その三 番外編:あなたはだぁれ?親戚筋とのおつきあい

 この番外編は「葬送狂騒曲」に寄せられた、おたよりコーナーです。
 お葬式の時になると大集結する親戚一同。遺族と言う言葉でひと括りにしてしまうには、あまりに多彩で、おまけに日頃交流がない!
 そんな親戚筋との付き合いに、頭を悩ませた皆様からのメールです。


 ★各項目の最後にあるブルーの文章は、山本のコメントです。

 ◆都会のムスメ◆
●私の家は本家で一緒に暮らしていた祖母が亡くなった時の事です。私は高校3年でした。下に妹と弟がいるのだけど、この子らと一緒に「子供」をしてていいのか、「大人」として手伝うのか。
 そして、知らない親戚の人が多すぎでした。
「大きくなったねー」
と言われても「誰??」って感じで。親の兄弟は分かるけど祖母、祖父の兄弟の娘なんて人は私の記憶のない頃に会ったぐらいなので。
(ナカムラさん)


----お葬式を出すと、一気に親戚が増えるんですよね。増えるってことはないか。もともといたんだけど、再確認するというか。きちんと血縁に連なる人を数えはじめると、人類皆兄弟状態。どこまで増えるかわかったもんじゃありませんね。
 で、多いだけならいいんですが、困るのが“向こうはこっちを知っているけど、こっちは一面識もない(ことはないんだけどね。本当は)”というパターン。
 こういう時の伝家の宝刀、「おむつ替えてあげたのよ」発言が飛び出しても、こちとら記憶喪失のコムスメのように「はぁ…あなたが…わたしの?」と、戸惑いながらも、ぎこちなく作り笑顔で対応するものと、相場が決まっています。

 しかし、もっとやっかいなのは、こういうパターン。
●「法事やのにここの娘さん、髪赤く赤くして〜。
  ちょっと街にいったらこうなるねんなあー。」
 と裏でちくりちくりと言われてたみたいです。美大に入った私は髪の毛の色を明るくしてました。が、学校の友達にくらべるとおとなしい方だったんですけど…。
 田舎は「みんな同じ」が好きだからねえ。「美大」というのもかなりつっこまれていたらしい。祖母方は口が悪いひと多いです(笑)祖母もそうだった。
(ナカムラさん)


----うへ。私にも美大にいたので覚えがありますね。“くりえいちぶ”をやろうって人が、人様と同じ髪色なんてー。という風潮が、無きにしもあらず、なんですよ。美大には。
 茶髪くらいじゃ、もうぜんぜん地味なもん。赤はあるわ、緑はあるはあるわ、アフロはあるわ(マジ)。かえって真っ黒けっけの方が、フレッシュなくらい。
 ところが、どっこい。田舎じゃとんでもないことなんですよね。髪色変えるだなんて。もっとも、反応はその町の“田舎度”にもよりまちまちですが…(例えば、恐れおののく、怒る、都会の証だと感心するなど)。
 ですから、娯楽と人の出入りが少ないところに、都会の洗礼を受けて帰ってきた、人とちょっと違うことをしてる若い女の子なんて、格好の餌食っすよ。エジキ。骨の随までうわさ話にもってかれるんスよ(←経験済)。


 ◆増える親戚◆
●叔父の葬式に出てきました。
 この叔父なんですが、母方の祖父の愛人のお子さんで、一応は叔父になるんですけど、22年間生きてきて、そんな人がいるなんてまったく知りませんでした。
 お通夜に行ったんですけど、びっくりしました。
 自分の父と同い年の従兄がいました。しかも自分と同い年の従兄弟の子供までいました。いきなり親戚が増えてしまいました。お葬式って、いままで全然知らなかった親戚が増えませんか?なんだか不思議ですね。
(た〜さん)


----出た!とうとう!この話題が!
 一億総中流時代に、死際に駆け付けてまで、そい遂げようという根性のある愛人というのは、そうそういません。やはり2世代ぐらい上、私のじーちゃんばーちゃん世代の人が最後じゃないでしょうか。
 かくいう私の親戚にも、そういうおじさまがいたようでして(私が産まれた時にはすでに故人)、親戚中で伝説になりつつあります。
 なんでも、生前からかなりの“粋人”で通っていたおじさま、もういよいよ、という時になって、案の定出るわ出るわの、女の人。
 臨終の席でも、右手を正妻が、左手をお妾(とその子供が)が握って、右左から
「あなた!」
「旦那様!」
と、看取ったというから、相当なもの。
 ところが、このおじさまが息を引き取った瞬間、“左手”一派は“右”のみなさんに一掃され(こうかくと、政治がらみの問題みたいだな)、悲しむ暇もなく追い出されてしまったとか。


●うちの祖父がなくなったときのことです。私が出席したのは納骨の時だけだったので、指定されたお寺で待っていたところ、火葬場から帰ってきたうちのバスはなんと でかい観光バス2台!それでも乗り切れなかったらしく、タクシーも何台かついてきました。
 普通は火葬場へ行くのは親戚だけ・・・なのですが、その親戚の数が尋常じゃなかったのです。その後納骨も済んで、じゃぁ一杯・・・ってことで、どこに行くのかと思ったら自宅でした。確かに田舎の屋敷なので広いのですが、観光バス2台分の人数が入るとは思いませんでした・・・。
(kaoさん)


----火葬場までいく人数、フツーは少数です。火葬場で最後のお別れをするのは。ごくごく近親の遺族に絞り込まれて、数人程度っていうのが多いんですが…。
 それだけ人望のあった方ともいえますね。お祖父様は。しかし観光バス2台とは!よほど名のあるご一族なのでは?!


 ◆昔の栄光・今の見栄◆
●祖父の長男が九州で盛大な葬儀をしたのですが、その数ヵ月後、長男は、夜逃げの身になっていました。
 見栄っ張りの母は、花輪の数が少ないと言って、自分で友人の名前を語り花輪を注文していました。
(ayaranさん)


----笑うに笑えない、泣くに泣けないお話です。こういうエピソードを聞くと、お葬式というのは、亡くなった方の為だけでなく、生きている人間の為に出すものであるとおもいます。つくづく。
●父方の祖父は、代々続く村の名家に生まれ、教師となり校長も務めた人。私生活では1度目の結婚で男の子六人誕生させ、二度目の奥さんの間にも一人男の子をもうけ、最後は没落し切り売りされて残ったボロの屋敷後に一人で住んでいて、ある日庭で転んで亡くなったのでした。
 私は生まれて初めて葬式の舞台裏を見た思いがしました。
 過去の栄光にすがりつく息子達vsそれを馬鹿にしている嫁達。
 いちいちこんな調子で、花輪ひとつ決めるのにも六時間もかかっていました。
 更にまずいことに、祖父が一番はぶりがよかった時、自分のゴージャズな葬式の手配をし支払いを済ませてあったのです。(今更断れないらしい。)
 狭いボロの過去のお屋敷後にキンピカの坊さんが7人もやってきて、大音響でお経をとなえまくりました。
 私達は座る場所もありません。これでは没落しましたと全世界に向かってアピールしているようなものです。
 まわりではひそひそ話、台所では母達(嫁)の愚痴、ボロの畳の座敷では父達(息子)達が得意満面な顔でお客様の接待をしていました。
(NYさん)


----これぞ、圧縮された人間模様ですね!
 個人的な私見ですが、男の人の方が、自分の生まれ育った“家”への執着が強いようです。お嫁に行って、他家へ入る、ということがないからかもしれません。男性陣がお葬式を立派に出したい、というのもその気持ちの現れでしょう。
 けど、男性陣と、お嫁さん軍団でバッキリ意見が分れているのが面白いです。
 この、NYさんのお家も、伯父様方が自分の育った家を必死に守ろうとしたそうですが、結局、お家をあっさり人手に渡したのは、86歳になるという、彼等のお母さま、つまりおばあさまだったとか。

 ◆ヨメの立場は難しい!◆
●お嫁に来て1ヵ月くらいで同居していた主人の祖母が亡くなった。
 とたんに親戚がぞろぞろとやってきて、ずーと飲み続けていた(もちろん酒です)。
 祖母は80才を過ぎていたし、ちょっとぼけかかっていたし、孫(主人のこと)にもお嫁さん(私)が来たしで、
「よかったよかった」
と親戚が集まって飲み続けること1週間。友引きが重なり葬式が一日伸びたり、初七日まで親戚が居続けた、など最悪の自体が重なり、私はへとへとでした。

(setsuさん)
●数年前に主人の叔母あたる方の旦那さんが大晦日になくなり、そのときに私と主人は旅行中でした。
 主人の父より「長男だから今から帰って来い!」と連絡があり、来たばかりの私達は、ホテルでチェックインをした15分後にチェックアウト…。
 到着したのは 翌朝。徹夜で走って来た私達に姑は 私が座るやいなや
「おい!お茶!なに座ろうとしてるの」
だって。それってないんじゃい?って思いつつ、知らない家で悪戦苦闘!
でも 最後には 「役立たず!」の一言…。
 あまりの言いぐさに葬式中に泣き出しちゃいました。
 今、主人の母方の祖母が危篤らしいが、私は来なくていいらしい。主人だけ来て欲しいとのこと。理由をきいたら家族だけで送りたいって兄弟で決まったから…。
 私がなにをしたの?前回の葬式も見てないとこで裏方でがんばっていたんだよ。結婚して6年。私はいったい?
(nekoさん)


----最近は結婚式も「○○家 ××家」という書き方をしなくなり、徐々に家制度は消滅しかけているようにみえます。しかし、お葬式の場合は、まだ根強く残っています。
 普段は忘れかけていた、この亡霊のような旧体制に、振り回されるのはやはり“嫁”の立場の女性。出過ぎてもだめ、ひっこみすぎてもだめ。普段ほとんど出入りしない義父母の家でも、邪魔にならないよう、自分の家と同じような働きを期待されるのです。
 こういう時、セレモニーホールが会場だったら、少しは立ち回りやすいのかもしれませんが…。なんにせよ、血のつながりの無い人々の中で「家族」として振るまうのは、大変ですよ。ふう。

※このコラムでは、お葬式に関するみなさまのご意見・体験談などを募集しています。
 ウチの地方ではこんなお葬式のしきたりがある!ウチの葬式でこんなことがあった!自分ならこんな葬式で逝きたい!など、お葬式に関することなら、どんなことでも結構です。どんどんメールでお寄せください。お待ちしています。

戻る
その3へ
目次へ
目次へ戻る
次へ
その4へ


Chizu Yamamoto
Copyright(c)1999. Chizu Yamamoto. all rights reserved.
著作権は山本 ちずに帰属します。
無断転載・プリントアウトの配布はご遠慮下さい。
転載・掲載の際は事前にご連絡下さい。