話が後先になりますが、今日は戒名のお話。本葬の時に決めておくものですが、うちの場合、四十九日の法要の席で、戒名をつけて下さったお寺のお坊さんに、改めて戒名に込められた意味を説明していただいたので、一通りの葬儀のステップがすんだ後で取り上げてみました。
【戒名の法則】
普通、戒名は
○○××信士
という風に、六文字からなります。○○の部分が道号、××が純粋な戒名(または法号)、最後につく居士や信士が位階になります。
ちなみにうちのじいちゃんの戒名は
夏山寛空信士
と、いいます。
上記の法則に従って読み解くと、道号は「夏山」、戒名は「寛空」、位階は一般仏教徒クラスの「信士」ということになります。
この戒名の意味ですが、夏に亡くなったことと、じいちゃんの俗名が「寛二郎」だったことからつけられたようです。
夏とか空とか、スッキリした字面がさわやかさ満点。遺族も大満足で気に入っています。
名付け親(?)である、旦那寺の和尚さんによると
「スカッと晴れた夏の空をから、故人のお人柄を忍んで」
とのこと。
このように、故人の俗名・亡くなった季節・人柄・功績などが、戒名に折り込まれることは多いようです。
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【戒名の種類】
さて、以上が一般ピープルの戒名ですが、お寺に信心してたり、お布施をはずんだり、生前ものすごい著名人だった場合など、オプションとして頭の部分に△△院(殿)という、二〜三文字の院殿号がつきます。
この、頭の部分と最後の部分が、お布施を左右する重要パーツになるわけです。
最後の位階の部分は、細かく階級にわかれていまして、男女それぞれこのようになります。
| 大居士 & 清大姉 | |
| 居士 & 大姉 | |
| 大禅定門 & 大禅定尼 | |
| 禅定門 & 禅定尼 | |
| 清信士 & 清信女 | |
| 童子 & 童女 | 就学前〜小学生 |
| 幼子 & 幼女 | 就学前 |
| 孩子 & 孩女 | 〜3、4歳 |
| 嬰児・嬰子 & 嬰女 | 授乳期の子供 |
宗派によって使われる文字が決まっていることもあります。
例えば、浄土宗では「誉」、西山浄土宗では「空」、時宗では「阿(男性)」「弌(女性)」、日蓮宗では「日」「法(男性)」「妙(女性)」、浄土真宗では「釈」のなど。
余談ですが、かつて戒名が身分で左右された時代は、戒名にも差別階級用のものがあったそうです。当然今はそんなもの無くなりましたが、御覧のように男女の差は死後も歴然と存在するわけで…。
カルーセル麻紀さんとか美輪明宏さんとかが亡くなったら、いったいどうなるのか?「居士」や「信士」なのか?やっぱ本人は「大姉」とか「信女」にしてもらいたいのか?お寺はやってくれるのか?(そもそもこの二人は仏教徒なのか?)
いろんな意味で、ボーダレス社会になりつつあるんですから、戒名もそれ相応なものを作ってはどうでしょうかねぇ。
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【院に殿、庵に軒?】
もともと戒名は今のように長いものではなく、二文字が普通でした。奈良の大仏で有名な聖武天皇も戒名を持っていて「勝満」。それ以後鎌倉時代まで、この二文字戒名は続きます。
鎌倉時代を過ぎると字数はガンガン増え、ドンドコ豪華になっていきます。
今日、高級な戒名の代名詞である「院」号ですが、もともと「院」てのは、譲位した天皇の尊称。後白河院とかの「院」です。
で、この「院」も、つきつめれば、嵯峨院のように、住居をのちのちお寺にしたことからはじまります。
と、いうわけで、故人がかつて住んだ場所、という意味から、「院」の代わりに「寺」「寺殿」「庵」「斎」「軒」「房」なんかも、つわれていたこともありました。院号自体の意味が形骸化してきているので、だんだんと無くなっていったようです。
さらに「院」よりも高級とされる「院殿」号。こちらはお武家の偉いさんが、皇族の「院」と区別するためにはじめたもの。
院殿号の最初は、あの足利尊氏。その名も
等持院殿仁山妙義大居士
(とうじいんでんじんざんみょうぎだいこじ)
ふう長い。
もともと区別から始まった院殿号ですが、お武家の権力者がつけるようになってからというもの、院号よりも格上のような感じが強くなりました。
今日では、ぶっちゃけた話お布施をはずむと、一般人でも院号をゲットできます。
しかし、もともと院号はお寺に貢献した人に与えられる戒名。将軍や大名といったビッグネームたちも、お寺の建立など仏教にせっせと貢献している側面もあるのです。
そこのところを考えると、一般人がにわかに院号をもらおうと思うと、どのくらいの金額が必要になるのか…推して知るべしですね。
一説には、寺一件…とまではいかなくても、“本堂が建つくらい”を提示したお坊さんもいるとかいないとか。
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【長さで対決!】
「啼かぬなら〜 ホニャララしよう ホトトギス」の歌でも比較される、信長・秀吉・家康の三武将。日本史に君臨する人々だけあって、戒名もゴリッパ。どなた様も最長記録クラスです。
●織田信長:惣見院殿贈大相国一品泰巖尊儀
(そうけんいんでん ぞうだいしょうこく いっぽん たいがんそんぎ)14文字
●豊臣秀吉:国泰裕松院殿霊山俊龍大居士
(こくたいゆうしょういんでんりょうざんしゅんりゅうだいこじ)13文字
●徳川家康:安国院殿徳蓮社崇誉道和大居士
(あんこくいんでんとくれんしゃすうよどうわだいこじ)14文字
(※これに階位を表す「一品大相国」がプラスされ19文字になる場合もあり)
フツーの人の戒名が六文字前後だというのに、軽く倍以上はあります。
彼らのがサイコーだと思うでしょ?
ところがどっこい、この三大武将を凌ぐ、スーパーウルトラなっがーい戒名(おそらく最高?)があるのです。それはこちら!
●冷光院殿前少府朝散大夫吹毛玄利大居士
(れいこういんでんぜんしょうふちょうさんだいふすいもうげんりだいこじ)
なんと18文字!うっひゃー!(ちゃんと読んでくれた?打つのも大変ッスよ)これくらいの戒名を、今現在つけてもらうとしたら、いったいいくらになるんでしょう…。
ま、下衆の勘ぐりは置いといて、タネ明かしとまいりましょう。
この戒名の持ち主こそ、忠臣蔵で有名な浅野内匠頭こと、浅野長矩です。
日本を統一したり支配したりしたうわけでなく、ただ若くして切腹した分家大名の彼が、日本最長クラスの戒名の持ち主なのです。
おそらく、大石内蔵助以下、残された家臣がリキんでつけたのでしょう。戒名は残された人々がつけるものだと、証明しているいい例です。
この戒名のパーツを解説してみますと、
「前小府」=「前の内匠頭で」
「朝散大夫」=「位は従五位下」
「吹毛」=「毛を吹くほど細かい欠点も見のがさない」
「玄利」=「鋭く奥深い道理がある人」
と、こんな感じでしょうか。
人間関係のトラブルで切腹させられた人だけに、
「俺は悪い事してないんだー!」
「不正は許せない性分なんだー!」
「いい人間だったんだ!」
と、全身全霊で表現している、お名前なのです。
余談ですが、このロング戒名、実際に浅野内匠頭のお墓に彫られています。毎年のように映像化される忠臣蔵モノでは、このお墓も作らなければなりませんから、墓石からハミ出しそうなこの戒名は、かなり美術さん泣かせでもあるのです。
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【戒名でたたり封じ?】
浅野内匠頭のように、残された人がリキばってつけた戒名というのは、ほかにも沢山あって、例えばこれなんかそう。
●石川五右衛門:融仙院良岳寿感禅定門
(ゆうせんいんりょうがくじゅかんぜんじょうもん)
かいつまんで言うと「出家僧なみのよい行いをした、めちゃめちゃ高徳の人」という意味。
フツーに考えると、刑死した大ドロボーなんですから、仏教活動にいそしんでたり、高徳のハズがない。
しかも、「仙」の字は仏教関係者以外で、徳の高い人に与えられる文字。釜ゆでになった五右衛門ですから、後世の人が、タタリをビビッてつけたとしか考えられません。ここまでくると、生前の人格・業績というのはまったく無視です。
※戒名の話は、少々長くなりましたので、次回にも続きます。
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