大いなる落日


それからしばらくしたある日、かつての同期と、駅でばったりで逢いました。
私の中ではすっかり過去のものになりつつある、この会社でしたが、和議申請後も働き続ける同期もまだいて、興味深い話をたくさん聞くことになりました。



まず、和議申請のあとも、数か月は会社も機能していたらしく、社長自ら
「和議はなった。
 倒産したのではないのだから、これからだ!
と、ハッパをかけ、会社を運営していたようです。
しかし、和議というのは、それまで積もり積もった借金をある一定の額で手を打とう、という申し入れのことであり(それを蹴られると即座に倒産)、それが受理されたからといって、失った信用はもとに戻りません。予想どおり、一向に事態は好転しませんでした。

そして、とうとう7月のある日、今度は名実共に倒産の日をむかえてしまいました。
倒産後もしばらくは、本社に看板が掲げられ、人影がうっすら写ったりしたのですが、秋が来る前には、その看板すらも取り払われていたということです。
消え入るような会社の最後でした。



ところで、倒産ドラマの主人公、社長と本部長はその後どうなったのでしょうか?
倒産の直前、いよいよだめだ!!!と、なったとき、あの大手商社N・Iから今度は本当に査定が入りました。社員一人一人、特に取締役の所得や、会社の状態などを細かくチェックし、融資しても存続させるべき会社かどうか判断するためです。
さあ、そこで当然問題になったのは、あの愛人本部長です!
仕事の中身とポジション・所得のバランスがあまりに不均衡なところに、すかさずチェックがはいったようです。
一説には本部長を解雇しないと、会社の存続はない!とまで提示されたにもかかわらず、社長はかたくなに本部長を守り抜き、会社を捨てた、とまでいわれています。
まあ、それは大げさですが、本部長の素性はN・Iにもイッパツでバレて、ほかにもあの乱雑な経営方針のせいもあってか、N・Iはみごとウチを切り捨てることを決定。会社はとうとう倒産するに至ったのです。



さて、話をもどしましょう。 会社は倒産しても、引き際がそれなりにきっちりしていたせいでしょうか。 このあと社長は、なんと新会社を設立してしまいました!昔からのコネクションをフルに活用して、こりもせず、再びパジャマメーカー起こしたのです。そして自ら社長の椅子にすわってしまったのです。

さて、最後まで残っていた社員たちは、また社長についていくのでしょうか?
だれもが、名前を変えて、この会社がゆるゆると存続していくと思いました。
ところが!ここにきて、そのころ50名ほどいた社員の、半分が社長に堂々と反旗を翻してしまったのです。

社長には、もうついていけない!
こう、決心した血気盛んな社員たちは、社長に対抗して別のパジャマメーカーを設立してしまいます。
さらに、彼等の陣頭指揮をとり、新会社の社長に就任したのは、あの“ショックで早退”の営業本部長K氏だったのです。あの時の仕返しというには、あまりにも鮮やかです。
さらに、社内の若手営業マンや主だったデザイナーなど、社内でも名のとおった社員たちは、次々とこのK氏についていく決心を固めてしまいます。

片や社長派のメンバーといえば、社長の腰巾着だった室長以下、平均年齢50歳台のおじさんたちや、社長に恩のあるイエスマンばかり。こっちがへなへななのは、もうだれの目にも明らかです。

倒産劇は、かくして社内を二分する新会社設立バトルへと姿を変え、新たな戦いの日々が始まってしまったのでした。



さて、最後になりましたが、愛人本部長はその後どうなったのでしょう?
N・Iの査定に引っかかってからというもの、社員の目はことさら厳しくなり、また社長も本部長を守るだけの余力がなくなってしまいました。
そのへんの事を考慮したのか、彼女は辞表をだし・・・たわけではなく(そんなことするはずが無い)突如として着るものを地味にして出社してきたのです。
以前までのキンキラ光りものに、ボディコンミニはナリを潜め、急にジーンズにブラウスという軽装をまといはじめます。
「会社がこんなときだから・・・・」
という意識を体現したつもりなんでしょうけど、なんで形からはいるんでしょうね〜?社員からもおおむね不評だったようです。

さらに、そんな時期に新会社設立の話がきました。
「どうせ、社長といっしょだろう」
と、だれもが内心冷ややかに感じ取っていました。
ところが・・・・・新会社の名簿が配られると、そこには本部長の名前無かったのです!もちろんK氏の会社にもです。(それはそれで驚くけど・・・)
社長を思って身を引いたのか、金の切れ目が縁の切れ目なのか、真の理由はわかりませんが、とにかく社長と愛人はこの倒産をもって、みごと別離の道をたどり始めたのでした。

一時は会社No.2の地位にまで登り詰め、自分の名前のブランドまでもたせてもらい(あったんです。悪趣味なのが。)、2000万の年収と高級マンション。この世で人が欲する物欲を、手にいれ尽くした彼女ですが、はたと気付けば、会社も無く、夫も無く、子供も無く、再就職するにも年齢的に難しい。したとしても前のようには絶対暮らせないことは分かっています。栄華の夢はたった14年で破れてしまったようです。
なんだか、あっけないですね。
この話を聞いた時、自業自得とはいえ、ほんの少し、本部長が気の毒になりました。



しかし、友人の話はここで終わりではなかったのです。
なんと、社長派の新会社スタートの初日、社員が勢ぞろいすると、どこからともなく、懐かしい香りがただよってきました。
そう、そこにはなんと契約社員として登録したという、愛人本部長、いえ、愛人契約社員が、前以上に気合いの入ったいでたちで、社長と寄り添うように立っていたのでした。

(完)







ご声援ありがとうございました。


■他の人の体験もよみたい!■
ウチも潰れてしもたがな!
みなさんの体験談で、楽しさ(?)倍増!!!



■続編は?■
職を失った私が新しい仕事と明日を探した日々
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