マリーを救うため、組織の掟に反し破滅を迎える。
このように小池作品には、夢半ばに倒れたり、愛する女性のために犠牲になる男たちが多く登場する。氏は映画「カサブランカ」にも通じるこの手の美学を好み、繰り返し作品に活かしている。プレイボーイは最後に自分の葬儀で泣いてくれる女性の数を競うというが、小池作品の男たちはヒロインの紅涙を搾り取ることを生き甲斐、いや死に甲斐としているのだ。こうした作品群を筆者は密かに「小池修一郎・男のロマン劇場」と呼んでいる。
男のロマンをトッピングする小池演出により、宝塚のワルはステレオタイプから脱却したが、一方ロッカーの方はまだまだだ。それを再確認したのは皮肉にも併演のグランド・レビュー「ダンシング・スピリット!」だった。ブルース、ジャズ、ロックなど様々な音楽にのせてダイナミックなダンスをみせるという謳い文句だったが、一昔前のパンクやヘビメタを思わせるコスチュームや、昔ながらの人海戦術の多用により、高度経済成長期にも通じるモーレツ・パワーを感じてしまった。十二月二十五日まで。(ライター・山本ちず)
(了)
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