その七 番外編:彼こそ主役?お坊さまの存在

 この番外編は「葬送狂騒曲」に寄せられた、おたよりコーナーです。
 一部で話題沸騰だったのが、お葬式の時の、お坊さまの御立派なお姿。あるものはおどろき、あるものはとまどい、そして家のネコは威嚇した。
 そんな、非現実の象徴・お坊様の存在にクローズアップします。


 ★各項目の最後にあるブルーの文章は、山本のコメントです。

 ◆高いよ〜◆NEW!
●坊さんに渡す金が異常に高かった。
 お経を数十分あげただけで、何十万円もとられると思わなかった。
 最初いくら払うのか分からなかったので
「いくらぐらいでしょうか?」
と尋ねたら、
「そちらで決めてください」
と言われた。しかし、皆目見当がつかなかったので
「皆さんいくらぐらいお支払いになるのでしょうか?」
と尋ねたら
「50万程でしょうか」
とぬかしやがった。一般的にはそのぐらい払っているのか知らないけど、”坊主丸儲け”とはこの事だと思った。
(zacさん)


----お布施って難しいですよね。ハッキリ言ってくれないとわかんないし、かといってあんまり高額を提示されても「むう」ってなっちゃうし。言い出した手前ひっこみつけたり、値切ったりできないし。
 あと、「お宅様なら××くらいでしょうか」と、門構えをみて値段を提示するお坊さん&葬儀会社もあるそうです。
 適正価格とか、価格破壊とか、ついでに税金も無縁の世界だけに、改革はいまのところむずかしそう。

 ◆御立派!◆
● お通夜時のお坊さんが金ピカの即身仏みたいな格好をしてるんで家の猫が皆(3匹)で「ふーっ」と威嚇してました。
(太田さん)

●笑いと涙は紙一重って感じがします。
 かわいがってもらった祖母の葬式。それは大混乱でした。
 合理的かつ質素な北海道にしては金のかかった(500万円)葬式だけあって、坊さんは5人。袈裟も立派。
 私は静まり返った会場で、祖母を想い、悲しみをこらえていました。坊さん入場。すると、となりの弟がそれを見て

「姉ちゃん、あの坊さんの服(袈裟)、アイロン台みたい」

 そうです、立派な袈裟は襟がとんがっていて、それはまるでアイロン台を背負って いるように見えるのです!
 静まり返った会場、静かに響く念仏。そのシチュエーションは、私を笑いのストライクゾ−ンにいれるのに十分なものでした。
 笑いたい!でも笑えない!私が死にそうだ。我慢だ!
 本当に死にそうでした。震える肩。ゆがむ顔。親族なだけに退席もままならず。 幸い、親族席のため、前列にいたおかげで、私の笑いにゆがむ顔は誰にも見られずに 済み、かえって後ろから見た私は、「悲しみに暮れるやさしい孫娘」に見えたことでしょう。ただでさえ長い、念仏が、私には永遠の様に思えたのでした。

 こんな些細なことで悲しみの涙が一瞬にして笑いの涙に変わる葬式
  同じイベントでも結婚式と違い、ごまかしが通用しない葬式。
 そんな緊張感がたまらない葬式。
(河村さん)


----お坊さんの衣装について、まず2連発。
 わたしも最初に見た時には、あの立派さ、神々しさ(いや、仏教だから仏々しさか?)、非日常的かげん、どれをとっても目を見張るばかり。これじゃ猫も威嚇するってもんです。
 ちなみに、伺ったところ太田さん家の猫たちは、普段人に威嚇した事など、全然無かったのだとか。ほんと猫もびっくりですよねぇ。あの衣装。

 

 ◆お坊様Q&A◆
というわけで、衣装をはじめとして、お坊さんについてのあれこれを、その筋の方にお教えいただきました。
 私の不躾な質問にお答えいただいたのは、ご実家が寺院で、僧侶活動の御経験もある、中尾さんです。
 これは、その往復書簡を元に構成した、お坊様に関するQ&A集です。

◆Q1:あの超豪華なお衣装がまず見るものを圧倒しますが、あの装束は正式にはなんというものですか?

●A1:「七条」です。
 宗派によって呼び方は違うと思います。以下、私の寺院の所属する宗派=真宗大谷(東本願寺)派に関して述べます。

「七条(しちじょう・ひちじょう)」といいます。
大きく斜めにかけている金銀豪華な袈裟のことです。
かなりきれいでしょ?これはお葬式用です。それ以外には使いません。
 基本的に、お葬式というのは、故人との最後のお別れということで、最高級の儀式になるわけです。

 ちなみに、通常の法要法事や、お寺の儀式等の時に使用する、ものは「五条(ごじょう)」といいます。

 その下にきているきれいな色のお着物が「色衣(しきえ)」。これは「五条」着用時も使用します。 以降、格式の程度が軽くなるに従い、「黒衣(こくえ)」「間衣(かんえ)」と変わり、それぞれにつける袈裟を「輪袈裟(わげさ)」といいます。

◆Q2:その、七条ですが、宗派によって違いはありますか?

●A2:あります。
 しかし、基本的な考え方、つまり、格式の度合いにより、服装が豪華になったり、簡略化されたりします。
 宗派では、禅宗系ではお葬式の時、派手なのが多いように聞きます。

◆Q3:あのような装束を着るのには、資格や位が必要なのでしょうか?

●A3:位はありますが…
 聖徳太子の十七条憲法、階級制度を思い浮かべてください。
「和をもって尊しと為す」
「三宝(仏・法・僧)を敬え」
「紫が一番くらいが高く、それ以下・・・・」
これが、発想の原点です。
 最高級は「紫」「玉虫」。以下、色々あります。

 しかし、この考え方自体、「差別的」で教義に背くものとして、最近では重視されていません。
しかし、「差別」と「区別」が違うように、「儀礼」と「神聖性」というのも違います。やはり今でも、生きている制度ですね。

 位についてですが、僧侶には「大僧正」など高級ランクから「入位」、「得度だけ」などまであります。
 「得度」は得度式を受けたもの。
 「入位」というのは、教師資格をとったばかりの人をいいます。  つまり、位の世界に入ったわけですね。そこから、なんとか3位とか、いろいろあります。上がる基準は、これまたすばらしいシステムで、大きな声で言えません。

◆Q4:失礼ですが、あの装束一揃、どのくらいかかるのでしょうか?

●A4:ワンセットで、200万くらいじゃないでしょうか。
 もちろん、もっと安いのも、高いのもあります。

◆Q5:こんなメールをいただいたのですが、
  広島県御調郡のお葬式では、御坊様3人いらっしゃいました。  メインの御坊様が椅子に座り、彼をまん中にしてサブの御坊様が座り、一人はドラのようなものを鳴らされておりました。
 お経にあわせて、要所要所で「ジャーン」と鳴らすといったかんじです。
 初めて聞いた時、お経とドラのハーモニーがなんともおかしかったのを覚えています。
(ひさこさん)
私の家のお葬式でも、お坊さんに3人来ていただいたんですけれど、それぞれ役割や位付けが違うのですか?

●A5:違います。
 まず「導師」。これはリーダーです。
 この「導師」に向かって、右・左と、偉い順に続きます。
 そして、「おかねたたき」これは通常、最年少がやります

 ◆イマドキなお坊様:前編(明朗会計編)◆
●母が亡くなる数年前に、父方の祖母が亡くなり、やはりうちで、御葬式をだした ことがありました。そのときに葬儀屋さんの紹介でお願いした御坊さんに、母の時もお願いすることになったのですが…。

 この御坊さん、なかなか「やり手」の生臭坊主で、顧客管理…いや檀家管理はコンピュータでやっていたりします。
 電話で問い合わせたときも、電話の向こうで、カチャカチャとキーボードを打つ音がして、

「ああ、以前、おばあ様の御葬式をあげさせて頂いた○○さんですね。
 で、今回はどのようにしましょう?
 前回と同様のランクでよろしいですか?」

などと、非常に事務的に対応してくれます。

 御布施の金額も、ランク(御坊さんの人数とか、袈裟の豪華さなど)によって、あらかじめ、提示してくれます。この明朗会計(?)が私も父も気に入っていて、母のときにも御世話になりました。

 葬儀後も、会員…いや檀家として登録して、指定の管理料を支払えば、勝手に、命日に御経を上げてくれるシステムになっており、法事をしなくてもだいじょうぶという、アフターサービスもあります。

 しかも、この御坊さん、根っからの商人なのか、値切ると負けてくれたりします
 母の時も、戒名を付けてもらうのに、結構値が張るので、渋っていたところ、

「お宅は、いつもうちで御葬式あげさせてもらって、
 御世話になってますから、
 戒名を一文字サービスしときます。」

って、一文字サービスしてもらいました。ラッキー!って、おいおい(^_^;)
(RIKIさん)


----いつもこのコーナーに面白…いやいや、貴重な体験談をおよせ下さる、RIKIさんの力作長文メールです。
 編集して短くしようにも、面白いのでなかなか削れず、前後編に分けました。
 まずはその前編、イマドキぶりを見せてくれる、エピソード1。

   へえぇ〜そっかー戒名って負けてくれるんだー。一文字分。同じ一文字っつっても、さすがに「院」とかはつけてくれないでしょうけど(詳しくは「その11:戒名フツーの戒名、有名人の戒名」を参照のこと)。
 たった一文字のこととはいえ、値切れない、お布施がらみの事柄ですから、やっぱり得した気分。

 ◆イマドキなお坊様:後編(お見合い画策編)◆
●さて、そんなハイカラな御坊さんが、母の通夜の時にやってきました。
 父とふたりで挨拶に行くと、

「いやあ、お嬢さん立派になられましたね。
 どちらにお勤めですか?え?証券関係?
 なんか、美味しい話あったら教えてくださいよ。
 いや〜私も株やってるんですけど、
 最近バブルはじけちゃって…(以下略)…」

 こんな調子でノリノリの御坊さんは、火葬場へ向う車で同乗した私に、

「お嬢さんもそろそろ、御年頃ですよね。
 結婚相手はもうお決まりですか。
 いや、ねえ、いい人がいるんですよ。
 今日私と一緒にお経あげてた、あのお坊さんなんですけどね。
 慶応でてて、背も高くて、なかなかいい男でしょう。
 ま、40過ぎてますけどね。
 性格はやさしいし、お寺の住職ですからね。
 お寺は不景気関係ないですし、
 生命保険もがっぽり…(以下略)…」

はいはい(-_-;)

 さらに、7日の法要のあと、精進おとしの席で、そのお坊さんの手中にはまり、 例の慶応出のいい男系のお坊さんの隣に座らされ、

「どうだい?こちらのお嬢さん。
 しっかりもんで、いい子なんだよ。
 明るくて、頭もいいし、
 お寺のおかみさんにはぴったり…(以下略)…」

 なんで、40過ぎのお坊さんと、母の葬儀の精進おとしの席で、お見合い状態になるんじゃああ!いくらなんでも、そんな出会い、いや・・・(-_-;)

「これも、お母様がひき合わせてくれた縁ですからね」

「縁」ゆうなああ!そんなのない!ぜったいない!
 慶応出の人のよさそうなお坊さんも苦笑いしてました(^_^;)
 とりあえず、あまりにうるさいので、一言言ってやりました。

私、クリスチャンなんで、お坊さんとは結婚できません!」
(注:正確には洗礼は受けていません。が、教会には行っていました。)
 しかし、敵もさるもの、そんなことくらいで引き下がりません。

「最近は、あまり関係ないんですよ。
 私の知り合いのお坊さんでも、神前式で結婚した人いますしね。
 相手の親が、仏教式の結婚式は葬式みたいで、
 縁起が悪いっていいましてね。
 そもそも神や仏を信じる心は…(以下略)…」

参りました。ホントに。

 すべて終わって、お坊さんが御帰りになるとき、見送る私に

「あ、お嬢さん、美味しい儲け話があったら、
 よろしくお願いしますね。
 あと、例のお坊さんの件、
 一度真剣に考えてくださいね。」

と念押しして、帰られました。
(RIKIさん)


----さて、ヤリ手のお坊様のエピソード2、お見合い画策編です。
 お坊さん、自分でこんなこと言っちゃダメですよ〜。不景気関係無いとか、宗教関係ないとか…。爆弾発言続出。かえって清々しいくらいですね。

 一部には、葬儀屋さんと密着な関係にあって、葬式のお布施でやっていってるお坊さんを、侮蔑的な意味をこめて「葬式坊主」と呼ぶそうですが、葬式坊主であろうともプロ意識があるのならば、それは充分人に誇れると思います。
 このお坊さんは、仏教をビジネスとして、真っ向から取り組んでいます。そこが清々しい笑いと、信頼を呼ぶのでしょう。ただし、賛否両論はあるかと思いますが。

※このコラムでは、お葬式に関するみなさまのご意見・体験談などを募集しています。
 ウチの地方ではこんなお葬式のしきたりがある!ウチの葬式でこんなことがあった!自分ならこんな葬式で逝きたい!など、お葬式に関することなら、どんなことでも結構です。どんどんメールでお寄せください。お待ちしています。

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Chizu Yamamoto
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