葬儀のランクと葬儀屋サービスのいろいろ

 長っ尻のお客や酔っ払ったお客が引き上げ、通夜ぶるまいの膳も片付けに入るころには、やっと通夜もフィナーレに近づきます。

 しかし、遺族にはまだまだやるべき仕事が残っているのです。
 そう、それは棺の守り!
 親族が線香の火を絶やさず、寝ずの番で詰める、というアレです。

 重ねての記述になりますが、ウチの通夜・葬儀は葬儀場で行われていますので、当然寝ずの番も葬儀場で行わねばなりません。
 わが家では喪主の父と父の弟である叔父の二人が、メインの番をすることになり、それにつきそう形で、喪主の妻である母と娘の私も葬儀場で夜を過ごすことになりました。
 
 葬儀会社の方も、そのあたりは心得ていたもので、弔問客が引き上げ、夜も更けてくると、おもむろに祭壇の前にあった焼香台を数人で脇に押しやり、代わりに長椅子のようなものをひきずってきて設置。

「こちらが仮眠用のソファです。仏様に付き添われる方はこちらをお使い下さい」

と、毛布一枚を添えて遺族に示しました。
 このソファにはメインの番である父と叔父が交代で横になったのですが、さて私を含む残りの遺族はどこに詰めていたのかといいますと、最前通夜ぶるまいをしました、お座敷。ここに布団をのべて休むことになっていました。

 このように、通夜の夜は遺族が泊り込むことが最初から予定されていますから、最近の葬儀場は宿泊関係の設備も完璧です。
 簡単なシャワーもあって汗を流すことはできますし、布団も貸出してくれます。仲居さんはいませんが、よく気がつくおばさんスタッフも多数います。

 さすがに浴衣や朝食は出ませんが、部屋の広さ(宴会場なんだから広いのはあたりまえ)など、下手な素泊り旅館顔負けではあります。

 その上、深夜ともなれば、同じ日に通夜を出したよその遺族が、ランニングにショートパンツの軽快な湯上がり姿で、スリッパをペタペタいわせながら、フロアを行き来するのです。

 ただでさえ、錯覚しそうなところにこんな光景です。しかもお土産物売場ならぬ香典返し品の展示スペースもちゃんとあったりするので、ますます自分がどこにいるのか分からなくなりそうです。

 環境は旅館のようでも、決定的に違うところは、遺族の一部は寝ずの番をしなければいけない点。そして、運良く眠れた遺族も、翌朝はのんびりなどできない点でしょう。お葬式はまだまだ続くのです。

 これが自宅葬だと、もう少し気が抜けるのですが、なにせ目覚めればそこは葬儀場。朝っぱらから身ごしらえをキチンとしなければいけなかったのが、けっこうキツかったのを覚えています。

 特に女性は化粧もしなければいけないし、起きぬけからフル喪服(って変な表現ですが、喪服のフル装備って意味です)を装着しなくちゃいけないし、寝不足でムクんだ足にパンストも履かせないといけないし…。こういう時、ウチでやっててくれたら〜と、思わないでもありません。

もっとも、仮に自宅であっても、目が覚めたら祭壇の線香の火がバッチリ絶えちゃってて、おじさんやおばさんやら親戚ご一党様が、

「アンタが寝こけてたせいで!」
「ワシかて疲れてたんやっ!」
「ああ!この親不孝もんっ!」


などと、キンキン大喧嘩してた、なんてこともあったりするようなので、こっちもけっこう気はぬけないようです。
 
 大喧嘩といえば、このあたりから遺族の疲労度は格段にスパークしています。やっぱり、寝たのか寝てないのか分からない通夜の一夜が効いています。その上、こうあわただしくては、キチンとした食事も作りづらいし、とりづらい。

 食べるもんはたべてないし、あんまり寝てもない。どんなに出来た人間でもこれでは多少は無愛想になるってものです。
 ですから、この時期になると、線香の火が消えていた。葬式に集まるのが遅かった。アンタんちの子供は躾がなってない…、などの非常にミクロでささいな出来事でも、親戚大紛争となりがちなのです。

 葬式を出すと揉め事が起きると言われている(のか?)ゆえんだと思われます。
 さて、遺族の疲労はピークを向かえる中、いよいよ本葬がスタートします。

 本葬といえば、一代イベントの出棺があります。
 棺が無くなるといえば寂しさもありますが、遺族の肩の荷がひとつ降りることも意味しています。
 その一つが、夏の葬儀の場合だと、棺にかかさず入れていたドライアイス。やはりお葬式が多いのはお年寄りが激しい気候に耐え切れなくなる真夏か真冬。わが家の数少ない葬儀(2度)はそのどちらも真夏に行われましたが、その折必需品だったのはドライアイスでした。

 直接的な話になりますが、このドライアイス、真夏の場合は約2時間おきに、棺に敷き詰める必要があるのです。人体が物体になった事を確認する作業なので、みている方も辛くないといえばウソになります。でも、これをしないと、甘い感傷もフッとぶような、もっと辛い状態になるのは分かり切っているので、ここで葬式初心者は軽いジレンマを感じるのです。
 出棺してしまうと、この点は解消されます。

 さらに棺回りのもので、いくつか役目を終えるものがあります。
 例えば、棺の上に掛ける錦の布。そして、棺そのもの。

 この棺を決める時も、遺族の間で迷ったものです。
 棺だけに限らず、葬儀会社が提示するお葬式グッズは、すべてランク分けされている為、このランク決めで頭を悩ませるのです。
 できるだけ豪華にとりおこなうのが供養だという人もいるでしょう。
 いくらお金をかけても死んだ人は生き返らないという人もいるでしょう。
 贅沢はしたくないけれど、最低ランクも抵抗があるので、そこそこのもので、という人もいます。
 どれももっともです。

 ウチの場合はといえば、親戚の中に葬式経験数え切れず、といういわば「葬儀のベテラン」ともいえるおじちゃんがおりまして、我が家の葬儀でも栄えある(?)「葬儀委員長」勤めてもらったのですが、彼が迷う遺族に答えをビシッと示してくれたのでありました。
 例えば棺のカタログを前に、

「棺の値段?この安いのと高いの、どこが違うんや?」
「ええ…、高いものになりますと、この横の部分に細工がほどこしてありまして…」
「横?!そんなもん、上から布かけるんやろ?布かけたら見えへんやないか。」
たしかに、上に錦の布をかぶせます。

「な?隠れてしもうたら一緒やないかい。一番安いので十分や!」

この一言で、一同納得。
「そやな。」
「そやそや。」

と、いうふうに、一事が万事、葬儀委員長のおかげで、迷ええる子羊は、賢い(と思っている)選択をとることができたのでした。

※このコラムでは、お葬式に関するみなさまのご意見・体験談などを募集しています。
 ウチの地方ではこんなお葬式のしきたりがある!ウチの葬式でこんなことがあった!自分ならこんな葬式で逝きたい!など、お葬式に関することなら、どんなことでも結構です。どんどんメールでお寄せください。お待ちしています。

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Chizu Yamamoto
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