出荷ストップ?!悪夢の営業活動


さて、本社が商社への吸収合併の夢に浮き立っていたころ、我々制作マン集団・販売促進部はというと・・・かつて無いほどの空虚な時間をすごしていました。
唯一の頼みの綱、クリスマス商戦も終わりお金をかけたディスプレイの必然性もなくなり、自転車操業の直営店事業も、借金返済にけつまづいてからというもの、当然ながら滞りがち。今度ばかりは本気ですることがなくなってしまいました。
毎日何をしているのかというと、朝出社して、掃除して、朝礼して、本読んで、ご飯食べて、本読んで・・・というローテーション。
特に、パチンコ好きのリーダーとチーフの二人はこれに「リサーチ」という時間が入り、ちょっと離れたパチンコ店につれだって出かけていきます。私はパチンコをしないため残って留守番。たまにかかってくる電話に「リーダーとチーフはリサーチです」と答えては、景品のお菓子をもらっておりました。



また、部署内で転職雑誌を回し読みしはじめたのも、この頃。
全員の頭に転職の二文字がちらほらするようになったものの、リーダー・チーフの妻帯者2人はさすがに軽々しく会社を辞めるというわけにもいかず、
「オレたちの事はともかく、おまえだけでも転職したほうがいいぞ!」
と、自分たちの願望を託すかのように退職を促します。
しかし、そのころの私はまだ入社1年目。いかに会社の経営状態が悪いとはいえ、自己都合で退職となると、単なる「社会生活不適格者」と見られるのではないか??こんな恐怖が先にたって、どうしても転職に踏み切れません。逆をいえば、私が会社に止まっていた理由はすでにそれだけだったのかもしれません。 ともかく、わたしたちにとって、表向きは会社員、現状は社内失業者という状態がえんえん続き、日暮れまでがとてもとても長く感じる毎日をすごしておりました。



そんなある日、出社すると、社内の雰囲気が異様にけだるい日がありました。
みんなの出社が異様に早い。おまけに疲労の色が濃い。特に営業の男性はみなみなくたくたです。聞けば営業全員が徹夜したというのです。
営業が徹夜???なぜ?・・・続く続報で真相は明らかになりました。
「配送センターにあるウチの在庫、全部別の場所に移しかえたらしいわよ。徹夜で。」
ウチの配送センターは関西の某山奥にありました。聞けば前日の夜、営業に全員召集がかかり配送センターに行かされ、理由も聞かされずセンターにあった在庫をすべてトナリの運送屋の倉庫に移し変えろ、といわれたそうです。
おまけに、徹夜で移しかえ作業が修了したかと思うと、それから2、3日後にはもういちどセンターにもどせ!という命令が!!このときも社内の男手は業務を中断して、またも徹夜で運び直したそうです。
こんな理不尽な作業ですが、理由はまったくもって不明。上からの説明等は一切なく、
「ウチの倉庫に在庫があっては困ることがあるんだ!」
「脱税でもしてたのか??査察だ!マルサだ!」
「まさか?さしおさえ?モノか?土地か?建物か???」
と、まぁ憶測でモノをいうほかない状況。
結局、謎は謎のまま、しかし、社の経営が悪化しているということだけを如実に表わしながら、この一連の騒動は幕を閉じたかに見えました。



ところが、これで終わったわけではなかったのです。
この徹夜倉庫往復運搬作業のあと、とうとう本当に商品が差し押さえられてしまったのです!
やはり、あの謎の作業は、なんらかの形で跳ね返ってきたのです。
そにかく、わが社が抱えていた莫大な在庫は、すべて借金のカタに入れられていたらしく、とうとう出荷差し止めの措置を受けてしまいます。つまり、債権者の許可なく動かすことができなくなってしまったのです!
さらに事件は続きます。普通なら、ここで営業活動は休止すべきでしょうが、何を血迷ったのか社長、営業活動を継続させ、「とにかく売ってこい!」の号令のもと多数の営業を野に放ちつづけたのです。
受注が入れば、この状況を動かせると思っての行動でしょうか???まったくもって、不可解な行動です。



さて、そうなると、すべてのしわ寄せは現場の営業マンにやってきます。
百貨店や量搬のルートセールスなどでも、今までと変わらぬ営業をし続け、注文を受け続けました。しかし、出荷すべき商品はすべて差し押さえられ、納品日になっても糸屑一本すら配送できません。
お客からは当然クレームになり、営業マンもまさか
商品は差し押さえられているんです〜
とも言えず、平身抵当、頭を下げるほかありません。
あるとき、大手百貨店「I」担当の営業マンが、先方担当者から電話で呼び出しをくらいました。原因は当然商品未入荷の件です。担当者も偉い剣幕で、上司ともども来い!とのこと。さっそく本人と上司の2人の営業マンが「I」におもむきました。
とりあえず、商品未入荷のワビを入れ、詳しい納品日等々の話ははぐらかしつづけました。
すると先方担当者が、おもむろに話をやめ、うつむいて紙に一筆、なにやら書きはじめるではありませんか。 少々待ってみると、担当者はその紙を二人の目の前に高々と差し出しました。
そこに書かれていたのは、サインペンの跡も黒々とした
信 頼
の二文字。
担当者はこれを差し示しながらつづけて一言。
「これはね、築くのはとても時間がかかるけれど、
 壊すのはあっという間なんだよ!」
この言葉に、我が社の営業2人は、ひたすら頭をたれるより他なかったといいます。
かくして、我が社が営々と築いてきた「信頼」は音をたてて崩れ去っていくのでありました。



このように、商品差し押さえの波紋が広がり、配送センターも本来の役目を失ったかに見えました。 ところが、現場は新たに増え続ける仕事で前以上の忙しさ。本社に応援を請わねばならないところまできていたのです。
さぁ、その仕事とは!年末のクリスマス商戦を当て込んで、昨年末に大量に出荷した商品の返品作業でありました!そのあまりに膨大な商品量に、もはや出荷業務が止まってしまったにもかかわらず、配送センターもお手上げ状態。とうとう本社社員部署を問わず、配送センター応援部隊を結成することになってしまいました。 (そういうところは即断即決なんだから・・・)
そういうわけで、全社員は役職・部署を問わず最低1日、配送センターに出張し、戻ってきた商品のタグつけタグはずし、検針、汚れチェック等々の作業に従事することに。
それは、仕事を無くした販売促進部とて同じこと。わたしもこの返品処理のために、山奥へ出張することになりました。
(まぁ、他に仕事は無かったから、当然といえば当然・・・)



涙の返品作業。
戻ってくる商品の大半は・・・・・




今日のひとこと:
これでも、まだ続いているウチの会社って・・・
けっこうすごいのかも。








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