文句なしの一大事!


社内のあらゆる業務が、徐々に停止し始めました。しかし売れ残った商品だけは続々と戻ってきます。 さあ、全社挙げての返品処理作業です!



そういうわけで、部署を問わず、毎日持ち回りで山奥にある配送センターに出かける毎日となった私たち。
そこで待っているのは、まったく売れなかったうちの高級系パジャマと、いつぞやの船場DEデートの戦利品・テディベアの仕入れ商品や、社長と愛人が愛を確かめあいながら発注した下着のたぐい(詳しくは第5章を参照のこと)ばかり。しかも、その量たるや尋常なもんじゃない!だからいわんこっちゃない。自社製品も売れへんのに、あちこち仕入れまくるからだ〜!ばかー!



そして、社員の怒りと反感を買うべき事実がもう一つ。これらの返品の大半は、なんと・・・というべきか、やはりというべきか、埼玉の本部長ショップから送り帰されてきたものだったのです。
これには一同、パートのおばちゃんですら、あいた口がふさがらない。でも、まぁ出荷のとき(第6章参照)あれだけ出してりゃあたりまえか。
それにしても、この、よそから買って、店に並べて、返品という、流通過程のロスとしか考えようがないバカバカしい販売戦略のとばっちりを、今なぜ全社員が負わねばならないのでしょうか?このままではあんまり情けなすぎます!

情けなさのついでにもう一つ。大量の返品とともに、あの本部長も一緒に戻ってきました。当初の予定日数を無事消化してしまい、会社の現状も現状なので、やむなく、本来のポジションに帰り咲くことになったのです。大量の商品と共に送り出された本部長は、その時の支度そのままに、大量の商品と共に帰ってきたのです。あれだけ、会社の経費を使いながら、まぁ〜よく戻ってこれたもんです。



帰ってからというもの、仕事がなくなってしまった私たちの状態を、見事に見て見ぬふり。私たちの作業場にも一歩も足をふみいれません。
「アンタ直属の上司でしょうが!!!」
と、いいたい気持ちもないことはないのですが、この転職雑誌回覧しまくり、パチンコいき放題、本読み放題のパラダイス(なのか?)を手放すことを思えば、それもまた良し。でしょうか。
ちなみにこのときウチの部署で流行っていたのは、いい証明写真の店を探すこと。値段と質と枚数のバランスを見ながら、クチコミでいい店をさがしていました。あとは、当然ながら職務経歴書をまとめること。
「いついつに、なんとかの仕事やったよなぁ〜」
「あ、それいついつです〜」
なんて、お互い確認しあいながらまとめていきます。まるで定期テスト前の中学生みたいです。




さて、こんなぬるま湯の日々もそう長くは続きません。
安穏を破って、私にとって会社生活で文句なしの一大事がおこったのです。
問題の日は、1月の中旬、何事もなく始まりました。
私はいつものように部署で一番に出社しておりました。始業前リーダーから「寝坊したから『リサーチにいきました』とごまかしいてくれ」と電話がはいりました。チーフは、もちまわりの返品作業で山奥の配送センターに終日出張でした。そして残った私は、ひとりで朝礼にでることになりました。



あの借金とり以来、朝礼に出ることがまれになった社長。ここ数日間はあまり顔を見ておりませんでした。
ところが、その日は珍しく、会場の「社長のポジション」に、すっかり疲れきったからだを携えて立っておりました。
朝礼は事務的な連絡事項から始まり、いつものようにおじさん達のコメントなどが続きます。司会の社長室長が、最後に社長の方を軽く振り返り、コメントを促しました。

ここまでなら、やや地味ですが普通の朝礼です。しかし、その後、社長の口からこぼれた言葉によって全ては覆えってしまったのです。
「いよいよ、わが社の状態も大変なことになってきました・・・
  (中略)
 ・・・・と、いうわけで、
 このままではいかん、という結果に達し、
 会社を存続させるため、××部、**部、
 そして、販売促進部を今月いっぱいで解散することに決定しました。」



あまりの事の重大さに、私は耳を疑いました。
私の部署がなくなる??そんなことを、事前の通告もなしに、しかも今月いっぱいで解散????よりにもよって、ウチの部署がすっからかんの日に発表しなくったって!!! 混乱の後は怒りと不安がふつふつと込み上げてきました。そしてその怒りは社長と、そのとなりに、寄り添うようにして立っている、わが上司、本部長にむけられました。どおりで最近よそよそしかったはずです!

わたしは、恨みと怒りと混乱のこもった目で本部長に視線を向けました。しかし本部長は決してこちらを見ようとはしないのです!空中で視線を結んだようにして、ぜったい目を合わそうとしないのです。

テメェ、私らを見捨てたな。



その後、正午すぎに出社したリーダと、配送センターから定時の連絡を入れてきたチーフそれぞれに、私は今日の次第を告げました。
リーダーは、事の次第を最初はおどろきつつ聞いていましたが、そのうち
「そんな発表の時に、おまえは一人でなぁ・・・
 さぞ、おどろいたろう・・・はははは」
と、さも楽しげに笑いころげました。
片や、電話でこんな重要決定を聞くことになってしまったチーフは、その直後電話の向こうで、まず絶句。混乱を整理すると、しばらくしてから
「うおーそんなおもろい発表、俺も見たかった!!
と、子供のように悔しがったのです。
このように、天下の(?)一大事だというのに、呆然自失になるものなど誰ひとりとしてなく、私たちの心が、この会社からすでに離れまくっていたということを、再認識したにすぎなかったのです。



さぁ!心おきなく飛び立とう!
しかし、その前に、社長に辞表をたたきつけろ!




今日のひとこと:
朝礼には注意事項の伝達が含まれます。
必ず出席しまよう。








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